【完】前世は同い年、今世は姉さん女房

いとこんドリア

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 それから丁度十年後――。

 いろいろ紆余曲折があり、未婚のまま私は24歳の春を迎えていた。

 そろそろ結婚でもと考える年齢だけど、喪女みたいに成り下がっている私に、彼氏もまともにできた事がないまま彼氏いない歴年齢を迎えていた。

 いや、彼氏いない歴年齢というわけでもないか。一応はいた。

 向こうから付き合ってくれと言われてなんとなく了承した途端に妹に寝取られちゃったけどね。まさか実質カレカノ期間一週間で終わりを迎えるなんてびっくりだ。

 という事で、今も変わらず処女である。



「ごめんねお姉ちゃん。あたし、お姉ちゃんの彼氏がどんな人か知りたくてぇーだから一晩だけ付き合ってもらったの。だけど一晩抱いてもらったら意外にヨクてさ、気持ちよくてハマっちゃったの」

 私の自宅で妹と彼氏モドキが全裸でベッドで抱き合っていた。私を前にした妹は誠心誠意土下座で謝るわけでもなく、いつものようにウルウル眼で許しを請うような言葉で逃げようとする。反省なんて全くしていないような顔だ。

 しかもそこ、私のベットなんですけど……と、行為で汚れたような布団一式を見て悲しくなった。

「悪い。俺、妹ちゃんの熱意に負けちゃってさ、甲斐の事は好きだったけど妹の方を好きになっちゃって……だってすげぇヨカったし、お前より胸もデカいし可愛いし……あ、ごめん」

 や、今更ごめんとか言われても……。

「ほらお姉ちゃんでしょ!彼氏くらい妹に譲ってあげなさい!」

 と、お決まりの台詞を言う母親。そんなやり取りが少し前にあった。

 まさか恋人すら妹に譲ってあげる事になるとは思わなかったよ。私としては恋愛感情が芽生えていなかったのでどうでもよかったんだけど、なんだか腑に落ちないものだ。

 まあ、簡単にプロポーションのいい女に目移りするサルなんかと付き合わなくてよかったと逆に思う事にする。でも、やっぱり腹は立つが。


 それ以前にも、料理の専門学校に行こうとしていたが、妹を大学に行かせるからあんたに出す金はないと言われてしまった事もあった。私はなんとか奨学金制度を利用しつつ、バイトをしながら学校に通い、念願の調理師の資格を取得したものだ。

 時々、妹に彼氏自慢アピールなどの嫌がらせをされたり、せっかく貯めたバイト代をネコババされそうになったり、勉強の邪魔をされたりして苦労はしたけれど、友達の家に避難しながら独り暮らしを始めて勉強したかいがあった。
    

 そんな事があっても、相変わらず両親は妹にべったり贔屓をするし、私を下げてくるし、なんか私の人生って損ばかりしているなと思う事がある。



『オレが甲斐を嫁にもらいにくるから』



 直君が言っていた台詞がふと思い浮かんだ。

 もう時効かな。どうせ小さい頃に言っていた台詞だ。直君もとうの昔に忘れていると思うし、大人になった今では別の恋人がいてもおかしくはないだろう。

 甘酸っぱくていい思い出だったな。
 




「え、直君が十年ぶりに日本に?」

 直君のご両親と久しぶりに再会して、そのご両親の自宅で近況を報告しあっていた。

 母親である早苗さなえさんと父親である一樹かずきさんは、数年前に仕事が一段落して帰国していたのだが、直君だけは帰国せずに有名なハイスクールに進学。飛び級であっさり卒業。某アメリカの有名大学に進学して、そこでも飛び級を重ねてすぐに卒業したらしい。

「明日帰ってくるの。甲斐ちゃんにとっても逢いたがっていたわ」
「そうですか。海外で頑張ってるって聞いていたけど明日帰国なんですね」
「日本じゃまだあまり知られていない会社なんだけど、海外で大成功しているみたいで、そろそろ日本に進出する事を言っていたから」
「進出ってまたすごいですね」
「海外の拠点を大きくしてから日本にって考えていたみたいよ。成功するまでは帰らない。甲斐のために会社をでかくしていい男に成長するまではって。だからその日がやっと明日なんだってわくわくしていたわ」

 私のためと聞いて、他人事とは思えなくなる。

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