学園トップ~&ユカイのスピンオフ

いとこんドリア

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学園トップスピンオフ

大嫌いから大好きへ

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 ※直が甲斐を好きだと自覚していく過程/時期的に3章から両想い前まで

 最近、本当にオレはどうかしている。
 今までの自分じゃありえないくらい動揺と困惑でいっぱいで、一日のほとんどをアイツの事ばかりで占領されている。
 何が悲しくてあいつを?あんな貧乏人なんかに?
 まさか心を奪われているとでも言うのだろうか。
 はっ、バカな。冗談はよしこさんだ。


「直さ、ま……」

 しかし、無自覚でアイツの存在を目で追っているのは決して気まぐれなんかじゃない。
 こうしてアイツに似た女を組み敷いて、半ば無理やり抱いているのが証拠だった。
 背格好は小柄だが、顔は勿論の事髪型も似せてしまえばアイツを抱いているんだという錯覚を覚えることが出来、いつもよりかは愉しめた……気がする。
 でも、目の前の女はあいつじゃない。
 あいつとは程遠い。ちっともちがう。
 
「直様……あの」
「用が済んだ。帰る」

 さっさと服を着て出口へ向かう。女を無視して。
 アイツ似の女はまだ何かを言っていたがそれすらも無視して退散。 

「くそ……なんでオレがあの野郎の事などを……ッ」

 何度自分にありえないと否定しても、心には嘘はつけず、知らず知らずのうちにオレはあいつを目で追う日々に困惑する。
 
 *

「パンツがなくなってさぁ」
「えーうそォ」

 最近、女子の間で下着が盗まれる事件が勃発しているらしい。
 不特定多数のいろんな下着が盗られているらしく、その盗まれた総数はのべ数百枚に達するという。
 二年Eクラスの女子の間でも、下着を何枚か犠牲にされた子がいるようで、全女子達が血眼になって犯人を捜しているようだ。

「ほんと、見つけたらギッタギタンのメッタメタにして髪の毛と陰毛をバリカンで剃ってやるんだからっ!」
「ふん、あたしなんて犯人の汚いケツにカンチョーして、必殺のハイパー電気あんまかけて、樽に塩漬けにして踏んづけてやるわ!秘技塩漬けの金玉つぶしの刑よ」
「へぇーあたしなんて~」

 金属バットを携えている由希達を筆頭に、Eクラス女子達が捕まえようと怒りとやる気に燃えていた。
 女子の怒りはもう天よりも高く、変態下着泥相手に容赦ない天誅を加える気満々である。
 そんな女子の恐ろしさに少々ビビりながら、陰ながら応援している俺達男子達も犯人探しの手伝いを命じられていた。が、俺にも災いが降りかかっていた。

「……俺もパンツ盗まれたんだ。さっき」

 おかげでズボンの下は今はノーパンだなんて言えない。

「ええっ!?甲斐もかよ!」
「ああ。さっきシャワールームでシャワー浴びてたんだけど、着替えようとしたらパンツだけがなぜか無くなってたんだよ。ちゃんと着替え準備してパンツもあるのを確認したのに」

 風に飛ばされたとも考えにくいし、親衛隊が嫌がらせで盗んで行った線も薄い。奴らはパンツどころか盗むなら制服も盗っていくような連中なので、パンツだけなんて中途半端すぎて逆に考えられない。

「変だね。パンツだけ無くなるなんて」
「ああ。盗んだとしても、野郎のパンツだけ盗んでいくってのがまずおかしいだろ」
「甲斐、もしかしてあんたの事が好きな隠れファンかもよ?」
「よ、よしてくれよ。男だろうと女だろうと、パンツ盗むような人はちょっとご遠慮願いたい」
「ははは。だよなあ」


 一方、その頃……展望ラウンジにて。

 まさか成り行きで拾ってしまうなんてな……。
 別に拾おうと思って拾ったわけじゃあない。ただ、シャワールームを通りかかる前に、架谷がシャワールームに入っていくのが見えて、なんとなく気になったからこっそりシャワールームに忍び込んで、成り行きでパンツを拾っただけ。不可抗力。不可抗力でだ。
 だって、奴のかごからパンツが落ちてしまっていたので仕方なく拾おうとしたら、丁度他の生徒も入ってきてしまったので、返すに返せなくなり持ってきてしまったのである。言い訳にしか聞こえないが。

 それにしても、架谷のパンツ……か。
 くんかくんか。

 なんかオレ、こうしてみるとすげぇ変態なんじゃないだろうか。
 すげぇバカやってんじゃないだろうか。でも、架谷のパンツだし……くんかくんか。
 
 やべっ……勃っちまった……。
 オレ、やっぱ変態かもしれん……。
 ていうか、なんでドキドキしてんだよオレはっ。 
 どうかしてるわ……はあ。
 オレの心はどんどん架谷に占領されて落ちていく。
 日常生活にも影響が出るほどに。


 *


「なんか用かよ」
「仕事だ。オレの相手をしろ」

 いつもの展望ラウンジに架谷を呼びだした。
 こいつはオレの従者なので、本日もオレの忠実なる奴隷として働いてもらおうと呼びだしたまでの事。
 しかし、こいつは生意気にもオレに口答えをし、あまつさえ反抗して命令を利かないので、時として手が出る時もある。蹴りを入れたり、頭を殴りつけたりとかな。従者になったばかりの頃なんて殴り合いのケンカなんてザラで、お互いにいつも傷だらけだったような気がする。しかも、こいつは他の従者と違って強靭で腕っぷしが強いので、このオレでさえ抑え込むのに骨がいるときたものだ。

 くそ。なんてクレイジーな野郎だ。こんな貧乏根性丸出しな野郎は初めてだ。
 だが、今は前ほど暴力に訴える事なんてなくなったし、こいつといる事で普段の退屈でくだらない毎日が変わろうとしているのに気が付いた。

 架谷といると、どうしてか今の自分を忘れられる事ができるからだ。
 財閥の御曹司という重い立場が抜け落ち、一人の人間としてこいつと接する事ができている。それがすごく新鮮で、同時に不思議な気持ちになれている。居心地がいいというのだろうか。
 ますます、架谷に対して興味がわいては止まらない。

「お前の相手ってどういう事だよ。犬や猫と違ってお前のお守りなんぞ勘弁なんですけど」

 架谷は相変わらず減らず口だけは達者だ。

「そういう意味じゃあない。オレの性欲解消の手伝いをしろって事」
「……は……何言って……お前、頭イカレタのか……?女ならいざしらず、野郎相手に冗談はよしこさんで「冗談じゃあない」

 オレは架谷に近づいた。

「お前がオレ様のセックスの相手しろっての」

 真剣に命令した。
 当然、架谷は冗談じゃないと言いたげに逃げるように出て行こうとするが、オレは逃さない。
 架谷を力づくで捕まえ、そのまま近くにあるソファーに押し倒し、馬乗りになる。暴れる架谷の手首に紐をくくりつけて一纏めにして、そして嫌がる架谷の制服を一方的に剥いだ。

 いくら気になると言っても、こんな事をする気なんてなかった。
 ただ、冗談で脅かすつもりだった。
 でも、どうしてかオレの手はそのまま止まらなかった。
 野郎相手なのに、架谷相手だとオレの性欲が掻き立てられる。
 ほしい……ほしい……架谷が。心も、体も。ぜんぶ。

「ん、やめ、やめろよっ……いや、だ。や、ざきっ……っ……あ、く、ひぃ」
「かさ、たにっ……っ……たまらねぇぜ」

 揺れる架谷の躰は精液だらけだ。顔面も白濁まみれで目はトロンとしつつも未だ理性を保っているのか「嫌だ」と繰り返している。強情な奴。いい加減に堕ちてしまえばいいのにな。気持ちいいくせに。

「嫌?こんなにオレのちんぽ美味しそうに銜えてよく言う。案外好きなんじゃねぇの?アナルセックス」
「ッ…!」

 途端、架谷の顔が怒りと屈辱に歪む。

「ククク……いいざまだ。架谷クン。悔しいだろう?憎きオレ様に組み敷かれてちんぽ突っ込まれて犯されてんだからよ」
「……っ、き、さまっ!」
「おお、ナカが締まる締まる。おいおい、怒りと共にあんま締め付けるなよ。思わずイッちまうだろうが。それとも、怒り心頭だから激しい方がお好みってか。ならお望み通り激しい方でシテやる。愉しめよ、貧乏愚民」
 オレは激しく腰を動かした。まるで挑発するように。そんな架谷は苦しげに、でも甘ったるさを含んだ嬌声をあげる。
「ひ、あッ、あッ、ひいや、あぁっ!」


 ああ、たまらない。いろんな女を抱いてきたが、今までで誰よりも満たされたセックスだ。
 これがオレの、心の奥底に潜んでいるもう一人の自分の願望。
 架谷をこんな風に犯してみたかったんだ。
 無理やり、屈服する顔がみたかったんだ。

 でも………
 なにかが……ひっかかっていた。
 オレが一目惚れしたコイツの顔はこんな風な顔じゃない。こんな泣いて苦痛を感じている顔じゃない。
 こんな屈服させたいとか、無理やり犯したいとか、そんなんじゃなくて、ただ――………

 
 ふと気が付くと、視界は見慣れた天井に移り変わっていた。
 そこは学校のラウンジではあるが、架谷は消えている。
 どうやら疲れて机に伏して寝ていたようだ。


 夢……か。
 少し残念なような、ほっとしたような、なんとも言えない脱力感が広がる。下半身の気持ちの悪い違和感とともに。
 自分の心の奥に潜んでいるもう一人の願望が、あんな夢を見させてくれたというのだろうか。

「……何をやっているんだろうな、オレは……」

 相手には困らない自分が、まさかここで夢精だなんて……と、情けなくて頭を抱える。
 拓実の野郎にバレでもすれば、腹を抱えて爆笑されるのが目に浮かぶ。だから口が裂けても言うものか。

 それにしても、あんな夢をみてしまったという事は、やっぱりオレはあいつが………
 架谷が好きなのかもしれない。
 まだはっきりと自覚をしたわけではないけれど、なんとなくそうなんだろうと先ほどの夢が証明させてくれたようなもの。あんな夢の内容な事は御免だけれど。

 ただ、オレはあいつの笑顔がみたいだけ。
 一緒にいたいと思っただけ。
 あの夢のように力づくで押さえつけても、きっと心から満たされはしないだろうと思うから。
 ああ、逢いたい。
 今すぐアイツの顔が見たい。
 できれば、架谷の心が自分のものになってくれたらいいけれど……まだそこまでは望まない。
 オレは下半身を清めてからラウンジを出てある場所へ向かった。
 

 *

「あー最悪。まさかの通り雨かよ」

 学校から帰る途中、先ほどまで晴れだったはずがいきなりの天候悪化。
 陽は出ているというのにこの地域だけの通り雨に遭遇した。傘もなにも持参せずに雨に降られたので、当然制服や髪など全身はびしょ濡れであった。
 これからバイトなんだけどなぁ……面倒だけど一回寮に帰って着替えてこようか。
 濡れた髪をかきあげながら寮へ向かおうとすると、一際豪華な車が目の前を通り過ぎて止まった。

「制服びしょ濡れだな。服、貸してやろうか」

 車窓が開いて顔を見せたのはまさかの矢崎直だった。
 俺は一瞬戸惑い、どうしようかと考えた。
 なんだってこの男は俺に絡んでくるんだろう。貧乏人だとか貧乏地味男だとかバカにするくせに、何のメリットがあって俺に構ってくるわけ?それに、あれだけひどい事言ったのになぜ。
 お前の事が嫌い、だって。
 だから、これ以上関わる事もないと思うし、関わりたいとも思わない。俺も四天王から離れたかったから、親切で言ってくれたとしても返事は決まっていた。

「別にいい。寮で着替えるから」

 そう言って黙って車の前を通り過ぎようとすると、

「これ以上濡れたら風邪、ひくだろ……」

 いつの間にか車を降りていた矢崎が、俺を濡らさないように背後から頭上に傘を掲げていた。
 俺は足を止めざるを得ない。

「別に……俺は頑丈だから風邪なんて……」

 振り向くと、いつもの殺伐とした鋭い眼ではなく、優しげで、でも寂しげで、哀切を帯びた瞳と目があった。俺はいろんな意味でどきりとした。

「そういう奴ほどひくんだよ。お前みたいなバカがな」

 そうやって減らず口は叩きながらも、どうしてそんな寂しそうな目をしてんだよ。

「バカって言うな。バカ財閥に言われたくない。俺、これからバイトで急ぐから……」

 差し出された傘から抜け出ようとすると、

「っ……!?」

 唐突に、背後から包み込むように抱きしめられた。
 俺は茫然として固まる。香る矢崎の肌の匂いと香水の匂いにドキドキしながら困惑する。

「いくなよ……架谷」
「え……」
「あー……じゃなくて、いいから言う通りにしろ。お前の寮までここからじゃあ遠いだろう?近くのオレのホテルで制服貸してやる」
「は?い、いいよそんなの!恩着せがましくされて後でそれなりの見返り求められても困るし。お前なら変な事企んでそうだしな。だから、お前の世話になんてならな「いいから来い!!」

 矢崎の奴は問答無用の実力行使で、無理やり俺を米俵のように肩に抱えて車に押し入れた。
 暴れる俺を余所に車を発車させたのだった。

 なんでこうなってんだか……。
 連れて来られたのは、矢崎グループが経営する帝都クラウンホテルの最上階スイートルームだった。
 なんでわざわざスイートなんだろうと言いたいことが山ほどあるが、矢崎は先に風呂に入れと俺を浴室に押し込んだ。制服は脱衣所に置いてあるからあがったらそれを着ろと言われたけど、なんだかこれ、大きくね?

「おい、矢崎!これ大きすぎだろ。肩幅も裾も俺じゃあブカブカで……」
 
 着替えがないので、仕方なくブカブカなシャツを着て矢崎のいるリビングへやってくると、矢崎はどうしてか固まっていた。俺の姿を一目見て。しかもなんか口元を押さえて顔が赤いような気もするが気のせいか?

「お前、それ以上……近づくな」と、矢崎。
「はあ?ていうかちゃんと俺のサイズの制服を用意しろっての!全然違っててだな「わ、わかったから。すぐ持たせるから」

 矢崎の奴はやはり顔が赤い。しかも妙に焦った顔だ。なんだってんだよ。

「お前の方が風邪ひいたんじゃねえの?俺の事心配する前にまず自分を心配しろよ」

 俺は矢崎の赤い顔に呆れて言う。

「…………お前、案外自分の今の姿がどれくらいやばいか気づいてないだろ」
「は?……いや、そうでもないっていうか」

 たしかにやばいと思うよ。ブカブカすぎて肩は少し出ているし、足も素足だし、シャツの裾の下はパンツだし。そりゃあ吐く程やばいよなあ。
 すね毛だらけの野郎がこんな格好して誰得だよ吐くよこの野郎ってカンジだよな。でも、勢いよく文句が飛んでくるのを覚悟していたのに、案外何も言ってこない矢崎に拍子抜けである。

「こんな野郎の格好じゃあ確かにキモくて吐くほどヤバいのはわかるけどよ」
「あー………お前が自分の魅力に超鈍感な事がよーくわかった。だからって、そんな格好はもう人前では二度とするなよ」
「……意味が分からん」
「いいからするなよ!したら殺すからな!」
「……やはり意味が分からん」
「お前が……」
「ん…」
「す、好きな奴がいるかもしれないだろ」
「へ?」
「もう少し、警戒心をもってほしいもんだドアホ」
「や、ドアホって……」
「こ、ここに……いる、から……」
「え?」
「なんでもねーよっ!」


 完
 
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