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平和な世界線in女体化
女になっちゃいました・エピローグ(完)
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俺、架谷甲斐。男だったけど女になった変わり者の28歳。都内の戸建てに住む超が付くほど高収入すぎる旦那と4人の子供を持つ料理人兼主婦である。
高校時代は男装していたためにショートだった髪も今じゃ背中まで伸びて、サイドにまとめて結ぶ髪型をするのが多くなった。アラサー子持ち女子である。
「美味しい~!」
「しかもこの動物のプリン可愛い~!」
最近はスマホで料理を撮りまくっているお客さんを眺めて鍋を動かす今日この頃だ。俺は数年で自分の店を持つ事ができ、得意な料理を毎日振舞っている。不定休だし、ランチタイムだけの営業だから隠れ名店なんて言われている。
最初はEクラスの仲間くらいしかお客さんが来なかったんだけど、インフルエンサーな相田がインスタに載せた事で客が大量に来店。ランチタイムしか営業していないため、閉店間際にも関わらず連日行列が続いて困ったものだった。店に入れなかった人達には何度か頭を下げたし、テイクアウトなどにも対応したりして、しばらくは整理券で人数制限をしたものだ。今はそれもだいぶ落ち着いて、常連さんもそれなりに出来て充実している。
「お母さんただいま~!ウチ手伝うね」
ランドセルを担いだ見慣れた美少女が顔を覗かせた。
「いつもありがとう甲夜」
娘の甲夜は長女であり俺と直の第一子だ。長いぱっつんな黒髪はまるで日本人形のような美少女と言われていて、お転婆で笑顔が可愛い自慢の娘である。顔や雰囲気はほぼ俺の遺伝子を継いでいるらしいが、美少女に成長できたのは旦那の美形遺伝子のおかげだろう。
「甲夜、あそこのお客さんのオーダー取って来てくれる?」
「はーい」
甲夜は学校が早く終わった日にはこうして顔を出して店を手伝ってくれる。俺と旦那の子供にしてはとっても優しくてできた娘だ。小さい頃からお手伝いとか好きで、小学生ながら料理も家事も接客もできるのでたいしたものだ。
「ママ、ただいま。今日、早く終わった~」
「おかえり、真白」
甲夜の一つ下の次女だ。甲夜がお手伝いが好きな反面、真白はあまりお手伝いなどは得意ではなかったりする。少しのんびり屋でドジだが、勉強は得意な秀才。直の遺伝子をかなり継いでいるのか見た目や頭の良さは直にそっくり。銀髪ビスクドール美少女と言われているので、今後が少し心配である。不埒な野郎共に誘拐とかされないだろうか。
「真白のクラスは父親参観だったから、パパね、仕事の合間に来てくれたよ」
「よかったな。この頃お父さんはお仕事で忙しかったから。あ、大丈夫だった?他のクラスは母親も来ていただろ」
「パパ、相変わらず他ママ達から言い寄られてた。だから真白、他ママ達追い払ったよ。途中で甲夜も5年生のクラスから来てくれた」
「ありがとう二人とも。お父さんも陰で感謝しているよ」
四天王の矢崎直じゃなくなっても、あの容姿とオーラじゃ異性が放っておいても寄ってくるのでいつも苦労している。少し前なんて旦那に本気で惚れたバカママ一派から嫌がらせされたり、離婚しろと脅されたり、NTRしてやる発言をされて困っていたのだ。モテすぎる旦那を持つ苦労は一生続きそうである。
「お母さん、そろそろ直樹と甲梨の保育園のお迎えの時間です。ウチがお迎えに行ってきましょうか」
「今日は大丈夫だよ。お迎えはお父さんがしてくれるから」
直樹と甲梨は真白の後に生んだ双子だ。まだまだ保育園に通う5歳である。
「その直樹と甲梨も、もうすぐおにいちゃんおねえちゃんになるんだよなぁ……」
「え?」
「それって」
俺は母親らしく慈愛に満ちた顔で微笑んだ。
*
大きな商談が一段落し、今日は簡単な打ち合わせと会議だけにしてもらった。相変わらず矢崎財閥社長というクソ多忙な日々は身が削れる思いだが、大好きな妻や子供達がいると思うと魑魅魍魎ども相手でも頑張れる。
世界的不動産王やらIT企業王やら、果ては某国の大統領相手だろうがどうってことはない。数年前までは海外への出張も多かったので、今年は家族と過ごせる日をできるだけ多く取りたい。
「父親参観、楽しかったみたいですね」
久瀬がタブレットに視線を向けながらオレの雰囲気に気付いた。
「真白がオレのために【お父さんのお仕事】という題で作文を読んでくれたんだ。その作文の中で部下に指示を出しているパパがカッコイイって言ってくれてな……まあ、うん。父親としていろんな意味で滾った」
「直様……顔がキモいです」
そうは言っても顔がにやけてしまう。可愛い娘から好かれて嬉しくないはずがない。さすがに財閥社長をしているなんて言わないようにと口止めしてあるので、表向きは数学教師と通している。
ただその日は、他のクラスも授業参観をしていたのか他の母親共に絡まれて面倒だった。どこの学校の教師なのとしつこく訊かれてウザかったが、真白と甲夜が追い払ってくれて事なきを得た。ああいう母親共相手は娘相手の方が引き下がってくれるので助かる。
「昔の直様を知っていると、アホみたいに愛妻家で子煩悩になるとは思いもよりませんでしたよ」
甲斐と出会ってから人生が変わったし、甲斐や娘以外の女を見ても能面が歩いているとしか思えなくなったからな。
「そういえばお前の末の子供もそろそろ物心がつく頃じゃないか。仕事に精を出すのもいいが、子供に顔を忘れられないようにな」
「……わかっていますよ。自分の子供は可愛いですからね。できるだけ少ない休日の間に子供と触れ合っておきます」
甲夜が生まれた頃はまだ10代だったからそこまで海外の高飛びも多くなかった。しかし、真白が生まれて三年経った頃、海外出張が多くて真白に顔を忘れられるという悲劇に嘆いた。その後は自分が父親アピールをしまくってなんとか顔を覚えてもらったが、直樹と甲梨が生まれた時も危なかったな。
「おとうさんっ!」
「パパ!」
お迎えに呼ばれた可愛い子供達がバタバタ走ってくる。ああ、可愛いな我が子達は。
「保育園、楽しいか?」
「うん!今日ね、おなじりんごぐみの子とサッカーしたよ。ぼくゴールきめたんだ~!」
「すごいな。オレに似て運動神経がいいな」
「わたしはほかのくらすの男の子にかこまれてたいへんだったわ。女の子のお友達がほしいのにどうしてか男ばっか寄ってくるの。私の好きな男のタイプはパパなのにやんなっちゃう。まあ、面倒だから全員わたしのトリマキにしてあげたけど」
「はは、全員しもべか。さすがはオレの血を引いてるだけあるな」
甲梨はオレに雰囲気や性格が似てとてもマセた考えの子だ。見た目は甲斐にそっくりだが、中身がオレのようにSっ気があって男を手玉に取るので将来が少し心配だ。その一方、直樹は純粋培養を絵に描いた好奇心旺盛な子供だ。オレに顔がそっくりなせいでミニ矢崎直だとか言われているらしい。将来はオレのようにはならずに普通にまっすぐに育ってほしい。
「お父さんはお仕事おやすみ?」
「ああ。今日と明日はお休みだ」
「「わーい」」
二人を抱き上げて頭を撫でるとくすぐったそうだ。久しぶりの休みだからたくさん子供達と遊んであげよう。ついでに奥さんとも夜に。
「んまぁ、黒崎さん!お久しぶりですぅ!今日はお父さんがお迎えなんですねえ~」
他の母親や保育園の若い保育士が頬を染めてこちらを見てくる。いつもの事ながら鬱陶しいが、子供らのために問題は起こしたくない。魑魅魍魎共に向ける営業スマイルを張り付けた。
「いつも子供達を見てくださりありがとうございます」
「ああん、いいの。黒崎さんの頼みならなんだって聞いちゃいますぅ」
「それにしても矢崎直様にそっくりですけど、親戚か何かなんですの?」
「よく言われますけど親戚でもなんでもないですよ。ただのしがない平民教師です。あんな偉そうな俺様とは正反対な性格なもので」
自分を卑下したくなるのはオレが矢崎直というキャラを好きではないからだ。あんなドSで俺様キャラの何がいいんだか世間の女達の趣味の悪さに呆れるものだ。
*
「ママ、ただいま」
「お母さーんただいま~」
直が可愛い双子を連れて帰ってきた。
「お帰り。甲梨、直樹」
二人に手を洗うように促し、後から来た旦那にも笑顔で出迎える。結婚当初は恥ずかしかったお帰りのキスも慣れたものだ。
「この頃は帰りが早いんだな」
「大型契約が終わった所だから最近はそれほど忙しくないんだ。しばらくはゆっくりできる。それにもうすぐ大型連休だろ?久しぶりに家族で旅行にでも行こうかって考えてる」
「それはいい考えだな。最近お互い忙しかったし、子供達も喜ぶと思う」
「じゃあ家族でハワイにでも行くか。久瀬に予約をとってもらうよ。当然飛行機はファーストクラスで」
子供達がハワイ!と、目をキラキラさせて喜んでいる。大好きな父親と海外旅行なんてなかなかない機会だからな。たまにはいいかもしれない。
「でも、ハワイってたかいんじゃないの?なん万円?」
「ばかねー直樹。パパはお偉い社長なんだからめちゃんこ稼いでるにきまってるじゃない」
「そうだ。こういう時のためにお父さんはたくさん稼いでるから使わないと損だからな。旅行する時くらい贅沢しよう」
普段は倹約生活をしているせいか子供達の金銭感覚は貧乏寄りである。俺がそういう教育をしているのもあるし、父親の直が進んで自分の仕事の事を話したがらないせいでもあるが、お金の大事さを学んでもらうためにあえて質素な生活をしているのだ。
「みんなに報告があります。実は新しい家族が増える事になりました」
「え!家族?」
「かぞくって……赤ちゃん?」
「そう。お母さんのお腹に新しい家族がいるんだよ」
「あ、そういえばさっきママ、直樹と甲梨がおにいちゃんおねえちゃんになるって言ってた」
「やっぱりそうだったんだね。ウチ、なんとなくそうだと思ってました」
子供達がわくわくした様子でお腹を撫でにきた。まだ目立った膨らみはないんだけどみんな楽しみのようだ。
「ぼく、おにいちゃんになるの?」
「そうだよ直樹。お兄ちゃんらしく嫌いなピーマンも食べれるようにならないとね」
「ピーマン……うん!ぼく、おにいちゃんになる!がんばってたべれるよーになる!」
「直樹だけじゃしんぱいだから私もおねえちゃんになってあげる」
新しい家族が増えて五人の子持ちか。ますます賑やかになりそうだ。
「少し前、子供達を母さん達に預けて二人でデートに行ったその晩のだろうな。中出ししまくったし」
「っでかい声で中出しいうな」
子供達に訊かれたらどうするんだと呆れながら睨むと、子供達がニコニコしている。
「お父さんとお母さんは仲良しです。ウチ、友達に言われました。羨ましいって」
「うん、真白も思う。パパはママが超大好きだよね。愛妻家ってやつ」
「ああ、大好きだよ。お前達も大好きだけど、一番はやっぱりお母さんなんだ」
と言いながら、抱き着いてくるデレ顔の旦那。こう言われて悪くないのでとりあえず撫でておいた。
「夫婦になってもすなを吐くほどラブラブってやつね。普通は数年でケンタイキってのがくるけど、パパとママがいまだにラブラブならあたしはいうことないよっ」
甲梨はどこでそんな言葉を覚えてくるんだ。
「ママ、わたし小腹がすいた~」
「ぼくも~」
「ああ、そろそろおやつの時間にしようか。冷蔵庫にかぼちゃプリン作ってあるから食べよう」
スイーツ大好きな真白や甲梨が我先にとバタバタ走る。直樹も急ぎすぎて転んで甲夜になだめられている。これが黒崎家の日常だ。
「甲斐、幸せ?」
「幸せだけど直は?」
「もちろん……幸せだよ、オレの可愛い奥さん」
子供達に隠れてキスをしあう。夜まで我慢できないとか言いそうだが、まだ昼過ぎだし子供達もいるのだからどうか我慢してもらいたい。
きっとこのラブラブな関係は何年経っても変わらない。中年になって老人になってもずっと。
END
これにて女体化版は終了
次回作制作中
高校時代は男装していたためにショートだった髪も今じゃ背中まで伸びて、サイドにまとめて結ぶ髪型をするのが多くなった。アラサー子持ち女子である。
「美味しい~!」
「しかもこの動物のプリン可愛い~!」
最近はスマホで料理を撮りまくっているお客さんを眺めて鍋を動かす今日この頃だ。俺は数年で自分の店を持つ事ができ、得意な料理を毎日振舞っている。不定休だし、ランチタイムだけの営業だから隠れ名店なんて言われている。
最初はEクラスの仲間くらいしかお客さんが来なかったんだけど、インフルエンサーな相田がインスタに載せた事で客が大量に来店。ランチタイムしか営業していないため、閉店間際にも関わらず連日行列が続いて困ったものだった。店に入れなかった人達には何度か頭を下げたし、テイクアウトなどにも対応したりして、しばらくは整理券で人数制限をしたものだ。今はそれもだいぶ落ち着いて、常連さんもそれなりに出来て充実している。
「お母さんただいま~!ウチ手伝うね」
ランドセルを担いだ見慣れた美少女が顔を覗かせた。
「いつもありがとう甲夜」
娘の甲夜は長女であり俺と直の第一子だ。長いぱっつんな黒髪はまるで日本人形のような美少女と言われていて、お転婆で笑顔が可愛い自慢の娘である。顔や雰囲気はほぼ俺の遺伝子を継いでいるらしいが、美少女に成長できたのは旦那の美形遺伝子のおかげだろう。
「甲夜、あそこのお客さんのオーダー取って来てくれる?」
「はーい」
甲夜は学校が早く終わった日にはこうして顔を出して店を手伝ってくれる。俺と旦那の子供にしてはとっても優しくてできた娘だ。小さい頃からお手伝いとか好きで、小学生ながら料理も家事も接客もできるのでたいしたものだ。
「ママ、ただいま。今日、早く終わった~」
「おかえり、真白」
甲夜の一つ下の次女だ。甲夜がお手伝いが好きな反面、真白はあまりお手伝いなどは得意ではなかったりする。少しのんびり屋でドジだが、勉強は得意な秀才。直の遺伝子をかなり継いでいるのか見た目や頭の良さは直にそっくり。銀髪ビスクドール美少女と言われているので、今後が少し心配である。不埒な野郎共に誘拐とかされないだろうか。
「真白のクラスは父親参観だったから、パパね、仕事の合間に来てくれたよ」
「よかったな。この頃お父さんはお仕事で忙しかったから。あ、大丈夫だった?他のクラスは母親も来ていただろ」
「パパ、相変わらず他ママ達から言い寄られてた。だから真白、他ママ達追い払ったよ。途中で甲夜も5年生のクラスから来てくれた」
「ありがとう二人とも。お父さんも陰で感謝しているよ」
四天王の矢崎直じゃなくなっても、あの容姿とオーラじゃ異性が放っておいても寄ってくるのでいつも苦労している。少し前なんて旦那に本気で惚れたバカママ一派から嫌がらせされたり、離婚しろと脅されたり、NTRしてやる発言をされて困っていたのだ。モテすぎる旦那を持つ苦労は一生続きそうである。
「お母さん、そろそろ直樹と甲梨の保育園のお迎えの時間です。ウチがお迎えに行ってきましょうか」
「今日は大丈夫だよ。お迎えはお父さんがしてくれるから」
直樹と甲梨は真白の後に生んだ双子だ。まだまだ保育園に通う5歳である。
「その直樹と甲梨も、もうすぐおにいちゃんおねえちゃんになるんだよなぁ……」
「え?」
「それって」
俺は母親らしく慈愛に満ちた顔で微笑んだ。
*
大きな商談が一段落し、今日は簡単な打ち合わせと会議だけにしてもらった。相変わらず矢崎財閥社長というクソ多忙な日々は身が削れる思いだが、大好きな妻や子供達がいると思うと魑魅魍魎ども相手でも頑張れる。
世界的不動産王やらIT企業王やら、果ては某国の大統領相手だろうがどうってことはない。数年前までは海外への出張も多かったので、今年は家族と過ごせる日をできるだけ多く取りたい。
「父親参観、楽しかったみたいですね」
久瀬がタブレットに視線を向けながらオレの雰囲気に気付いた。
「真白がオレのために【お父さんのお仕事】という題で作文を読んでくれたんだ。その作文の中で部下に指示を出しているパパがカッコイイって言ってくれてな……まあ、うん。父親としていろんな意味で滾った」
「直様……顔がキモいです」
そうは言っても顔がにやけてしまう。可愛い娘から好かれて嬉しくないはずがない。さすがに財閥社長をしているなんて言わないようにと口止めしてあるので、表向きは数学教師と通している。
ただその日は、他のクラスも授業参観をしていたのか他の母親共に絡まれて面倒だった。どこの学校の教師なのとしつこく訊かれてウザかったが、真白と甲夜が追い払ってくれて事なきを得た。ああいう母親共相手は娘相手の方が引き下がってくれるので助かる。
「昔の直様を知っていると、アホみたいに愛妻家で子煩悩になるとは思いもよりませんでしたよ」
甲斐と出会ってから人生が変わったし、甲斐や娘以外の女を見ても能面が歩いているとしか思えなくなったからな。
「そういえばお前の末の子供もそろそろ物心がつく頃じゃないか。仕事に精を出すのもいいが、子供に顔を忘れられないようにな」
「……わかっていますよ。自分の子供は可愛いですからね。できるだけ少ない休日の間に子供と触れ合っておきます」
甲夜が生まれた頃はまだ10代だったからそこまで海外の高飛びも多くなかった。しかし、真白が生まれて三年経った頃、海外出張が多くて真白に顔を忘れられるという悲劇に嘆いた。その後は自分が父親アピールをしまくってなんとか顔を覚えてもらったが、直樹と甲梨が生まれた時も危なかったな。
「おとうさんっ!」
「パパ!」
お迎えに呼ばれた可愛い子供達がバタバタ走ってくる。ああ、可愛いな我が子達は。
「保育園、楽しいか?」
「うん!今日ね、おなじりんごぐみの子とサッカーしたよ。ぼくゴールきめたんだ~!」
「すごいな。オレに似て運動神経がいいな」
「わたしはほかのくらすの男の子にかこまれてたいへんだったわ。女の子のお友達がほしいのにどうしてか男ばっか寄ってくるの。私の好きな男のタイプはパパなのにやんなっちゃう。まあ、面倒だから全員わたしのトリマキにしてあげたけど」
「はは、全員しもべか。さすがはオレの血を引いてるだけあるな」
甲梨はオレに雰囲気や性格が似てとてもマセた考えの子だ。見た目は甲斐にそっくりだが、中身がオレのようにSっ気があって男を手玉に取るので将来が少し心配だ。その一方、直樹は純粋培養を絵に描いた好奇心旺盛な子供だ。オレに顔がそっくりなせいでミニ矢崎直だとか言われているらしい。将来はオレのようにはならずに普通にまっすぐに育ってほしい。
「お父さんはお仕事おやすみ?」
「ああ。今日と明日はお休みだ」
「「わーい」」
二人を抱き上げて頭を撫でるとくすぐったそうだ。久しぶりの休みだからたくさん子供達と遊んであげよう。ついでに奥さんとも夜に。
「んまぁ、黒崎さん!お久しぶりですぅ!今日はお父さんがお迎えなんですねえ~」
他の母親や保育園の若い保育士が頬を染めてこちらを見てくる。いつもの事ながら鬱陶しいが、子供らのために問題は起こしたくない。魑魅魍魎共に向ける営業スマイルを張り付けた。
「いつも子供達を見てくださりありがとうございます」
「ああん、いいの。黒崎さんの頼みならなんだって聞いちゃいますぅ」
「それにしても矢崎直様にそっくりですけど、親戚か何かなんですの?」
「よく言われますけど親戚でもなんでもないですよ。ただのしがない平民教師です。あんな偉そうな俺様とは正反対な性格なもので」
自分を卑下したくなるのはオレが矢崎直というキャラを好きではないからだ。あんなドSで俺様キャラの何がいいんだか世間の女達の趣味の悪さに呆れるものだ。
*
「ママ、ただいま」
「お母さーんただいま~」
直が可愛い双子を連れて帰ってきた。
「お帰り。甲梨、直樹」
二人に手を洗うように促し、後から来た旦那にも笑顔で出迎える。結婚当初は恥ずかしかったお帰りのキスも慣れたものだ。
「この頃は帰りが早いんだな」
「大型契約が終わった所だから最近はそれほど忙しくないんだ。しばらくはゆっくりできる。それにもうすぐ大型連休だろ?久しぶりに家族で旅行にでも行こうかって考えてる」
「それはいい考えだな。最近お互い忙しかったし、子供達も喜ぶと思う」
「じゃあ家族でハワイにでも行くか。久瀬に予約をとってもらうよ。当然飛行機はファーストクラスで」
子供達がハワイ!と、目をキラキラさせて喜んでいる。大好きな父親と海外旅行なんてなかなかない機会だからな。たまにはいいかもしれない。
「でも、ハワイってたかいんじゃないの?なん万円?」
「ばかねー直樹。パパはお偉い社長なんだからめちゃんこ稼いでるにきまってるじゃない」
「そうだ。こういう時のためにお父さんはたくさん稼いでるから使わないと損だからな。旅行する時くらい贅沢しよう」
普段は倹約生活をしているせいか子供達の金銭感覚は貧乏寄りである。俺がそういう教育をしているのもあるし、父親の直が進んで自分の仕事の事を話したがらないせいでもあるが、お金の大事さを学んでもらうためにあえて質素な生活をしているのだ。
「みんなに報告があります。実は新しい家族が増える事になりました」
「え!家族?」
「かぞくって……赤ちゃん?」
「そう。お母さんのお腹に新しい家族がいるんだよ」
「あ、そういえばさっきママ、直樹と甲梨がおにいちゃんおねえちゃんになるって言ってた」
「やっぱりそうだったんだね。ウチ、なんとなくそうだと思ってました」
子供達がわくわくした様子でお腹を撫でにきた。まだ目立った膨らみはないんだけどみんな楽しみのようだ。
「ぼく、おにいちゃんになるの?」
「そうだよ直樹。お兄ちゃんらしく嫌いなピーマンも食べれるようにならないとね」
「ピーマン……うん!ぼく、おにいちゃんになる!がんばってたべれるよーになる!」
「直樹だけじゃしんぱいだから私もおねえちゃんになってあげる」
新しい家族が増えて五人の子持ちか。ますます賑やかになりそうだ。
「少し前、子供達を母さん達に預けて二人でデートに行ったその晩のだろうな。中出ししまくったし」
「っでかい声で中出しいうな」
子供達に訊かれたらどうするんだと呆れながら睨むと、子供達がニコニコしている。
「お父さんとお母さんは仲良しです。ウチ、友達に言われました。羨ましいって」
「うん、真白も思う。パパはママが超大好きだよね。愛妻家ってやつ」
「ああ、大好きだよ。お前達も大好きだけど、一番はやっぱりお母さんなんだ」
と言いながら、抱き着いてくるデレ顔の旦那。こう言われて悪くないのでとりあえず撫でておいた。
「夫婦になってもすなを吐くほどラブラブってやつね。普通は数年でケンタイキってのがくるけど、パパとママがいまだにラブラブならあたしはいうことないよっ」
甲梨はどこでそんな言葉を覚えてくるんだ。
「ママ、わたし小腹がすいた~」
「ぼくも~」
「ああ、そろそろおやつの時間にしようか。冷蔵庫にかぼちゃプリン作ってあるから食べよう」
スイーツ大好きな真白や甲梨が我先にとバタバタ走る。直樹も急ぎすぎて転んで甲夜になだめられている。これが黒崎家の日常だ。
「甲斐、幸せ?」
「幸せだけど直は?」
「もちろん……幸せだよ、オレの可愛い奥さん」
子供達に隠れてキスをしあう。夜まで我慢できないとか言いそうだが、まだ昼過ぎだし子供達もいるのだからどうか我慢してもらいたい。
きっとこのラブラブな関係は何年経っても変わらない。中年になって老人になってもずっと。
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