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平和な世界線in女体化
女になっちまいました12
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※他人の性的描写アリ
「なんてむごい殺し方っ……ありえないっ!」
「ありえない?クク……なにが?お前も同じような事を裏で殺ッてたんだろ。男じゃなくて、オレに近づいた女相手にな。しかも、あろうことかオレの甲斐にまで同じようなやり方でけしかけた」
直の瞳の奥の瞳孔が開いている。その瞳は躊躇いもなく何人も葬ってきたような殺戮者のもの。この三人の死刑執行人は彼だろう事を物語る。死なない程度に痛めつけ、むごたらしい拷問を繰り返し、最期は嗤いながら地獄へ送ったと言わんばかりだ。
しかし、網走にとってはそれどころではなかった。
「ちょっと、おれの甲斐ってどういう」
「最後まで聞けよクソ女」
直は視線だけで網走を黙らす。その凄絶な威圧感に網走は顔を一瞬だけ強張らせて押し黙る。
「で、お前はこの写真のような末路とまではいかずとも、犯しに犯して精神的に狂わせて、自殺と見せかけて殺してきた。今までの手口はみんなそうだったからな」
「な、なにを……証拠もなしにそんな……」
「お前が裏で動いていた事は拓実の部下から事細かに聞いた。証拠ならみんなあがっている。橋田組のトップを黙らせて潰してな。ほぼ壊滅だ。そんでトップの組長は無様に命乞いしてたよ。情報はなんでもくれてやるから金と命だけはお助けをってな。青龍会の名前を出せばビビってやがった。それでも全員を根こそぎ屈服させて全てを吐いてもらうのに数日かかったがな」
「なっ……バカな。あ、あの巨大な橋田組を数日で潰したなんてっ……ッ!」
網走はわなわな震えている。矢崎財閥や青龍会が恐ろしい権力を持っている事は知っているが、それなりの大きさを持つ橋田組さえ手玉に取る事に驚く。
「甲斐のためならなんだって潰す。危害を加えた奴は抹殺だ」
直は秘書の久瀬や部下を目配せして顎で呼び、彼らは袋からいろいろ取り出して見せている。まずは証拠と言わんばかりの橋田組との契約書をテーブルに置き、それから甲斐を襲っている最中に撮ったカメラのフィルム。自宅にある筈の取引に使ったアタッシュケースと中に入っていた薬の注射針。薬の成分が書かれた書類と今まで排除してきた女のプロファイリングなどが順に並べられていく。
自分の知らぬ間にいつの間にか自宅に侵入されていたようで、網走の顔は徐々に凍っていく。しかも、網走が今まで裏で犯してきた数々の犯罪歴や醜聞が事細かに記載された資料まで用意されており、それに簡単に目を通せば網走は言葉を失った。
付き合った男の遍歴から始まり、数々の恋人持ち男を色仕掛けで略奪してきた事、気にくわない女を泡落ちにさせて金を稼がせた事、その上イジメ抜いて殺した事、醜い顔だった自分がこっそり整形した事、セックスの最中によく嗜むドラッグの事など、知られたくない過去から現代に至るまでの悪行や性癖などがまとめられていた。
極めつけは助手の男がやってきて、タブレットを見せた。画面には動画のページが開いており、助手の男が再生をクリックした。
『あんっ、組長の、すきぃ』
『ははは、わしは誰よりも巨根だと有名だからな』
画面には網走が裸で小太りのハゲ散らかした男の上に跨って動いている。一定のリズムで揺れながら漏れる耳障りな声はまごう事なき網走の嬌声。その背後には数人の全裸の男達もいて、気分次第でいろんな男と交互に入り乱れているようだ。網走が橋田組とのパイプを持つために、組長を筆頭とした乱痴気パーティーであった。
「っ、いやあああ!みないでえっ!!これはちがうの!私じゃないのよっ!」
網走は真っ赤な顔で悲鳴をあげてその動画を止めようとするが、有能な直の部下らに阻まれて腕を押さえつけられた。
『ねえ、これでいつものお薬、くれるでしょ?組長さんのコネと実力のおかげでぇ、女優として成り上がれたしぃ、今のハリウッドスターとしての地位も確固たるものになった。今回もぉ、組長さんの力が必要なのぉ』
『ああ。もちろんだとも。梨華ちゃんのお気に召さない子がいるのかな?』
『うん、そぉなの。ムカつく女が、っ、いるの。あたしの、大事なものを、略奪する、女がぁ。だから、こしめてあげたいのぉ』
画面の網走は腰を動かしながら憎き存在を口にする。日付と時間と会話内容から、時期的に架谷甲斐を襲う数時間前のものだという事がわかる。
『梨華ちゃんの大事な物を略奪するなんてとんでもない小娘だなぁ』
『架谷甲斐っていう阿婆擦れなの。だから今回も幹部を三人くらい貸してほしいのっ。いいでしょぉ?あたしと組長さんの仲だしっ。あの薬、すっごい効果があるからぁ』
画面の網走が組長の首に両腕を巻き付けて腰をさらに動かす。
『おお、そんなに動かないでくれ。すぐに楽しみが終わってしまう』
『じゃあ、後でまたいっぱいシテいいから、お願い、聞いてくれるわよね?』
『そこまでおねだりをされては仕方がないなぁ。三人ほど好きな部下を選ぶといい』
『うれしい~組長さんのそういう所大好きっ。おちんぽもっ』
『梨華ちゃんはセックスが本当に大好きだなぁ。今日はいっぱいがんばっちゃうぞぉ~』
『あんっ、組長さんたらぁ!ああっん、好きいぃ』
そこで動画は終わった。網走は恥ずかしいやら青い顔やらで茫然自失に陥っている。先程まで羞恥心などで悲鳴をあげていたが、猿轡をかませられて声もあげられない。
「大変見苦しいにも程がありますね。これを撮るのに何度も吐き気を催しましたが、証拠としては丁度いいものでしょう」
助手の男は疲れたように苦笑する。彼がこの動画を隠れて撮っていたらしい。高身長で顔は四天王並にとても整っており、実力のある諜報員らしい。直の知り合いのようだ。
「ご苦労。お前ほどの優秀なエージェントはなかなかいない。さすがだな、センセ」
「お褒めの言葉ありがとうございます、次期社長。ですが、あなたの命令はもう金輪際聞きません。今回は彼……いえ、彼女を助けるために動いたのであって、私が命令をきくのは彼女だけですからそこは勘違いしないでください」
「フ……お前は甲斐の忠実な犬だものな。甲斐の命令でしか動かない。引き続き番犬でいるように頼むな、センセ」
「むろん、言わずもがな」
助手の男は恭しく頭を下げて一歩後ろへ下がった。
「じゃ、次の動画」
「ッ――!」
それから次の日の行動から今日までの痴態の動画まで見せつけられた。すべてエージェントの彼が監視して撮った物だろう。直達からすれば全くもって気持ちが悪くて見たくもないが、網走に拷問としてひたすら見せつけた。
毎日お盛んでどれも違う男。汚らしい中年の男に簡単に股を開くその姿は、さすがの部下達も引いていた。
まさか、ここまで調べ尽くされているなんて想定外どころではない。どれもが悲鳴をあげて泣いて絶叫したくなるものばかり。探偵や警察なんて生ぬるい。甲斐を襲う前からの動きや今日までの行動が、ほぼ動画で全て記録されていたのだ。
「お前、オレを好きだとかぬかしている割には本当に節操がないな。性欲強すぎだろ。オレも人の事は言えないが、自分の利益や目的のためにはあらゆる薄汚いおっさんとここまでやるなんてな……実に汚らしい」
愛しい直にまでドン引きされて、網走はもう言い訳のしようがない。猿轡越しからも恥ずかしさと屈辱に悲鳴をあげすぎたせいか、網走はもう声が枯れて疲労で疲れ切っていた。
「発言を許可する。外してやれ」
直が部下に命令を出すと、網走の猿轡が外される。
「な、直……あ、あたしは、た、ただぁ……あなたに好かれたくて、あなたのためを思って」
「あなたのためを思って?冗談じゃない」
直が静かに憤怒を露にし始めた。
「オレのためだと言いながら自分のためだろ。自分の浅ましい欲望のためだろうが。そのためにオレの愛しい甲斐にまで手を出して……許すわけがない」
「お、おれのいとしいかい……って……」
「オレの愛しくて仕方がない可愛い恋人。それをお前は心も体も傷つけた。暴力どころかヤクで恐怖を植え付け、男数人でマワして殺そうとした。甲斐がどれだけ屈辱だったか、恐怖したか、お前にそれがわかるか?どういう事かわかるか?」
直の視線が一気に鋭く細まり、周りの空気が数度冷え込む。網走はその恐ろしい直の威圧感と表情に恐怖する。
「ひ……」
「万死に値したい所だがそれじゃあ生ぬるい。お前には生き地獄を味わってもらう。死ぬ事より辛い、生きながらの苦痛に悶え苦しむがいい」
「い、いや……そんな……ゆ、ゆるして……あ、あたしは……あなたを好きだからっ!」
「好きだから、ねぇ……」
直は滑稽だと嗤う。
「それにあたしは正之様の愛人よ。あたしをどうこうしたら正之様が……」
「クク、本当に片腹痛い。はははは」
直は蔑んだ目で見下ろしたまま笑いがとまらないといった様子。
「正之の愛人だからそれがどうした。正之など関係ない。あの男は自分の損得でしか動かない冷血人間。根っからの仕事人間で、たかが愛人ごときのクズなお前を庇護する必要がどこにある。性欲処理の駒として利用されていた事はお前がよく知っているはずだ」
「っ……」
「それにな、オレを好きだからってなんだってしてもいいと?」
網走は言葉に詰まる。
「好きだから甲斐を傷つけていい理由がどこにあるというんだ。貴様に何の権限がある。自分独りよがりの感情を押し付けられてオレにとっては甚だ迷惑だ。勝手に貴様ら女どもはオレを好きだと言って一方的に近づき、脈なしだと気づけば今度はオレに近づく女を抜け駆けはゆるさんだなんだとほざいて、勝手に排除しては満足して馬鹿らしいと思っていた。報われないから徒党を組んでの自己満てやつか。滑稽だな。そして、オレを好きだと言いながらもオレが選んだ人でさえケチをつけて排除しようとする。オレが誰を好きになろうと、誰を求めようと貴様らが選ぶ権利などないというのに」
「あ、あたしなら……あなたを……し、しあわせに……あなたをわかって与えてあげられて……」
「他人を傷つけてまで略奪しようとする女と一緒になった所で幸せになれるのか?オレだったら願い下げだわ。そんな性格悪い女と一緒になった所で自分の品位と人格を下げるだけだからな。そもそも、与えてあげるとか、わかってあげられるとか、口先だけ立派な事をほざく女ほど信用ならないと知っている。自分は他人とは違うとか、自分なら満足させてあげられるだとか、自信があるのは大いに結構。だが、そういう女ほど自分本意の下心丸出しで、オレ自身の本意などおかまいなしだ。結局はオレ自身より、目先の利益と恋してる自分に酔ってるだけ。自慢と虚栄心が見え見えなんだよ」
直は厳しい顔から優しい顔に切り替えた。
「でも、甲斐だけは違う。口は悪いし、とりたてて美人でもないし、脳筋のバカだけど、甲斐はお前みたいに欲望丸出しじゃない。いつも自然体で、誰に対しても平等。財閥の御曹司という目ではなくて、矢崎直として怖気づきもせずに真正面からオレにぶつかってきてくれた。本当のオレを知っても変わらずにいつも通りな態度で接してくれた。そんな甲斐にオレは惹かれた。お前の言うあなたのためを思ってとか、そんな低次元なモノなんかじゃないんだよ。いたって単純で純粋に想いあってる」
難しく考える必要なんてない。本能的にそう思うのだから。
「ただ、お互いにそばにいたい。少しでも長く一緒にいたい。一緒にいないと寂しい。オレと甲斐の関係はそれだけなんだ」
「ッ……あ、あああ……」
網走は失意のどん底に落ちたようにその場で脱力する。床にぺたんと座り込み、そして敗北を痛感する。これ以上のない架谷甲斐への愛に絶望した。
「この女を連れていけ」
「「はっ」」
部下二名が網走を両隣で挟み、暴れない様に腕で固定する。
「い、いやぁあ!あたしは直だけなのよッ!!あんな女なんかやめてあたしだけのものになってッ!!ずっとあたしの方があんな女より直を求めているのにッ!!」
この期に及んで網走は甲斐を否定する。子供のように泣きじゃくり、激しく暴れている。
「見苦しいな。呆れて言葉も出てこない」
「お、お願いよ!直があたしの全てなのッ!愛しているのよッ!」
「全て、ねぇ……。そんなにオレが好きなら……全てだというなら、慈悲をくれてやろう」
直はしゃがみこみ、床に座り込んでいる網走の顎を手袋越しから掴んで持ち上げる。
「え……」
そして、一瞬だけ汚いゴミを見るかのように見た後、ニッと満面の笑みを見せた。
「本当は生き地獄を与えた後に獣の餌にでもするつもりだったが、考えが変わった。あまりにお前がオレへの愛を叫ぶものだからな。お前をオレが直々に雇ってやるよ」
「……やと、う……?」
「そう。お前が好きなキラキラしたピンク色だらけの店で可愛がってやる。嬉しいだろう?大好きなオレに尽くせて」
直の満面の笑みの中に隠れている冷たさに、網走はガタガタ震えた。
「そこで24時間休みなしでオレへの愛を叫んでいろ」
「なんで、なんでそんな店……」
「オレからの愛がほしいんだろう?オレが全てなんだろう?だから大好きなオレに貢献すると思ってオレが傘下にしている店でご奉仕だ。お前が大好きなセックスが毎日できて、オレの売り上げにも貢献できる。これぞお前の天職であり、オレも嬉しい。お互いWin-Winになれる。悪くないだろ」
口元は笑っているのに、淡々と話す直の声には全く抑揚が感じられず、親しみが一切感じられない。
「ああ、言っておくがただのソープとはわけが違う。表向きは大手金融会社として普通にまわっているフロント企業だが、裏では警察すら介入できない無法地帯な暴力団の店だ。そのとある支店の一つが被虐モノが好きな連中が集まってくるらしいんだよ。お前も好きだろう?甲斐を襲った時の映像も、ヤクを使った被虐モノと称して売ろうとしていたもんな。よかったなァ、オレの傘下にしている下請けで働けて。そこで殴られ続けて精神狂って腹上死するか、そこの客の病気もらって死ぬかは貴様の勝手だが、まあがんばれよ。健闘を祈ってる」
直は立ち上がり、改めて部下に連れていけと命令する。
「いや、そんな所で嫌ッ!!許してっ!許してぇっ!あたしが悪かった!もうあんな事しないからっ!あの子にも酷い事しないからっ!」
「うるさいからそのゴミを黙らせろ」
冷酷な直の一言で、部下達は網走の腕に薬を打ちこんだ。甲斐に打ちこんだものと同じものを。たちまち網走は動かなくなり、部下達によって連れていかれた。続けざまに直はスマホを取り出し、別の場所へ電話を掛ける。
「ああ、オレだ。その女は例の支店に送った。そっちは終わったか?」
『丁度終わったとこー。あの網走の一族諸共反社会的地位に送ったよ。網走の家系って代議士とか議員だらけの一家だったけどさ、大物議員だからって今までいろいろ悪さしてて調子に乗っていたみたいだから、お灸すえてあげちゃった。TVつけたらわかると思うけど』
そうして贔屓にしているバーの店長がTVをつけてくれると【網走議員の脱税や横領などの数多の犯罪が発覚】というニュースが大々的に報じられている。網走の父親らしき議員が、東京地検特捜部に連行されている一部始終が映像で流れており、直は当然の末路だなと淡々とそれを眺めている。
『でも支店送りだなんて生ぬるいねえ。オイラだったらもっと過激にやるのに。だって甲斐ちゃんにあんな事したんだから、それがどれだけの大罪かもっともっと身を持ってわからせるべきでしょ』
「オレは貴様ほど暴力好きなキチガイじゃない」
『直だって似たようなものじゃない。甲斐ちゃんを襲った三匹のゴミ共をえぐい拷問で嬲り殺しにしたくせに。ま、それよりオイラ、今からその女の身柄引き渡し準備をしてくるから、くれぐれもまだ商品に傷をつけないように。元ハリウッド女優なんて支店からすれば御大層な商品となるからさ。んじゃ』
一方的に電話が切れると、一先ず大仕事を終えてふうっと息を吐く。
今日は仕事を早く切り上げて甲斐に逢いに行こう。はやく逢いたい。
「なんてむごい殺し方っ……ありえないっ!」
「ありえない?クク……なにが?お前も同じような事を裏で殺ッてたんだろ。男じゃなくて、オレに近づいた女相手にな。しかも、あろうことかオレの甲斐にまで同じようなやり方でけしかけた」
直の瞳の奥の瞳孔が開いている。その瞳は躊躇いもなく何人も葬ってきたような殺戮者のもの。この三人の死刑執行人は彼だろう事を物語る。死なない程度に痛めつけ、むごたらしい拷問を繰り返し、最期は嗤いながら地獄へ送ったと言わんばかりだ。
しかし、網走にとってはそれどころではなかった。
「ちょっと、おれの甲斐ってどういう」
「最後まで聞けよクソ女」
直は視線だけで網走を黙らす。その凄絶な威圧感に網走は顔を一瞬だけ強張らせて押し黙る。
「で、お前はこの写真のような末路とまではいかずとも、犯しに犯して精神的に狂わせて、自殺と見せかけて殺してきた。今までの手口はみんなそうだったからな」
「な、なにを……証拠もなしにそんな……」
「お前が裏で動いていた事は拓実の部下から事細かに聞いた。証拠ならみんなあがっている。橋田組のトップを黙らせて潰してな。ほぼ壊滅だ。そんでトップの組長は無様に命乞いしてたよ。情報はなんでもくれてやるから金と命だけはお助けをってな。青龍会の名前を出せばビビってやがった。それでも全員を根こそぎ屈服させて全てを吐いてもらうのに数日かかったがな」
「なっ……バカな。あ、あの巨大な橋田組を数日で潰したなんてっ……ッ!」
網走はわなわな震えている。矢崎財閥や青龍会が恐ろしい権力を持っている事は知っているが、それなりの大きさを持つ橋田組さえ手玉に取る事に驚く。
「甲斐のためならなんだって潰す。危害を加えた奴は抹殺だ」
直は秘書の久瀬や部下を目配せして顎で呼び、彼らは袋からいろいろ取り出して見せている。まずは証拠と言わんばかりの橋田組との契約書をテーブルに置き、それから甲斐を襲っている最中に撮ったカメラのフィルム。自宅にある筈の取引に使ったアタッシュケースと中に入っていた薬の注射針。薬の成分が書かれた書類と今まで排除してきた女のプロファイリングなどが順に並べられていく。
自分の知らぬ間にいつの間にか自宅に侵入されていたようで、網走の顔は徐々に凍っていく。しかも、網走が今まで裏で犯してきた数々の犯罪歴や醜聞が事細かに記載された資料まで用意されており、それに簡単に目を通せば網走は言葉を失った。
付き合った男の遍歴から始まり、数々の恋人持ち男を色仕掛けで略奪してきた事、気にくわない女を泡落ちにさせて金を稼がせた事、その上イジメ抜いて殺した事、醜い顔だった自分がこっそり整形した事、セックスの最中によく嗜むドラッグの事など、知られたくない過去から現代に至るまでの悪行や性癖などがまとめられていた。
極めつけは助手の男がやってきて、タブレットを見せた。画面には動画のページが開いており、助手の男が再生をクリックした。
『あんっ、組長の、すきぃ』
『ははは、わしは誰よりも巨根だと有名だからな』
画面には網走が裸で小太りのハゲ散らかした男の上に跨って動いている。一定のリズムで揺れながら漏れる耳障りな声はまごう事なき網走の嬌声。その背後には数人の全裸の男達もいて、気分次第でいろんな男と交互に入り乱れているようだ。網走が橋田組とのパイプを持つために、組長を筆頭とした乱痴気パーティーであった。
「っ、いやあああ!みないでえっ!!これはちがうの!私じゃないのよっ!」
網走は真っ赤な顔で悲鳴をあげてその動画を止めようとするが、有能な直の部下らに阻まれて腕を押さえつけられた。
『ねえ、これでいつものお薬、くれるでしょ?組長さんのコネと実力のおかげでぇ、女優として成り上がれたしぃ、今のハリウッドスターとしての地位も確固たるものになった。今回もぉ、組長さんの力が必要なのぉ』
『ああ。もちろんだとも。梨華ちゃんのお気に召さない子がいるのかな?』
『うん、そぉなの。ムカつく女が、っ、いるの。あたしの、大事なものを、略奪する、女がぁ。だから、こしめてあげたいのぉ』
画面の網走は腰を動かしながら憎き存在を口にする。日付と時間と会話内容から、時期的に架谷甲斐を襲う数時間前のものだという事がわかる。
『梨華ちゃんの大事な物を略奪するなんてとんでもない小娘だなぁ』
『架谷甲斐っていう阿婆擦れなの。だから今回も幹部を三人くらい貸してほしいのっ。いいでしょぉ?あたしと組長さんの仲だしっ。あの薬、すっごい効果があるからぁ』
画面の網走が組長の首に両腕を巻き付けて腰をさらに動かす。
『おお、そんなに動かないでくれ。すぐに楽しみが終わってしまう』
『じゃあ、後でまたいっぱいシテいいから、お願い、聞いてくれるわよね?』
『そこまでおねだりをされては仕方がないなぁ。三人ほど好きな部下を選ぶといい』
『うれしい~組長さんのそういう所大好きっ。おちんぽもっ』
『梨華ちゃんはセックスが本当に大好きだなぁ。今日はいっぱいがんばっちゃうぞぉ~』
『あんっ、組長さんたらぁ!ああっん、好きいぃ』
そこで動画は終わった。網走は恥ずかしいやら青い顔やらで茫然自失に陥っている。先程まで羞恥心などで悲鳴をあげていたが、猿轡をかませられて声もあげられない。
「大変見苦しいにも程がありますね。これを撮るのに何度も吐き気を催しましたが、証拠としては丁度いいものでしょう」
助手の男は疲れたように苦笑する。彼がこの動画を隠れて撮っていたらしい。高身長で顔は四天王並にとても整っており、実力のある諜報員らしい。直の知り合いのようだ。
「ご苦労。お前ほどの優秀なエージェントはなかなかいない。さすがだな、センセ」
「お褒めの言葉ありがとうございます、次期社長。ですが、あなたの命令はもう金輪際聞きません。今回は彼……いえ、彼女を助けるために動いたのであって、私が命令をきくのは彼女だけですからそこは勘違いしないでください」
「フ……お前は甲斐の忠実な犬だものな。甲斐の命令でしか動かない。引き続き番犬でいるように頼むな、センセ」
「むろん、言わずもがな」
助手の男は恭しく頭を下げて一歩後ろへ下がった。
「じゃ、次の動画」
「ッ――!」
それから次の日の行動から今日までの痴態の動画まで見せつけられた。すべてエージェントの彼が監視して撮った物だろう。直達からすれば全くもって気持ちが悪くて見たくもないが、網走に拷問としてひたすら見せつけた。
毎日お盛んでどれも違う男。汚らしい中年の男に簡単に股を開くその姿は、さすがの部下達も引いていた。
まさか、ここまで調べ尽くされているなんて想定外どころではない。どれもが悲鳴をあげて泣いて絶叫したくなるものばかり。探偵や警察なんて生ぬるい。甲斐を襲う前からの動きや今日までの行動が、ほぼ動画で全て記録されていたのだ。
「お前、オレを好きだとかぬかしている割には本当に節操がないな。性欲強すぎだろ。オレも人の事は言えないが、自分の利益や目的のためにはあらゆる薄汚いおっさんとここまでやるなんてな……実に汚らしい」
愛しい直にまでドン引きされて、網走はもう言い訳のしようがない。猿轡越しからも恥ずかしさと屈辱に悲鳴をあげすぎたせいか、網走はもう声が枯れて疲労で疲れ切っていた。
「発言を許可する。外してやれ」
直が部下に命令を出すと、網走の猿轡が外される。
「な、直……あ、あたしは、た、ただぁ……あなたに好かれたくて、あなたのためを思って」
「あなたのためを思って?冗談じゃない」
直が静かに憤怒を露にし始めた。
「オレのためだと言いながら自分のためだろ。自分の浅ましい欲望のためだろうが。そのためにオレの愛しい甲斐にまで手を出して……許すわけがない」
「お、おれのいとしいかい……って……」
「オレの愛しくて仕方がない可愛い恋人。それをお前は心も体も傷つけた。暴力どころかヤクで恐怖を植え付け、男数人でマワして殺そうとした。甲斐がどれだけ屈辱だったか、恐怖したか、お前にそれがわかるか?どういう事かわかるか?」
直の視線が一気に鋭く細まり、周りの空気が数度冷え込む。網走はその恐ろしい直の威圧感と表情に恐怖する。
「ひ……」
「万死に値したい所だがそれじゃあ生ぬるい。お前には生き地獄を味わってもらう。死ぬ事より辛い、生きながらの苦痛に悶え苦しむがいい」
「い、いや……そんな……ゆ、ゆるして……あ、あたしは……あなたを好きだからっ!」
「好きだから、ねぇ……」
直は滑稽だと嗤う。
「それにあたしは正之様の愛人よ。あたしをどうこうしたら正之様が……」
「クク、本当に片腹痛い。はははは」
直は蔑んだ目で見下ろしたまま笑いがとまらないといった様子。
「正之の愛人だからそれがどうした。正之など関係ない。あの男は自分の損得でしか動かない冷血人間。根っからの仕事人間で、たかが愛人ごときのクズなお前を庇護する必要がどこにある。性欲処理の駒として利用されていた事はお前がよく知っているはずだ」
「っ……」
「それにな、オレを好きだからってなんだってしてもいいと?」
網走は言葉に詰まる。
「好きだから甲斐を傷つけていい理由がどこにあるというんだ。貴様に何の権限がある。自分独りよがりの感情を押し付けられてオレにとっては甚だ迷惑だ。勝手に貴様ら女どもはオレを好きだと言って一方的に近づき、脈なしだと気づけば今度はオレに近づく女を抜け駆けはゆるさんだなんだとほざいて、勝手に排除しては満足して馬鹿らしいと思っていた。報われないから徒党を組んでの自己満てやつか。滑稽だな。そして、オレを好きだと言いながらもオレが選んだ人でさえケチをつけて排除しようとする。オレが誰を好きになろうと、誰を求めようと貴様らが選ぶ権利などないというのに」
「あ、あたしなら……あなたを……し、しあわせに……あなたをわかって与えてあげられて……」
「他人を傷つけてまで略奪しようとする女と一緒になった所で幸せになれるのか?オレだったら願い下げだわ。そんな性格悪い女と一緒になった所で自分の品位と人格を下げるだけだからな。そもそも、与えてあげるとか、わかってあげられるとか、口先だけ立派な事をほざく女ほど信用ならないと知っている。自分は他人とは違うとか、自分なら満足させてあげられるだとか、自信があるのは大いに結構。だが、そういう女ほど自分本意の下心丸出しで、オレ自身の本意などおかまいなしだ。結局はオレ自身より、目先の利益と恋してる自分に酔ってるだけ。自慢と虚栄心が見え見えなんだよ」
直は厳しい顔から優しい顔に切り替えた。
「でも、甲斐だけは違う。口は悪いし、とりたてて美人でもないし、脳筋のバカだけど、甲斐はお前みたいに欲望丸出しじゃない。いつも自然体で、誰に対しても平等。財閥の御曹司という目ではなくて、矢崎直として怖気づきもせずに真正面からオレにぶつかってきてくれた。本当のオレを知っても変わらずにいつも通りな態度で接してくれた。そんな甲斐にオレは惹かれた。お前の言うあなたのためを思ってとか、そんな低次元なモノなんかじゃないんだよ。いたって単純で純粋に想いあってる」
難しく考える必要なんてない。本能的にそう思うのだから。
「ただ、お互いにそばにいたい。少しでも長く一緒にいたい。一緒にいないと寂しい。オレと甲斐の関係はそれだけなんだ」
「ッ……あ、あああ……」
網走は失意のどん底に落ちたようにその場で脱力する。床にぺたんと座り込み、そして敗北を痛感する。これ以上のない架谷甲斐への愛に絶望した。
「この女を連れていけ」
「「はっ」」
部下二名が網走を両隣で挟み、暴れない様に腕で固定する。
「い、いやぁあ!あたしは直だけなのよッ!!あんな女なんかやめてあたしだけのものになってッ!!ずっとあたしの方があんな女より直を求めているのにッ!!」
この期に及んで網走は甲斐を否定する。子供のように泣きじゃくり、激しく暴れている。
「見苦しいな。呆れて言葉も出てこない」
「お、お願いよ!直があたしの全てなのッ!愛しているのよッ!」
「全て、ねぇ……。そんなにオレが好きなら……全てだというなら、慈悲をくれてやろう」
直はしゃがみこみ、床に座り込んでいる網走の顎を手袋越しから掴んで持ち上げる。
「え……」
そして、一瞬だけ汚いゴミを見るかのように見た後、ニッと満面の笑みを見せた。
「本当は生き地獄を与えた後に獣の餌にでもするつもりだったが、考えが変わった。あまりにお前がオレへの愛を叫ぶものだからな。お前をオレが直々に雇ってやるよ」
「……やと、う……?」
「そう。お前が好きなキラキラしたピンク色だらけの店で可愛がってやる。嬉しいだろう?大好きなオレに尽くせて」
直の満面の笑みの中に隠れている冷たさに、網走はガタガタ震えた。
「そこで24時間休みなしでオレへの愛を叫んでいろ」
「なんで、なんでそんな店……」
「オレからの愛がほしいんだろう?オレが全てなんだろう?だから大好きなオレに貢献すると思ってオレが傘下にしている店でご奉仕だ。お前が大好きなセックスが毎日できて、オレの売り上げにも貢献できる。これぞお前の天職であり、オレも嬉しい。お互いWin-Winになれる。悪くないだろ」
口元は笑っているのに、淡々と話す直の声には全く抑揚が感じられず、親しみが一切感じられない。
「ああ、言っておくがただのソープとはわけが違う。表向きは大手金融会社として普通にまわっているフロント企業だが、裏では警察すら介入できない無法地帯な暴力団の店だ。そのとある支店の一つが被虐モノが好きな連中が集まってくるらしいんだよ。お前も好きだろう?甲斐を襲った時の映像も、ヤクを使った被虐モノと称して売ろうとしていたもんな。よかったなァ、オレの傘下にしている下請けで働けて。そこで殴られ続けて精神狂って腹上死するか、そこの客の病気もらって死ぬかは貴様の勝手だが、まあがんばれよ。健闘を祈ってる」
直は立ち上がり、改めて部下に連れていけと命令する。
「いや、そんな所で嫌ッ!!許してっ!許してぇっ!あたしが悪かった!もうあんな事しないからっ!あの子にも酷い事しないからっ!」
「うるさいからそのゴミを黙らせろ」
冷酷な直の一言で、部下達は網走の腕に薬を打ちこんだ。甲斐に打ちこんだものと同じものを。たちまち網走は動かなくなり、部下達によって連れていかれた。続けざまに直はスマホを取り出し、別の場所へ電話を掛ける。
「ああ、オレだ。その女は例の支店に送った。そっちは終わったか?」
『丁度終わったとこー。あの網走の一族諸共反社会的地位に送ったよ。網走の家系って代議士とか議員だらけの一家だったけどさ、大物議員だからって今までいろいろ悪さしてて調子に乗っていたみたいだから、お灸すえてあげちゃった。TVつけたらわかると思うけど』
そうして贔屓にしているバーの店長がTVをつけてくれると【網走議員の脱税や横領などの数多の犯罪が発覚】というニュースが大々的に報じられている。網走の父親らしき議員が、東京地検特捜部に連行されている一部始終が映像で流れており、直は当然の末路だなと淡々とそれを眺めている。
『でも支店送りだなんて生ぬるいねえ。オイラだったらもっと過激にやるのに。だって甲斐ちゃんにあんな事したんだから、それがどれだけの大罪かもっともっと身を持ってわからせるべきでしょ』
「オレは貴様ほど暴力好きなキチガイじゃない」
『直だって似たようなものじゃない。甲斐ちゃんを襲った三匹のゴミ共をえぐい拷問で嬲り殺しにしたくせに。ま、それよりオイラ、今からその女の身柄引き渡し準備をしてくるから、くれぐれもまだ商品に傷をつけないように。元ハリウッド女優なんて支店からすれば御大層な商品となるからさ。んじゃ』
一方的に電話が切れると、一先ず大仕事を終えてふうっと息を吐く。
今日は仕事を早く切り上げて甲斐に逢いに行こう。はやく逢いたい。
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