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平和な世界線in女体化
女になっちまいました10
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「直様、この者達をいかがいたしますか」
「あとでオレが直々にやる。その後にあの女もだ。とりあえずそのゴミ共を別の場所へ身柄を移せ」
「畏まりました」
部下に命令を出し、この塵芥共の後処理をひとまず保留にする。当然急所は外しているので殺してない。オレ自ら断罪してやらなければ気が済まないからだ。
「甲斐……」
ズタボロな甲斐の乱れた服を簡単に直し、着ていたジャケットを羽織らせて抱き上げる。
「オレのせいで……ごめんな、甲斐っ。守ってあげられなくて……本当に……ごめん……」
甲斐の体を強く抱きしめて涙ながらに謝罪を繰り返す。本当に最悪な状況を招いてしまった。あと少し遅ければ甲斐はあのゴミ共に……ッ。
放課後、ずっとそばを離れなければよかった。あの女が何かする前に手を打っておくべきだった。おかげで甲斐は拉致されて、こんな風にひどい暴力を受けて、強姦までされかかって……
「甲斐に関わった奴も傷つけた奴も全員抹殺する。痛めつけて、苦しませて、生きて来た事を後悔させるくらいにむごたらしく殺してやる……」
拳を痛いほどギリギリ握り締めていた。知らぬ間に血が出ていた事に気付かずに拳は赤く染まっている。次々怒りがわいて出ては止まらなくて、この激情はしばらくは止まりそうもない。
「落ち付け、直。瞳孔開いてるぞ。部下すら怖がっている」
「少しは冷静になったら?でないと直君、今にも何人か殺しそうだし」
「いいんじゃない。女含めてゴミ共をどうせ殺すなら早い方がいいでしょ。オイラは盛大にやっちゃってほしいね」
拓実はオレと似たような感性なので、塵芥共をできるだけ惨たらしく葬り去る事に同意する。
「でもさ、今だけは甲斐ちゃんのそばにいてあげなよ。目覚めた時に直がそばにいないと寂しがるでしょ」
「そうだね。甲斐君はあんな目にあった。目覚めた時メンタルきっとヤバいと思う」
「一緒に病院に行ってやれ、直」
三人の最もな言葉に、そうせざるを得なくなったオレは深く溜息を吐いた。確かに甲斐のそばにいなければと思う。傷ついた甲斐の心を癒して慰めてやるのもオレの役目。
「……わかった。そいつらを勝手に殺すなよ。後でオレが地獄へ送る」
「わかってるよ。その時に思う存分にやればいいさ。オイラが裏でうまい具合に後処理しといてあげる。あの女も含めてさ」
その後、部下の車で甲斐を久瀬一族が経営している病院へ搬送させた。怪我の具合は大したことはなかったが、問題の体内に染み込んだ薬物が強力すぎるがゆえに、幻覚症状、思考力の低下、錯乱症状、不安や恐怖心が出ることが懸念されている。
たとえそれらの症状が出なくても、今後薬物依存症や中毒症になる事だって考えられる。そのまま廃人同然、または薬の成分によって死に至る事もある。それを聞いた時、オレは気が気じゃなかった。
だが、甲斐が薬物とは無縁な健康体で、薬の成分に含まれる毒素の免疫力が高かった事が不幸中の幸いだった。適切な治療をしていけばちゃんと完治が可能だと聞いて一先ずホッとする。完治するまでは甲斐の精神的不安定な状態が考えられるので、そこは恋人として時間をかけて労わりながら癒していくほかない。
「薬の入手ルートは、都内の繁華街を拠点にしている風俗店の元締め、橋田組から女に渡ったものかと思われます。正之社長の愛人という立場を利用して、あの女が薬を大量に購入し、連中も金とコネで雇い、今までその薬と橋田組の後ろ盾で直様に近づく女性を陰から排除してきたようです。もちろん、甲斐様をけしかけた連中も橋田組の一味でしょう」
忠実なる部下が病院の待合室で座っているオレに詳細を説明する。
「……ならば、その薬の出元である元締めを炙り出して潰せ。矢崎かもしくは青龍会の名前を出せば奴らもあっけなく潰れてくれるだろ。橋田組はそれなりに大きな組だが恐るるに足らない。あの女と関わった事を後悔させてやるための見せしめだ」
「御意」
部下に指令を出した後、甲斐がいる精神科の病棟へ向かう。部屋の前には甲斐の両親や双子の妹の悠里が立っていた。
「直君、大丈夫?」
甲斐のお義母様がオレの顔を見るなり声を掛けてきた。
「え……」
「なんかひどい顔してるから」
「オレの事は大丈夫です。それより「ねえ」
「なんで甲斐君を一人にしたのよ」
オレが何かを言う前に悠里が怒りを孕んだ顔で睨んできた。
「……すまない」
言い訳のしようがないからこそ、謝るしかなかった。あの時、帰る時も目を離さずにそばにいようと思ったが、甲斐が断ってきたのでそれを了承してしまったのが自分の過ち。問答無用でそばを離れなければよかった。部下の監視だけでは不十分だった。
「直がちゃんと目を光らせていれば甲斐君があんなひどい目にあわなくて済んだのに。何やってんのよ。これじゃあ甲斐君をバカ兄貴に任せられないじゃない。なんのために私が身を引いたと思ってるのよ!」
悠里が怒るのも無理はない。悠里は甲斐が今でも好きだからこそ、オレの浅はかな所業が許せないのだろう。オレも悠里の立場だったらブチギレていただろうから何も言えない。
「本当に……ごめん……」
「ごめんで済んだら苦労しない。甲斐君がどれだけ痛くて辛くて怖い思いをしたかっ……!」
「完全なるオレの落ち度だ。気に食わないなら気が済むまで殴ってくれて構わない……」
悄然と返すも、悠里の怒りは収まらない。
「殴って気が済むわけないじゃない!バカ兄貴を殴った所で何もならない。ドM会長みたいな事言わないでくれる?」
ドM会長といっしょくたにされるのもひどい話だが、それくらいのミスをやらかしたのだ。返す言葉もない。深く頭を下げた。悠里にも、ご両親にも。
「悠里ちゃん。もうそこまでにしてあげて。直君は死ぬほど反省しているし、今も苦しんでいると思うわ」
「うん。直君はすごく後悔している。ああしていればってずっと自分を責めていると思うよ。だから、自分のお兄さんをそんな責めないでやってほしい。甲斐も今はそんな兄妹喧嘩を望んじゃいないと思うから」
「おじさま、おばさま……」
「甲斐はきっと大丈夫よ。あいつ、女になったからと言ってもタフだから。でももし、甲斐がとんでもなく不安定になっていたら……その時は直君。キミが支えてあげてね」
「っ……はい。もちろんです」
甲斐のご両親が帰った後、悠里が改めてこちらに向き直った。
「ご両親に免じて甲斐君の事、直に任せるけど……次何かやらかしたら絶対許さないから」
双子の妹は鋭く睨みながら微笑んでいた。オレに似てとても容赦がない性格なので、甲斐のためならなんだってしてしまえるだろう。
「……それでいい。お前にそう思ってくれた方が今後の戒めになるから」
自分や甲斐の理解者であり、なんの忖度もなしにはっきりオレを諫めてくれる妹は貴重な存在だ。こういう存在がいるからこそ、オレ自身も今後もっと強く用心できる。
その後、悠里と別れて甲斐がいる病室に入る。部屋の扉を開けると甲斐はまだ眠っていて、時折苦しげにうなされている様子に胸を痛める。怖い夢でも見ているのだろうか。薬の影響だろうか。
サイドテーブルの近くにあった椅子に腰かけ、甲斐の手をそっと握る。男であった時より柔らかくてすべすべした手だ。握っているだけで、この身に宿っているどうしようもない自分自身への怒りと奴らに対する憎悪が、少しだけ和らいだ気がした。
愛おしくて仕方がない存在が、眠っているにも関わらずオレを落ち着かせてくれる。やっぱり甲斐がいるとオレがオレでいられる。自我を失いそうなオレを人間の感情のままでいさせてくれる。不思議な存在。この架谷甲斐は。
「う……ん……」
甲斐がゆっくり身じろいで目を覚ます。
「甲斐、大丈夫か?」
顔色などの状態を何度も確認しつつ声をかける。
「……や、ざき……」
目覚めてよかったと安堵感に肩をなでおろすも、甲斐は様子が変だった。オレを見るなり次第に顔を引きつらせ、布団を勢いよくかぶった。オレは呆気にとられていたが、布団の中で震えているのがわかった。
「甲斐……?」
布団に触れようとすると、
「ひ……や、やだ……来るな!くるなよ!俺を捨てた癖にっ!!飽きていらなくなったから用無しにしたくせに!!あっち行けよ馬鹿野郎ッ!!」
甲斐は薬の作用か何かでオレに怯えた様子だった。がたがた震え、涙をこぼし、オレが触れようとすれば泣きじゃくりながら激しく抵抗を見せた。それどころかなぜか勘違いをしていて、オレが甲斐を捨てたと思っているらしく、オレを見る目は涙目でありながら見たことがないほどに荒んでいた。まるで毛を逆立てた猫のように、オレをひどく睨んでいた。
おそらく、誰かが言った悪意のある言葉を鵜呑みにしてしまい、それを信じてしまったのだろう。余計な事をしやがって。
冗談じゃない。オレが甲斐を捨てるはずがない。過去、そりゃあ片っ端から女を抱いては捨てていた黒歴史は多々あれど、甲斐を愛おしく思ってから飽きて捨てる――それがいかに最低な事かよくわかった。
もう二度とそんな真似は絶対しないと誓っていた。だけど、後になって女を捨てまくったという最低男のレッテルがついて回るとは、自分でも最高に皮肉なモノだと思う。巡りに巡って最低な行いが自分に返ってきてしまったのだ。
でも、なんとか誤解だけは解きたい。オレには甲斐だけだって。捨てるなんて死んでもありえない事だって。
「甲斐、落ち付け。オレはお前を捨てるわけないし、ありえない」
かぶっている布団をどかそうとするも手こずる。
「やだやだ!お前なんか嫌いだ!大嫌いだ!どうせ俺も使い捨てのおもちゃだと思ってんだろ!?遊び半分で俺の心を弄ぶんだろ!?そんなお前なんかの言葉は信じられないっ!!あっちへ行けよ遊び人の人でなしッ!!女たらし野郎!!」
枕や近くに置かれたあらゆる私物を投げつけてきたり、激しく叩いてきたり蹴ってきたりする甲斐に、オレはついカッとなって力づくで甲斐の両腕を押さえつけて、体をベット上に縫い付けた。
「いい加減にしろよ!オレがお前を捨てるわけないだろっ!真実から目をそらすな!」
それは迂闊だった。見る見るうちに甲斐の表情は強張っていく。
「っ……や……恐い。恐い……恐い……助けて……」
先ほどとは違った恐怖心を露わにし、今度は救いを求めるように怯えはじめた。
「甲斐……っ」
「いや、いやあああっ!!やめて!来ないでよっ!やだあああ!!」
「っ……甲斐、しっかりしろよ!甲斐っ!」
「助けて、っおねがい……たすけてっ!ひっく……ひっく……うっああああああっ!!」
激しく涙をこぼし、とうとう甲斐は子供のように激しく泣き始めた。オレはどうする事もできなかった。
「はあ……」
待合室で海よりも深いため息が出る。あの状態じゃあ話すらできる状況じゃあないだろう。今は部屋に入っただけで喚かれて物を投げられる始末だ。どうするべきか。
「直、大丈夫か?」
「様子見に来たんだけど」
「昭弘、あずみ……!」
二人の親友が荷物を持って見舞いに来てくれた。手には花束などを携えている。
「これ、Eクラスのみんなからのお見舞い品。果物とお花。ついでに直の分の土産もあるよ。直のお母さんが持って行ってやれって。ハイこれ」
可愛らしい巾着袋から美味しそうな匂いが漂ってきている。母さんが作った弁当だ。そういえば今日は全然食事をとっていなかったな。
「長期戦になるだろうからこれ食べて元気出してってさ。他にもカロリーメイトとかの食べ物も持ってきたから」
「……ありがとう」
「直、その……甲斐君の事は大変だろうけど、甲斐君が回復して元気な姿を見られるのを待っているよ」
「二人の仲の良さを私達は信じてるからね」
「……うん。ほんとありがとう、二人とも」
支えてあげられるのだろうか。今のあの甲斐を。オレは今の甲斐の敵になっているんじゃないだろうか。親友二人に不安な心情を吐露しそうになるが口を閉じた。
「だけど、その前に自分の体力も回復させないといけないよ。直、すごく疲れた顔してる」
「……そうか?」
「そうだよ。目の下のクマがひどい。ちゃんと寝ているのか?」
「少し、だけ」
昨晩は二時間寝たかどうかだろう。正直、甲斐の事を考えすぎて寝られない状態だ。
「直、余計なお世話かも知れないが、少しは休もう。でないと、肝心な時に動けなくて苦しい思いをするのは自分なんだから。甲斐君が心配なのはわかるが、今はお互いに体力を回復する時間なんだと思う。とにかく静養が必要だ」
「そうだよ。そもそもそんなひどい顔を見たら甲斐君が怖がっちゃうんじゃないかな」
「……たしかに、そう、かも」
今のこの顔が怖いのはその通りかもしれない。まあ、それだけじゃないだろうけど。
「なら、少しは休憩!」
「うん、ついでにお弁当も食べよう」
昭弘とあずみに促されて、とりあえず食事をとって寝る事にした。翌日からの先の見えない日々は始まったばかり。
「甲斐ちゃんの症状、相当重傷だね……」
「直君もいろんな意味で重傷かな」
「メンタル的な意味でな」
そのまた二日後の朝、四天王の三馬鹿が一足遅く病院にやってきた。オレと甲斐の様子を見に来たのだろう。そんなオレ達の様子はというと、言わずもがな大きな壁ができている状態であった。甲斐は泣いて喚いて暴れまくり、オレはそのたびに負傷をして凹むの繰り返し。依然と平行線のままだった。
甲斐に締め出しをくらい、待合室でふて寝を決め込んでぼうっと天井を眺める。そんなオレの様子を見て、三人は憐れむような視線で見てきた。
「薬の作用が完璧に抜ければ、いつもの甲斐ちゃんに戻ってくれると思うんだけどな」
「しかし、たとえ完治してもすれ違いには違いない。架谷は変に誤解をしているから本人同士の問題でもある。それが解決できない限り、薬物治療が完治しても架谷は直に心を開かないだろう。やはりなんとしてでも架谷との話し合いは必要だろうな」
「リア充ってやっぱ一筋縄じゃいかないよね~。恋人同士になっても山あり谷ありで大変そー。直君ドンマイ。甲斐君との仲を修復できるよう一応応援しといてあげるネ」
「まあ、フラれたらフラれたでオイラ達が失恋パーティーでも開いてあげるからさ、当たって砕けてきなよ。応援しといてあげるけど、修復できるか玉砕するかは直ちゃん次第。ま、がんばってちょーよ」
「健闘を祈る」
「貴様ら……他人事みたいに言いやがってッ!」
凹んでいるメンタルに傷の上塗りをしてくる三馬鹿に頭にくる。
「あらら、まだそこまで元気があるなら大丈夫じゃん。てっきりメンタルボロボロで動けないほどやつれてると思ったけど、目の下のクマが濃いだけで減らず口だけは叩けるみたいね」
「じゃあ、まだ大丈夫だな」
「直君がハゲるまでイケそう」
「大丈夫じゃねえっつうんだよ!このクソ無神経野郎共がっ!」
オレはどうする事もできない苛立ちに怒鳴った。ぶっちゃけ泣きそうである。しかし、そんな三馬鹿は思いのほか辛辣であった。
「何言ってるの。そこで意地でもふんばらないと甲斐ちゃんとの仲はいつまでも平行線でしょ。最低男と思われたまんまだよ。悠長でぼんくらな直が、あの女をもうちょっと警戒していれば防げたかもしれない事件なんだしね。まあ、今更過ぎた事を言ってもしょうがない。今は怯えきった甲斐ちゃんの心を開かせて癒してあげることが先決。あんなにも怯えちゃってさぁ、可哀想でたまらないよね。でも、甲斐ちゃんも甲斐ちゃんで不安定な精神と闘ってるわけで、どんなにウザがられようが罵られようが、彼氏ならどんな甲斐ちゃんでも長い目で見守ってあげるべきでしょーよ」
「そーそー。彼氏なら彼氏の役目をきっちり果たすべきだよね。本当に甲斐君を想うなら、こんな所でふて寝してないでどうするべきか考えるか行動しなよ。甲斐君という最高の恋人の座を獲得できたんだから、これも試練だと思って頑張ってほしいもんだね」
「きつい言い方になるかもしれんが、他人に泣きつく暇があるのなら架谷のそばにいてやるべきだ。架谷は直を怯えた目で見ているが、ああ見えて直の事をそう簡単に見限る奴ではない。架谷の事はよく知っているだろう?誠実な人間だ。真剣に話せばアイツもまた真剣に返してくれる。今は何を言っても心を開いてはくれないかもしれないし、話し合いを持とうとしても酷い言葉で罵ってきて己がまた傷つくかもしれない。だが、いずれ尽くしてあげた誠意は必ず架谷に伝わる。そばにいてやりつつ長い目で待ってやるべきだ」
「ハル君の言う通りだね。焦りは禁物ってこと。急がば回れ。ツンツンすぎる女の子の甲斐君に尽くしてあげられるなんて最高に贅沢な事だから」
「お前ら……」
なんだかんだ言って遠回しに助言をくれるこの三人。昭弘やあずみみたいに心を許せる親友というわけではないが、頼もしい仲間だとは思った。心の中で感謝を告げて「行ってくる」と、オレは前を向いた。
「直様、この者達をいかがいたしますか」
「あとでオレが直々にやる。その後にあの女もだ。とりあえずそのゴミ共を別の場所へ身柄を移せ」
「畏まりました」
部下に命令を出し、この塵芥共の後処理をひとまず保留にする。当然急所は外しているので殺してない。オレ自ら断罪してやらなければ気が済まないからだ。
「甲斐……」
ズタボロな甲斐の乱れた服を簡単に直し、着ていたジャケットを羽織らせて抱き上げる。
「オレのせいで……ごめんな、甲斐っ。守ってあげられなくて……本当に……ごめん……」
甲斐の体を強く抱きしめて涙ながらに謝罪を繰り返す。本当に最悪な状況を招いてしまった。あと少し遅ければ甲斐はあのゴミ共に……ッ。
放課後、ずっとそばを離れなければよかった。あの女が何かする前に手を打っておくべきだった。おかげで甲斐は拉致されて、こんな風にひどい暴力を受けて、強姦までされかかって……
「甲斐に関わった奴も傷つけた奴も全員抹殺する。痛めつけて、苦しませて、生きて来た事を後悔させるくらいにむごたらしく殺してやる……」
拳を痛いほどギリギリ握り締めていた。知らぬ間に血が出ていた事に気付かずに拳は赤く染まっている。次々怒りがわいて出ては止まらなくて、この激情はしばらくは止まりそうもない。
「落ち付け、直。瞳孔開いてるぞ。部下すら怖がっている」
「少しは冷静になったら?でないと直君、今にも何人か殺しそうだし」
「いいんじゃない。女含めてゴミ共をどうせ殺すなら早い方がいいでしょ。オイラは盛大にやっちゃってほしいね」
拓実はオレと似たような感性なので、塵芥共をできるだけ惨たらしく葬り去る事に同意する。
「でもさ、今だけは甲斐ちゃんのそばにいてあげなよ。目覚めた時に直がそばにいないと寂しがるでしょ」
「そうだね。甲斐君はあんな目にあった。目覚めた時メンタルきっとヤバいと思う」
「一緒に病院に行ってやれ、直」
三人の最もな言葉に、そうせざるを得なくなったオレは深く溜息を吐いた。確かに甲斐のそばにいなければと思う。傷ついた甲斐の心を癒して慰めてやるのもオレの役目。
「……わかった。そいつらを勝手に殺すなよ。後でオレが地獄へ送る」
「わかってるよ。その時に思う存分にやればいいさ。オイラが裏でうまい具合に後処理しといてあげる。あの女も含めてさ」
その後、部下の車で甲斐を久瀬一族が経営している病院へ搬送させた。怪我の具合は大したことはなかったが、問題の体内に染み込んだ薬物が強力すぎるがゆえに、幻覚症状、思考力の低下、錯乱症状、不安や恐怖心が出ることが懸念されている。
たとえそれらの症状が出なくても、今後薬物依存症や中毒症になる事だって考えられる。そのまま廃人同然、または薬の成分によって死に至る事もある。それを聞いた時、オレは気が気じゃなかった。
だが、甲斐が薬物とは無縁な健康体で、薬の成分に含まれる毒素の免疫力が高かった事が不幸中の幸いだった。適切な治療をしていけばちゃんと完治が可能だと聞いて一先ずホッとする。完治するまでは甲斐の精神的不安定な状態が考えられるので、そこは恋人として時間をかけて労わりながら癒していくほかない。
「薬の入手ルートは、都内の繁華街を拠点にしている風俗店の元締め、橋田組から女に渡ったものかと思われます。正之社長の愛人という立場を利用して、あの女が薬を大量に購入し、連中も金とコネで雇い、今までその薬と橋田組の後ろ盾で直様に近づく女性を陰から排除してきたようです。もちろん、甲斐様をけしかけた連中も橋田組の一味でしょう」
忠実なる部下が病院の待合室で座っているオレに詳細を説明する。
「……ならば、その薬の出元である元締めを炙り出して潰せ。矢崎かもしくは青龍会の名前を出せば奴らもあっけなく潰れてくれるだろ。橋田組はそれなりに大きな組だが恐るるに足らない。あの女と関わった事を後悔させてやるための見せしめだ」
「御意」
部下に指令を出した後、甲斐がいる精神科の病棟へ向かう。部屋の前には甲斐の両親や双子の妹の悠里が立っていた。
「直君、大丈夫?」
甲斐のお義母様がオレの顔を見るなり声を掛けてきた。
「え……」
「なんかひどい顔してるから」
「オレの事は大丈夫です。それより「ねえ」
「なんで甲斐君を一人にしたのよ」
オレが何かを言う前に悠里が怒りを孕んだ顔で睨んできた。
「……すまない」
言い訳のしようがないからこそ、謝るしかなかった。あの時、帰る時も目を離さずにそばにいようと思ったが、甲斐が断ってきたのでそれを了承してしまったのが自分の過ち。問答無用でそばを離れなければよかった。部下の監視だけでは不十分だった。
「直がちゃんと目を光らせていれば甲斐君があんなひどい目にあわなくて済んだのに。何やってんのよ。これじゃあ甲斐君をバカ兄貴に任せられないじゃない。なんのために私が身を引いたと思ってるのよ!」
悠里が怒るのも無理はない。悠里は甲斐が今でも好きだからこそ、オレの浅はかな所業が許せないのだろう。オレも悠里の立場だったらブチギレていただろうから何も言えない。
「本当に……ごめん……」
「ごめんで済んだら苦労しない。甲斐君がどれだけ痛くて辛くて怖い思いをしたかっ……!」
「完全なるオレの落ち度だ。気に食わないなら気が済むまで殴ってくれて構わない……」
悄然と返すも、悠里の怒りは収まらない。
「殴って気が済むわけないじゃない!バカ兄貴を殴った所で何もならない。ドM会長みたいな事言わないでくれる?」
ドM会長といっしょくたにされるのもひどい話だが、それくらいのミスをやらかしたのだ。返す言葉もない。深く頭を下げた。悠里にも、ご両親にも。
「悠里ちゃん。もうそこまでにしてあげて。直君は死ぬほど反省しているし、今も苦しんでいると思うわ」
「うん。直君はすごく後悔している。ああしていればってずっと自分を責めていると思うよ。だから、自分のお兄さんをそんな責めないでやってほしい。甲斐も今はそんな兄妹喧嘩を望んじゃいないと思うから」
「おじさま、おばさま……」
「甲斐はきっと大丈夫よ。あいつ、女になったからと言ってもタフだから。でももし、甲斐がとんでもなく不安定になっていたら……その時は直君。キミが支えてあげてね」
「っ……はい。もちろんです」
甲斐のご両親が帰った後、悠里が改めてこちらに向き直った。
「ご両親に免じて甲斐君の事、直に任せるけど……次何かやらかしたら絶対許さないから」
双子の妹は鋭く睨みながら微笑んでいた。オレに似てとても容赦がない性格なので、甲斐のためならなんだってしてしまえるだろう。
「……それでいい。お前にそう思ってくれた方が今後の戒めになるから」
自分や甲斐の理解者であり、なんの忖度もなしにはっきりオレを諫めてくれる妹は貴重な存在だ。こういう存在がいるからこそ、オレ自身も今後もっと強く用心できる。
その後、悠里と別れて甲斐がいる病室に入る。部屋の扉を開けると甲斐はまだ眠っていて、時折苦しげにうなされている様子に胸を痛める。怖い夢でも見ているのだろうか。薬の影響だろうか。
サイドテーブルの近くにあった椅子に腰かけ、甲斐の手をそっと握る。男であった時より柔らかくてすべすべした手だ。握っているだけで、この身に宿っているどうしようもない自分自身への怒りと奴らに対する憎悪が、少しだけ和らいだ気がした。
愛おしくて仕方がない存在が、眠っているにも関わらずオレを落ち着かせてくれる。やっぱり甲斐がいるとオレがオレでいられる。自我を失いそうなオレを人間の感情のままでいさせてくれる。不思議な存在。この架谷甲斐は。
「う……ん……」
甲斐がゆっくり身じろいで目を覚ます。
「甲斐、大丈夫か?」
顔色などの状態を何度も確認しつつ声をかける。
「……や、ざき……」
目覚めてよかったと安堵感に肩をなでおろすも、甲斐は様子が変だった。オレを見るなり次第に顔を引きつらせ、布団を勢いよくかぶった。オレは呆気にとられていたが、布団の中で震えているのがわかった。
「甲斐……?」
布団に触れようとすると、
「ひ……や、やだ……来るな!くるなよ!俺を捨てた癖にっ!!飽きていらなくなったから用無しにしたくせに!!あっち行けよ馬鹿野郎ッ!!」
甲斐は薬の作用か何かでオレに怯えた様子だった。がたがた震え、涙をこぼし、オレが触れようとすれば泣きじゃくりながら激しく抵抗を見せた。それどころかなぜか勘違いをしていて、オレが甲斐を捨てたと思っているらしく、オレを見る目は涙目でありながら見たことがないほどに荒んでいた。まるで毛を逆立てた猫のように、オレをひどく睨んでいた。
おそらく、誰かが言った悪意のある言葉を鵜呑みにしてしまい、それを信じてしまったのだろう。余計な事をしやがって。
冗談じゃない。オレが甲斐を捨てるはずがない。過去、そりゃあ片っ端から女を抱いては捨てていた黒歴史は多々あれど、甲斐を愛おしく思ってから飽きて捨てる――それがいかに最低な事かよくわかった。
もう二度とそんな真似は絶対しないと誓っていた。だけど、後になって女を捨てまくったという最低男のレッテルがついて回るとは、自分でも最高に皮肉なモノだと思う。巡りに巡って最低な行いが自分に返ってきてしまったのだ。
でも、なんとか誤解だけは解きたい。オレには甲斐だけだって。捨てるなんて死んでもありえない事だって。
「甲斐、落ち付け。オレはお前を捨てるわけないし、ありえない」
かぶっている布団をどかそうとするも手こずる。
「やだやだ!お前なんか嫌いだ!大嫌いだ!どうせ俺も使い捨てのおもちゃだと思ってんだろ!?遊び半分で俺の心を弄ぶんだろ!?そんなお前なんかの言葉は信じられないっ!!あっちへ行けよ遊び人の人でなしッ!!女たらし野郎!!」
枕や近くに置かれたあらゆる私物を投げつけてきたり、激しく叩いてきたり蹴ってきたりする甲斐に、オレはついカッとなって力づくで甲斐の両腕を押さえつけて、体をベット上に縫い付けた。
「いい加減にしろよ!オレがお前を捨てるわけないだろっ!真実から目をそらすな!」
それは迂闊だった。見る見るうちに甲斐の表情は強張っていく。
「っ……や……恐い。恐い……恐い……助けて……」
先ほどとは違った恐怖心を露わにし、今度は救いを求めるように怯えはじめた。
「甲斐……っ」
「いや、いやあああっ!!やめて!来ないでよっ!やだあああ!!」
「っ……甲斐、しっかりしろよ!甲斐っ!」
「助けて、っおねがい……たすけてっ!ひっく……ひっく……うっああああああっ!!」
激しく涙をこぼし、とうとう甲斐は子供のように激しく泣き始めた。オレはどうする事もできなかった。
「はあ……」
待合室で海よりも深いため息が出る。あの状態じゃあ話すらできる状況じゃあないだろう。今は部屋に入っただけで喚かれて物を投げられる始末だ。どうするべきか。
「直、大丈夫か?」
「様子見に来たんだけど」
「昭弘、あずみ……!」
二人の親友が荷物を持って見舞いに来てくれた。手には花束などを携えている。
「これ、Eクラスのみんなからのお見舞い品。果物とお花。ついでに直の分の土産もあるよ。直のお母さんが持って行ってやれって。ハイこれ」
可愛らしい巾着袋から美味しそうな匂いが漂ってきている。母さんが作った弁当だ。そういえば今日は全然食事をとっていなかったな。
「長期戦になるだろうからこれ食べて元気出してってさ。他にもカロリーメイトとかの食べ物も持ってきたから」
「……ありがとう」
「直、その……甲斐君の事は大変だろうけど、甲斐君が回復して元気な姿を見られるのを待っているよ」
「二人の仲の良さを私達は信じてるからね」
「……うん。ほんとありがとう、二人とも」
支えてあげられるのだろうか。今のあの甲斐を。オレは今の甲斐の敵になっているんじゃないだろうか。親友二人に不安な心情を吐露しそうになるが口を閉じた。
「だけど、その前に自分の体力も回復させないといけないよ。直、すごく疲れた顔してる」
「……そうか?」
「そうだよ。目の下のクマがひどい。ちゃんと寝ているのか?」
「少し、だけ」
昨晩は二時間寝たかどうかだろう。正直、甲斐の事を考えすぎて寝られない状態だ。
「直、余計なお世話かも知れないが、少しは休もう。でないと、肝心な時に動けなくて苦しい思いをするのは自分なんだから。甲斐君が心配なのはわかるが、今はお互いに体力を回復する時間なんだと思う。とにかく静養が必要だ」
「そうだよ。そもそもそんなひどい顔を見たら甲斐君が怖がっちゃうんじゃないかな」
「……たしかに、そう、かも」
今のこの顔が怖いのはその通りかもしれない。まあ、それだけじゃないだろうけど。
「なら、少しは休憩!」
「うん、ついでにお弁当も食べよう」
昭弘とあずみに促されて、とりあえず食事をとって寝る事にした。翌日からの先の見えない日々は始まったばかり。
「甲斐ちゃんの症状、相当重傷だね……」
「直君もいろんな意味で重傷かな」
「メンタル的な意味でな」
そのまた二日後の朝、四天王の三馬鹿が一足遅く病院にやってきた。オレと甲斐の様子を見に来たのだろう。そんなオレ達の様子はというと、言わずもがな大きな壁ができている状態であった。甲斐は泣いて喚いて暴れまくり、オレはそのたびに負傷をして凹むの繰り返し。依然と平行線のままだった。
甲斐に締め出しをくらい、待合室でふて寝を決め込んでぼうっと天井を眺める。そんなオレの様子を見て、三人は憐れむような視線で見てきた。
「薬の作用が完璧に抜ければ、いつもの甲斐ちゃんに戻ってくれると思うんだけどな」
「しかし、たとえ完治してもすれ違いには違いない。架谷は変に誤解をしているから本人同士の問題でもある。それが解決できない限り、薬物治療が完治しても架谷は直に心を開かないだろう。やはりなんとしてでも架谷との話し合いは必要だろうな」
「リア充ってやっぱ一筋縄じゃいかないよね~。恋人同士になっても山あり谷ありで大変そー。直君ドンマイ。甲斐君との仲を修復できるよう一応応援しといてあげるネ」
「まあ、フラれたらフラれたでオイラ達が失恋パーティーでも開いてあげるからさ、当たって砕けてきなよ。応援しといてあげるけど、修復できるか玉砕するかは直ちゃん次第。ま、がんばってちょーよ」
「健闘を祈る」
「貴様ら……他人事みたいに言いやがってッ!」
凹んでいるメンタルに傷の上塗りをしてくる三馬鹿に頭にくる。
「あらら、まだそこまで元気があるなら大丈夫じゃん。てっきりメンタルボロボロで動けないほどやつれてると思ったけど、目の下のクマが濃いだけで減らず口だけは叩けるみたいね」
「じゃあ、まだ大丈夫だな」
「直君がハゲるまでイケそう」
「大丈夫じゃねえっつうんだよ!このクソ無神経野郎共がっ!」
オレはどうする事もできない苛立ちに怒鳴った。ぶっちゃけ泣きそうである。しかし、そんな三馬鹿は思いのほか辛辣であった。
「何言ってるの。そこで意地でもふんばらないと甲斐ちゃんとの仲はいつまでも平行線でしょ。最低男と思われたまんまだよ。悠長でぼんくらな直が、あの女をもうちょっと警戒していれば防げたかもしれない事件なんだしね。まあ、今更過ぎた事を言ってもしょうがない。今は怯えきった甲斐ちゃんの心を開かせて癒してあげることが先決。あんなにも怯えちゃってさぁ、可哀想でたまらないよね。でも、甲斐ちゃんも甲斐ちゃんで不安定な精神と闘ってるわけで、どんなにウザがられようが罵られようが、彼氏ならどんな甲斐ちゃんでも長い目で見守ってあげるべきでしょーよ」
「そーそー。彼氏なら彼氏の役目をきっちり果たすべきだよね。本当に甲斐君を想うなら、こんな所でふて寝してないでどうするべきか考えるか行動しなよ。甲斐君という最高の恋人の座を獲得できたんだから、これも試練だと思って頑張ってほしいもんだね」
「きつい言い方になるかもしれんが、他人に泣きつく暇があるのなら架谷のそばにいてやるべきだ。架谷は直を怯えた目で見ているが、ああ見えて直の事をそう簡単に見限る奴ではない。架谷の事はよく知っているだろう?誠実な人間だ。真剣に話せばアイツもまた真剣に返してくれる。今は何を言っても心を開いてはくれないかもしれないし、話し合いを持とうとしても酷い言葉で罵ってきて己がまた傷つくかもしれない。だが、いずれ尽くしてあげた誠意は必ず架谷に伝わる。そばにいてやりつつ長い目で待ってやるべきだ」
「ハル君の言う通りだね。焦りは禁物ってこと。急がば回れ。ツンツンすぎる女の子の甲斐君に尽くしてあげられるなんて最高に贅沢な事だから」
「お前ら……」
なんだかんだ言って遠回しに助言をくれるこの三人。昭弘やあずみみたいに心を許せる親友というわけではないが、頼もしい仲間だとは思った。心の中で感謝を告げて「行ってくる」と、オレは前を向いた。
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