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女体化
浮気お家騒動5
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「……奥さんがそんなに好きなんですか……」
「何を今更。妻以外の女などに異性としての感情など一切わかん」
それを聞いて今度はわなわな震えている。
「下心丸出しな気持ちで近づくお前のような女は特に嫌いだな。ずっとオレに隙がないか見極めていたんだろう?オレに近づくために秘書になり、ババアと利害が一致して取引をした。オレと妻を引き離そうとするために。たぶん、マスコミがあの場にいたのも、ホテルをわざとラブホ近くに手配したのも、オレと噂になるためのハニートラップ。その上で不倫だなんだと噂にさせて、ゴタゴタしている隙に別れさせようってハラなんだろ。オレと妻の仲を舐めないでもらいたいな」
「……知っていたんですか」
「お前の行動やオレの見る目に色が含まれていたからそうだろうとは思っていた。家族以外は全て敵だと思っているから警戒して当然だ」
「……ずっと前から……好きだったんです……。開星学園にあなたが在籍していた頃から」
「……ふーん……」
オレは腕を組みながら川田の方を見ずに窓の外を眺めている。
「でもあなたには別のお嬢様との婚約が決まっていた。だからお嬢様相手なら私は仕方ないと諦める事ができた。しかし、ぽっと出の……後釜のような一般人に取られるのは我慢ならなかったのです。あなたのような高貴なお方がなぜどこにでもいるような女を……って。だから秘書になり、結婚を反対していた大奥様に近づきました。大奥様は私の経歴や父親がエリート官僚な事などを誉めてくださり、奥様と社長が離婚した暁には第二夫人になってもよいとお許しが出て浮かれていました。なんとか社長を振り向かせようと少ない間に頑張りましたけど、社長は本当に奥様だけを一途に想っているみたいですね」
「オレがどれだけの愛妻家かよくわかったようだな」
振り返って視線を川田に向けた。
「お前がどれだけオレを好きでもそれに応える事は絶対にない。愛人にすることもない。だからババアが何を言おうともババアのシナリオ通りになることは100%ない。言ったろう?妻一筋だと。妻がいないとオレはダメなんだ。生きていけないんだ」
甲斐がいないと餓えて死んでしまうと言っても過言ではない。甲斐がオレの全てだって。いわば水と空気みたいなものだって。いて当たり前の存在であって、甲斐の名前をそのままとって「生き甲斐」と呼ぶにふさわしい。
「どんなに性欲が溜まっていようが、寂しいと思おうが、妻以外を抱くことも愛することもない。妻以外の女を異性とすら思わない」
「社長……」
「ご苦労であった。おまえの仕事は今日で終わりだ。明日からは久瀬が復帰する」
オレが淡々と告げると川田は諦めたように肩を落とした。
「それとババアに伝えろ。オレと妻を引き離そうとした報いは今に返してやるから首を洗って待っていろと」
「社長、お休みいただきありがとうございます」
翌日、筆頭秘書の久瀬がやっと復帰し、これで仕事もやりやすいとホッとした。
当初は二週間の休みだったが数ヶ月以上も入院が長引いたり、ババアの圧力があったのかなかなか復帰が困難だったらしい。
「やっとこれで仕事の段取りがしやすくなった。うまくいけば今日中に滞っている案件のカタはつくだろう」
これでやっと妻や息子にも数か月ぶりにあえる。
「社長、それよりご実家に一度戻りましょう。甲斐様のお体が心配です」
久瀬が深刻な表情になっている。
「……実家?甲斐のお体って……」
「社長……知らないのですか」
「何をだ」
「奥様は……甲斐様は第二子を妊娠していらっしゃいます」
オレは手に持っていた書類をばさりと落とした。
「社長が海外出張をしている間、大奥様やその側近達より相当な嫁イビリをされ続けていたようです。甲斐様の出産前後や結婚当初はあなたの一声で収まってはいましたが、誠一郎様も社長も出張で不在になった途端にまた甲斐様を悪く言う者がでしゃばり始め、正之派筆頭の大奥様もここぞとばかりに甲斐様を理不尽になじり始め、それに甲斐様は黙ってじっと耐えていたのです」
「甲斐は何も……言って……」
オレは背筋が冷たくなる。
「社長に……あなたに迷惑をかけたくない一身だったのですよ。それに肩書きのない自分がでしゃばった事で、矢崎家で働く罪のない人が職を失ってしまうんじゃないかと考えて黙っていたのでしょう」
そうだ。あいつは自分に不利な目にあってもオレに心配かけまいと黙っている所がある。結婚してからいつもそうだった。矢崎家の嫁になったからオレや子供のために我慢しなければと、そう口にしていた。自分の幸せより他人を優先し、部下が何か不始末をした時も自分の責任にしてその部下をかばうような人間だ。
お人好しで、バカで、どうしようもなく優しい。
時々、甲斐の体に見覚えのない傷があったり、あきらかに元気のない時はオレが一喝して黙らせていたから大半は鎮まったと思っていた。が……出張が多い中で隠れてババア共の迫害にあっていてもおかしくはない状況。
オレは……なんて事を……。
忙しいとか、今後のためとか、仕事ばかりで、甲斐の事をしっかり考えていなかった。考えてはいても、どこか不十分で詰めが甘かった。
帰ってきたらいつもあいつは笑顔で出迎えてくれていた中で、オレに心配かけまいと傷ついていた事を黙っていたとすると……
オレはみるみるうちに顔面が蒼白になっていく気がした。
「社長も誠一郎様も不在の中、誰も大奥様の権力には逆らえず、正之派の残党らが幅を利かせてやりたい放題となり、大奥様からの仕打ちに対して耐えている甲斐様が倒れないか皆心配しており……「すぐに、すぐに矢崎の本宅へ行け」
オレはこれ以上ないくらい焦った。
*
「生意気ね、庶民生まれの貧乏人が」
毎度の事ながら大姑が睨みながら文句を言うが、俺は気にせず掃除の続きを行う。早く終わらせて直樹と帰るために。
「本当、生意気ね。奴隷の分際で私に口答えをして、気に入らなければ無視を決め込むのね。直さんもどうしてこんな礼儀もなっていないなんの由緒もない女を嫁にしたのかしら。いくらなんでも限度があるわ。忌々しい」
ぶつぶつと文句を呟き続ける大姑を放置して廊下にでた。文句を言われるのはいつもの事。右から左に流せばいい。だけど臨月に近い身重にこの重労働はキツイものだ。さすがに無理はしないようにしなければ。
慎重に階段を降りようとすると、背後に気配がして誰かに背中を強く押し出された。
ハッとして驚く暇もなく大きな衝撃が自分を襲う。咄嗟に受け身を取ろうとするも、全身を鞭打つ痛みを感じてぐるぐるまわる。一番下の段差まで一気に落ちてやっと勢いは止まる。
痛い。痛い。
体を動かそうとして断念。激しい痛みに身動きとれず、薄れゆく意識の中でぼやける視界の向こうには、大姑が一番上の段に立っていた。薄気味悪く笑いながら。
それを一瞬だけとらえて、俺の意識は強制的に暗転した。
*
「社長、落ち着いてください」
久瀬の言葉などもうオレには届いていなかった。すでにオレの手や顔などは血で汚れまくっていて、今何をしているかもよくわからないまま立ちふさがる連中を感情のまま殴り倒していた。
だってこいつらがいけないんだろ。こいつらが邪魔をしてくるんだ。
「奥様のご命令で立ち入り禁止となっている」って通せんぼ。オレの命令よりババアの命令を優先するコイツらに愛想がつきたと同時に、誰が主人かを分からせるためにボコボコにしてやっただけの事。口を割らないので、拷問するみたいに痛ぶって半殺しにしてやったらやっと一部が口を割った。
所詮は金だけを積まれて雇われたババアの側近共だ。オレの部下と違って忠誠心が低くてありがたい。で、今はババアがいるであろう隠し部屋に怒鳴りこんでババアに詰問しているところだ。
「ひ……わ、わたしに……こんな事をしてい、いいと思っているの!?私はせ、誠一郎さまの妻で、いくら社長だろうと手出しは……ぎゃああ!」
反抗してわめくババアの髪を鷲掴んでライターで炙る。
「それがどうした。死に損ないのクソババア。オレの甲斐にあれほど手を出すなと言ったのを忘れたのか。ジジイの権力なしじゃ何もできないただの穀潰しのゴミのくせに」
ババアの無駄に綺麗なケバい顔は青く腫れあがっている。オレが二度ほど殴り付けたからな。ちゃんと手加減をして。女だからと手加減はしたくはないが、プライドだけは天にも昇るほど高いくせに腕力だけはひ弱なこのババアは、あまり強く殴ると殺してしまいかねんから仕方なくだ。
ま、殺してやっても造作無いが、後々の事後処理が面倒だからと生かしてやっているだけのこと。
「あ、あんな、お、女……や、矢崎家には必要n……ぎゃあああああ!!」
燃える女の髪や炙った皮膚を見ても怒りは鎮まらない。耳障りな悲鳴さえ聞いてもスーッとしてきやしない。
「性悪で陰険な所は弟の正之とそっくりだな。ジジイの妻だから手出しがしにくいと野放しにしていたオレにも落ち度はあるが、オレの甲斐を傷つけたからにはそれ相応の覚悟があるようで……ククク……ははははは。ブチ殺してやるよ」
オレは狂ったように笑う。その薄ら笑いを見た周りは、オレに恐怖したように蒼褪めた顔をしている。
怖いか?オレが。でもお前らが悪いんだろ。オレを怒らせるから。甲斐が傷つけられているのに見て見ぬふりをするからいけないんだろ。そんな薄情な貴様らも一緒に地獄行き決定だ。ババアの始末が終わったら覚えていろ。
「社長、気持ちはわかりますがそれ以上やると……」
「何を言っている久瀬。もう自分の立場なんかどうだっていいんだ。社長なんて立場なんぞクソ喰らえ。バカみたいに矢崎のために汗水垂らして働いていた自分がバカらしく思えてきてしょうがないんだ。でもな、やっとわかったんだ。オレには甲斐と息子がいれば何もいらないって。もう社長業なんかどうだっていいってな」
「直様……」
「そんな怯えた顔で見るなよ、久瀬。オレはむやみに殺生したりはしないし、甲斐の前では善良で優しい旦那サマでいたい。できる限り穏便にしたいのは山々なんだ。だがな」
オレは怯えるババアを今一度鋭く射抜く。
「こいつだけは許しはしない。このクソババアだけは。失禁して恐怖に打ち震えて無様にくたばる姿を見るまでは終わるものか」
「何を今更。妻以外の女などに異性としての感情など一切わかん」
それを聞いて今度はわなわな震えている。
「下心丸出しな気持ちで近づくお前のような女は特に嫌いだな。ずっとオレに隙がないか見極めていたんだろう?オレに近づくために秘書になり、ババアと利害が一致して取引をした。オレと妻を引き離そうとするために。たぶん、マスコミがあの場にいたのも、ホテルをわざとラブホ近くに手配したのも、オレと噂になるためのハニートラップ。その上で不倫だなんだと噂にさせて、ゴタゴタしている隙に別れさせようってハラなんだろ。オレと妻の仲を舐めないでもらいたいな」
「……知っていたんですか」
「お前の行動やオレの見る目に色が含まれていたからそうだろうとは思っていた。家族以外は全て敵だと思っているから警戒して当然だ」
「……ずっと前から……好きだったんです……。開星学園にあなたが在籍していた頃から」
「……ふーん……」
オレは腕を組みながら川田の方を見ずに窓の外を眺めている。
「でもあなたには別のお嬢様との婚約が決まっていた。だからお嬢様相手なら私は仕方ないと諦める事ができた。しかし、ぽっと出の……後釜のような一般人に取られるのは我慢ならなかったのです。あなたのような高貴なお方がなぜどこにでもいるような女を……って。だから秘書になり、結婚を反対していた大奥様に近づきました。大奥様は私の経歴や父親がエリート官僚な事などを誉めてくださり、奥様と社長が離婚した暁には第二夫人になってもよいとお許しが出て浮かれていました。なんとか社長を振り向かせようと少ない間に頑張りましたけど、社長は本当に奥様だけを一途に想っているみたいですね」
「オレがどれだけの愛妻家かよくわかったようだな」
振り返って視線を川田に向けた。
「お前がどれだけオレを好きでもそれに応える事は絶対にない。愛人にすることもない。だからババアが何を言おうともババアのシナリオ通りになることは100%ない。言ったろう?妻一筋だと。妻がいないとオレはダメなんだ。生きていけないんだ」
甲斐がいないと餓えて死んでしまうと言っても過言ではない。甲斐がオレの全てだって。いわば水と空気みたいなものだって。いて当たり前の存在であって、甲斐の名前をそのままとって「生き甲斐」と呼ぶにふさわしい。
「どんなに性欲が溜まっていようが、寂しいと思おうが、妻以外を抱くことも愛することもない。妻以外の女を異性とすら思わない」
「社長……」
「ご苦労であった。おまえの仕事は今日で終わりだ。明日からは久瀬が復帰する」
オレが淡々と告げると川田は諦めたように肩を落とした。
「それとババアに伝えろ。オレと妻を引き離そうとした報いは今に返してやるから首を洗って待っていろと」
「社長、お休みいただきありがとうございます」
翌日、筆頭秘書の久瀬がやっと復帰し、これで仕事もやりやすいとホッとした。
当初は二週間の休みだったが数ヶ月以上も入院が長引いたり、ババアの圧力があったのかなかなか復帰が困難だったらしい。
「やっとこれで仕事の段取りがしやすくなった。うまくいけば今日中に滞っている案件のカタはつくだろう」
これでやっと妻や息子にも数か月ぶりにあえる。
「社長、それよりご実家に一度戻りましょう。甲斐様のお体が心配です」
久瀬が深刻な表情になっている。
「……実家?甲斐のお体って……」
「社長……知らないのですか」
「何をだ」
「奥様は……甲斐様は第二子を妊娠していらっしゃいます」
オレは手に持っていた書類をばさりと落とした。
「社長が海外出張をしている間、大奥様やその側近達より相当な嫁イビリをされ続けていたようです。甲斐様の出産前後や結婚当初はあなたの一声で収まってはいましたが、誠一郎様も社長も出張で不在になった途端にまた甲斐様を悪く言う者がでしゃばり始め、正之派筆頭の大奥様もここぞとばかりに甲斐様を理不尽になじり始め、それに甲斐様は黙ってじっと耐えていたのです」
「甲斐は何も……言って……」
オレは背筋が冷たくなる。
「社長に……あなたに迷惑をかけたくない一身だったのですよ。それに肩書きのない自分がでしゃばった事で、矢崎家で働く罪のない人が職を失ってしまうんじゃないかと考えて黙っていたのでしょう」
そうだ。あいつは自分に不利な目にあってもオレに心配かけまいと黙っている所がある。結婚してからいつもそうだった。矢崎家の嫁になったからオレや子供のために我慢しなければと、そう口にしていた。自分の幸せより他人を優先し、部下が何か不始末をした時も自分の責任にしてその部下をかばうような人間だ。
お人好しで、バカで、どうしようもなく優しい。
時々、甲斐の体に見覚えのない傷があったり、あきらかに元気のない時はオレが一喝して黙らせていたから大半は鎮まったと思っていた。が……出張が多い中で隠れてババア共の迫害にあっていてもおかしくはない状況。
オレは……なんて事を……。
忙しいとか、今後のためとか、仕事ばかりで、甲斐の事をしっかり考えていなかった。考えてはいても、どこか不十分で詰めが甘かった。
帰ってきたらいつもあいつは笑顔で出迎えてくれていた中で、オレに心配かけまいと傷ついていた事を黙っていたとすると……
オレはみるみるうちに顔面が蒼白になっていく気がした。
「社長も誠一郎様も不在の中、誰も大奥様の権力には逆らえず、正之派の残党らが幅を利かせてやりたい放題となり、大奥様からの仕打ちに対して耐えている甲斐様が倒れないか皆心配しており……「すぐに、すぐに矢崎の本宅へ行け」
オレはこれ以上ないくらい焦った。
*
「生意気ね、庶民生まれの貧乏人が」
毎度の事ながら大姑が睨みながら文句を言うが、俺は気にせず掃除の続きを行う。早く終わらせて直樹と帰るために。
「本当、生意気ね。奴隷の分際で私に口答えをして、気に入らなければ無視を決め込むのね。直さんもどうしてこんな礼儀もなっていないなんの由緒もない女を嫁にしたのかしら。いくらなんでも限度があるわ。忌々しい」
ぶつぶつと文句を呟き続ける大姑を放置して廊下にでた。文句を言われるのはいつもの事。右から左に流せばいい。だけど臨月に近い身重にこの重労働はキツイものだ。さすがに無理はしないようにしなければ。
慎重に階段を降りようとすると、背後に気配がして誰かに背中を強く押し出された。
ハッとして驚く暇もなく大きな衝撃が自分を襲う。咄嗟に受け身を取ろうとするも、全身を鞭打つ痛みを感じてぐるぐるまわる。一番下の段差まで一気に落ちてやっと勢いは止まる。
痛い。痛い。
体を動かそうとして断念。激しい痛みに身動きとれず、薄れゆく意識の中でぼやける視界の向こうには、大姑が一番上の段に立っていた。薄気味悪く笑いながら。
それを一瞬だけとらえて、俺の意識は強制的に暗転した。
*
「社長、落ち着いてください」
久瀬の言葉などもうオレには届いていなかった。すでにオレの手や顔などは血で汚れまくっていて、今何をしているかもよくわからないまま立ちふさがる連中を感情のまま殴り倒していた。
だってこいつらがいけないんだろ。こいつらが邪魔をしてくるんだ。
「奥様のご命令で立ち入り禁止となっている」って通せんぼ。オレの命令よりババアの命令を優先するコイツらに愛想がつきたと同時に、誰が主人かを分からせるためにボコボコにしてやっただけの事。口を割らないので、拷問するみたいに痛ぶって半殺しにしてやったらやっと一部が口を割った。
所詮は金だけを積まれて雇われたババアの側近共だ。オレの部下と違って忠誠心が低くてありがたい。で、今はババアがいるであろう隠し部屋に怒鳴りこんでババアに詰問しているところだ。
「ひ……わ、わたしに……こんな事をしてい、いいと思っているの!?私はせ、誠一郎さまの妻で、いくら社長だろうと手出しは……ぎゃああ!」
反抗してわめくババアの髪を鷲掴んでライターで炙る。
「それがどうした。死に損ないのクソババア。オレの甲斐にあれほど手を出すなと言ったのを忘れたのか。ジジイの権力なしじゃ何もできないただの穀潰しのゴミのくせに」
ババアの無駄に綺麗なケバい顔は青く腫れあがっている。オレが二度ほど殴り付けたからな。ちゃんと手加減をして。女だからと手加減はしたくはないが、プライドだけは天にも昇るほど高いくせに腕力だけはひ弱なこのババアは、あまり強く殴ると殺してしまいかねんから仕方なくだ。
ま、殺してやっても造作無いが、後々の事後処理が面倒だからと生かしてやっているだけのこと。
「あ、あんな、お、女……や、矢崎家には必要n……ぎゃあああああ!!」
燃える女の髪や炙った皮膚を見ても怒りは鎮まらない。耳障りな悲鳴さえ聞いてもスーッとしてきやしない。
「性悪で陰険な所は弟の正之とそっくりだな。ジジイの妻だから手出しがしにくいと野放しにしていたオレにも落ち度はあるが、オレの甲斐を傷つけたからにはそれ相応の覚悟があるようで……ククク……ははははは。ブチ殺してやるよ」
オレは狂ったように笑う。その薄ら笑いを見た周りは、オレに恐怖したように蒼褪めた顔をしている。
怖いか?オレが。でもお前らが悪いんだろ。オレを怒らせるから。甲斐が傷つけられているのに見て見ぬふりをするからいけないんだろ。そんな薄情な貴様らも一緒に地獄行き決定だ。ババアの始末が終わったら覚えていろ。
「社長、気持ちはわかりますがそれ以上やると……」
「何を言っている久瀬。もう自分の立場なんかどうだっていいんだ。社長なんて立場なんぞクソ喰らえ。バカみたいに矢崎のために汗水垂らして働いていた自分がバカらしく思えてきてしょうがないんだ。でもな、やっとわかったんだ。オレには甲斐と息子がいれば何もいらないって。もう社長業なんかどうだっていいってな」
「直様……」
「そんな怯えた顔で見るなよ、久瀬。オレはむやみに殺生したりはしないし、甲斐の前では善良で優しい旦那サマでいたい。できる限り穏便にしたいのは山々なんだ。だがな」
オレは怯えるババアを今一度鋭く射抜く。
「こいつだけは許しはしない。このクソババアだけは。失禁して恐怖に打ち震えて無様にくたばる姿を見るまでは終わるものか」
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