学園トップ~&ユカイのスピンオフ

いとこんドリア

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女体化

矢崎家の浮気お家騒動1

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※ママは架谷甲斐とは別世界線/妊娠ネタ/嫁姑問題や妊娠中にあるえぐい展開などありますので注意。


 俺、架谷甲斐。現在21歳の一児の新米ママ。
 約三年前から旦那と息子とで三人で都内に暮らしている。
 同い年のハイスペック旦那と紆余曲折を経てでき婚までして、三人での幸せな家族生活が待っている……はずでした。

「矢崎家の嫁たるもの、こんなのできて当たり前。本当にだらしない。だから一般中流家庭の貧乏娘を嫁になんて冗談ではなかったのです」

 この目の前にいる鬼ババ……いや、大姑様の言う通り、俺は何の由緒もない貧乏娘です。

 結婚前に散々交際を反対され、時には罵られ、釣り合わないだとか、矢崎財閥社長夫人としての器ではないとか、そこは否定はしない。否定しないけれど、結婚して三年も経っているのに未だに反対勢力にグジグジ言われるのはいい加減にうんざりしている。

 ちなみに反対勢力とはこの目の前の鬼のように威張っている大姑様を筆頭とする勢力です。矢崎誠一郎氏の現奥方で、直の義理の父親であった正之氏の姉らしい。姉弟そろって性格が悪……おっと口が滑った。まあ、一癖も二癖もある長男教で家柄重視の人間なのだ。

 やっぱり矢崎家の洗礼というものは存在したようで、家同士の繋がりとなると嫁姑問題ってありますよねートホホ。いやはや、困ったもんですたい。

「甲斐さん。あなたがいくら一般中流家庭の人間とはいえ、矢崎財閥社長の妻には変わりありませんの。ですから、それ相応の振る舞いが必要なのです。礼儀作法の一つや二つは当然のこと、英語力やダンスや日本舞踊等も完璧にしていただきたいの。もちろん、その上で家事育児もこなせないで矢崎家の嫁とはいえません。しかし今後、それをあなたに出来るとも思えないわ」

 大姑様が言う矢崎家の嫁たるものは、玄関先で矢崎家親族を指を三つ折りにして頭を下げて出迎え、矢崎家長男夫と夫親の言う事には絶対服従し、気に入られる様にご機嫌取って、奴隷の様に働いて尽くす。もちろん家事育児も一切妥協はせずに完璧に出来て、英語もダンスも日本舞踊も礼儀作法も完璧で、気立てが良くて愛想もいい。そんでもって気配りが出来、どんなに命令されても嫌な顔一つしない。それが矢崎財閥社長夫人および矢崎家長男の嫁としての在り方なんだそうだ。

 ……なんだそれ。そんな菩薩で完璧超人みたいな都合のいい嫁がいるかって話だ。ふざけんな。

「そんなんじゃいつまでたっても矢崎家の嫁にはふさわしくありませんね。潔く直さんとお別れになってはどうですか?」

 大姑は俺と旦那を別れさせようと離婚を迫る。よっぽど一般人の俺が直の嫁になったのが気に食わないらしい。

 結婚してからずっとこの調子で、旦那や誠一郎さんらが見えてないところで俺に嫌みを言いつつイビりをしてくるのだ。息子を生む前だって陰でどうせ女腹だろとか、男の跡取りを生まない嫁なんていらないと言われ続けていた。胎教に悪いから旦那が大姑やらをシャットアウトしてくれたお陰で出産までは被害はあまりなかったけど、出産後に旦那も本格的に仕事が多忙になってから、こちらも本格化した嫁修行が始まり、嫁イビりも同時に始まった。

 イビりのテンプレはほとんどされた。この前は矢崎家の親族の誕生会を祝うパーティーがあったんだけど、陰口どころか嫌がらせのオンパレードだった。

 いきなり貴女なんか招待していないと言われるわ、ドレスにワインをぶっかけられるわ、食事どころか椅子は用意されていないわ、旦那との夜の生活を事細かに訊かれるわでウンザリというか、嫌がらせにも大分慣れた。開星学園でアホみたいなイジメをされまくっていたから大姑のイビりに慣れるのも早かったよ。

 だけど、最近は本当に頭にきている。
 実はまだ誰にも言ってないけど、俺……第二子を妊娠してんだよね。旦那にはまだ言えずじまいだ。

 今海外にいるし、知ったのは昨日だし。だからこそ、このお腹の中の第二子に何かあったらと思うと怖いし、大姑にも腹が立ってくるのだ。あーいかんいかん。イライラしちゃ胎教に響くのに。

「あなたのような出来損ないの嫁など矢崎家にふさわしくありませんのよ。平凡地味の貧乏娘なんてね」
「…………」

 言われちゃったよ、久しぶりにはっきりと。結婚前に陰でよく言われたなーこの台詞。

「矢崎家の跡取りである男子をお産みになられたのは褒めますが、それ意外はてんで駄目。社長を支える夫人としても、矢崎家の嫁としての振る舞いも、何もかもが落第点。旦那に恥をかかせるだけの嫁なんていらないの」

「あの、大奥様……嫁というのは夫を支えていくものとは知っています。矢崎家では夫が働きに出て、妻は夫が働きやすいように家の事をこなす。何の由緒もないわたくしめはこの矢崎家にとってさぞや穀潰しな嫁だとお思いでしょう。しかしながら、夫である直さんとはちゃんと愛し合って一生を誓い合った仲。礼儀作法や英語力はなんとか精一杯努力をしていく所存でして、どうか今一度猶予を「黙りなさい!」

 大姑が声を荒げる。

「嫁の分際で口答えは許しません」
「う……」

 嫁イコール奴隷か。

「やはり生まれ持った育ちの悪さは目に余りますわね。あなたの不出来さを見逃していては他のご令嬢に笑われる一方。矢崎家の恥。恋だの愛だので結ばれたからって矢崎家の嫁という立場にはなんの関係もない事なんですから。そんなんで旦那様が気持ちよく仕事をこなせるわけでも、グループの業績が上がるわけでもないですしね。とにかく、一か月以内に完璧な嫁にならなければ強制的に離縁させていただきますのでそのつもりで」

 強制的に三行半を突きつけられてしまった。

 うはー面倒くさいことになりそうだな。旦那に言いたくてもあいつは今海外で忙しく動き回っているだろうし、リモート電話を毎日すると言ってもこの頃は重要な商談の契約前だからとなかなかに連絡が取りづらい。誠一郎さんもヨーロッパ辺りに外遊中だとか言っているし、こういう時に限って矢崎家の内輪について相談できる相手がいないってきついな。

 何かあったら相談しろとは言われているけど、なかなか家柄重視の矢崎家の連中には相談しにくいんだよなぁ。

 あー……めんどくさ。
 矢崎家の嫁であるこの複雑な立場……やめたい。





「おかーしゃん。だいじょーぶ?」

 息子の直樹なおきを保育園に迎えに行くと、疲れた顔をしている俺を見て心配で声をかけてきた。目にいれても可愛い我が息子だ。旦那にそっくりな見た目だしね。

 つか、まだ小さい息子に心配かけさせるなんて母親としてダメだよな。

「ごめん、大丈夫だよ」

 息子の頭をぐりぐり撫でた。きょとんとする直樹ににっこり笑いかける。

「直樹くんはりんご組の女の子全員からモテモテでして、今日もいろんな女の子達から遊びに誘われていたんですよ~」
「そ、そうなんですか」

 この保育士は直樹の担当の先生だ。元四天王の矢崎直のファンクラブに入っていたらしく、直樹をめちゃくちゃ可愛がってくれている。まるで我が子のように。

 可愛がる理由はちょっと不純だとは思うけど、直樹は旦那にそっくりだからこそ直樹を旦那と重ねているのだろう。別姓を名乗っているために父親がまさかの矢崎直だなんてバレてはいないだろうけど、もしばれでもすればいろんな意味でこの人は発狂しそうだなーなんて思ってしまう。有名人の妻は辛い。

「直樹くんはあの四天王の直さまにそっくりなんですよねー!特に目元が。性格も優しくて大人しくてしっかりしてて、将来は魔性の王子さまになるに違いないですよお」
「そーですか」

 魔性の王子ねえ。まあ、健康でまともに育ってくれるならなんでもいーや。

「直樹くんのお父様ってもしかして直様に似てるでしょう?」
「え、あー……ど、どうでしょうねえ。に、似てるといえば似てますけど、ぶ、ブサメン旦那ですよはははは」

 その本人ですなんて絶対に言えやしない。

「そうなんですか~。こんなに直様似のイケメン君なのに。直様に似てたら紹介してもらおーと思ったのになあ」

 あわよくば略奪しようというハラですかね。過激派のファンの考えって大体こんなもんで怖い。

「は、はははは……紹介できるほど大した旦那じゃないもんで。ただのしがない会社員ですよ。万年窓際族的な平社員で年収300万しかないくらいのブサメン」
「えーブサな上に年収300とかよく結婚しましたね~?あたしじゃ絶対無理ですぅ~」
「はは。まーいろいろありまして」

 父親の事は詮索されないように要注意である。家族の平穏のためだ。ただでさえ元四天王という肩書きから世の女に狙われているのに、これ以上異性関係で揉めたくないので絶対に父親はばれてはいけない。

 そういえば数日前、直樹は中身は俺に似ていると言われた事がある。天然無自覚な性格であの顔だから魔性の女たらしの男になるだろうなって。それはちょっと心配だ。旦那の二の舞にならなければいいんだけど、性格はともかく顔がよすぎるのも困ったもんだよ。

 だって旦那自体が規格外くらいにモテすぎて元彼女だかセフレだかを追っ払うのに苦労した。旦那のファンクラブは過激派が多かった事で有名で、あの矢崎直が結婚するってニュースが流れた当時、祝福する声が多い中でも過激派からは断固反対だったり殺害予告まで出回ったくらいだ。あーあの時は恋人として巻き添えをよく食らったなあ。

 
「今日の晩御飯は直樹の好きなハンバーグにしようか」

 帰り道、直樹をつれて近所のスーパーに寄った。

「ハンバーグ!ぼく、だいすき」
「じゃ、ハンバーグと野菜スープにしょう。たくさん地元野菜送ってもらったからね」
「ぼく、ばーちゃのおうちにいきたい」
「今度の日曜日に行ってこよう。土曜日の夜にはお父さんも帰ってくるし」
「でもおとーしゃんはまだおしごといそがしいときいてりゅよ?」
「あら、昨日お父さんとテレビ電話して約束したでしょう?」
「うん、してたー。だからぼくひさしぶりにおとーしゃにあえるのたのしみ」

 二ヶ月ぶりだもんな。二か月前にその時の夜の営みのおかげで第二子を妊娠しちゃってるわけで、それを伝えるのがちょっとドキドキである。

 スーパーで仲良く買い物を済ませた後、商店街にも寄って高級肉を購入。つわりがそのうちひどくなるので、今のうちに好きなものを爆食いである。直樹を妊娠した当初はつわりがひどくて大好きな焼き肉弁当が食えなかったからな。しばらく食べれなくなるなんて嫌だし。おかーしゃまたふとるよー?っていう直樹の有りがたい言葉などなんのこっちゃだ。

 店員さんが肉を包んでいる間、隣の電気屋の店頭に並んでいるテレビを眺めていると、芸能ニュースだかの速報に「矢崎財閥社長に不倫疑惑!?」というテロップが流れて吹き出しそうになった。
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