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学園トップスピンオフ
仁義なき女の闘い
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※時期的に十五章後
最近お兄ちゃんの周りでお邪魔虫がたくさん増えている気がする!!
まずは同じ百合ノ宮学園の矢崎友里香って財閥女!あの四天王の矢崎直の妹。
私と同じクラスで、成績優秀で運動神経も抜群で、生徒会の補佐をしているっていう悔しいけどチート才色兼備だ。でも性格は高飛車で腹黒いって知っている。
もう一人がお兄ちゃんと同じ学校で同じクラスで幼馴染の神山悠里だ。
性格は優しくておしとやかを装っているけど、虎視眈々とお兄ちゃんの貞操を狙ってて、時々お兄ちゃんのパンツを盗んでいる性犯罪者でもある。この女も矢崎直の妹らしい。
お兄ちゃんとは幼馴染ポジだから、いつお兄ちゃんが食われるかわかったものじゃないので私は常に気を抜けない。
そんな甲斐お兄ちゃんは二人の魔女に狙われているのに、悠長にものほほんとしてて、全く危機感を抱いていないから始末に負えないのだ。
しかもお母さんまで「はやく兄離れしなさい」って言うから、お母さんも最近は私の敵に回りつつある。私が日々こうやって根回しを繰り返していなきゃ、お兄ちゃんはとうの昔に貞操うばわれているというのにっ。
もう、妹として放っておけない!
「うふふ、今日も甲斐様は素敵だわ。カッコイイ……この世の誰よりもイケメンに見えますわ」
この友里香は毎朝暇なのか知らないけど、お兄ちゃんが登校している様子を双眼鏡でいつも覗いている。執事付きの高級カーでストーカーまがいに。金持ちだからこそ監視もあっさりできちゃうところが憎らしくて、私の最大の宿敵でもある。
「ちょっと!毎朝毎朝迷惑だって言ってんでしょ!いい加減にお兄ちゃん監視するのやめてくんない!?」
お兄ちゃんと途中まで登校して別れた後、この女を気配探知して発見した。
「あら、過去さん」
「未来だっつってんの!ストーカーお嬢様!」
「オーホホホ!未開さんだか過去さんだか知りませんけど、あなたはたかが妹なんですから大人しくしていてくださらないかしら。というか引っ込んでいてくださいます?甲斐様という殿方はあなたのようなブラコン女に迷惑しているのがわからないのかしら」
友里香は高そうなセンスをパッと開いて、バサバサと挑発してくるようにあおってくる。あおる度になんか埃が飛んでくるんですけどコレ嫌がらせか?マジ嫌がらせだよね!?ムッキー!!
「お兄ちゃんがあんたみたいな腹黒女に付け回されて、超迷惑しているのを妹として黙って見ていられないの!お兄ちゃんをつけ狙うならあたしに許可を得てからにしなさいよっ!!」
「なんであなたなんかに許可を得ないといけないのかしら。妹だからってブラコンや束縛も行き過ぎると嫌われますわよ?」
くっ……それはわかってるわよ。でも、この女にだけはお兄ちゃんを渡したくないの。この腹黒で高飛車でなんの苦労もしたことがないだろうお嬢様なんかにはっ。
「ま、今はあなたなんかと会話している場合じゃありませんの。たった今、甲斐様があの女に絡まれているようなので成敗をば!」
「は?なんですって!?」
私と友里香はケンカを中断して急いでお兄ちゃんの元へ急行した。
「甲斐君、おはよう。今日もかっこいいね」
「えっ」
「ううん、なんでもないよ。私の独り言。えへへ」
お兄ちゃんに可愛らしく微笑みかけているあの女は……神山悠里!!
私は電光石火の勢いで猛ダッシュし、お兄ちゃんと女の間に強引に割って入った。
「お兄ちゃんから離れなさいよ!このパンツ女!!」
「未来!それに友里香ちゃんまで!なんでここにいるんだよっ!っつーか学校は!?」
「お兄ちゃんがお邪魔虫に狙われているから助けに来たんだよ!学校に行ってる場合じゃないし」
「お邪魔虫って……また盛大に勘違いを……」
呆れて苦笑しているお兄ちゃん。本当に危機意識ないんだからっ。
「おはよう、未来ちゃん」
バカな男なら騙されそうな美少女の微笑みを武器にするこの神山悠里って魔女。友里香以上に可憐で女の子らしい所が油断ならないわね。
「あんたに未来ちゃんなんて言われる筋合いはないもん!今日もこっそりお兄ちゃんのパンツ盗む気でしょ!わかってるんだからっ!」
「そ、そんな……パンツを盗むだなんて……」
潤んだ瞳でもじもじしながらお兄ちゃんの背後に隠れるこいつ。出たわね、男心のハートを鷲掴むあざとぶりっ子め!
「しおらしくしても無駄なんだから!猫かぶりぶりっ子!」
と、昨日の犯行に及んでいる現場を動画で撮影できたので、それをこの悠里とお兄ちゃんに見せる。
「それいつの間に撮ったんだよ」
「最近実家のまわりで変な気配を感じてたから張り込みしてたの。怪しい野郎共かと思ったら、まさかのこの女だったんだから。言い逃れはもうできないわっ!このぶりっ子パンツ女!!」
「ふふ……うふふふ……あーあーばれちゃったら仕方ないなぁ。まさか証拠つきだされちゃうなんてねー。面倒な妹さんだなぁ」
「ついに本性を表したわね!!」
「しかもあなた、甲斐様の実家の神聖なるパンツを盗んだ事を謝罪するわけもなく、開き直るんですのね」
友里香も遅れて参戦し、悠里を睨む。
「まあまあ、友里香ちゃんも未来もそんなカッカすんなよ」
お兄ちゃんが平和的に私たちを落ち着かせようとするが、私達はそうもいかない。
「おにいちゃん!そんなんでいいの!?こんな変態痴女が幼馴染だなんてお兄ちゃんだって嫌でしょ!!」
「そうですわ!私だって甲斐様のパンツほしいのに……くんかくんかして私の最高級の家宝にして死ぬまで御守りにしたいのに。あろう事か盗んでいるなんてっ」
悠里もヤヴァイけど、この友里香もとんでもない変態よね。
「おいおい。そーゆー未来も最近こっそり俺の寮に入っていろいろ物色してるよな。偉そうに言える立場かよ」
お兄ちゃんが腕を組んで呆れている。そのセリフにぎくっとしちゃう。
「な、なんの事かなお兄ちゃん」
私は汗をだらだら滝のようにかきはじめた。
「とぼけても無駄だぜ。あまりにお前が頻繁に俺の寮に入る形跡が見られるため、数日前から監視カメラを設置しておいたんだ。母ちゃんも俺の知らないところで侵入しているが、それ以上にお前が俺の寮に侵入している回数の方がダントツで多い事はわかっている」
ほら、見ろ。と、言わんばかりにお兄ちゃんが監視カメラの様子をスマホで見せつけてきた。その画面上には泥棒みたいな格好をした私が、お兄ちゃんの寮に侵入し、タンスの中を物色している。
タンスの中でお兄ちゃんのパンツを見つけると、それを勢いよく掴んでクンカクンカして、ペロペロし始めた。で、すぐにその場で自分のパンツを脱ぎ、お兄ちゃんのパンツをゆっくり味わうようにあげて、最後まで上げ切った所で悦に入っている私。ラストにお兄ちゃんのパンツを五枚くらい窃盗して、何事もなかったかのように去る所までばっちりと映し出されていたのだった。
「なんて事っ!あんまりですわ!甲斐様がっ……甲斐様の貞操がっ!」
「ひどいっ!甲斐君が……甲斐君のパンツが……襲われちゃったっ!」
口々に友里香と悠里が怒りを口にしている。まるでお兄ちゃんがどこぞの馬の骨とも知らぬ女に、逆レイプされたような心境で二人とも憤っている。
私が半笑いで慌てて「ちがうの」とか「誤解で」とか、自分でもわけの分からない言い訳を繰り返しちゃうが、お兄ちゃん含めて友里香と悠里の鬼の形相で睨む顔に尻すぼみする。
「未来……お前な。ここまできたら、さすがに兄ちゃん……擁護できんぜ」と、お兄ちゃんはため息。
「最低ですわ!くんかくんかしてぺろぺろして、盗むどころかそれを素肌で穿いちゃうなんてっ!しかも五枚くらい盗みやがってっ!なんてうらやま……いえ、なんて最低な疑似レイプ行為でしょうっ!」
「本当そうだよ!たかが兄のパンツを穿くってだけでも近親相姦みたいでゆるせないのにっ!!そんな犯罪行為許されると思ってるの!?」
畳みかけるように私に非難の目を向けて攻撃してくるこの二人。こうなりゃあもう自棄だ!
「ふふーんだ!べーっ!!お兄ちゃんのパンツを妹が穿いて何が悪いっていうの!?それくらい貧乏な家庭では普通なんだから!あんたら知らないのぉ?」
「そ、そうなんですの!?」と、カルチャーショックを受けているバカな友里香。お嬢様は天然だから騙しやすいわ。
「ちょっとそんなわけないでしょう!いくら貧乏でも、兄妹同じパンツを穿きあうわけないじゃないっ。あなたも未来ちゃんに騙されないで!」
ちっ、やっぱりこの悠里って女が一番邪魔ねっ。幼馴染ポジほどウザいものはないわ!
「でも、兄妹だから許される行為だよねー。これが赤の他人なら犯罪も同然。血を分けた兄妹だからできる行為なのよ!」
「ちょっと開き直るつもりですの!?妹だからって許しませんわよっ!」
「そうだよ!甲斐君と近親相姦セックスするなんて最低だよっ!甲斐君は近親相姦嫌いなんだから!」
「いや、近親相姦シてないですから。あくまでパンツを穿いただけだから。誤解されるような事はどうか止めて……「何騒いでやがんのよ、うるさいね!」
そこへ、金髪ショートカットの美少女と、超絶イケメンが車を停車させて声をかけてきた。
第三の女が現れた!!しかも四天王の矢崎直付きで。だ、だれよ!?
「篠宮に直か。一緒に登校とはまたいらぬ噂が立っても知らねーぞ」
どうやらお兄ちゃんと知り合いのようだ。同じクラスメートかしら。
「噂なんて勝手に言わせておけばいいのよ。あたしと直はもう付き合ってないんだし」
「そうだ。丁度そこでバッタリ会っただけ。勘違いするなよ」
この二人、昔付き合っていたのかしら……。
「あ、お兄様!」
「お前は友里香……!ここで何をしている。学校行ったんじゃないのか」
「甲斐様と楽しく話したくてここにいるんですの。少しくらい遅刻しても構わないでしょう?だって学校なんてつまらないんですもの。私も開星学園に転入すればよかったわ。そうしたら甲斐様と毎日会えて尽くしてあげられるのに」
「そういうことか」
矢崎直が睨んだだけで、なぜか局地的に空気が氷点下まで下がった気がした。
「お兄様……なぜこちらを睨むんですの?」
「さあ、なぜだと思う」
にやりと笑う矢崎直。それに対して無表情の友里香。バチバチと兄妹ながら視線で睨みあっている。何この兄妹。マジ怖いんですけど。不仲すぎ。
「モテる男は大変ね」
と、お兄ちゃんに話しかける金髪美少女。篠宮って名前だっけ?スタイル抜群でクールビューティー系だ。
「別にモテているわけではないが……」
「そういう割には鼻の下伸びてんじゃねーの?童貞クン」
「伸びてねーし。ていうか篠宮……言いにくいんだけど、胸のボタン開きすぎて胸の谷間が見えrぶ!!」
ばちーんとお兄ちゃんが平手打ちをされていた。お兄ちゃんの実力なら避けようとすれば避けられるのに、あえてそれを受けるお兄ちゃんの顔がなんか嬉しそうに見えたのが気がかりだ。
「もうお兄ちゃんてば!他の女の胸の谷間見てニヤニヤしてんじゃないよっ!」
「そうだよ!恵梨ちゃんの胸なんてただのデカいだけの脂肪の塊だよ!所詮はプロポーションだけのデカ乳女ってだけで騙されないで!胸なら私がいつでもパンツごと貸すからっ!」
悠里の奴ったらもう自分が変態なの隠さなくなってきたわね。
「脂肪の塊でプロポーションだけのデカ乳女とは聞き捨てならないね!ここにいる全員あたしよりぺちゃぱいのくせに。ね、貧乳で貧弱な体のペチャパイトリオちゃん達」
「「「なんですってぇ!?」」」
悠里や私はもちろんの事、矢崎直と兄妹喧嘩していた友里香も聞き捨てならなかったらしい。胸が一番でかそうってだけで余裕なこのクールビューティー腹立つわ!
「ねえ架谷、あたしが一番でかいわよね?」
そして、自信満々にお兄ちゃんに訊ねやがるこの爆乳女。
「え、それ俺に訊くの?」
頬にでかい平手の痕を残しているお兄ちゃんが呆気にとられている。
「あんたに訊かないとみんなが納得しないじゃないか」
「えー……現実の女の胸の大きさなんてあんまり考えたことないしなぁ。俺、二次元派だし……まあ、あえて言うなら篠宮が……一番でかいんじゃないか、な」
お兄ちゃんのお墨付きをもらった途端、爆乳女は勝ち誇った顔をする。
「ふふ、ほら、あたしが一番大きいじゃないの。残念だったね、貧乳トリオちゃん」
「ぐぎぎぎぎ。そんなんで勝ったと思うなよ爆乳女めええっ!!」
私たち三人は悔しげにこの爆乳女を睨みつける事しかできない。その大きさは一目瞭然なのだから。
「でも……やっぱ現実の女の子の胸って正直興味ないんだよなぁ。二次元しか興奮しなくなったというか……」
「くくく、あははは……お前らざまあねえな」
急に矢崎直が不気味に笑い始める。
「甲斐の言うとおり、今の時代女の胸なんて大した事はない。こいつは根っからの二次元野郎で、二次元にしか興奮しないんだ。お前らの出る幕じゃないっつうか、誰もこいつを落とせない」
「ちょっとお兄様!何言っているんですの!?甲斐様はただ興味がないってだけで「それがもう勝負はついてるって言ってんだ」
矢崎直は悔しいくらい勝ち誇ったような笑みを見せる。
「こいつはただ単に女の武器だけでは落とせない。無自覚天然タラシだからな。こいつを惚れさせるには骨がいる」
たしかに骨がいると思うし、お兄ちゃんは天然タラシだ。自分をモテないと思いつつ無自覚に人を引き付けているのをわかっていない。
「ただ言えるのは、今のお前たち程度じゃコイツは落ちない。絶対に」
断定的な言い方で、私たちは唖然とする。そんなわけないと反発する前に矢崎直は続ける。
「お前らは甲斐の本質を見ていない。甲斐が何を望んでいるのか、何をしてほしいのか。好きだからって好意の押し付けばかりで、甲斐の気持ちを無視する」
「「っ……!」」
私たちはハッとする。
「それがどういう事かわからなければお前らは三流。甲斐を好きになる資格なんてないし、奪う資格もない。甲斐の写真で惨めにオナってな、雑魚女共」
まるで全てわかっているという態度に、私達女一同はショックを受けたように立ち尽くす。
こいつにはまだ勝てない!って。
「ちょ、おい直!何言ってんだよお前は!」
「その通りの事を言ったんだよ。たぶんお前は、オレと一緒なんだよ」
「え……」
「本当の自分を見てくれる人を望んでいるんだなって。それにな……お前は自分から与える愛や快楽より、与えられる愛や快楽の方が好きと見たんだ」
「は……?」
「こういう風に、な」
「んっ!?」
お兄ちゃんが呆然としている隙に、あろうことか矢崎直は私のお兄ちゃんの唇を……唇を不意打ちで奪いやがったあああ!!
「お前はオレに与えられてればいい。愛も快楽も」
「っ……~~~!!」
お兄ちゃんは口をパクパク金魚みたいにさせて真っ赤になっている。それは私達も一緒で。
「ぎゃあああ!私のお兄ちゃんがあああ!この泥棒オス猫おおっ!!」
「ちょっとお兄様あああ!!何ちゃっかりキスしてキザなセリフ甲斐様に吐いてんですのおおお!!最低ですくぁwせdrftgyふじこlpっ!!」
「甲斐くんに不意打ちキスだなんて卑怯だよ!それに甲斐くんにだって与える愛も快楽も必要なんだから!私は最後まで絶対諦めない!!諦めないんだからぁああ!!」
「はあ……やれやれ。なんか面倒くさそー」
その後、私達女一同は利害関係が一致し、一時休戦しつつ矢崎直とお兄ちゃんを引き離そう同盟を結成したのであった。一時休戦と言っても隙あらば略奪する気だけどね。
まあとにかく、お兄ちゃんを男好きのホモにさせてたまるかああああ!!!
終
最近お兄ちゃんの周りでお邪魔虫がたくさん増えている気がする!!
まずは同じ百合ノ宮学園の矢崎友里香って財閥女!あの四天王の矢崎直の妹。
私と同じクラスで、成績優秀で運動神経も抜群で、生徒会の補佐をしているっていう悔しいけどチート才色兼備だ。でも性格は高飛車で腹黒いって知っている。
もう一人がお兄ちゃんと同じ学校で同じクラスで幼馴染の神山悠里だ。
性格は優しくておしとやかを装っているけど、虎視眈々とお兄ちゃんの貞操を狙ってて、時々お兄ちゃんのパンツを盗んでいる性犯罪者でもある。この女も矢崎直の妹らしい。
お兄ちゃんとは幼馴染ポジだから、いつお兄ちゃんが食われるかわかったものじゃないので私は常に気を抜けない。
そんな甲斐お兄ちゃんは二人の魔女に狙われているのに、悠長にものほほんとしてて、全く危機感を抱いていないから始末に負えないのだ。
しかもお母さんまで「はやく兄離れしなさい」って言うから、お母さんも最近は私の敵に回りつつある。私が日々こうやって根回しを繰り返していなきゃ、お兄ちゃんはとうの昔に貞操うばわれているというのにっ。
もう、妹として放っておけない!
「うふふ、今日も甲斐様は素敵だわ。カッコイイ……この世の誰よりもイケメンに見えますわ」
この友里香は毎朝暇なのか知らないけど、お兄ちゃんが登校している様子を双眼鏡でいつも覗いている。執事付きの高級カーでストーカーまがいに。金持ちだからこそ監視もあっさりできちゃうところが憎らしくて、私の最大の宿敵でもある。
「ちょっと!毎朝毎朝迷惑だって言ってんでしょ!いい加減にお兄ちゃん監視するのやめてくんない!?」
お兄ちゃんと途中まで登校して別れた後、この女を気配探知して発見した。
「あら、過去さん」
「未来だっつってんの!ストーカーお嬢様!」
「オーホホホ!未開さんだか過去さんだか知りませんけど、あなたはたかが妹なんですから大人しくしていてくださらないかしら。というか引っ込んでいてくださいます?甲斐様という殿方はあなたのようなブラコン女に迷惑しているのがわからないのかしら」
友里香は高そうなセンスをパッと開いて、バサバサと挑発してくるようにあおってくる。あおる度になんか埃が飛んでくるんですけどコレ嫌がらせか?マジ嫌がらせだよね!?ムッキー!!
「お兄ちゃんがあんたみたいな腹黒女に付け回されて、超迷惑しているのを妹として黙って見ていられないの!お兄ちゃんをつけ狙うならあたしに許可を得てからにしなさいよっ!!」
「なんであなたなんかに許可を得ないといけないのかしら。妹だからってブラコンや束縛も行き過ぎると嫌われますわよ?」
くっ……それはわかってるわよ。でも、この女にだけはお兄ちゃんを渡したくないの。この腹黒で高飛車でなんの苦労もしたことがないだろうお嬢様なんかにはっ。
「ま、今はあなたなんかと会話している場合じゃありませんの。たった今、甲斐様があの女に絡まれているようなので成敗をば!」
「は?なんですって!?」
私と友里香はケンカを中断して急いでお兄ちゃんの元へ急行した。
「甲斐君、おはよう。今日もかっこいいね」
「えっ」
「ううん、なんでもないよ。私の独り言。えへへ」
お兄ちゃんに可愛らしく微笑みかけているあの女は……神山悠里!!
私は電光石火の勢いで猛ダッシュし、お兄ちゃんと女の間に強引に割って入った。
「お兄ちゃんから離れなさいよ!このパンツ女!!」
「未来!それに友里香ちゃんまで!なんでここにいるんだよっ!っつーか学校は!?」
「お兄ちゃんがお邪魔虫に狙われているから助けに来たんだよ!学校に行ってる場合じゃないし」
「お邪魔虫って……また盛大に勘違いを……」
呆れて苦笑しているお兄ちゃん。本当に危機意識ないんだからっ。
「おはよう、未来ちゃん」
バカな男なら騙されそうな美少女の微笑みを武器にするこの神山悠里って魔女。友里香以上に可憐で女の子らしい所が油断ならないわね。
「あんたに未来ちゃんなんて言われる筋合いはないもん!今日もこっそりお兄ちゃんのパンツ盗む気でしょ!わかってるんだからっ!」
「そ、そんな……パンツを盗むだなんて……」
潤んだ瞳でもじもじしながらお兄ちゃんの背後に隠れるこいつ。出たわね、男心のハートを鷲掴むあざとぶりっ子め!
「しおらしくしても無駄なんだから!猫かぶりぶりっ子!」
と、昨日の犯行に及んでいる現場を動画で撮影できたので、それをこの悠里とお兄ちゃんに見せる。
「それいつの間に撮ったんだよ」
「最近実家のまわりで変な気配を感じてたから張り込みしてたの。怪しい野郎共かと思ったら、まさかのこの女だったんだから。言い逃れはもうできないわっ!このぶりっ子パンツ女!!」
「ふふ……うふふふ……あーあーばれちゃったら仕方ないなぁ。まさか証拠つきだされちゃうなんてねー。面倒な妹さんだなぁ」
「ついに本性を表したわね!!」
「しかもあなた、甲斐様の実家の神聖なるパンツを盗んだ事を謝罪するわけもなく、開き直るんですのね」
友里香も遅れて参戦し、悠里を睨む。
「まあまあ、友里香ちゃんも未来もそんなカッカすんなよ」
お兄ちゃんが平和的に私たちを落ち着かせようとするが、私達はそうもいかない。
「おにいちゃん!そんなんでいいの!?こんな変態痴女が幼馴染だなんてお兄ちゃんだって嫌でしょ!!」
「そうですわ!私だって甲斐様のパンツほしいのに……くんかくんかして私の最高級の家宝にして死ぬまで御守りにしたいのに。あろう事か盗んでいるなんてっ」
悠里もヤヴァイけど、この友里香もとんでもない変態よね。
「おいおい。そーゆー未来も最近こっそり俺の寮に入っていろいろ物色してるよな。偉そうに言える立場かよ」
お兄ちゃんが腕を組んで呆れている。そのセリフにぎくっとしちゃう。
「な、なんの事かなお兄ちゃん」
私は汗をだらだら滝のようにかきはじめた。
「とぼけても無駄だぜ。あまりにお前が頻繁に俺の寮に入る形跡が見られるため、数日前から監視カメラを設置しておいたんだ。母ちゃんも俺の知らないところで侵入しているが、それ以上にお前が俺の寮に侵入している回数の方がダントツで多い事はわかっている」
ほら、見ろ。と、言わんばかりにお兄ちゃんが監視カメラの様子をスマホで見せつけてきた。その画面上には泥棒みたいな格好をした私が、お兄ちゃんの寮に侵入し、タンスの中を物色している。
タンスの中でお兄ちゃんのパンツを見つけると、それを勢いよく掴んでクンカクンカして、ペロペロし始めた。で、すぐにその場で自分のパンツを脱ぎ、お兄ちゃんのパンツをゆっくり味わうようにあげて、最後まで上げ切った所で悦に入っている私。ラストにお兄ちゃんのパンツを五枚くらい窃盗して、何事もなかったかのように去る所までばっちりと映し出されていたのだった。
「なんて事っ!あんまりですわ!甲斐様がっ……甲斐様の貞操がっ!」
「ひどいっ!甲斐君が……甲斐君のパンツが……襲われちゃったっ!」
口々に友里香と悠里が怒りを口にしている。まるでお兄ちゃんがどこぞの馬の骨とも知らぬ女に、逆レイプされたような心境で二人とも憤っている。
私が半笑いで慌てて「ちがうの」とか「誤解で」とか、自分でもわけの分からない言い訳を繰り返しちゃうが、お兄ちゃん含めて友里香と悠里の鬼の形相で睨む顔に尻すぼみする。
「未来……お前な。ここまできたら、さすがに兄ちゃん……擁護できんぜ」と、お兄ちゃんはため息。
「最低ですわ!くんかくんかしてぺろぺろして、盗むどころかそれを素肌で穿いちゃうなんてっ!しかも五枚くらい盗みやがってっ!なんてうらやま……いえ、なんて最低な疑似レイプ行為でしょうっ!」
「本当そうだよ!たかが兄のパンツを穿くってだけでも近親相姦みたいでゆるせないのにっ!!そんな犯罪行為許されると思ってるの!?」
畳みかけるように私に非難の目を向けて攻撃してくるこの二人。こうなりゃあもう自棄だ!
「ふふーんだ!べーっ!!お兄ちゃんのパンツを妹が穿いて何が悪いっていうの!?それくらい貧乏な家庭では普通なんだから!あんたら知らないのぉ?」
「そ、そうなんですの!?」と、カルチャーショックを受けているバカな友里香。お嬢様は天然だから騙しやすいわ。
「ちょっとそんなわけないでしょう!いくら貧乏でも、兄妹同じパンツを穿きあうわけないじゃないっ。あなたも未来ちゃんに騙されないで!」
ちっ、やっぱりこの悠里って女が一番邪魔ねっ。幼馴染ポジほどウザいものはないわ!
「でも、兄妹だから許される行為だよねー。これが赤の他人なら犯罪も同然。血を分けた兄妹だからできる行為なのよ!」
「ちょっと開き直るつもりですの!?妹だからって許しませんわよっ!」
「そうだよ!甲斐君と近親相姦セックスするなんて最低だよっ!甲斐君は近親相姦嫌いなんだから!」
「いや、近親相姦シてないですから。あくまでパンツを穿いただけだから。誤解されるような事はどうか止めて……「何騒いでやがんのよ、うるさいね!」
そこへ、金髪ショートカットの美少女と、超絶イケメンが車を停車させて声をかけてきた。
第三の女が現れた!!しかも四天王の矢崎直付きで。だ、だれよ!?
「篠宮に直か。一緒に登校とはまたいらぬ噂が立っても知らねーぞ」
どうやらお兄ちゃんと知り合いのようだ。同じクラスメートかしら。
「噂なんて勝手に言わせておけばいいのよ。あたしと直はもう付き合ってないんだし」
「そうだ。丁度そこでバッタリ会っただけ。勘違いするなよ」
この二人、昔付き合っていたのかしら……。
「あ、お兄様!」
「お前は友里香……!ここで何をしている。学校行ったんじゃないのか」
「甲斐様と楽しく話したくてここにいるんですの。少しくらい遅刻しても構わないでしょう?だって学校なんてつまらないんですもの。私も開星学園に転入すればよかったわ。そうしたら甲斐様と毎日会えて尽くしてあげられるのに」
「そういうことか」
矢崎直が睨んだだけで、なぜか局地的に空気が氷点下まで下がった気がした。
「お兄様……なぜこちらを睨むんですの?」
「さあ、なぜだと思う」
にやりと笑う矢崎直。それに対して無表情の友里香。バチバチと兄妹ながら視線で睨みあっている。何この兄妹。マジ怖いんですけど。不仲すぎ。
「モテる男は大変ね」
と、お兄ちゃんに話しかける金髪美少女。篠宮って名前だっけ?スタイル抜群でクールビューティー系だ。
「別にモテているわけではないが……」
「そういう割には鼻の下伸びてんじゃねーの?童貞クン」
「伸びてねーし。ていうか篠宮……言いにくいんだけど、胸のボタン開きすぎて胸の谷間が見えrぶ!!」
ばちーんとお兄ちゃんが平手打ちをされていた。お兄ちゃんの実力なら避けようとすれば避けられるのに、あえてそれを受けるお兄ちゃんの顔がなんか嬉しそうに見えたのが気がかりだ。
「もうお兄ちゃんてば!他の女の胸の谷間見てニヤニヤしてんじゃないよっ!」
「そうだよ!恵梨ちゃんの胸なんてただのデカいだけの脂肪の塊だよ!所詮はプロポーションだけのデカ乳女ってだけで騙されないで!胸なら私がいつでもパンツごと貸すからっ!」
悠里の奴ったらもう自分が変態なの隠さなくなってきたわね。
「脂肪の塊でプロポーションだけのデカ乳女とは聞き捨てならないね!ここにいる全員あたしよりぺちゃぱいのくせに。ね、貧乳で貧弱な体のペチャパイトリオちゃん達」
「「「なんですってぇ!?」」」
悠里や私はもちろんの事、矢崎直と兄妹喧嘩していた友里香も聞き捨てならなかったらしい。胸が一番でかそうってだけで余裕なこのクールビューティー腹立つわ!
「ねえ架谷、あたしが一番でかいわよね?」
そして、自信満々にお兄ちゃんに訊ねやがるこの爆乳女。
「え、それ俺に訊くの?」
頬にでかい平手の痕を残しているお兄ちゃんが呆気にとられている。
「あんたに訊かないとみんなが納得しないじゃないか」
「えー……現実の女の胸の大きさなんてあんまり考えたことないしなぁ。俺、二次元派だし……まあ、あえて言うなら篠宮が……一番でかいんじゃないか、な」
お兄ちゃんのお墨付きをもらった途端、爆乳女は勝ち誇った顔をする。
「ふふ、ほら、あたしが一番大きいじゃないの。残念だったね、貧乳トリオちゃん」
「ぐぎぎぎぎ。そんなんで勝ったと思うなよ爆乳女めええっ!!」
私たち三人は悔しげにこの爆乳女を睨みつける事しかできない。その大きさは一目瞭然なのだから。
「でも……やっぱ現実の女の子の胸って正直興味ないんだよなぁ。二次元しか興奮しなくなったというか……」
「くくく、あははは……お前らざまあねえな」
急に矢崎直が不気味に笑い始める。
「甲斐の言うとおり、今の時代女の胸なんて大した事はない。こいつは根っからの二次元野郎で、二次元にしか興奮しないんだ。お前らの出る幕じゃないっつうか、誰もこいつを落とせない」
「ちょっとお兄様!何言っているんですの!?甲斐様はただ興味がないってだけで「それがもう勝負はついてるって言ってんだ」
矢崎直は悔しいくらい勝ち誇ったような笑みを見せる。
「こいつはただ単に女の武器だけでは落とせない。無自覚天然タラシだからな。こいつを惚れさせるには骨がいる」
たしかに骨がいると思うし、お兄ちゃんは天然タラシだ。自分をモテないと思いつつ無自覚に人を引き付けているのをわかっていない。
「ただ言えるのは、今のお前たち程度じゃコイツは落ちない。絶対に」
断定的な言い方で、私たちは唖然とする。そんなわけないと反発する前に矢崎直は続ける。
「お前らは甲斐の本質を見ていない。甲斐が何を望んでいるのか、何をしてほしいのか。好きだからって好意の押し付けばかりで、甲斐の気持ちを無視する」
「「っ……!」」
私たちはハッとする。
「それがどういう事かわからなければお前らは三流。甲斐を好きになる資格なんてないし、奪う資格もない。甲斐の写真で惨めにオナってな、雑魚女共」
まるで全てわかっているという態度に、私達女一同はショックを受けたように立ち尽くす。
こいつにはまだ勝てない!って。
「ちょ、おい直!何言ってんだよお前は!」
「その通りの事を言ったんだよ。たぶんお前は、オレと一緒なんだよ」
「え……」
「本当の自分を見てくれる人を望んでいるんだなって。それにな……お前は自分から与える愛や快楽より、与えられる愛や快楽の方が好きと見たんだ」
「は……?」
「こういう風に、な」
「んっ!?」
お兄ちゃんが呆然としている隙に、あろうことか矢崎直は私のお兄ちゃんの唇を……唇を不意打ちで奪いやがったあああ!!
「お前はオレに与えられてればいい。愛も快楽も」
「っ……~~~!!」
お兄ちゃんは口をパクパク金魚みたいにさせて真っ赤になっている。それは私達も一緒で。
「ぎゃあああ!私のお兄ちゃんがあああ!この泥棒オス猫おおっ!!」
「ちょっとお兄様あああ!!何ちゃっかりキスしてキザなセリフ甲斐様に吐いてんですのおおお!!最低ですくぁwせdrftgyふじこlpっ!!」
「甲斐くんに不意打ちキスだなんて卑怯だよ!それに甲斐くんにだって与える愛も快楽も必要なんだから!私は最後まで絶対諦めない!!諦めないんだからぁああ!!」
「はあ……やれやれ。なんか面倒くさそー」
その後、私達女一同は利害関係が一致し、一時休戦しつつ矢崎直とお兄ちゃんを引き離そう同盟を結成したのであった。一時休戦と言っても隙あらば略奪する気だけどね。
まあとにかく、お兄ちゃんを男好きのホモにさせてたまるかああああ!!!
終
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