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「お、おれ……あなたを……フラヴィオさんを……あ、あ、愛しています……はなれたく、ないです……。こんな、汚れたおれで……いいんですか……?」
「汚れてなどいないと何度も言っているだろう。いいんですかじゃなくてお前じゃないとだめだ」
「でも「でももくそもあるか。でもやだだってはこれから禁止だ」

 流れ落ちる涙をそっと親指の腹で拭い、唇を寄せて舐めとる。綺麗な涙だなって思う。こんな綺麗な涙を流せる者が、汚いはずがないのだから。

「もう二度と……離れない。お前を傷つけさせない」

 愛してる――。

 もう一度愛を耳元で囁き、ゆっくりと顔が寄せられた。月明かりに照らされる中で、触れるだけの口づけを交わし、その箍が外れたようにもう一度離して見つめあうと、今度は深く交わるようなキスを何度も何度も繰り返した。

「ティオ……愛しい」
「俺もあなたが愛しいです。フランさんの手で……俺を清めてください」
「いいのか……?」
「あなたになら触れられても大丈夫だって確信がもてたから……。一刻も早く清めてほしい。上書きしてほしい。忘れたい」
「っ……ティオ……!」


 愛おしさが止まらず、ゆっくり一回り小さな体をベットに押し倒した。

 お互いの瞳に自分を映し合って、愛おしげに唇を重ね合う。先ほどのキスですっかり唇は赤く果実のように濡れそぼっており、閉じていたティオの口をこじ開けて舌を差し込んだ。口内でティオの舌を見つけて絡めとると、ティオが強く抱きついてきたのに高揚する。

 吐息と粘膜の音が響き渡ってきて、ある程度満足して唇をやっと離すと、トロンとした目の黒曜石がフラヴィオを見つめていた。

「フランさ……ん、ぅ」

 再度唇をねっとり重ねて、口内を舌で愛撫しながら着ているものに手を伸ばす。するりと腰の帯を取っ払った。

「ん……っん……は……」

 唇を放した途端、目の前には真剣だけれど色気だっている青い瞳と重なった。腰の奥がきゅんと切なくなって、待ちわびる期待が体の芯からじわじわこみあげてくる。
 
「ぁあ……ん」

 静かにくぐもった声があがる。フラヴィオの掌がティオの柔肌に滑らかに動くたびにもどかしくなる。ぞわぞわする。

 一つ一つ触れる仕草にいちいち過敏に反応してしまい、ティオの艶めかしい声がフラヴィオの股間と脳髄を疼かせる。

 嫌だったあの気持ちの悪い男の手じゃない。好きな相手が自分に触れている。愛おしげに求めてくれる。それだけでどうしようもなくティオの胸がきゅうっと締め付けられて、なんて心地がいいのだろうとウットリする。

 あれだけ死ぬほど嫌でしょうがなかった行為が、この人だとこんなにいいだなんて……

「ティオ……大丈夫。大丈夫だ」

 こうして何度も労わってくれる。傷つけないように、不安がらせないようにして優しく触れてくれる。ああ、優しい人だ。好き。大好きだ。

「は、あ、ああっ、ん」

 掌で肌をさすりながら、唇、あご、喉、首筋、肩に口づけを落とされて、胸元にツゥーっと舌を這わせた。乳首の先端に舌を這わせられるのを間近で見てしまい、ティオは恥ずかしさに目を閉じてしまう。

 でも、怖いもの見たさで気になって薄目でみてしまう。あの男との行為を思い出さないか不安だから。だけどそれでも目が離せない。恥ずかしいはずなのに、フラヴィオの優しい行為に目が離せない。

「っは……っあぁ……ふらん、さ……」

 躰は火照っているのか少しほんのり薄紅に色づいていて、身をよじらせるティオ。従順に感じている反応にホッとする。本当なら少し前まであんな恐ろしい目にあって行為自体が恐怖でしかないはず。なのにこうして自分に身を預けて力を抜いてくれている。恥ずかしそうにしながらも身をあけっぴろげにしてくれている。

 けなけで、可愛らしくて、色っぽくて、放っておけなくて。
 安心させたい。今、お前をこうしているのは自分だと。痛いだけの行為など忘れさせてやると――。

「全部、忘れさせてやる」
「フランさ……」
「あの男じゃない。今、お前の目の前でお前を組み引いているのはだれだ?」
「フランさん……です」
「そう、俺なんだ。目をそらさないでほしい。俺だけを見て」
「っ……はい……」

 時間をかけて安心させるように、気持ちいいという先入観を植え付けるように、舌と手を使って愛撫を続けた。フラヴィオの視線も手もさらに下の方へくだっていくと、男でも一番敏感な箇所へたどり着いた。

 わずかに羞恥心で抵抗をするティオをやんわり押さえつける。そのままに流れるように下着をおろしていくと、ティオの未発達な性器が勢いよく顔を出した。涼しげな空気に晒されて、息苦しさに解放された性器は快楽を欲すように苦し気にそそり立っている。少しずつ感じていたのか先端が少し湿りけを帯びていて、とろりと蜜がよだれのように零れている。

 下生えもない未発達の性器をフラヴィオはそっとこすり、ためらいもなく口に含んだ。

「あ……ふらんさっ……ひ、やぁあ」

 小さなそれを口内で転がし、舌で絡め、吸いつく行為にもどかしくて。いじらしくて。びくびくと腰を震わせる。舌先が先っぽから竿を下り、睾の方に添えられて、また銜えられて。口でじゅぽじゅぽと優しく出し入れされる。

「あっ……あっ……ああ、ああ、だめっ。や、ぁああっ」

 びりびりと背筋と脳髄に甘い痺れが走る。あの男では絶対に感じる事がなかった熱と甘美なしびれは、眩暈がするほど気持ちがいい。愛撫ってこんなにもいいものだったのか。

 やがては我慢ができなくなり、フラヴィオの口の中で勢いよく達してしまった。どくんと吐き出された白濁は止める事もなくあっさり飲み干されてしまう。すかさず唇を重ねられて、互いの唾液と出したばかりの精を共有し合う。苦みが口内で広がり、己の出したものの味を知る事に抵抗があったけれど、愛する人の愛撫が気持ちがよくてむしろ自分から欲した。

「ん、うぅ」

 ティオの足をさらに開かせて、性器のさらに下の尻穴に中指を突き入れた。狭いそこは未だにあの男が侵入した痛みと恐怖が残っており、ティオは顔を強張らせた。

「っ……ふ、く……ぁ」

 あの男に犯された痛みはそう簡単には消えず、やはり恐怖心は多少ながら抱いてしまう。そんなフラヴィオは何度も優しい言葉をかけて安心させて、ローションでソコを潤滑させる。自らの尾をすんなり受け付けやすいように念入りに入り口を溶かした。

 時々、ティオの反応が敏感になるしこりに指をかすめて、その敏感な刺激に引っ込んでいた快楽の波が少し上昇した。

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