9 / 12
災難編
2
しおりを挟む
「うう……」
ぼくは柔らかいオンボロソファの上で目を覚ました。
ぼやけた視界の先は見知らぬ天井が広がっていて、ぐるりと見渡せばどこかの廃工場の跡地のように思えた。
一体どうしてここにいるんだっけ……。たしか自分はgazelleという怖い暴走族と会って、それで……
「あ……!」
身動きを取ろうとすると、両腕が全く動かない事に気づいた。
両手首は手錠のようなもので背中の腰辺りに一纏めにされていた。当然力を入れても手錠の鍵がないので外れやしない。なんでこんなので拘束されてんの!?
「残念だけど、ぼくらとしばらく付き合ってね」
その声に顔を上げると、先ほどの副総長を名乗った黒瀬さんやたくさんの厳つい男の人達が立っていた。
そしてその隣には、悠然と椅子に座っている一番威厳がありそうな男の人も。
だ、だれ!?なんでぼくこんな怖い人らに取り囲まれてんの。たくさんの人に取り囲まれて怖い。
「お前が柏木の弱点か」
低い声がこの空間に響いた。それだけで周りの話し声がピタリと止む。
茶髪と金髪を混ぜたウルフカットに、リングのピアスを左右につけている男の人がぼくをジロジロ見つめてくる。開いたシャツの胸元には蝶やら髑髏のタトゥーがあって、派手目なB系風の装飾がじゃらついていた。
装飾過多……。
こう思っちゃダメなんだろうけど、なんか……中二病みたい。
こんな事を言ったら殺されそうなので死んでも言えないけど、ぶっちゃけ似合ってないというか、まあ似合ってないっす。ダサい。
せっかくのイケメン顔なのに装飾が多すぎて目が痛いし、ゴテゴテしすぎだし、装飾も今時どうよって思う十字架とか髑髏とかだし、服装も黒のノースリーブ……ぶふっ。やっぱりダサい。まさしくひと昔の中二病みたいな外見だと思っちゃった。
もっと似合う格好をすればいいのに。アオなんて金髪だけどハーフ顔だからそれがとっても似合っていて、服装も至ってシンプルで装飾もつけたりしないからやっぱりアオの方が断然カッコイイ。
それに比べてこの人は……ぷ。見れば見るほど中二過ぎじゃないか。い、痛い。ダサい。笑いがこみ上げてくる。ひいい。
「う、う……ぷふふくふふ」
笑うな。笑っちゃだめだ。死ぬぞぼく。我慢しろ。
ぼくは笑いそうになる表情筋を必死で押し殺した。こんな危機的状況なのに空気の読めない表情筋で困る。
「ん、なんだ。なんか言いたいことがあるのか」
そんな苦し気なぼくの表情を見て、中二病の男の人が視線を鋭くさせる。やばいっ。
「い、いえ、ぶふ。な、なんでもな、なひゃ、ないです。ちょ、ぶひ、ちょっと空気のせいかむせてしまいまして。げほげほっごほっ」
ぼくは笑いを必死にムセでごまかした。バレたら間違いなく殺される。人生終了しちゃう。アオに会う前に死にたくない。まだエッチだってしてないのに。
しかし、そんなぼくのムセの演技力がすごかったのか、なんとかごまかすことに成功した。ホッ。ぼくの迫真のムセ演技成功だ。
それにしても怖いよ。どうしよう。最近のぼくってストーカーに狙われたり、不良の連中にさらわれたりして災難続きで呪われているよ。はあ……もうお泊りどころじゃなくなっちゃったな。
「あ、あの……あなたは誰ですか……?」
ぼくは男に怖気づきながらもおずおず訊ねた。今にも小便漏らしそうだけど、この中二病の人や不良達の鋭い視線に耐えられなくて、空気を変えるために訊ねた。下手をすればまた笑いそうだしね。
「俺はこのgazelleの総長。暁龍一ってもんだ」
「え。あ、あなたが、そ、そそそ総長おぉ!?」
たしかに一際他の人達とはオーラが違っていたし、みんながこの人にだけ態度が違っていたのでそうなんだろう。中二な格好なのは総長らしくはないけど。
「あ、あの……な、なななんでぼくに総長様にぃいい!?……な、何かごようなんでしょおか!?」
総長という肩書きの人にぼくは卒倒しそうになる。こんな親玉がぼくになんの用なんでしょうか。
「そうだあー……あえて言うなら興味本位で見たくなったという所だ」
「きょ、興味本位って……」
「見た所、本当にただの平凡男子のようだ。だが、柏木が気に入る自体……妙に興味がそそられちまうんだよ。どこに魅かれる要素があったのかが」
中二病の暁さんとやらがぼくに近づき、その隣に座る。ひいっ……近づかないでくださいい。
「誰一人特定な奴を今まで作らなかった柏木が、だ。しかもまさかの野郎が相手って何かの間違いかと思ったが、本当なのかもしれん」
「前まで柏木は特定の女を作らずに遊び歩いていたようだけど、弱点ができた事によって前より腑抜けになっているって報告もあるしね」と、会話に割って入って来た黒瀬さん。
「腑抜けな奴を倒したところでつまらんが、それでも奴の恋人という立場は女共の間では魅力のある肩書き。小僧、お前は贅沢な立場にいるという事をわかっているのか?」
「贅沢な立場、ですか……。そ、そりゃあ贅沢な立場とは思いますけど……」
アオの恋人という立場はそりゃあ贅沢な立場だ。ぼくの通う学校一のイケメンだし、成績優秀でスポーツ万能。クールで取っ付き難い雰囲気がまた陽キャな女子や男子を煽るため、いつも同性からはやっかまれて、異性達からの告白が絶えないって聞いている。
そんな一匹狼な彼と話してみると弱い陰キャな男女には優しくて、反対に陽キャな男女には冷たい感じかな。でも気遣いができる人で、ぼく以上に重度なゲームオタなんだよね。女と遊ぶ暇があったらゲームをしていたいって言うくらいのゲーマーで、休日はゲームをしながらアニメを見ているんだって。
そんなアオ以外はだめだって思うくらいぼくはアオしか目に入らない。その点では贅沢とはまた違うのかもしれないけど、そう思う事さえ贅沢だよね。
「なあ、小僧。柏木なんてやめて俺のものになれよ」
さらに近寄ってくる暁さん。え、何を言っているんだろう。この厨二病さん。
「なんでそんな事……」
「ただ、柏木の弱点を壊したい。屈服させたい。それが理由だ」
意味が分からない。
それだけのためにアオから中二病の貴方に乗り換えようとするはずがないんですけど。ぼくにとってはなんのメリットもないし、そもそもアオ以外の男を好きになれるほど同性愛者でもないし。
だから、否定の言葉を言い返そうとした所で、暁さんはぐいっとぼくの顎を掴んで引き寄せた。
「っ……ンンッ!?」
唇に生暖かい感触がして、瞬く間に舌が入ってきた。
なっ……なんで。なんでこんなキスされてるのっ!?いやだ。無理。気持ち悪い。
ぼくは無我夢中で暁さんの舌に歯を立てた。
アオ以外の人なんて嫌だ!!
「なっ……何をするんですかっ!」
ぜーぜーと涙目で暁さんを睨みつける。今すぐ水道水でいろいろと洗い落としたい。
「くく……なかなかの反撃力だ。まるで猫のようだな。弱弱しい猫がキレて、一矢報いて牙を向けたって所か」
暁さんはぐいっと親指で口の端から滴る血を拭う。中二病をこじらせた人は行動も中二病臭いよ。少女漫画でも今時こんな行動したらドン引きされるの知らないのかな。
「き、キスなんて最低ですっ……!」
「その反応は……まだ柏木とは何もしていないのか。舌を入れるキスすらも……」
ぼくの頬がかあっと熱くなった。たしかにまだです。
「そんな事……あなた方には関係ないでしょうっ!」
最低だ。アオとすらまだ深いキスはまだなのに……先にこの人にされるなんて。
「ふふ……あの柏木がねー……何も手を出していないなんて……それも珍しい」
暁さんはぼくの耳に舌を這わせた。ひいいい、と、鳥肌が。
この人、中二病どころか変態の手が早い人だ。
「お前が穢された姿を見て、柏木がどんな顔をするか見たくなったぜ」
どさりとソファの上に寝かせられた。只ならぬ暁さんの顔にぼくは本能的に背筋が凍り付いた。
「な……にを……」
見下ろされる暁さんの瞳に邪なものが帯び始める。
「決まってんだろう?くくく……」
視線の先のぼくの制服のボタンが弾き飛ぶ。シャツを引き裂かれたと気づいた時、やっと自分の置かれた状況の恐ろしさに気づいたのだった。
*
「それにしても、蒼ちゃんにまさか本命ができるなんてねー」
「うるせぇ。何回同じ事を言ってんだよ」
ここは柏木家一族が経営する喫茶店。
母親の両親であり、蒼の祖父母が気ままにやっている喫茶店だが、元やくざの組長である祖父があまりに人望が厚く、裏世界最強の実力者であったため、道に迷った半端者たちの駆け込み寺のような役割もしている店だった。
その祖父はもうヤクザの顔を完全に捨て、今では喫茶店で一般のお客さんと何気ない世間話や、美味しいコーヒーを入れるのが日々の楽しみなのだという。
「だって、私が外国行ってる間にそんな子作ってるなんて聞いてないしー。あのゲーム好きで喧嘩ばかりな蒼ちゃんも守りたい子ができて嬉しいなって思ったの」
母親は相変わらず蒼が大好きでぎゅーっと抱きついてくる。いい加減に子離れしろよと呆れる蒼。
「今日、ここに連れてくるんでしょ?あーはやく会ってみたいわー!」
「会ってもいいが、とりあえず邪魔はすんなよ。あと夜中は外で泊ってくる」
「えー!外で泊まるなんてつまんなーい!」
もちろん、記念すべき初夜を邪魔されたくないからだ。
ちょっと懐が痛いが、ちゃんとホテルを予約しておいたのでこれで邪魔はされまいと一安心。そろそろ彼方が来るかなと待っていると、扉が勢いよく開いた。
ぼくは柔らかいオンボロソファの上で目を覚ました。
ぼやけた視界の先は見知らぬ天井が広がっていて、ぐるりと見渡せばどこかの廃工場の跡地のように思えた。
一体どうしてここにいるんだっけ……。たしか自分はgazelleという怖い暴走族と会って、それで……
「あ……!」
身動きを取ろうとすると、両腕が全く動かない事に気づいた。
両手首は手錠のようなもので背中の腰辺りに一纏めにされていた。当然力を入れても手錠の鍵がないので外れやしない。なんでこんなので拘束されてんの!?
「残念だけど、ぼくらとしばらく付き合ってね」
その声に顔を上げると、先ほどの副総長を名乗った黒瀬さんやたくさんの厳つい男の人達が立っていた。
そしてその隣には、悠然と椅子に座っている一番威厳がありそうな男の人も。
だ、だれ!?なんでぼくこんな怖い人らに取り囲まれてんの。たくさんの人に取り囲まれて怖い。
「お前が柏木の弱点か」
低い声がこの空間に響いた。それだけで周りの話し声がピタリと止む。
茶髪と金髪を混ぜたウルフカットに、リングのピアスを左右につけている男の人がぼくをジロジロ見つめてくる。開いたシャツの胸元には蝶やら髑髏のタトゥーがあって、派手目なB系風の装飾がじゃらついていた。
装飾過多……。
こう思っちゃダメなんだろうけど、なんか……中二病みたい。
こんな事を言ったら殺されそうなので死んでも言えないけど、ぶっちゃけ似合ってないというか、まあ似合ってないっす。ダサい。
せっかくのイケメン顔なのに装飾が多すぎて目が痛いし、ゴテゴテしすぎだし、装飾も今時どうよって思う十字架とか髑髏とかだし、服装も黒のノースリーブ……ぶふっ。やっぱりダサい。まさしくひと昔の中二病みたいな外見だと思っちゃった。
もっと似合う格好をすればいいのに。アオなんて金髪だけどハーフ顔だからそれがとっても似合っていて、服装も至ってシンプルで装飾もつけたりしないからやっぱりアオの方が断然カッコイイ。
それに比べてこの人は……ぷ。見れば見るほど中二過ぎじゃないか。い、痛い。ダサい。笑いがこみ上げてくる。ひいい。
「う、う……ぷふふくふふ」
笑うな。笑っちゃだめだ。死ぬぞぼく。我慢しろ。
ぼくは笑いそうになる表情筋を必死で押し殺した。こんな危機的状況なのに空気の読めない表情筋で困る。
「ん、なんだ。なんか言いたいことがあるのか」
そんな苦し気なぼくの表情を見て、中二病の男の人が視線を鋭くさせる。やばいっ。
「い、いえ、ぶふ。な、なんでもな、なひゃ、ないです。ちょ、ぶひ、ちょっと空気のせいかむせてしまいまして。げほげほっごほっ」
ぼくは笑いを必死にムセでごまかした。バレたら間違いなく殺される。人生終了しちゃう。アオに会う前に死にたくない。まだエッチだってしてないのに。
しかし、そんなぼくのムセの演技力がすごかったのか、なんとかごまかすことに成功した。ホッ。ぼくの迫真のムセ演技成功だ。
それにしても怖いよ。どうしよう。最近のぼくってストーカーに狙われたり、不良の連中にさらわれたりして災難続きで呪われているよ。はあ……もうお泊りどころじゃなくなっちゃったな。
「あ、あの……あなたは誰ですか……?」
ぼくは男に怖気づきながらもおずおず訊ねた。今にも小便漏らしそうだけど、この中二病の人や不良達の鋭い視線に耐えられなくて、空気を変えるために訊ねた。下手をすればまた笑いそうだしね。
「俺はこのgazelleの総長。暁龍一ってもんだ」
「え。あ、あなたが、そ、そそそ総長おぉ!?」
たしかに一際他の人達とはオーラが違っていたし、みんながこの人にだけ態度が違っていたのでそうなんだろう。中二な格好なのは総長らしくはないけど。
「あ、あの……な、なななんでぼくに総長様にぃいい!?……な、何かごようなんでしょおか!?」
総長という肩書きの人にぼくは卒倒しそうになる。こんな親玉がぼくになんの用なんでしょうか。
「そうだあー……あえて言うなら興味本位で見たくなったという所だ」
「きょ、興味本位って……」
「見た所、本当にただの平凡男子のようだ。だが、柏木が気に入る自体……妙に興味がそそられちまうんだよ。どこに魅かれる要素があったのかが」
中二病の暁さんとやらがぼくに近づき、その隣に座る。ひいっ……近づかないでくださいい。
「誰一人特定な奴を今まで作らなかった柏木が、だ。しかもまさかの野郎が相手って何かの間違いかと思ったが、本当なのかもしれん」
「前まで柏木は特定の女を作らずに遊び歩いていたようだけど、弱点ができた事によって前より腑抜けになっているって報告もあるしね」と、会話に割って入って来た黒瀬さん。
「腑抜けな奴を倒したところでつまらんが、それでも奴の恋人という立場は女共の間では魅力のある肩書き。小僧、お前は贅沢な立場にいるという事をわかっているのか?」
「贅沢な立場、ですか……。そ、そりゃあ贅沢な立場とは思いますけど……」
アオの恋人という立場はそりゃあ贅沢な立場だ。ぼくの通う学校一のイケメンだし、成績優秀でスポーツ万能。クールで取っ付き難い雰囲気がまた陽キャな女子や男子を煽るため、いつも同性からはやっかまれて、異性達からの告白が絶えないって聞いている。
そんな一匹狼な彼と話してみると弱い陰キャな男女には優しくて、反対に陽キャな男女には冷たい感じかな。でも気遣いができる人で、ぼく以上に重度なゲームオタなんだよね。女と遊ぶ暇があったらゲームをしていたいって言うくらいのゲーマーで、休日はゲームをしながらアニメを見ているんだって。
そんなアオ以外はだめだって思うくらいぼくはアオしか目に入らない。その点では贅沢とはまた違うのかもしれないけど、そう思う事さえ贅沢だよね。
「なあ、小僧。柏木なんてやめて俺のものになれよ」
さらに近寄ってくる暁さん。え、何を言っているんだろう。この厨二病さん。
「なんでそんな事……」
「ただ、柏木の弱点を壊したい。屈服させたい。それが理由だ」
意味が分からない。
それだけのためにアオから中二病の貴方に乗り換えようとするはずがないんですけど。ぼくにとってはなんのメリットもないし、そもそもアオ以外の男を好きになれるほど同性愛者でもないし。
だから、否定の言葉を言い返そうとした所で、暁さんはぐいっとぼくの顎を掴んで引き寄せた。
「っ……ンンッ!?」
唇に生暖かい感触がして、瞬く間に舌が入ってきた。
なっ……なんで。なんでこんなキスされてるのっ!?いやだ。無理。気持ち悪い。
ぼくは無我夢中で暁さんの舌に歯を立てた。
アオ以外の人なんて嫌だ!!
「なっ……何をするんですかっ!」
ぜーぜーと涙目で暁さんを睨みつける。今すぐ水道水でいろいろと洗い落としたい。
「くく……なかなかの反撃力だ。まるで猫のようだな。弱弱しい猫がキレて、一矢報いて牙を向けたって所か」
暁さんはぐいっと親指で口の端から滴る血を拭う。中二病をこじらせた人は行動も中二病臭いよ。少女漫画でも今時こんな行動したらドン引きされるの知らないのかな。
「き、キスなんて最低ですっ……!」
「その反応は……まだ柏木とは何もしていないのか。舌を入れるキスすらも……」
ぼくの頬がかあっと熱くなった。たしかにまだです。
「そんな事……あなた方には関係ないでしょうっ!」
最低だ。アオとすらまだ深いキスはまだなのに……先にこの人にされるなんて。
「ふふ……あの柏木がねー……何も手を出していないなんて……それも珍しい」
暁さんはぼくの耳に舌を這わせた。ひいいい、と、鳥肌が。
この人、中二病どころか変態の手が早い人だ。
「お前が穢された姿を見て、柏木がどんな顔をするか見たくなったぜ」
どさりとソファの上に寝かせられた。只ならぬ暁さんの顔にぼくは本能的に背筋が凍り付いた。
「な……にを……」
見下ろされる暁さんの瞳に邪なものが帯び始める。
「決まってんだろう?くくく……」
視線の先のぼくの制服のボタンが弾き飛ぶ。シャツを引き裂かれたと気づいた時、やっと自分の置かれた状況の恐ろしさに気づいたのだった。
*
「それにしても、蒼ちゃんにまさか本命ができるなんてねー」
「うるせぇ。何回同じ事を言ってんだよ」
ここは柏木家一族が経営する喫茶店。
母親の両親であり、蒼の祖父母が気ままにやっている喫茶店だが、元やくざの組長である祖父があまりに人望が厚く、裏世界最強の実力者であったため、道に迷った半端者たちの駆け込み寺のような役割もしている店だった。
その祖父はもうヤクザの顔を完全に捨て、今では喫茶店で一般のお客さんと何気ない世間話や、美味しいコーヒーを入れるのが日々の楽しみなのだという。
「だって、私が外国行ってる間にそんな子作ってるなんて聞いてないしー。あのゲーム好きで喧嘩ばかりな蒼ちゃんも守りたい子ができて嬉しいなって思ったの」
母親は相変わらず蒼が大好きでぎゅーっと抱きついてくる。いい加減に子離れしろよと呆れる蒼。
「今日、ここに連れてくるんでしょ?あーはやく会ってみたいわー!」
「会ってもいいが、とりあえず邪魔はすんなよ。あと夜中は外で泊ってくる」
「えー!外で泊まるなんてつまんなーい!」
もちろん、記念すべき初夜を邪魔されたくないからだ。
ちょっと懐が痛いが、ちゃんとホテルを予約しておいたのでこれで邪魔はされまいと一安心。そろそろ彼方が来るかなと待っていると、扉が勢いよく開いた。
1
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
体育倉庫で不良に犯された学級委員の話
煉瓦
BL
以前撮られたレイプ動画を材料に脅迫された学級委員が、授業中に体育倉庫で不良に犯される話です。最終的に、動画の削除を条件に学級委員は不良の恋人になることを了承します。
※受けが痛がったりして結構可哀想な感じなので、御注意ください。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
短編エロ
黒弧 追兎
BL
ハードでもうらめぇ、ってなってる受けが大好きです。基本愛ゆえの鬼畜です。痛いのはしません。
前立腺責め、乳首責め、玩具責め、放置、耐久、触手、スライム、研究 治験、溺愛、機械姦、などなど気分に合わせて色々書いてます。リバは無いです。
挿入ありは.が付きます
よろしければどうぞ。
リクエスト募集中!
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる