学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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二十章/二人の架谷甲斐

184.病院にて

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 *

「甲斐達が襲われたってどういう事だ!!」

 そうして声を荒げるのは直だった。

「そんな声を荒げないでよ直ちゃん。耳が超痛いし。それにここハルちゃんの病院だからもっと静かにしてもらわないと。まずは落ち着いてちょーだいよ」

 あまりにも声がでかいので、相田の耳がキーンとしている。
 事件の一報を聞いたのは、仕事が済んで甲斐が住んでいる寮に行く途中での事。知らせてきたのは相田。
 用があって学校に寄った際に轟音と局地的な揺れに気づいて外に出ると、校門前が大炎上しているのを発見した。
 近くには倒れている重傷な甲斐と泣いている悠里、焦って救急車と警察に電話をしている宮本と篠宮。まだ学校にいた生徒と近隣住民も駆けつけて大騒ぎになっている。

 そして、周囲を見渡すと、怪しい男共が近くでコソコソしていたので、相田は目的を訊ねようとしたが、男共は一目散に車に乗って去って行った。相田は青龍会の部下に奴らを追えと命令して探させたが、残念ながらそれ以降の足取りは消えたまま。

「落ち着いてられるか!甲斐が……甲斐が……」

 あと二週間ほどで自分は日本を離れる事になる。そんなバタバタしている時に限って愛する恋人が、おかしな連中に狙われているだなんて気が気じゃない。
 おまけに怪我まで負った。いくら頑丈な甲斐とはいえ、惚れた恋人に傷ついてほしくもない。だからその組織がわかり次第報復する気満々だ。

「まあまあ。みんな無事だったし、甲斐ちゃんも幸い背中の火傷と軽い打撲だけで済んでよかった。なんせあの三人を間一髪爆発する寸前に抱えて助けたって話じゃん。そんなのできるの甲斐ちゃんしかいないし、甲斐ちゃんじゃなかったら三人は死んでたよ。そりゃあ恋人が怪我して直からすりゃあ最悪だろうけど、少しは冷静になってよ」

 待合室で相田は苦笑しながら直をなだめる。こんな真夜中に看護師達がやかましいと言いたげにこちらを見ているので、相田としては不穏な直になんとか落ち着いてもらいたい。でなければここはハルの病院なので、後でこちらにクレームが来るのが面倒だ。

「それでも甲斐が変な連中に連れていかれそうになったんだろ。あームカつくな」

 直はテーブルや椅子に蹴りを入れている。まるでチンピラヤクザのような態度で苛立ちをそこらにぶつけている。この俺様何様直様は作られたキャラとはわかっていても、こちらも本性なんじゃないかと思えてしょうがない。

「何者なんだろうねえ。恵梨から聞いたけど、奴らには首領がいて甲斐ちゃんをヨメにするとかなんとか言ってたんだよね」
「殺す。マジぶち殺す」と、ヨメ発言を聞いた瞬間直の怒りが膨れ上がった。
「まあ、直からすりゃあクソ腹立つよね。恋人を狙う不届きなどっかの首領さんがいるんだもんねー。おそらくまた甲斐ちゃんを狙いにくるだろうよ。今回の命令は簡単だと思ったから下っ端を使ったんだろうけど、そうはいかないとわかったから次はその本人が乗り込んでくるかもね」

 今後を思案しながら治療室の前で待っていると、穂高が駆けつけた。

「甲斐君が重傷だって聞いたけど大丈夫なの?」

 穂高が怒りを洩れさせている直の様子を冷静に見ながら訊いた。

「甲斐ちゃんは今治療中。傷自体は背中の火傷とかあるけど大した事ないってさ。そのうち目覚めるだろうって。悠里ちゃん達三人も精密検査で一晩入院。甲斐ちゃんが三人を助けて、襲ってきた奴らも逃げてまだよくわかんない状態だよ」
「そっかァ。とりあえず大した事なかったのは幸いだね。相手が何者かわかんないのは不気味だけど」
「ダイジョブ。今青龍会のネットワーク使って調べ上げてるよ。そろそろ何か連絡ある頃だと思う。現場の痕跡とか奴らの特徴とか、警察以上に調べてくれてるから抜かりはないし」
「さすが~諜報活動屋さんなだけはあるよね」

 そんな事を話していると、向こうから悠里が慌てた様子で駆けてきた。 

「悠里ちゃんどうしたの。甲斐君目覚めた?」

 穂高が視線を彼女へ向けると、悠里は息を切らして呼吸を整えている。顔色はあまりよくなく、少しずつ落ち着いたところで口を開いた。

「目覚めたは目覚めたんだけど、甲斐くんの様子がどうも変でっ」

 切羽詰まった様子に、兄の直が視線を細めて改めて訊ねる。

「様子が変?どういう事だ」
「見てもらった方が早いよ」

 すぐに動いたのは直だった。
 一目散に甲斐のいる病室に走って行き、二人もつられて後を追った。

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