学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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二十章/二人の架谷甲斐

183.謎の連中と戦闘

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「お前が架谷甲斐か……?」
「随分と勇ましいな。聞いていた情報とは少し違うようだ」
「仕方あるまい。情報は八年前で止まっている。今まで我々は地球の裏側にいたからな」

 つまり海外暮らしが長かったせいで、こちらの情報をアップデートしていないようだ。しかも8年も。
 情報戦線でそれは命とりである。架谷甲斐が超人的強さを得たのはその一年後なのだから。

「俺になんの用があるってんだ」
「首領がお前にお会いしたいそうだ。我々と来てもらおう」
「首領?だれだそいつ」
「会えばわかる。首領はお前との約束を果たすために日本に戻ってきたのだ」
「約束?」
「お前をヨメにするという約束だ」
「………………は?」

 唖然とする甲斐。背後にいた悠里、篠宮、宮本も呆気に取られている。

「なんだそりゃ。ヨメとかアホか」 
「アホと言われても本当の事だから仕方あるまい。ちなみに首領は赤い髪の男だ。思い出さないか」
「野郎相手にそんな約束した覚えねぇし思い出しもせんわ。質の悪い思い出補正だろ」

 確かに怪我をしていた男がいたのは覚えていなくもないが、相手の顔は全く覚えていないし、ヨメにするという肝心の部分など完全に忘却の彼方だ。というかそんなふざけた事実などあってたまるか。

「やはり忘れているようだな」
「もう八年も前の事。だからといって約束が反故されるわけではない。思い出してもらうために首領の元へ連れていく」
「いやですがなにか」
「ならば力づくで。八年前の事を何千何万と聞かされた俺達はもうおなかいっぱいなのだ」
「首領の思い出話を聞かされ続けた俺達はもうげっそりしている。八年も地獄だった。お前を連行すればやっと思い出から解放される。てことで大人しく来い」

 男共はバカな首領のせいで大層苦労しているようだ。よくわからんが。

「なんか大変だなお前ら。バカな首領をもって」

 そう言いながら鼻をほじる甲斐。気の毒に思いながらも内心どうでもいい話だ。つかこいつらの事情なんぞしるか。

「ひ、否定はしない」
「ファッションセンス古いしダサいしな」
「人の話は聞かないし、自分の都合のいいように捉えるし」
「しかし、こんな事を言えば我々が殺されるので黙っている。実力だけは最強ではあるので」
「へー……そぉなんだ。上がそうなら下もそうなんだろうな。プププ」
「うるさい。とにかく架谷甲斐、来てもらうぞ」

 甲斐にさりげなくバカにされながらも、命令を遂行するべく連中は同時に襲い掛かって来た。
 とりあえず向かい受ける甲斐。連中は同時に突っ込んできたが、甲斐は勢い付けて回り、親父直伝のラリアットを連中全員に叩きつけて吹っ飛ばした。

「ぐは」
「つ、強い」

 次々地面とチュウをして呻く男共。

「首領の思い出の小さな子供が……っ、こんなにも強いだなんて……っ」
「我々の力では無理だ」
「次元が違う」
「かくなる上は……機械坊!」
「ん、機械坊って……」

 近づいてくる気配にハッとしてすぐにその場を退いた。上空から巨体が降ってきて、今しがた自分がいた場所には人相の悪い大男が立っていた。

「あいつ、矢崎ビルで戦ったサイボーグ野郎か……いや違う」

 戦闘民族のような筋肉質な図体は似ているが、奴はまだ人間味があった。顔も違うし、雰囲気もさらに冷たい。別の人間をベースにした改造人間のようだ。

「そいつは我らの秘密兵器だ。元々は人間であったが首領が使えると高値で買い取って改造を施した。邪魔が入らないように用意していたが、お前のために使うことになろうとは誤算だ」
「おい機械坊、そいつを捕まえてさらってこい。ただし、殺すなよ。あまり傷つけないように連れてくるのだ」
「リョウカイ」

 機械坊二号機?は従順に頷いて甲斐を捕まえようと追いかけてくる。ロボトミーでも施されているのか命令には従順のようだ。
 裏社会という世界は改造人間が山ほどいるのだろうか。殺しの世界大会があるくらいだから世界吃驚人間が大集合しているのかもしれない。そもそも、あんなサイボーグ人間が複数にいてたまるか。

「あんな邪悪なアン●ンマン顔の改造人間に追いかけられても嬉しくねえ」

 甲斐は大男が腕を伸ばしてくるのを何度も躱しながら走る。素早さならだれにも負けない自信があるので、大男は捕まえられずに手こずる。
 美女に追われるならともかく、アン●ンマン大男に追われて誰得なんだろう。しかも何者かもよくわからない組織の首領が、自分をヨメ認定してくるとかキモイしストーカー予備軍だ。
 昔約束しただとか、忘れているだとか奴らは言うが、自分としては本当に覚えていないので狙われて甚だ迷惑。さっさと倒してしまおうと考えていると、

「大人しくする事だ。でないとこいつらがどうなってもいいのか」

 奴らが隠れていた悠里、篠宮、宮本を人質に取り囲んでいた。

「大事なクラスメートの頭に風穴が開くぞ」

 連中のそれぞれが三人に向けて銃口を頭に向けている。

「…………チッ」

 甲斐は舌打ちをして、ここは捕まったふりをしようと考えた。そうした上で、どうにか逃がす隙を作って体勢を整えようと思案。だから甲斐は手を上げて立ち止まるが、
 
「ツカマエル。ツカマエル。ツカマエル」
「ん」
「ツカ、マエ、ルル、ツカ、マエ、る、るる、ツカマ、エ、ルるるる」

 機械坊は急に眼をキョロキョロ動かしだし、呂律の回らないしゃべりを繰り返す。思うように甲斐を捕まえられなかった事にショートしだした。

「おい、機械坊の様子が変だぞ」
「負荷がかかりすぎてオーバーヒートし始めたかもしれん」
「ツカ、マエ、る、るるるるるるる♪」
「「な……」」

 機械坊はなぜか甲斐の方を通り過ぎて、悠里達の方へ向かっていく。完全に狂ったのか彼女らの方をロックオンした。

「アイツ、三人の方にっ!やべえ!!」

 甲斐が全速力でそれを追いかける。

「どうやら完全に壊れてしまったようだ」
「低予算で改造したからな」
「おいこっちに来るぞ!」
「これは撤退だ!」

 男共は慌てて逃げ出すが、悠里達三人は逃げ遅れて取り残されてしまっている。

「るるるるるるるる」

 機械坊はもう壊れたおもちゃのように三人に突っ込んでいく。三人はもう駄目だと目を強く閉じた。
 その刹那、ふわりとした浮遊感と轟音と熱風を同時に感じた。とても大きく轟く爆風だ。頬に熱を肌で感じる。
 しかし、思ったほど熱さと痛みを感じない事にそれぞれ気が付き、恐る恐る目を開けると、校門前はあまりの爆発の威力にクレーターが出来ており大炎上していた。
 そして、すぐそばで血を流して倒れこんでいる彼を見て、三人は悲鳴をあげた。

「「甲斐(くん)!!」」

 
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