学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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幕間/直と黒崎家

178.黒崎家の団らん2

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 日曜日の朝、普段着よりかは少しだけお洒落をした各々が自家用車のワンボックスカーに乗り込む。
 運転する一樹と助手席には早苗が座り、セカンドシートには悠里と友里香が楽しそうに乗り込む。サードシートには直と勝。

「今日はわしが写真をたくさん撮ってやるぞ。思い出は金には代えられんからな」

 この日のために高級一眼レフカメラを購入したという勝。小さい頃の孫との思い出がほとんどないからこそ、これからの孫の姿をたくさん写真に収めたいと奮発して買ったようだ。

「……ありがとう、おじいちゃん」

 早速ぱしゃりと撮った直と勝のツーショット。その様子をみんなが「ずるい」と言わんばかりに騒ぎ、あとで一緒に撮ろうねと直に催促した。照れ臭そうに直は静かに頷いたのだった。

 某大型ショッピングモールにやってきた一家は、まずは悠里が欲しがっていたパジャマやルームウェアを見て回った。可愛らしい動物の柄を見てはどれにしようかなと悩んでいる悠里を見かねて、直が「お前にはイチゴ柄のパジャマがいんじゃね?パンツもイチゴなんだから」なんて口にしたら「変態!」と蹴られた。
 少し前、悠里がイチゴパンツを穿いていたのを成り行きで見てしまったので、軽い気持ちでそう言ったのだが、蹴るこたぁないだろと舌打ちをする直。
 まあ、お年頃のJKだから仕方あるまい。生意気な妹だが、やっぱりイチゴパンティはどうかと思う兄心である。ちなみに友里香は水玉模様らしい。自分でコソコソ話していたのを今聞いた。

「直があまりにイチゴイチゴうるさいからちょっと変わったパジャマ買っちゃった」
「私も買ってもらいましたわ、うふふふ」

 妹二人が嬉しそうに買い物袋を見せつけてきた。悠里が購入したパジャマはイチゴ柄ではなくドクロがついたケーキ柄だった。ドクロとケーキって斜め上だと笑いたくなったが、友里香など血塗られた悪魔のパジャマだった。
 こいつの趣味はどうなってんだ。ステレオタイプの少女趣味もどうかと思うが、闇が深すぎである。
 まあ、可愛い妹達のためだ。笑わないでおこうと我慢した。
 それから必要な食器や日用品を買い、レストラン街で昼の食事をとった。

「あの家族めっちゃ美形」
「美男美女だらけの家族とか羨ましいーっ」
「顔面偏差値全員80以上はありそう」

 店員や客が男女問わずコソコソと頬を赤らめてこちらを遠巻きに眺めている。それらに万年慣れている黒崎一家は気にせず楽しく食事に没頭。
 途中、芸能プロダクションの一人が何度も黒崎家に話しかけてきたが、直が楽しい雰囲気を邪魔すんなと言わんばかりに睨みつけたらそそくさ逃げて行った。

 午後からは早苗が目についたメンズファッションのテナントに入った。10代や20代の活発な若者向けというより少し落ち着いた知的男子向けの店という印象だった。

「これ、直に似合いそうね」
「でもお母さん。これ直にしては地味過ぎないかな」

 灰色のストライプのシャツとグレーのニットカーディガンだった。下は茶色のチノパン。どちらかといえばこれら一式は久瀬晴也にあいそうだと思ったし、直にはジャンル違いなのではないかと悠里は一瞬思った。
 直は開星学園にいる時は大体高級なスーツか、自社ブランドの派手な服を着ている印象。その上、高身長で見た目が華やかなせいでどこへ行っても目立つ。派手さがなくなると似合わないんじゃ……いやもしかして、意外性な服を着て少しは滲み出る有名人オーラが消せればという母の提案なのかもしれない。

「直は落ち着いた感じの方が似合うと思ったの」
「母さんが言うなら着てみるよ」

 二分後、試着室から出てきた直はいつものイメージとはがらりと違うものだった。眼鏡をかけているので、図書館で読書を嗜む大人しそうながり勉青年というイメージに変貌した。

「案外似合いますね。お兄様とは思えないくらい別人です。お義母様のコーデさすがですわ」
「ふふ、やっぱり落ち着いた服の方が似合うと思っていたのよ。直はどう?」
「うん。いいと思うよ。こういう系統の服はほとんど着たことがなかったから……」
「直は世間に向けてはいつも目立つような服ばかり着ていたから、プライベートな時くらいは落ち着いた服を着てほしいと思ったの。直はたぶんお母さんに似て案外引っ込み思案な性格だと思ったから」
「引っ込み思案……そうかも、しれない……」

 矢崎財閥の御曹司としていつも自社の目立つようなブランド服ばかりを着せられていた。でもそういう服は好きではなかったし、落ち着いた系統の服を着ようとすればスタイリストや家庭教師に叱られた。世間の望むイメージとはかけ離れているって。俺様キャラが矢崎直なんだから地味な服はありえないって。

 安っぽい服は矢崎財閥御曹司として示しがつかないだとか、自社の宣伝にならないだとか、なんでもかんでも矢崎財閥の顔と利益を優先させられたせいで服装に無頓着になった。
 毎日専属のスタイリストが勝手に服を選んでこれを着てくださいと指示をしてくるので、今までそれに従っていたまで。だから、母がにあう服を選んでくれて嬉しかった。

「馬子にも衣装ですわね」
「ははは、たしかに~」
「どっかの誰かさんのドクロとケーキ柄や血塗られた悪魔のパジャマよりかはいいだろ。じゃあ、これ買おうかな」

 いつもの癖で財布からカードを取り出そうとすると早苗に止められた。

「私が買うから。親として買ってあげたいの。こういう時は親に甘えるものよ」
「……ん。ありがとう母さん」

 これだけで総額一万もいかないのだから驚きだ。いかに自分が今まで金銭感覚がマヒしていた生活をしていたのかが身に沁みてわかる。全身数十万はゆうに超えるブランド服ばかりを着ていた自分が笑えてくるものだ。
 
 気に入った服を早苗に購入してもらい、さっそく今日はこのままでいる事にした。
 初めての母親からのプレゼントなので、嬉しさも一入。自社の何十万はするブランド服なんかよりずっと大切にしようと思った。
 服を購入して満足した直は、早苗と妹二人とで雑貨店を見て回って甲斐へのおそろいのキーホルダーを購入。

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