学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

文字の大きさ
上 下
175 / 222
十九章/全面対決

170.直の怒り

しおりを挟む
 *

「直様、わたくしを受け入れてくださいませ」
「誰が受け入れるか。くたばれ」
「強情ですね。わたくしを抱きたくて仕方がないのに我慢しなくていいのですよ」

 直とカレンの攻防戦が繰り広げられていた。
 痺れて動けない状態とはいえ、この女に黙って体を奪われるわけにはいかない。かろうじて動く顔や首を背けたりしてキスなどは躱している。
 この女がか弱くてよかった。でなければ今頃最悪に既成事実を作らされていたところだった。

 たしかにこの女とは18になったら結婚させられる身。とはいえ、まだ結婚もしていない状態でこの女や正之に支配されるのは我慢ならなかった。その昔はいろんな女を抱きつくしてきた自分が言うのも可笑しいが、今はまだ甲斐との思い出に浸って綺麗なままでいたかった。

「オレはテメエなんか大嫌いで、テメエの存在に吐き気がする。どうしてそれがわからない。放っておいてほしいんだがな」
「それでも遅かれ早かれ結婚する仲。それに子供を作る時だけセックスは可だとおっしゃっていましたのでそれが今なのです」
「っ、あーいえばこういうわからず屋め」

 直は今動かせる全力で拒もうとするが、今度はスラックスのベルトを外しにかかろうとする。

「始めからこうしていればよかったです。王子様とのキスに憧れるあまり、私ったらキスに執着していました」

 ガチャガチャとベルトを外しにかかるカレンに蒼褪めて、必死で体を動かそうと力を入れる。

「き、さまっ!下衆が!」
「大丈夫です。母にお体のお世話の流れをこれでもかと教えられました。そして、さらに精進するためにたくさんの男性秘書と毎日経験を積み、直様との初性交のためにいっぱい躾けてもらったのですよ。ですからどんな難しい要望もお応えできます。全て私に任せてくださいませ」

 自社の秘書共にただ食い物にされていただけなのを本人は誇らしげに語る。直はますます吐き気のようなものを感じては止まらない。

「ふざけるなっ!気持ち悪い!退けっ!!」

 スラックスのジッパーを下げられ、最悪だと現実逃避したくなる所で扉が開いた。

「直様!」
「きゃあっ!」

 間一髪な所、カレンは突き飛ばされた。

「川田!」
「これを飲んでください!神経麻痺を治す即効性です」

 汗だくな川田が急いで直に駆け寄り、薬と水を含ませる。それを嚥下できてから直は心底ホッとした。

「お前、どうして」
「おれはあんたの秘書ですからね。主人の様子を知ったり、外敵から守るのも仕事なんです」

 おそらく事前にカレンの周囲の様子を知った上で動いていたのだろうと察する。仕事はどこか雑な部分があるし、上からの評判はよくはないが、直からすれば今の時点で最高の秘書だと太鼓判を押したい。

「やるじゃないか田舎者」

 次第に動けるようになった直は立ち上がる。

「でしょう。未来の社長がこんな場所で上の連中に好き勝手されるのを黙って見てられません。おれは今の腐った矢崎財閥が変わる所が見たいんです。そんであんたが上に立ってみんなに指示を出すリーダーあたまになってもらわないと下っ端は困るんですから」
「川田……」
「今、矢崎財閥は転機にさしかかっています。誠一郎様と友里香様が戦っておられるんです。そして、あんたを助けようと架谷甲斐も動いていますよ」
「っ、甲斐が!?」
「下の方で社長直属の社員と戦ってます。だから希望を持っていきましょう。さあ、急いでこっちへ」

 直を出口へ誘導したところで小さな音が響いた。いきなり目の前の川田がふらりと倒れた。鮮血が床に流れる。

「川田ッ!」

 サイレンサーの銃が扉から見えた。

「秘書風情が命令に背くなどいい度胸だ」

 銃を持ちながら部屋に入ってきたのは正之とカレンの母親と人相の悪い護衛達だった。

「直様、なぜ私の娘を拒むのですか。監視カメラでずっと我が娘とあなたが一つになる瞬間をこの目で焼き付けておこうと観ていたのに、娘を足蹴にして秘書に泣きつくだなんて。娘が可哀想だと思いませんの?娘はあなたのために夜枷の勉強を必死で頑張っていたというのに」

 まさしくこの親にしてこの子ありと言わざるを得ない。必死で頑張る部分がおかしいのは言うまでもないが、わざわざ娘の行為を監視カメラで覗くのも悪趣味もいい所だ。

「そうです。直様、無能秘書と共に逃げようとするなんてひどいです。私はこんなにもあなたに尽くしたいというのに」
「無能、だと?おいクソ女。貴様……今、なんっつった」

 直がこれでもかという程の憎悪を込めた目でカレンを睨む。その母親と正之に対しても。

「「ひっ」」

 直のあまりの圧がこもった修羅の顔に娘親子は戦慄している。

「貴様のような女を好いてくれた秘書を無能扱いとは……つくづく空気も事情も読めねぇ低能色情女だな。少なくともこの川田は貴様なんかよりも100万倍マシな人間。金と権力と業績目当てのバカばかりの矢崎財閥の中で数少ないまともな人間だった」
「直、お前の奥さんとなる女性になんて口の利き方だ。矢崎に対する侮辱も見過ごせん。訂正しろ」
「訂正なんぞするか。本当の事だろ。あと矢崎正之……オレはテメエを絶対許さない。死んでももう言うとおりにはならない。テメエの全部を否定してやる」
「いいのか。そんな事を言って。お前は周りに危害が及ぶと察して私のもとへ来たというのに、私に反抗的な態度を取るとどうなるk」

 言葉が続かなかった。正之は肩を撃ち抜かれ、跪く。持っていた銃もはじかれる。
 その護衛達も次々負傷して倒れる。母娘はさらに怯えて腰を抜かした。

「どうもならんよ。テメエはオレが地獄に落としてやる。絶対に」

 直の手には拳銃が握られている。先ほど、川田が薬を飲ませてくれた際にポケットにいくつか忍ばせてくれたものだった。

「でもここでは生かしといてやる。テメエには言ってやりたい事、してやりたい事が山ほどあるからな。ここで簡単に殺しちゃ勿体ない。今までの恨みを後でたっぷり思い知らせてやるから覚悟しとけ」

 直は負傷した川田を肩に支えて、一目散にその場から逃げ出した。

しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺

高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

生意気な弟がいきなりキャラを変えてきて困っています!

あああ
BL
おれはには双子の弟がいる。 かわいいかわいい弟…だが、中学になると不良になってしまった。まぁ、それはいい。(泣き) けれど… 高校になると───もっとキャラが変わってしまった。それは─── 「もう、お兄ちゃん何してるの?死んじゃえ☆」 ブリッコキャラだった!!どういうこと!? 弟「──────ほんと、兄貴は可愛いよな。 ───────誰にも渡さねぇ。」 弟×兄、弟がヤンデレの物語です。 この作品はpixivにも記載されています。

どうしょういむ

田原摩耶
BL
苦手な性格正反対の難あり双子の幼馴染と一週間ひとつ屋根の下で過ごす羽目になる受けの話。 穏やか優男風過保護双子の兄+粗暴口悪サディスト遊び人双子の弟×内弁慶いじめられっ子体質の卑屈平凡受け←親友攻め 学生/執着攻め/三角関係/幼馴染/親友攻め/受けが可哀想な目に遭いがち 美甘遠(みかもとおい) 受け。幼い頃から双子たちに玩具にされてきたため、双子が嫌い。でも逆らえないので渋々言うこと聞いてる。内弁慶。 慈光宋都(じこうさんと) 双子の弟。いい加減で大雑把で自己中で乱暴者。美甘のことは可愛がってるつもりだが雑。 慈光燕斗(じこうえんと) 双子の兄。優しくて穏やかだが性格が捩れてる。美甘に甘いようで甘くない。 君完(きみさだ) 通称サダ。同じ中学校。高校にあがってから美甘と仲良くなった親友。美甘に同情してる。

眠りに落ちると、俺にキスをする男がいる

ぽぽ
BL
就寝後、毎日のように自分にキスをする男がいる事に気付いた男。容疑者は同室の相手である三人。誰が犯人なのか。平凡な男は悩むのだった。 総受けです。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

処理中です...