学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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十五章/最大の敵

124.英語教師

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「ていうか手、触らないでくれます?知らない女に馴れ馴れしく触られても不愉快なだけなんで」

 甲斐が腕を振り払うと、鈴木令嬢はハッとして慌てだす。

「あ……ごめんなさい。わたくし、ついいつもの癖で男の人に触ってしまいましたわ。仲良くしたいと思って触れるんですけど一部の方々からは不評でして……あなたとは仲良くしたいと思いますわ。だって、直様と仲がいいと聞いておりますので」
「俺は別にあんたと仲良くしたいと思わないんでほっといてくれや」

 甲斐ははっきり拒否すると、まさか断られるとは思ってもみなかったカレンは驚いている。

「お、おい架谷!さっきから黙って見てりゃあてめえカレン様になんて失礼な態度だ。カレン様は矢崎直さんの許嫁なんだぞ!貧乏人如きがその蔑ろにするような態度と口の利き方、謝れっ!」
「は、なんで俺が謝らなきゃいけねーわけ。ただ矢崎の許嫁ってだけだろ。だからなんだって話だろ」
「そうですよね……ごめんなさいっ。さすがに下々の人間にも付き合う人間が決まってらっしゃいますよね。配慮が行き届かなくて申し訳ありません」
「おお、カレン様。そんなEクラスの貧乏人なんかにも気にかけてなんてお優しい……女神のようです」

 あほらし。何が女神のようだ。崇拝しすぎるのもよくないぞっと。
 甲斐が鼻くそをほじりながらヤレヤレとカレンにそっぽを向く。なんてチョロい男共だ。同じ男として情けなくなってくる。

「てめえ貧乏人!こんなに可憐なカレン様に頭を下げさせるたぁ自分の立場ってモンがわかってねーのか」
「そーだそーだ!カレン様は長い事病弱で箱入りだった姫様だ。だから天真爛漫で生まれたばかりの雛鳥も同然。可哀想だとは思わんのか」
「みんないいのです!わたくしのために怒ってくれてありがとう。わたくし、嬉しいです。男の人ってみんな優しいのですね」

 ………。
 いろいろ突っ込みどころが満載だが、この取り巻き騎士気取りに守られるお姫様に構っているといろんな意味で苛立ってくるのでスルーする事にした。

「もうあのカレンって女なんなのー!?直様の許嫁だからって調子こいてんじゃないの!?ムカつくんだけど!!」
「ほんとそう思う!男共にチヤホヤされてアテクシか弱い姫気取りか知らないけど、男共も男共で馬鹿なんじゃないの!?箱入り天然姫令嬢に鼻の下伸ばしやがって」
「男ってホントバカばっか!たしかに美少女で家柄は申し分ないけど、それを無自覚に鼻にかける態度とあの頭弱そうな所は直様の許嫁にふさわしくないでしょ」
「あたしの彼氏なんてすっかりあの女の取り巻き化しているし。マジあとでぶん殴って別れてやるわ!」
「あたしなんて往復ビンタしてチンコ蹴って高額慰謝料請求して別れてやるつもり!あんなバカ令嬢にコロッと騙されるバカ男なんてこっちから願い下げよ!」
「「「絶対ゆるさないんだからー!!!」」」

 近くにいるいろんなクラスの女子達が怒声をあげている。
 うむ、気持ちはわからないでもない。男共に対しては怒りを通り越して失望もいい所だろう。彼女持ちのリア充男でさえ天然お貴族令嬢の取り巻き化してしまったらしく、あとで別れ話を含んだ修羅場に発展するのが目に見えている。

 あーあーしーらね。でもこれぞメシウマざまあだ。調子こいたリア充爆発しろ。

 *

 次の時間は英語だった。
 英語は数学ほど点数的にはマシだが、甲斐の大の不得意科目の一つである。
 そういえば英語は昨日来た新任教師が担当だと聞いていた。副担任が産休に入ったので、新しい新任がこのEクラスの副担になると聞いている。

「今日からこの二年Eクラスの英語と副担をすることになりました相沢真生あいざわまさきです。よろしくお願いします」

 あれ、あの人どこかで会った事があるような……
 ぼうっと新しい副担を見ていると、こちらの視線に気づいたのかくすっと微笑まれた。
 その微笑みだけでEクラスの大半の女子は見惚れて我を失っている。

「すっげぇイケメン教師がきた」
「大人の魅力……す、て、き」
「真生様と呼ばせてほしいですわあ」

 四天王と違って優しい紳士的な部分とアダルトな部分に、かしまし三人娘や花野はすっかり目をハートマークにさせている。
 たしかにすっげぇイケメンである。この人って……
 
「あー!あんたって空港まで乗せてくれた親切な人!」

 甲斐がやっと思い出すと、相沢はさらに笑みを深めていた。

「久しぶりですね、架谷くん」
「あの時はどうも。おかげで助かったっす。えーと相沢せんせ」

 二人が親し気に話しているのをEクラス達が訝しげに見ている。

「甲斐、相沢先生と知り合いなの?」
「修学旅行の初日に空港に遅れそうな所を送ってもらったんだ」
「へえー甲斐ってホント隅に置けないよねー。美形イケメンをまた釣っちゃって」
「は……?」

 由希と小川がニヤニヤした顔でこちらを見ている。

「なんでもなーい」
「美形平凡萌え……ぶつぶつ」

 しばらくして英語の授業が始まり、相沢が黒板に英文を書きながら教科書を読み進めている。英語の教師らしく発音などはネイティブで妙に格好いいものだ。

「架谷くん、わかりますか」
「え、あー全然で……アイドントノーです」
「じゃあ、一緒に読んでみましょうか」
「え」
 
 相沢が甲斐が教科書を持つ手を上から重ねるように持った。それだけで背後に座っている小川が小さく悲鳴をあげた。

「ちょ、先生」
「ほら、読んでください。私も手伝いますから」
「え、えーと あい、ごっととぅーざ、す、すて……なんて読むんだ」
「これはstationです。駅です」
「す、すてーしょん」
「ではここは?」
「えーと……しーわずそー……」

 妙に距離感が近いように思うのだが気のせいだろうか。吐息が当たり、手もいつの間にか握られているのはどう考えても変じゃない?

「きゃー甲斐ってば先生とラブラブー」
「ねーお似合い~」
「お前らなっ」
「美形平凡うふふふ」
「身長差いいよねー」
「「ねー!」」
「お前らうるせえっ」

 クラスの腐女子軍団を睨みつけて、妙に距離が近い英語の授業はいろんな意味で恥ずかしかった。

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