学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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十五章/最大の敵

129.不安から逃げる(R15)

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「直様……大丈夫ですか」

 やっと絞り出した言葉は直を案じるものだけだった。

「甲斐がすでにあいつと出会っていたんだな。久瀬、黙っていたのか」

 直が久瀬を非難めいた顔で強く睨む。

「申し訳、ありません……」

 久瀬に言ってもしょうがない事はわかっている。
 しかし、甲斐の存在だけは気づかれてはいけないとわかっていたのに、もう奴に気づかれていただけでなく邂逅を果たしていたなんて想定外だった。
 せっかく一緒に買ったおそろいのキーホルダーが、これからの自分たちを暗示しているようで震える。

「オレはもう甲斐といられないのか……」
「直様……」
「甲斐といられないなんて考えられないんだ……」

 これからもあの最低な義父の筋書き通りの人生を歩んでいく事はわかっていた。あのクソみたいな花畑女と結婚し、嫌々セックスして後継者を作らされて、生涯ずっと矢崎の駒として生きていく羽目になるんだろう。
 でも甲斐だけは。
 甲斐とだけは離れたくない。失いたくない。どんなにひどい人生でも、甲斐がいなければ自分は生きていけない。寂しくて自害してしまう未来が読めてしまう。
 だけど、甲斐や自分の周りの人間が傷つけられるなら自分は……

 *

 甲斐は本日のバイトが終わり、直に連絡を入れたが出なかった。何かあったんだろうか。
 SNSにメッセージを入れたが既読もつかない。忙しいのだろうか。それともあの社長が何かしたのだろうか。
 なんだか不安になりつつも寮へ戻ろうとすると、スマホの着信が鳴った。

「もしもし、直か」
『甲斐……』

 スマホ越しのその声は妙に元気がないように思えた。

「何か、あったか?」

 あのバカ社長から宣戦布告をされた後だ。直の方にも何かあったかもしれない。

『今は……ただ逢いたい。時間、ある?』
「そう言いながらいつもならもう会いに来てるだろ」
『そう、だな。じゃあ、寮じゃ人目が付くからクラウンホテルに来てほしい。フロントに伝えておくから』
「わかった」

 少し心配しながらホテルで落ち合うことを約束した。フロントに話すとすぐに最上階に通されてスイートルームで待つように言われた。相変わらず豪華なホテルだなと落ち着かずに待っていると、数分後にチャイムが鳴って扉が開いた途端に深海の瞳と目が合った。

「甲斐」

 優しく腕を引き寄せられた。そのままたくましい胸に抱かれて、香水と肌のにおいが一気に甲斐を酔わせる。胸がほわほわと満たされて、少しの間だけお互いに黙ってそれに浸り合った。

「逢いたかった」
「……おれ、も……」

 性急に唇を唇で塞がれた。直のキスはなんだか切羽詰まったような激しいもので、唇を舐められてすぐに歯列をこじ開けられて、口内を舌先で貪り尽くされる。

「ん……っんんっ、はぁ」

 唾液が口の端からこぼれて顎を伝う。直からの濃縮度100%のキスはいつもより荒々しい。

「甲斐……お前に触れたい」

 壁に寄りかかるように直が座ってその膝の上に甲斐が跨ると、直の手が甲斐のベルトに及ぶ。

「あ、ちょ……」

 ここ玄関。と、言う前にベルトを外されてチャックをおろされる。直の手が甲斐の膨らみにそっと触れて、流れるような手つきでそこをわざとらしくかすめていく。指が少し触れただけでびりっとした電流が走り、一気に達しそうになった。
 好きな人に触られる。それだけで体はいつもの倍くらい感度が高まって、反応も一入。

 下着をずり降ろされて、ぶるりと飛び出す象徴は今のキス等で完全に元気になっていた。躰は素直だなと感じやすくなった自身に苦笑しつつ、直の手が自身にじかに触れて上下に扱いてくる。念入りに亀頭の部分を刺激され、湿っぽくなった竿や睾の方も優しい愛撫にゾクゾクした。

 親指と人差し指で執拗に何度も動かされながら、甲斐も直のベルトを震えながら外し、直の苦しそうな膨らみをチャックと下着から取り出す。直がしている事と同じようにした。

「っあ、は……直っ」

 直の猛々しい先っぽを手で上下に扱きながら、直の手淫で悶える。

「は……っ、甲斐……」

 そんな直も気持ちよさそうにして荒く呼吸を吐き出している。

「きもち、いぃ……」

 ただ触れて扱きあうだけの行為でも、まるで本当にセックスしているような感覚に陥る。
 二次元じゃ得られない快楽が支配して、腰ががくがく震えて絶頂が近くなってくる。直のものと自分のものを一纏めにして、一緒に握り合って互いに擦り付けあう。それだけで先ほど以上の快楽と興奮に目眩がした。

「は、ぁ、直っ、耳、や」
「甲斐は、先っぽ触られながら耳をいじられるの、好きだよな」 

 熱い吐息を甲斐の耳に吹きかけながら甘噛みする。

「ゃ、あぁっ」

 耳が弱いせいか今度はそこに舌を這わせてくる。性器を擦りながらだから意地悪な事をしてくるものだ。

「甲斐、可愛い声」
「う、るさ、んんっ、んぅ」

 直の舌が耳から唇に移動して、再び唇を濃厚に重ねてくる。
 お互いがお互いのものに触れて、扱きあって、擦り付け合って、激しいキスで求め合いながらさらにその動きが激しくなっていくと、

「っ、んんぅ!」 

 直の手が甲斐の先端を何度目かこすった瞬間に吐精し、直は甲斐がイッた後に続けて達した。
 互いの精が腹と床を濡らしあってやっと冷静になる。

「しばらく、一緒にいられないかもしれない」

 荒い呼吸を整えながら、直が寂しそうに言った。

「……あの社長のせい?」

 頷く直を見て、やはり予想通りだった。

「仕事を増やされたんだ。それ以外にもいろいろ……甲斐はあいつに会ったんだろ?」
「……まあ、な。あんまりあんたには言いたくないけどいろいろ苦言を呈されたよ。性格悪そうな野郎だった。あんなのが友里香ちゃんの実の父親だなんて信じられないな」
「友里香はどちらかといえば母親似なんだ。あんなクズ父と血の繋がりがある事実を消したいと昔から恥じているよ」
「そっか……友里香ちゃんもそう思ってるのか」

 あんなのが父親だと思うとある意味死にたくなるものだ。見るからに血も涙もなさそうであるし、金と権力と会社の業績しか頭になさそうである。義理とはいえ息子相手にキーホルダー一つで干渉して破壊してくるほどだ。いろんな意味で危ない奴でもあるだろう。

「寂しいけど……お前が納得できているなら……」
「納得なんてしてねーよ。甲斐と離れるのが何よりも辛いのに」

 ぎゅっと抱きしめる腕に力が入る。

「本当は一分一秒でも離れたくないのに」

 直は甲斐の瞳をまじまじ見つめた。真っ直ぐにじっと。
 寂しそうな深海の瞳が至近距離に近づいてきて、唇を再び重ねられた。 

 キスもすっかり慣れてしまって、直が縋るように舌を絡ませてくるのに甲斐も絡めかえして応えた。リップ音と唾液が絡む水音だけが玄関に響いて、無言の求愛行為のやり取りがしばらく続いた。
 満足したのか唇を解放してすぐに、直は子供が親に甘えるように名前を呼ぶ。

「甲斐、大好き」
「知ってるよ」
「愛してる」
「っ……お、おれも」
「なあ」
「……ん」
「膝枕してくれよ」
 
 最近よくするようになってすっかり慣れてしまった。二人はソファーに移動し、甲斐は自らの膝をぽんぽん叩く。

「直お坊ちゃまは膝枕が好きだな」

 直が膝に頭を乗せて横になると、甲斐は保護者のように微笑んだ。
 サラサラな直の銀髪を梳いてあげて、それを気持ちよさ気に浸る直。

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