学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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十三章/初デート

107.デート日和

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 それからバイトを頑張った結果、それなりに貯める事ができたので無事デートの日を迎えることができた。
 当日、早めに家を出て電車に乗り込む。
 どこに行くかは決めていないが、とりあえずは二人で逢う。

 まだ直は着ていないようだった。
 待ち合わせの〇〇駅前に到着し、時間になるのを待った。〇〇駅は寮から結構離れた郊外にあって、都市部よりかは人通りも少ない小さな駅だ。ここまでくれば知っている奴もいないだろうし学園の奴と鉢合わせなんて事もほとんどないだろう。

 ただ、直が有名人すぎるので素性がバレてマスコミらに騒がれないか心配だ。とは言っても、ここは田舎寄りだからまさかの四天王の矢崎直がこんな田舎にいるなんて思われはしないだろうと思う。

 そんな時、向こうの方で女性達が頬を染めてうっとりしているのが目に付いた。

「超カッコイイんだけど!」
「やだー目の保養になるわ」
「四天王の矢崎直に似てたよね」

 通りすがりのあらゆる女性達が騒いでいる。その中心には人だかりができていて、一際背の高い男の後ろ姿が見えた。
 これらの声やあの髪の色を見てもう間違いない。しかし、たくさんの女に囲まれていて近づきにくい。

 どうしようかと考えている中で、女性に囲まれている男がこちらに気づいた。今までの仏頂面がなかったかのような笑顔に変わった。

「甲斐」
「よ、よう」

 直が自分を囲んでいた女達を華麗に無視してこちらに寄ってくる。普段は意地悪を企んだ顔しか見せないのに、見た事がない笑顔を向けてきて一瞬こいつ誰だと思ってしまった。

 え、これ本当に直?こいつこんな笑う奴だったか。こんな雰囲気だったっけ。いつもと違うように見えるのは気のせいか?

 それにいつも学校じゃ仕事用スーツか全身ブランドものキラキラ服だったのに、今は誰もが着ているようなノーブランドの年相応な落ち着いた格好だった。
 まあ、どんな格好にせよ、抜群のスタイルと容姿を持ち合わせた直が着ればどんな格好も似合ってしまうだろう。500円で売っている安物のTシャツでさえ似合いそうだ。

「甲斐?」
「眼鏡姿ってスーツ姿でしか見た事がなかったから、私服では珍しいなって思って」
「オレ、視力めちゃくちゃ悪いから普段はコンタクトで仕事は眼鏡なんだよ。けど、今日はプライベートだからなんだっていいと思って眼鏡にした」
「そうなのか。ま、お前ならなんだって似合うんじゃねーの」

 なんだか恥ずかしくなって視線を外しながら言うと、それに気づいた直が鼻で笑う。

「なんで視線外すの」
「野郎をジロジロ見ても面白くないだろ」
「オレは違うけど。ずっとお前だけを見ていたいよ」
「っ……恥ずかしい事を平気で言いやがって」
「だって本当の事だから。すごく楽しみだった。時間を共有できるのも。甲斐は?」

 直が穏やかな目で訊ねてくる。

「っま、まあ楽しみだった……」

 そんな直の表情はとても嬉しそうで瑞々しい。自然体な笑顔を見るとこちらまで照れて嬉しくなってしまう。
 やっぱり学校での俺様の姿は偽りで、今笑っているのが素の姿なんだろうな。

「甲斐」
「な、ちょっと」

 直が抱きしめてきた。暑苦しい。

「甲斐が可愛く見える。学校じゃないからいつもと違って見える」
「や、いつもと変わらんだろ。離れろっつーの!」

 とりあえず庶民デートの定番という映画館に移動する事にした。街中にあるような小さな映画館で、上映しているものはマイナーなものが中心らしい。別段観たいものはなかったが、適当なジャンルのチケットを直が持ってきていた。御曹司として映画の試写会やらによく招待されるので、腐るほど映画のパスやらチケットやらをもらってしまうのだという。

 チケットなんてなくても直なら権力行使すればあっさり入場できるし、その気になれば貸し切りで鑑賞し放題なんだろうが、今日は庶民として行動をしたいからという事で自分でチケットを買ったのだという。久瀬からお駄賃をもらったようだ。

「初めて自分一人で映画のチケットを買った」
「販売機に金入れるだけだけどな」

 今まで一人で買い物などをした事がないのだという。すべて久瀬や世話係の側近がしてくれたので、自分でなんでもやる事が嬉しいのだと話す。

「今日は護衛の人いないんだな」
「ただの庶民としていたいから護衛は必要ないって無理言ったんだ。だが、隠れた護衛はどこかにいると思う。オレでも気づけないくらいの久瀬の部下が」
「へえ、隠密みたいだな」

 御曹司のお坊ちゃんは大変なもんだ。いつでもどこでも見張られているなんて自由がないよ。

「ほら、もうすぐ始まる」

 と、言いながらさりげなく距離を縮めてくる直。

「こら、肩を抱くな。あとくっつくな」
「くっついちゃだめなのかよ」
「野郎同士はくっつかねーだろ」
「オレはくっつきたい」
「やめろ。時と場所を考えろ」
「じゃあ二人きりになったらいい?」
「ま、まだ二人きりの時のがマシだ」
「じゃあ、二人きりになるまで我慢する……」

 直がぱっと甲斐から離れてうっとり微笑む。
 なんだか後が怖いな。後で何をされるんだろう。

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