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十三章/初デート
104.デートの約束
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「お前、矢崎を尊敬してんのか?」
「当たり前だ!あんな人はいないってくらい超人で天才的なすげー人なんだぞ!それに昔、おれの従兄弟をこっそり助けてくれたいい人でもある!明日の生活もやっとで、路頭に迷う寸前に金銭的に援助してくれて、どれだけあの人におれや従兄弟が救われたか……。陰で矢崎さんを鬼畜だとか魔王だとか冷酷非道だとか悪く言う奴も中にはいるが、あの人が生徒らに制裁を加える奴は決まって学園で尊大だったクズい悪人ばかりだ。口では酷いを事を言いつつも、それは威厳を示すために仕方なく恐れられる存在になっているだけ。真面目で大人しい生徒には絶対手を挙げないし、表向きは傲慢にひどい態度で振舞ってても、裏では虐げられている生徒を隠れて救ったり守ったりされる思いやりのある人だ。だから尊敬しているんだ!お前みたいな女たらしクズと違ってな!」
「…………そうか」
親衛隊みたいに金と権力目当てに媚び諂う連中なんかじゃなくて、本当のファンもいるようでよかったなと思う。自分の事のように嬉しくなった。
「とにかく!そんな問題児でタラシ野郎がおれの悠里や矢崎さんに気に入られているからって調子に乗んじゃねーぞ!このおれと勝負しろや!」
びしっと甲斐に人差し指を向けて勝負を挑んできた。何を言い出すかと思えばとんだ熱血ちゃんである。
「はあ……その前にそのボコボコにされた顔と格好なんとかしろよ」
「何をー!!」
「熱いのも結構だが、時と場所を選べチビ」
甲斐が軽いデコピンで山本の額をはねてやったら「いっでええ!」と悲鳴をあげて吹っ飛んだ。
「しょ、翔君……!」
「え、なにこれ。弱っ」
全く。これくらいで吹っ飛んで痛がるとは情けない。全然力を入れてないんだがひ弱すぎるだろ。
この様子では先ほどの工業科に目をつけられてリンチをされていたのも、山本が後先考えないで生意気を言ったのが始まりなんだろう。
「お前な……負けず嫌いな所はいい所だが、己の力量を自覚する事も大事だぞ」
「うるせー!く、くそー!今日は調子が悪いぜ」
「はあ……」
変な奴と知り合っちまったよ。やれやれ。
そんな昼休み、仕返しに来た工業化の連中にゴキおもちゃを投げつけたら泣きながら逃げて行った。不良といえどもやはりゴキ嫌いは万国共通である。だがいつかおもちゃに慣れてもらっても困るので、本物も混ぜているのが効果覿面であった。
親衛隊に絡まれなくなったとはいえ、やはりゴキは今後も必要だな……と言いたい所だが、ゴキブリ好きと思われても心外である。いくら「ゴキブリ好きの悪趣味」だとか、実家に大量に生息しているからと言って「ゴキと友達だろ」だなんてあんまりだ。誹謗中傷である。
おまけにドンキでゴキおもちゃを定期購入しているせいか、店員に顔を覚えられてしまった。
甲斐が来た途端に「またゴキっすかwまwいーっすけどw最近お宅が定期的に購入してくれているおかげで大量に入荷がきまったんすwゴキ好きさんあざーすw」とか言われてしまった。
違うんだ。俺は決してゴキ好きではないんだ!勘違いしないでくれえええ!!
しかもこれを大量に使った後は、用務員のおじさんと掃除のおばちゃんとで一緒に片づけるのだが、その黒い物体をほうきと塵取りで掃除する時ときたらひどい地獄絵図であった。恐怖だったね。
それを回収するゴミ収集車の皆さんの恐怖よりかはマシだとは思うが……ゴミ業者の皆さんごめんちゃい。俺が地球のごみを増やしていますよね。
まあ、ともかく。ゴキ好きだと思われたくないのが俺の切なる願いである。
*
寮に帰ると、スマホの振動に気づいた。パソコンでエロゲでもしようかなという所だったので、振動だけで盛大にびくついてしまった。なんせエロゲ中や男の儀式中にいきなり親が入ってくるという恐怖を知っているので、その最中や前後は油断ならないのだ。
まあ、ここは寮なので親がいきなり入ってくるなんて事はないだろうけど、その恐怖を思い出した。
そんな恐怖を思い出させてくれた相手は直のようだ。
「もしもし直か。どうしたんだよ」
『時間ができたから、空いている日を訊きたかったんだ。デートするって約束しただろ。それと……声が聞きたくなった』
直の声がいつもより弾んでいるように聞こえる。
「そ、そうか。デートは……ら、来週がいいかな」
なんかドキドキする。たかが電話で話し合っているのに。それに声が聞きたくなっただなんて調子に乗りそうだ。
『じゃあ来週の日曜な。ちゃんと予定つけとけよ』
「わかってるよ」
そうして約束を取り付けて電話を切った。来週の日曜日は丁度何も予定がない日だ。いつもなら母が暇なら手伝いをしろ、買い物の荷物持ちになれと何かとお使いを頼んでくるので、今回はすべてお断りに徹するつもりだ。
あれ、そういえば何か忘れている気が……あ、思い出した。
ジェンなかったがいや!だちかんわ!
せっかくのデートなのに金がないなんてシャレにならん。
という事で、甲斐は顔の広い母に相談する事にした。
「当たり前だ!あんな人はいないってくらい超人で天才的なすげー人なんだぞ!それに昔、おれの従兄弟をこっそり助けてくれたいい人でもある!明日の生活もやっとで、路頭に迷う寸前に金銭的に援助してくれて、どれだけあの人におれや従兄弟が救われたか……。陰で矢崎さんを鬼畜だとか魔王だとか冷酷非道だとか悪く言う奴も中にはいるが、あの人が生徒らに制裁を加える奴は決まって学園で尊大だったクズい悪人ばかりだ。口では酷いを事を言いつつも、それは威厳を示すために仕方なく恐れられる存在になっているだけ。真面目で大人しい生徒には絶対手を挙げないし、表向きは傲慢にひどい態度で振舞ってても、裏では虐げられている生徒を隠れて救ったり守ったりされる思いやりのある人だ。だから尊敬しているんだ!お前みたいな女たらしクズと違ってな!」
「…………そうか」
親衛隊みたいに金と権力目当てに媚び諂う連中なんかじゃなくて、本当のファンもいるようでよかったなと思う。自分の事のように嬉しくなった。
「とにかく!そんな問題児でタラシ野郎がおれの悠里や矢崎さんに気に入られているからって調子に乗んじゃねーぞ!このおれと勝負しろや!」
びしっと甲斐に人差し指を向けて勝負を挑んできた。何を言い出すかと思えばとんだ熱血ちゃんである。
「はあ……その前にそのボコボコにされた顔と格好なんとかしろよ」
「何をー!!」
「熱いのも結構だが、時と場所を選べチビ」
甲斐が軽いデコピンで山本の額をはねてやったら「いっでええ!」と悲鳴をあげて吹っ飛んだ。
「しょ、翔君……!」
「え、なにこれ。弱っ」
全く。これくらいで吹っ飛んで痛がるとは情けない。全然力を入れてないんだがひ弱すぎるだろ。
この様子では先ほどの工業科に目をつけられてリンチをされていたのも、山本が後先考えないで生意気を言ったのが始まりなんだろう。
「お前な……負けず嫌いな所はいい所だが、己の力量を自覚する事も大事だぞ」
「うるせー!く、くそー!今日は調子が悪いぜ」
「はあ……」
変な奴と知り合っちまったよ。やれやれ。
そんな昼休み、仕返しに来た工業化の連中にゴキおもちゃを投げつけたら泣きながら逃げて行った。不良といえどもやはりゴキ嫌いは万国共通である。だがいつかおもちゃに慣れてもらっても困るので、本物も混ぜているのが効果覿面であった。
親衛隊に絡まれなくなったとはいえ、やはりゴキは今後も必要だな……と言いたい所だが、ゴキブリ好きと思われても心外である。いくら「ゴキブリ好きの悪趣味」だとか、実家に大量に生息しているからと言って「ゴキと友達だろ」だなんてあんまりだ。誹謗中傷である。
おまけにドンキでゴキおもちゃを定期購入しているせいか、店員に顔を覚えられてしまった。
甲斐が来た途端に「またゴキっすかwまwいーっすけどw最近お宅が定期的に購入してくれているおかげで大量に入荷がきまったんすwゴキ好きさんあざーすw」とか言われてしまった。
違うんだ。俺は決してゴキ好きではないんだ!勘違いしないでくれえええ!!
しかもこれを大量に使った後は、用務員のおじさんと掃除のおばちゃんとで一緒に片づけるのだが、その黒い物体をほうきと塵取りで掃除する時ときたらひどい地獄絵図であった。恐怖だったね。
それを回収するゴミ収集車の皆さんの恐怖よりかはマシだとは思うが……ゴミ業者の皆さんごめんちゃい。俺が地球のごみを増やしていますよね。
まあ、ともかく。ゴキ好きだと思われたくないのが俺の切なる願いである。
*
寮に帰ると、スマホの振動に気づいた。パソコンでエロゲでもしようかなという所だったので、振動だけで盛大にびくついてしまった。なんせエロゲ中や男の儀式中にいきなり親が入ってくるという恐怖を知っているので、その最中や前後は油断ならないのだ。
まあ、ここは寮なので親がいきなり入ってくるなんて事はないだろうけど、その恐怖を思い出した。
そんな恐怖を思い出させてくれた相手は直のようだ。
「もしもし直か。どうしたんだよ」
『時間ができたから、空いている日を訊きたかったんだ。デートするって約束しただろ。それと……声が聞きたくなった』
直の声がいつもより弾んでいるように聞こえる。
「そ、そうか。デートは……ら、来週がいいかな」
なんかドキドキする。たかが電話で話し合っているのに。それに声が聞きたくなっただなんて調子に乗りそうだ。
『じゃあ来週の日曜な。ちゃんと予定つけとけよ』
「わかってるよ」
そうして約束を取り付けて電話を切った。来週の日曜日は丁度何も予定がない日だ。いつもなら母が暇なら手伝いをしろ、買い物の荷物持ちになれと何かとお使いを頼んでくるので、今回はすべてお断りに徹するつもりだ。
あれ、そういえば何か忘れている気が……あ、思い出した。
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