学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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七章/合同体育祭

50.日下部の中身

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「いただきっ!」
「くっそ、やられたあ!」

 次々と無才の鉢巻を奪いとる甲斐の手には、もう数枚の鉢巻が握られている。
 所詮は温室育ちばかりの無才の生徒達はどれも張り合いがない。これで6枚目。甲斐一人による独壇場であった。

「くそー!甲斐の奴らの騎馬は強敵なんだぞ!平凡顔のくせして運動神経いいなんて反則だー!」

 平凡は関係ないだろ……と、甲斐は心の中で突っ込む。

「天弥、俺、がんばる。天弥のために」

 書記の篠田が黙々と日下部の駒となって動いているが、ただ逃げまわっているだけで自分達から攻撃を仕掛けてくる様子はない。親玉な騎馬なくせしてヘタレである。

「親玉がヘタレ書記と日下部なら、こりゃあ簡単に勝利奪えるな」
「だな。あいつこういうのてんで駄目そうだし」
「おし!一気にアイツの鉢巻を奪いに行くぞ」

 甲斐の号令により、日下部の騎馬がいる方へ攻めて行った。

「いくぞ日下部。逃げるんじゃねえぞ」
「げげっ!甲斐達が来たんだぞ!逃げるんだぞー!」
「天弥、怯んじゃダメ。相手の思うつぼ。戦いは避けられない」
「で、でも俺は体育苦手で「隙あり!」

 怯んでいる日下部の鉢巻をがしっと鷲掴んで引っ張った。するりと取れていく鉢巻。それと同時に、日下部のボサボサな黒髪カツラまで抜けとれてしまい地面に落ちた。

「あ!?」と、一瞬ほうける一同。
「あーー!俺のカツラがあああ!!」

 日下部が蒼白な顔で取れた頭を抱えた。

「て……天弥、カツラ、とれた。おれ、びっくり!」

 無口無愛想でコミュ障な書記も、周りの生徒達も驚きに静まりかえり、日下部の頭に注目していた。
 それもそうだ。だってカツラの下にはあらびっくり、目を見張るほどの綺麗な金髪が現れたのだ。しかもその眼鏡の下はカツラの髪のせいで見えなかったが、今では碧い眼が見え隠れしている。

 うわーマジビックリだ!俺驚きすぎて腰ぬけたァ~!
 ……なんて言うわけねーだろ。
 前から髪の違和感とかで変装してんのバレバレだったからわかっていた。
 第一、今時あんな古臭い牛乳瓶底眼鏡かけている上にボサボサ髪がいたら、別の意味で気になるだろ。
 
「知らなかったのかよお前ら」

 甲斐達は驚いている無才連中に呆れかえって見ている。

「そんなお前は知っていたのか!?」
「知っていたも何も見りゃあわかるだろ。変装しているくらい。時々カツラの下から金髪見えてたしな」
「oh!Noーー!まさか俺達の天弥がこーんな美少年だったなんてジーザス!」
「何がジーザス、だ。アホかこいつら」

 どんだけ観察力ないんだよ、この無才学園の連中は。頭が足りなさすぎてよく今まで生きてこれたよと疑うレベルだ。

「ほおーら!やっぱり金髪で変装してたんじゃないのアイツ」

 開星陣営にいる由希と小川が思った通りだと得意げに話す。

「しかも眼鏡外したらカラコンつけた碧眼でしたってオチもまんま王道。どうせ変装してたのも、こんな美形だと周りの無才学園の連中に襲われかねないから、あえてキモい変装してたって理由でしょ!わかってんのよ!」
「ええ、なんでわかったんだ由希!エスパーか!?」と、いつの間にかそばに来ていた日下部。
「げ、地獄耳かよコイツ。つかやっぱそれが理由かい」

 期待を裏切らない上にブレないのが無才学園である。
 それを生徒会本部の方で見ていた無才の生徒会役員達も、

「天弥があんな可愛い美少年だったなんて驚きですね」
「やっぱり俺の目に狂いはなかったようだな。まるで姫みたいだぜ」
「天弥、マジ天使」

 ……。
 もはやあえて何も言うまい。まともな無才の生徒を除いて知らなかったようだ。
 日下部の事は飛び火し、四天王の耳にも入っていた。

「あいつが変装していたくらい普通気づくと思うが」

 連中の都合のいい頭に呆れるハル。

「無才学園ておバカさんしかいないのかな。おサルさんレベル?」

 笑顔で揶揄する穂高。この程度の連中と争っているのだと思うと、バカらしくなってくるものだ。

「それにしてもアイツ、変装外しても微妙だね。中身がアレだからあれくらいのレベルで盛り上がられてもね~」と、嘲笑う相田。
「オイ……くだらねぇ事話題にしてんじゃねぇよ貴様ら。あんなゴミクズの事話題にするだけ無駄だろ」

 心底興味ないという直。
 四人とも微妙な反応であったのは言うまでもなかった。

 その後、騎馬戦は当然ながら開星学園が勝利して午前の部は終了した。点数的には開星が少しリードしているようである。
 午後からの競技は、負けている学園がすぐに逆転できるようにと点数も二倍に加算される仕組みになり、無才百合ノ宮学園の連中はそれほど焦りを感じていない様子であった。

「時雨ー。おれ、オムライスが食べたいんだぞー!」

 すっかり変装を外した姿で動き回る日下部は、無才の生徒会の間でチヤホヤされながら昼食をとっていた。

「本当に天弥は可愛いですね。体育祭でもオムライスだなんて」
「すぐ用意させてやる」

 会長が小間使いを呼び寄せて注文させている。

「天弥、もう変装はしないのか?まあ、してもみんなに正体がバレちまったからな」
「ああ。しないんだぞ!おれはこれが本当の姿だからな!それに後で四天王にも見てもらうんだぞ」

「「「「四天王!?」」」」

 生徒会連中の顔が瞬く間に険しくなった。

「て、天弥……どうして四天王などを……」
「俺のこの外見を見てもらえば四天王も友達になりたがるはずなんだぞ!俺は誰よりもモテカワだからなっ!きっとあいつらも俺にひどい事を言ったの謝ってくれるんだぞ!」
「天弥、寄りにもよって四天王はだめですよ。天弥が穢れます。あの連中は私たちの敵なのですから。それにあなたを侮辱に侮辱を重ねた連中で無礼者の集まり。あなたがよくても私たちは同意しかねます」
「お前らがなんと言おうと俺は友達になりたいんだぞー!人類皆友達だからな!仲良くしないとだめなんだぞ!それにあいつら四天王はお前らよりイケメンで綺麗で滅茶苦茶格好いいし」
「「「「なっ!」」」」

 絶句する無才生徒会一同。

「特にあいつ、直は超カッコイイんだぞ。あいつは今まで見た男の中でも断トツ美形で、カッコよくて男前で、おれを見る鋭い目がたまらなくて……おれ、怖いと同時にドキドキしたんだ」
「て、天弥……まさかあなたはその矢崎直を……」
「本気で好きになったんだぞ!時雨以上に恋人にしたいんだぞ!」
「「「「……ッ!!」」」」

 おのれ四天王め。許さんっ!!
 恨む矛先を間違えている生徒会連中は、さらに四天王、特に矢崎直に嫉妬と憎悪の炎を燃え滾らすのであった。

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