学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

文字の大きさ
上 下
47 / 222
七章/合同体育祭

45.妹達からの制裁1

しおりを挟む
 *
   
 時刻は朝の8時過ぎ――開星学園の特設競技場に二校の生徒達が集結する。
 まずは百合ノ宮の大型バスが次々停車し、一番最初に降りてきたのは柚木財閥令嬢であり生徒会長の柚木桜子。続いて副会長。次にその補佐であり矢崎財閥令嬢の矢崎友里香。幼女のようなツインテールの書記と派手めな爆乳ギャルの会計も降り立つ。

「相変わらず馬鹿みたいに無駄に金掛けた競技場ね」

 ジャージ姿の桜子が感想を一言。

「桜子様。百合ノ宮の競技場も十分お金をかけた学園だと思いますが……」
「あら、私達の施設は清潔さとお洒落さを重視した学園よ。最新設備だかなんだか知らないけれど、こんな都会のど真ん中にこんなド派手な競技場だなんて、空気は悪いわ都会の喧騒は騒がしいわ街中はごみごみしているわで、通いにくいったらありゃしないと思うわ」
「もう桜子様、開星の悪口を言いまくるのはそこまでにしてくださいませ。私の愛する甲斐様が通っているのですから。ついでにうるさい兄もいますけど」

 兄をうるさいついで呼ばわりする友里香に一同が苦笑する。

「出たわね、友里香の甲斐様好きが」
「ほんと、甲斐様と出会ってから兄より甲斐様優先なんだものね。どんだけ惚れてんのって思う。本当に好きなんだねー」
「当然です。甲斐様ほどイケメンで素敵な方はいらっしゃらないんだから。もちろん兄も昔から世話になってきましたが、それとこれとは別なのです。今は兄とはライバル同士みたいなものですわ」
「ライバル同士……?」
「くぉるあああーー!!」

 背後から一人の女子生徒が豪快に飛び出してきた。

「バカ友里香!あたしがいるって事を忘れないでよね!ライバルはあんたの兄だけじゃないんだから!」

 架谷甲斐の妹の未来が友里香の前に躍り出て、ポーズをとりながら立ちふさがった。

「でましたわね、お邪魔虫のブラコンスケベが」
「そっちこそお兄ちゃんのストーカーしているの知っているんだからっ。数日前なんて開星に忍び込んでお兄ちゃんの生着替え覗いた挙句にそれを動画撮影して、授業中にオナってたって話でしょお。学校でお兄ちゃんでオナるとかどんだけ盛ってんのよ」
「ふん!それこそ甲斐様の寮に侵入してパンツをクンカクンカした挙句に、その甲斐様の貞操となるオパンツを穿いて疑似性交した気分になっているあなたには言われたくないですわ!」
「あたしは妹だからパンツ着用は許されるかもしれないけど、さすがにお兄ちゃんの着替えを撮影してそれをオカズに学校でオナニーはないわ~。私なら時と場所を選ぶし~」
「妹だからって兄のパンツ着用なんて異常ですわ。頭いかれているんじゃありませんこと?兄の甲斐様が可哀想になってきますわ!」
「可哀想なのはあんたの頭だと思うけど?お兄ちゃんはあんたみたいな不埒なバカからあたしが守るんだから」
「甲斐様もそんな妹に守られてお可哀想に。私が近親相姦を企む妹から救ってあげなきゃですわ」
「はははは」
「うふふふ」

 二人は笑いながら睨みあい、視線がバチバチ交差する。もはやこの争いは恒例行事のようなものであり、百合ノ宮の生徒会一同は誰も深くは突っ込まない。

「いつもの甲斐様をめぐっての喧嘩が始まっちゃってますね」
「友里香も毎度毎度未来ちゃんに正々堂々と対抗し続けるのもすごいけど、矢崎財閥令嬢をバカ呼ばわりできる未来ちゃんも大物ね。普通なら退学沙汰になってもおかしくないんだけど……」
「彼女はそーゆーの嫌いますから」
「そうね。それに案外二人ともケンカしながらも仲よさそうだし……きっと楽しんでいると思うわよ。本人達は認めないだろうけど」

 ケンカをしている二人と百合ノ宮の生徒会から少し離れた場所で、無才陣営の大型バスも次々到着した。静かでおしとやかな雰囲気の百合ノ宮とは違い、ハナッから野郎共の熱気と野太い咆哮が響き渡る。
 無才学園生徒会の天草時雨率いる野郎生徒会達が、開星の地に降り立ったのだった。

「相変わらず無駄にごみごみした所だな。山奥から地上に降りた気分は最悪だぜ」

 会長の天草はすぐ近くにいる桜子とほぼ同じ感想を述べた。

「同感ですね。やはり空気も悪いし、騒がしいったらありゃしない」
「可愛い(男の)娘達のために活躍しちゃわないと」
「おれ、さわがしいここ、きらい。はやく、かえりたい」

 生徒会が集結したところで天草が拳を天に掲げる。

「よし、行くぞ野郎共!」
「「うおおおおおおー!!」」

 その野太い咆哮を聞いた百合ノ宮陣営は顔をしかめる。

「げ……無才の連中がいるわね」
「あいつらと鉢合わせなんてしたくなかったのですが、時間帯が時間帯なので仕方ありません」
「遅刻なんてしたら我が校の示しがつきませんからね」
「この~」
「なにを~」

 百合ノ宮生徒会一同が無才の連中に嫌な顔をしている向こうで、まだ友里香と未来がケンカをしている。無才の連中には気付いているのか気付いていないのか、空気を読まないで罵り合っている。

「甲斐様の活躍はわたくしが動画に納めますわ!!」
「お兄ちゃんの活躍はあたしが撮るに決まってんでしょ!」
「あなたは邪魔d「おいお前ら!今、甲斐と言わなかったか!?」

 二人がスカートからお互いのパンツが見えているにも関わらずケンカをしている中で、無才会長の天草が割り込んだ。二人のパンツに対して何も突っ込まない所が根っからのゲイである表れである。

「あん?てめえ誰。なんでお兄ちゃんの事知ってんだ!」
「んまぁ!この人は無才学園生徒会長の天草時雨ですわ」

 矢崎財閥令嬢の友里香はさすがに顔と名前は見知っていた。

「え、こんな野郎が無才の会長ぉ!?しんじらんねー!」
「なっ……無才学園の生徒会長で天草グループの御曹司に向かってなんたる無礼な口の利き方ですか!不敬ですよ!」

 武者小路が未来の無礼な話し方を注意をする。が、未来は「うわインテリ風長髪から注意されたんだけどー!不敬以前にその邪魔な髪切れよウザってぇ」と、意にも介さない様子どころか悪口を言う始末だった。武者小路はあまりの言い草に固まっていたが、天草は「まあまあ」となだめた。

「あいつの情報が少しでも欲しいからな。それによく見れば彼女はあいつの妹君だというタレコミをもらった。粗相のないようにしろよ」
「粗相のないようにと言われましても、いくら架谷甲斐の妹とはいえ女相手なんかn「時雨ーっ!」

 そんな時、見た目は小柄で金髪天然パーマをなびかせた日下部が走ってきた。

「おお、天弥か!」

 日下部は天草に勢いよく抱き着く。

「今日はここでがんばるんだぞ!おれが無才を勝利に導くんだぞ!」

 天弥とやらがにこっと笑顔を見せる。

「天弥はいい子ですね。微笑ましいです」
「ほんと、可愛いよねー」
「天弥、かわい」

 口々に天弥という生徒を褒めちぎる生徒会一同は、完全に天弥の謎の魅力に盲目になっている。
 そのあまりの盲目さに愛想を尽かしている生徒も多少いるにも関わらず、生徒会共は天弥の放つ魔性の魅了にやられては心酔しきっている。
 微量の洗脳マインドコントロールの一種なのだが、一般生徒や一般人には全くもって効く事はなく、なぜか無才生徒会にだけ効いてしまうのだとか。だとすれば、もしかしたら頭の弱い人間バカにだけ効果があるんじゃないかと言い伝えられ、今日も今日とてまともな無才の生徒達は呆れてその様子を見ていたのであった。

「おれ、直と友達になってみたいんだぞ。矢崎直が日本で一番モテるって聞いてな、一番友達……いや恋人になりたいんだ!すっげえ美形でカッコよくて、あーはやく逢いたいんだぞ」
「な……天弥、さすがに矢崎直は……」
「しかも矢崎直っていえば天草の天敵で……あ」

しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺

高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです

平凡な俺が総受け⁈

雫@更新予定あり
BL
平凡な俺が総攻めになる⁈の逆バージョンです。高校生活一日目で車にひかれ異世界へ転生。顔は変わらず外れくじを引いたかと思ったがイケメンに溺愛され総受けになる物語です。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

平凡くんと【特別】だらけの王道学園

蜂蜜
BL
自分以外の家族全員が美形という家庭に生まれ育った平凡顔な主人公(ぼっち拗らせて表情筋死んでる)が【自分】を見てくれる人を求めて家族から逃げた先の男子校(全寮制)での話。 王道の転校生や生徒会、風紀委員、不良に振り回されながら愛されていきます。 ※今のところは主人公総受予定。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

処理中です...