学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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六章/派遣学生と交流会

39.コスプレ障害物

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「四天王め……言いたい事を容赦なくほざきやがってッ!」
「まあ、落ち着きなさい、時雨」

 今にも殴りかからん勢いの天草会長は、冷静な副会長の銀になだめられている。

「あなた達は仮にも将来の日本をしょって立つ人間の筈でしょう?それなのに私達の天弥を侮辱する発言の数々、無礼千万もいい所。ですからもう交流会なんてなしにして、堂々と我らはあなた方へ宣戦布告いたしましょう。どうせマスコミ連中はこの展開を狙っていたようですし」
「ちょっと、交流会なしだなんて私達もその対決に混ざれって言うの?」

 突拍子な対決の展開に百合ノ宮陣営が反応を示す。

「当然だろう。無才学園をバカにされたんだ。兄妹校としてお前らも参戦しろ」
「面倒くさいわね。おかしな対決に女も巻き込まないでほしいんだけど。ま、バカにされる様な事しているあんたら一同が悪いのは事実だけれど」と、柚木。
「なんだとてめえ!」

 憤慨する天草。

「ちょっとちょっとー兄妹校同士が仲間割れとか見苦しいんだけどーやめてくれるー?」
「「こんなの仲間じゃねーよ!!」」

 相田の突っ込みに全力で同時否定する天草と柚木。仲が悪いくせにこういう時だけ息はぴったりである。
 
「案外仲いいんじゃないのか、こいつら」と、直。
「だよね。ケンカするほど仲がいいって部分はきっとどっかの誰かさん二人と似てるよね~」

 穂高はニコニコと直の方を向いた。

「あ?」と、眉間に皺をよせる直。
「いーや、なんでもないよぉ。で、どうするの?」
「不本意だが、無才と百合ノ宮は連合となりお前ら開星に宣戦布告する」
「私達は別に宣戦布告したくないけど、あくまで私達だけ交流としてなら乗ってあげてもよくってよ。ねえ?譲」と、視線を副会長に向ける。
「ええ。ボクらは別に対立したいわけではないので」
「ふーん。まあ百合ノ宮はそれがいいかもね。無才は別だけど。じゃあこっちも宣戦布告するわー。イイでしょ?」
「好きにしろ」と、直。

 穂高もハルも頷く。

「で、どうするの~?オイラ対立とか修羅場とかわっくわくするなァ」

 心底この状況を楽しんでいる相田は、退屈な事が大嫌いな愉快犯気質である。

「では、正々堂々とした対決にしましょうかね。丁度体育祭は一週間後に合同でしますから、体育祭を通じた対決……というのはどうでしょうか」
「ふむふむ、やっぱりそれきちゃうか」
「私達……つまり無才と百合ノ宮の連合チームが勝ったら、今までの非礼の数々をマスコミの前で謝罪していただきましょう。当然、四人同時に土下座でね。天弥に対しても心からの非礼を詫びてください。そして、卒業するまであなた方四天王は私たちの忠実なる下僕となり、一切逆らう事が許されない……というのはどうですか?マスコミが見ている前でライバル同士どちらかが屈する瞬間は、この上なく屈辱で汚点となる事でしょうし、大いなる注目にもなりそうですからね」
「土下座に下僕、かァ。そこまでいろんなの賭けちゃう話なんだね。ねえねえ、三人はどう思う?ぼくは面白そうだから対決してもいいよぉ。そういうゲーム大好きだなァ」

 穂高が愉快に訊くと、相田も同調する。

「オイラも好きー」
「俺は直に回答を委ねる」

 ハルが直に視線を向けた。

「だから好きにしろと言っただろ」

 直は腕を組みながら目を伏せている。

「あれ、直はいいの本当に?」
「いいも何もそいつらのライバルになった覚えはない。オレからすれば格下共だ。特に無才の連中など所詮は成金共の集まりにしか過ぎん」
「なっ……く、腹が立つ野郎だぜ、矢崎直。だが、宣戦布告したからにはテメエらに屈辱を味あわせてやるぜ!特に矢崎直!俺とキャラがかぶってるてめえには負けねえからな!」
「……うぜ」

 つーかコイツとどこがキャラかぶってんだよ、と思う直であった。

「それにしても、まさかあなたとこうして再会する事になるなんてね。性悪男さん」

 柚木と直が視線をあわせる。二人は昔からの顔見知りである。
 その昔は超お似合いカップルとして言われていたが、お互いがお互いを毛嫌いし、冗談じゃないと思っているので、親同士が決めた婚約者同士であったがあえなく破断。
 今は仕事上で時々名前を見かける程度の関係だ。
 
「クソ女も元気そうじゃないか。お前のプレイガールな噂はよく耳にしているよ。非常に飽きっぽくて片っ端から好みのタイプにちょっかいを出してるってな。悪女様々じゃないか」
「そっちこそ飽きたら捨てるって最低なプレイボーイぶりの噂も風に乗ってよく耳にしているわよ。そんな所が悠里ちゃんと似ても似つかわない性悪ぶりで、悠里ちゃんや友里香ちゃんが可哀想になってくるわ。数年前、あなたと婚約者時代だった頃がバカらしく思えるくらいにね」
「よせ。黒歴史だろ」
「ほんと黒歴史だわ。顔以外であなたみたいな最低男を好きになるモノ好きなんているのかしら」
「そっちが、だろ。魔女のくせにな」

 こうして、宣戦布告しあった御三家は体育祭に向けて練習を開始するのであった。
 開星学園と無才百合ノ宮連合のどちらかに勝敗が決まる事によって、事実上の日本のトップ学園が決まるのである。

「こりゃあいろんな意味で負けられないよな。四天王は好きじゃないが、やっぱり自分が通ってる学校が全国の前で負けるなんて嫌だし」

 無才百合ノ宮連合と対決する事にEクラス達もやる気にわいていた。

「あの二校て仲悪いけど、今度ばかりは人数と性別的な関係で組む事になったみたいね」
「っつーか無才も百合ノ宮も結構実力者ぞろいだよな」

 甲斐が見ているのは体育祭に関するしおりである。
 急遽作られた体育祭のしおりは、無才と百合ノ宮の生徒の運動能力が分析されており、誰がどの競技に参加するかの名簿まで一名ずつ掲載されている。
 確実に勝つために体育委員が必死で作り上げたものらしいが、噂では四天王に脅されて数日徹夜で無理やり作らされたようである。
 ちなみに出場する競技は勝手に決められてしまったようで、もちろん全校生徒必ず一つは傷病持ちを除いて競技に参加する事が決まっている。
 
「甲斐殿はなんの競技に出るでござるか」と、オタ熊。
「えーと……かけもちする事になってるみたいだ」

 しおりの出場競技一覧を眺めると、借り物競争と騎馬戦とコスプレ障害物競走とラストのリレーに自分の名前が載っていた。他はともかくとしてなんだこのコスプレ障害物競争って。

「甲斐は運動神経抜群だから目をつけられると思ってたよ」
「はは、まあ光栄だな」
「私は100m走と玉入れ」
「俺は騎馬戦と100m走みたいだ」
「せ、拙者はパン食い競争と騎馬戦でござる」

 悠里となっちとオタ熊がしおりを見ている。本木や吉村らも同じようなラインナップだった。竜ヶ崎などの運動オンチ達は玉転がしなどにされていた。
 
「へぇ、騎馬戦とか楽しそうー。男子の花形競技だし。でも最近では怪我するから中止になってる学校多いよねー」

 由希や小川は騎馬戦の男達が密着する模様を妄想しているのかニヤケ顔だ。

「騎馬戦面白いのになァ。ところで、このコスプレ障害物競争ってなに」
「さあ」

 皆知らないようである。今回初めてできた競技らしい。

「あれ、そういえば宮本は?」
「どこ行ったんだろ」
「あーずるいんだぞ!俺抜きで仲良さそうにしているなんて!」

 そこへ魔性のKYである日下部が乱入してきた。

「何、日下部君。あんたは派遣学生。無才学園側で出場するんでしょ。しかもこの学校に来たのは開星をスパイするためだってね。何を知りたいのか知らないけど、そういうの最低なんだから!」
「なっ……ひどいんだぞ由希!おれに冷たいんだぞ!そんなのは出鱈目だー!おれはスパイじゃないぞー!四天王の秘密を知るために来ただけだ!」
「へえ、自分で墓穴掘ってるし。そういうのがスパイって言うんだけど」と、篠宮。
「だいたい、今はアンチ王道はこの学校には願い下げなの!敵チームなんだからさっさと母校で作戦会議してなさい」

 由希がそう言い放つと、日下部はうわーんと泣きながら走って去って行った。敵チームのスパイは今はお呼びじゃないのである。

「あれ、これ日下部の……?」

 床には黒髪のカツラが転がっていた。日下部が走った際に落ちた物である。

「やっぱアイツ変装してたみたいね。アンチ王道にありがちで、中身はきっと美形ズラかしら。でもいくら美形だろうとアンチ王道には変わりないわ!化けの皮ひん剥いてやる!」
「なあ、今度はアンチ王道ってなんだよ」
「あとで教えたげる」

 そんな由希や小川はアンチ王道が嫌いなのである。
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