【完】学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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一章/金持ち学園

10.親衛隊からの報復

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 その頃、別室では―――

「あいつら邪魔しやがって。せっかくパシらせて死ぬ思いさせるくらいコキ使ってやろうと思ったのに」

 直はソファーにどかりと座り、愚痴をこぼしていた。

「どぉしたの?すごーい機嫌悪そう」

 菜月が直にすり寄り、上目づかいで見つめてきた。

「そうだな。オレは今機嫌がすこぶる悪い。どうしてもストレス発散がしたい」

 菜月を勢いよくソファーに押し倒した。邪魔なネクタイや制服のブレザーをはぎ取っていく。
 イライラした時はこうしてセックスに走って発散するか、誰かを呼んで一方的に暴力に走るかのどちらか。少しはすっきりするかもしれないが、所詮はその場だけの紛らわし行為にしかすぎない。

 はっきり言って、今は何をしても虚しかった。

 *

「あーもう……四天王ってどうして変な奴らばっかなんだろう」

 変わり者の集まりなのか。俺みたいな平凡を気に入ったとか抜かす辺り趣味悪い。ただのキモオタだぞ。自分で言ってて悲しいけど。
 それに矢崎直―――。

 友里香の兄とは思えない程我儘で、俺様で、ドエスで、傍若無人な最低男。
 貧乏人というだけで人を判断し見下す。どうやったらあのような鬼畜最低男ができあがるのだろうかと逆に知りたいものだ。嫌がらせでプリン一つのためにパシってくるし、首絞めて来るし、奴隷扱いするし、アイツの事を考えるだけで胸がムカムカしてくる。

「マジ四天王ってロクな奴いねえ!」

 甲斐は愚痴をこぼしながら男子トイレに入った。

「お前が架谷甲斐だな」
「は……」

 背後からの声と同時に水が飛んできた。一気に髪や制服が濡れて、ひんやりとした感触と下水の汚臭が全身をつつむ。甲斐は滴る雫をそのままに茫然と立ち尽くした。

「ざまあカンカン」

 汚水をひっかけてきたのは別クラスの女子だった。親衛隊と記されたバッジを胸につけている。

「な、な、何す「四天王に近づくんじゃねーよ!」

 今度は別の女子生徒に卵やら生ごみ類を投げつけられた。べちょりと甲斐の髪や制服にいろんなゴミが付着して、ひどい臭いに吐き気がしそうになった。

「きゃははは!きったなーい!しかもくっさーーい!いい気味だよ!」
「直様に生意気な態度とってる罰だっつうの。だいたい、なんであんたみたいなのが直様の従者なんだか意味わかんないんだけど」

 それはこっちの台詞ですが。

「従者なんてあたしらもなりたいくらいなのに、直様にお近づきになりたいのに、お前みたいな平凡地味に目を向けるなんて全部お前のせいだ」

 なんもしてないのに俺のせいとか。なぞ理論すぎない?

「これに懲りたら二度と四天王に近づかないで!」

 生徒の顔は本来の可愛い顔がひどく歪んでいた。

「てゆーかテメーが学校辞めれば早い話なんだよ」
「そーそー辞めちまえよ!ド庶民の貧乏人!」

 辞めれるはずなんてない。こちらにも都合がある。

「まあいいよ。次また調子こいたらもっとひどい事してやるんだから。それを肝に銘じときな」

 そこまで言うと、親衛隊達はバタバタと去って行った。
 甲斐は汚れた格好でひとりその場に取り残される。通りすがりの生徒達は、こちらを見て異端の目で見るかあらぬ噂をひそひそと話し合って、視線を合わせないように通り過ぎていく。

「あーあ。こんな格好じゃあ教室にも戻れねーや」

 これが貧乏人として入学したこの学校の洗礼だとわかっていた。いつ何が起こってもいい様に覚悟はしていたはずなのに、実際やられてみると心にぐさりとくる。
 なんとかごみをシャワー室で洗い落として、持ってきていたジャージに着替えて教室に戻ると、即座にEクラスの面々が心配してくれた。が、どうしてか自分の椅子と机がなかった。鞄や教科書さえもなかった。

 話を聞くと、架谷甲斐を助けると学校を退学させると上から圧力がかかったらしい。それに恐れて、たとえEクラスの仲間達でも怯えて手出しができなくなっていたようだ。
 しかも、その首謀者は矢崎直。

「っ……あんの銀髪クソヤローがぁああ!ぜってえ許さねぇ!!」

 助けてくれる仲間を作らせず、確実に孤立させるため。学校をイヤだと辞めさせるように本格的に仕向けてきやがったのだ。
 こっちだって、こんな学校も四天王も大嫌いだ。
 ありえないほどリアルな身分制度と学園カーストに加えてあの銀髪クソ野郎。我儘で、俺様で、傲慢なアイツなんかと関わりたくない。従者なんて誰かに譲りたい。四天王にも関わりたくない。

 でも、こんなことで絶対に負けるか。このままでは終わらない。
 意地でも学校は辞めたりしないんだからなっ!

 一章 完
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