学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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十八章/黒崎家

158.黒崎家の過去2

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『さすがに相手が悪いんだ。あの矢崎財閥なんだ」

 父が深刻な顔で話した。

『っ、矢崎財閥、ですか』

 桁違いの大きな相手にさすがの私も言葉を失った。

『力を入れているホテル事業をはじめ、食品事業、オンライン事業、小売り事業など、あらゆる事業を展開している巨大グループだ。今の日本の財閥の頂点に立つグループなのは知っているだろう。敵にまわせば私達程度の会社などあっという間につぶされてしまう。それどころかいろんな弱みを握られ、私達を路頭に迷わせる事だって造作ない権力を持ち合わせている。お前もわかるだろう?矢崎がどれだけのものか。小さな損害かもしれんが、さすがに矢崎財閥相手にだけは目をつけられたくないんだよ』

 矢崎財閥を敵にまわす事はすなわち社会的に抹殺される。と、いう暗黙のルールがある事は財政会や社交界等では有名な話だ。
 私も小さい頃に聞いたことがある。矢崎財閥相手には下手に手を出すなと。いろんな意味で殺されると。
 たとえ小さな損害レベルでも、矢崎に不利益を負わせ、不愉快だと一度目をつけられてしまえば、トップの声一つで中小企業程度の会社など簡単に潰す事などわけないという事も聞いた覚えがある。

『だからって、それとこれとは関係ないはずよ。それになぜ私の元へ来るのです?私はもうあなた方両親とは縁を切りました』
 
 別に両親の損害云々は勘当された私にとって全く関係のない事だ。
 冷たい言い方かもしれないが、縁を切ったのなら尚更。会社の業績目当てな両親に愛想が尽きている中で、この期に及んで助ける義務などないのが正直な気持ち。
 それになぜ関係のない我が息子の直を差し出さなくてはならないのだ。そんなの冗談でも言ってはならない事だ。

『先日、矢崎財閥の次期跡取りとなる息子さんが肺炎で亡くなったのよ』

 母がいきなり暗い顔で話す。

『亡くなったんですか』

 一年半ほど前、跡取りが産まれたというニュースを盛大にテレビが取り上げていた事を思い出す。それに最近社長の奥方が亡くなったばかりだった。
 跡取り息子まで亡くなったとなれば、それとなく大きくマスコミが取り上げるはずだが、そのニュースは一向に流れていない。それがなんだというのだ。

『これは矢崎の側近クラスしか知らない極秘情報だから、マスコミも当然知らない事なんだ。だから決して表には漏らせないトップシークレット。今更世間に向けて息子が亡くなったなんて矢崎家からすれば沽券に関わるから公にはできないんだろう。たった一人の跡取りが亡くなった以上、仕方なしに極秘で養子をとる事にしたらしいんだ』

 父の言葉にピンときた私は、青褪めて体を震わせた。

『まさか……その養子の候補にあがっているのが……私の息子だっていうの……?』
『……そうだ。候補どころか社長はお前の息子をいたく気に入ってな……もう養子にと決定したも同然の反応だそうだ。亡くなったご子息に顔つきも少なからず似ており、白人のクオーターである事も願ってもいない偶然だそうだ』

 たしかに自分はハーフであるから直はクオーターになる。そして、亡くなった矢崎家の息子もクオーター。それだけで選ばれたというのか。

『私どもにその情報をよこしたのは、損害に対する示談という名の取引を持ちかけたからなのよ』と、母が話す。
『向こう側がな、今すぐにでも養子にくれないかと連絡してきてな……もし養子に譲ってくれるというのならば、今回の損害の事は大目に見てくれる上に、私達の会社に多額の援助をしてやってもいいという願ってもないお言葉を頂けた。これを逃せば、私達は矢崎財閥の機嫌を損ねてしまう。だから『冗談じゃないわ!!』

 私は父の言葉を遮って声を張り上げた。

『あなた達の自業自得なのにっ……息子を矢崎財閥へ人身御供にしろっていうの!?』
『だ、誰もそんな事は言っていない』

 慌てて否定しようとする父だけれど、つまりは息子を差し出せば全てが丸く収まると言いたいのだろう。

『同じような事じゃない!業績のためなら私さえも捨てるようなあなた方なら、孫を売る事なんて息を吸うかのごとく簡単なんでしょうね!それに私たちの事も目先の欲ばかりを見て認めて下さらなかったくせにっ。いいけしゃあしゃあとっ!本当に自分達の事しか考えてないのね、貴方達両親は』

 悲しくなった。会社の事ばかりだと思っていたがここまで酷いだなんて。
 自分達と血のつながった孫を差し出せる非情な両親に嘆きたくなった。

『お、おい!親に向かってその言い方はなんだ!ここまで育ててやったものをッ』
『育ててやった、ですって?親らしい事なんて何一つしてくれなかったあなたがそれを言うんですか?育児全てを乳母に任せきりだったくせに。会社の業績ばかりで私の事など一度も考えた事なんてなかったくせに!随分都合のいい親だわ!潰れればいいのよ!娘の息子を簡単に売り渡せるあなたの会社なんてっ!いい気味だ!!』

 そう堰を切ったように言い放った途端、ぴしゃりと頬を強く叩かれた。ズキズキするその頬を押さえながらもその父を睨むのをやめられない。目尻に涙がにじむ。
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