学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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十六章/トラウマ

143.病院

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 悠里が襲われ、甲斐が大ケガを負ったと聞いて、仕事など久瀬や部下に任せて飛んできた。
 何やってんだあのバカ。あの程度の雑魚に遅れなんてよほど油断していたのか寝ていたのか知らんが、情けないの一言だ。
 詳しい話は訊かないとわからないが、いろんな意味でハラハラして、切羽詰まって、それでいてムカつく。

 ハルの両親がやっている病院に到着して、甲斐が運び込まれた病室へ向かう途中でEクラスの連中も治療を受けているのを目にした。
 Eクラスも襲われたとは聞いていたが結構な人数だ。しかし、どれも深刻レベルではなく、せいぜい骨にヒビや骨折程度という所か。
 さすがは脳筋だらけの打たれ強いと噂されるEクラスだ。殺されなかっただけでも上出来だ。

「直くーん!」

 甲斐の母親がこちらに気づいて声をかけてきた。背後に祖父母であろう人物も一緒にいる。

「甲斐君は……」
「あー大丈夫大丈夫!どんだけ重傷かと思ったら肋骨にヒビが入ってるだけよ。ただ、精神的には重症らしい」
「精神的に?」
「あいつ、メンタル弱かったの。メンタルトレーニングをしていたくせに、無意識に昔の事を引きずっていたらしくて、そこを漬け込まれたのかね」
「昔の事……」

 あいつがメンタル弱かったなんて初耳だ。自分の弱い部分は全く見せなかったから意外だった。

「それにね、あいつと戦う相手が城山金太郎だった事が何より甲斐を追い詰めた」
「城山とは……ホワイトコーポレーションのその息子、ですか?」

 甲斐がそいつと小学校が一緒だったと言っていたのを思い出す。

「そう、それ!なんとかコーポの息子!最初は甲斐からEクラスのみんなを城山の一味から助けてあげてって電話があって、Eクラスは助けてあげられたんだけど、甲斐だけはちょっと遅かったみたいでね。あたしらが駆けつけた時にはもう甲斐はボロボロで血まみれ。でも大半が返り血みたいで、別な意味でゾッとしちゃったわよ。あいつ誰かを殺っちゃったのかって。副担のイケメン先生が間一髪止めて助けてくれたみたいで助かった。もう少し遅かったらアイツ、クラスメートの女の子を殺しちゃってたから。それどころか全員……」

 あんなに隙がなく強いあいつがそこまで追い詰められていたのか。

「あいつ小学校時代に城山にいじめられていてね、その恨みのようなモノがまだ無意識にあったんだろうね」

 あいつが……いじめ……。
 普段はEクラスという立場ながらバカにされていても、それを跳ね除ける強さがあるあいつが……。
 甲斐にも弱い時期があったんだな。

 とりあえず教えられた部屋番号を見つけてそっと病室の扉を開けると、包帯やガーゼを付けた甲斐が眠っていた。
 思ったより傷だらけというのが印象。まるでリンチにでもあったような傷の多さに心配になるが、本人は穏やかに眠っている……というわけではなさそうだった。

 なんだかうなされている様子だ。汗ばんで呻き声をあげている。悪夢でも見てうなされているのか。
 まるで、気分が悪い時のオレみたいに。

 他人事には思えなくて、少しでもこいつが悪夢から解放されるように手を握りしめた。

 *


「もしかして……悠里ちゃん?」

 甲斐の病室へ行こうとしていた矢先、昔の知り合いに声を掛けられた。

「あなたは……さ、早苗さん……!?」

 声を掛けてきた思わぬ人物に驚く。
 彼女は自分が小学校の頃に神山家で女中をしていた女性なのだ。そして、自分の育ての親のような人。
 ずっと探していた人とまさかこんな所で再会するなんて。

「どうしてここに……?」
「どうしてここにってこちらが聞きたいわ。私はこの部屋の甲斐君のお見舞いだけど」
「え、早苗さんは架谷甲斐くんと知り合いなんですか?」
「知り合いもなにも親戚みたいなものよ。甲斐君のお母さんと私は親友だから、甲斐君とも小さい頃からの付き合いよ」
「そ、そうだったのっ」

 それは初耳で、まさかこんな近くにいたなんて全然知らなかった。甲斐の母親と親友だったという事も。

「それにしても久しぶりね。元気そうでよかった。ずっと心配していたの。悠里ちゃんのこと」
「私も……早苗さんに会いたかった。私が小さい頃からとてもよくしてくれたお母さんみたいな人だったから……。もちろん今も……そう思ってます」
「悠里ちゃん……」

 あの時、両親と早苗は教育の価値観の相違でケンカになり、両親は早苗をクビにしてしまったのが本当に悲しかった。ずっとどこで何をしているのかいつも気がかりだった。
 手紙を書こうにも連絡先は知らないし、両親に訊いても教えてはくれなかったから、知る手だてが全くなかった。
 でも偶然こうして再会できて嬉しい。

「話はあとでゆっくりしましょ。とりあえず中に入りましょっか」

 甲斐の病室の中には兄の直がすでに来ていた。

「あらっ……直くん!来ていたのね」
「お久しぶりです、黒崎さん」
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