【完】学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

文字の大きさ
上 下
104 / 225
十二章/修学旅行(後編)

100.圧倒的権力

しおりを挟む
「宿に潜入した貴様らを見逃した事をとても後悔しているよ」

 直が腕を組みながら背後にいる黒服達に顎で合図を送ると、黒服達は双子らを取り囲み、羽交い絞めにして取り押さえた。

「ちょ、ちょっと何をするの!」
「僕タン達にこんな真似してタダで済むと思ってるの!?」
「それはこっちのセリフだ」

 目で人を殺せるんじゃないかという眼光を双子に向けた。瞳孔が開いた目は周りをすくみ上がらせる。

「オレの甲斐を二度も愚弄した。それはオレに対する愚弄も一緒。つまり、貴様らはオレを怒らせた。それがどういう事かわかるな」

 殺気を纏った直の雰囲気と曰くありげな言葉。上流階級の世界では『矢崎財閥と矢崎直には手を出すな』という暗黙のルールがあり、今一度それが呼び起こされる。
 手を出す、つまり怒らせるなという意味合いのそれをふと思い出し、やっとどれだけの大罪を犯したかを理解すると、双子達は次第に恐怖に戦慄する。

「ゆ、ゆるして……っ」
「お願い、します……も、もう、何もいたしませんから……」

 双子は気の毒な程怯えて青ざめている。死刑宣告でも受けたかのように土下座までし始めて、半泣きに頭を下げている。
 直を怒らせたらどういう末路を辿るかわかっており、ひたすら許しを請う姿に一同は茫然。
 誰であろうと彼の怒りにふれた時、一族もろとも社会的に死を意味するのだから。

「泣いて謝って後悔しても遅い。今の事がなくても、勝手に宿に潜入した事などで貴様ら双子やその親会社には制裁を加えるつもりだった」

 だから先ほどまで仕事の話し合いをしていたのかと妙に納得する。しかし、この重苦しくて絶望的な空気はどういう事だろうと甲斐は思う。
 そんなに直が怖いのだろうか。背後の矢崎財閥という巨大な組織が。

「お、おい。こいつらどうする気だよ」

 不穏な空気を感じ取った甲斐が慌てて直に訊いた。

「お前は気にしなくていい」
「いや、気にしなくていいって逆に気になるから。大体なんなんだよこの黒服の奴らは。お前の部下だろうけど」
「黒服はオレの部下でもあり、拓実の部下でもある」
「相田の?」

 てことは反社関連か。そこまでする程の事か。たしかにこの双子共には腹が立ったが、所詮はちょっとした学生同士のいざこざにすぎないというのに。
 そんな当の本人の直はせせら笑っていた。子供のように無邪気さを含んで、ただただ口の端を不気味に持ち上げていた。

「もしかしてこいつらに手荒な真似をするのか。やめとけよ。さすがにそこまでしなくていいから。オーバーキルすぎる」
「お人好しだな、オレの愛しい甲斐ちゃんは。安心しろよ。こいつらにはをさせるだけだ。決して手荒な真似はしないと約束する」
「……仕事?本当かよ」
「本当だ」
「……約束だからな」

 甲斐は鋭く直を見つめると、直は静かに頷く。

「ああ、約束」

 確かに手荒な真似はしない。
 仮にオレがこいつらを許しても、許しはしないだろうから、慈悲は与えられないだろう。
 金と権力の世界は生易しい制裁で終わらせれば奴らはすぐに図に乗る事が目に見えている。だから、目に物を言わせて黙らせて、完膚なきまで地に落とさなければこの手の連中は懲りないのだ。

「つれてけ」
「「はっ」」

 直が命令すると、忠実に黒服達は動き、双子と篠崎の三人を強引に車に乗せていく。周りの無才の取り巻き達は、怯えて動く事もできずにそれを傍観しているだけ。
 双子は聞くに堪えない程ひどく泣きわめいて暴れている様子だったが、黒服達は無理やり大人しくさせている。
 やっぱりひどい事をされるんじゃないかと危惧した甲斐は、止めようとしたが車はもう発車して行ってしまった後だった。

 *

 その晩、直と相田はある要塞の地下室の前にいた。
 要塞の地下室は研究所のような真っ白い空間で、どこまでも無機質だった。
 
「返り血ついてんぞ」
「ごめん。別件で別の奴を拷問してたらこうなっちゃった。てへ」

 相田の頬には真新しい血痕が付いていた。まだ乾いて間もないものである。

「……殺したのか?」

 無表情で問う直。

「いや、いろいろ使い道はあるだろうから生かしてる」

 愉しそうに返す相田。
 二人はある部屋の重い扉の前にいる。決して関係者以外は立ち入る事のできない領域で、微かに扉の奥から何者かの奇声やら叫び声が漏れている。二人にとってなんの感慨もわかない声であった。

「生き地獄を与える気満々だな」
「当然でしょ。死ぬより時としてそれが一番の苦痛だって事、直も知ってるくせに」
 
 彼らの周りには黒服と白衣の研究者の者が何人かいる。
 彼らは顔色一つ変えずに、淡々とこの場所で今しがた行われていた事を報告しあう。決して世間には公にできない闇の所業を。

「それが次期トップのお望みならそう動くのがオイラの役目でしょ」

 華やかな世界に住まう矢崎家にも黒い繋がりは当然存在する。
 時には裏社会のトップの孫である相田拓実と共謀して、裏と表の秩序を乱す人間を始末するのも彼らの役目。
 直と相田。幼い頃からの腐れ縁といえど、裏のビジネスパートナーとしても深く繋がっているのだ。
 
「それで例の双子共の様子は?」
「今もその手の男達に遊ばれてるんじゃない?あいつら無駄に綺麗な顔してんじゃん。だから可愛い美少年好きなその手の男らにモテモテで、マワサレまくって数時間くらいしたらあっさり従順になってメス化されてる。青龍会の研究員が開発した新薬のおかげで、もう幸せそうな顔してヤラレまくってるよ。快感地獄に昇天前って所かな。近々その子達のフィルムが出回るっしょ。いい稼ぎにはなりそうで感謝してるワー」

 裏社会に生きる相田の口調はいつもの軽いノリではあるが、目はギラギラしている。
 今しがた暴力を振るってきた者特有の殺気を放ちながら、裏の絶対的な支配者の顔を窺わせた。

しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

藤枝蕗は逃げている

木村木下
BL
七歳の誕生日を目前に控えたある日、蕗は異世界へ迷い込んでしまった。十五まで生き延びたものの、育ててくれた貴族の家が襲撃され、一人息子である赤ん坊を抱えて逃げることに。なんとか子供を守りつつ王都で暮らしていた。が、守った主人、ローランは年を経るごとに美しくなり、十六で成人を迎えるころには春の女神もかくやという美しさに育ってしまった。しかも、王家から「末姫さまの忘れ形見」と迎えまで来る。 美形王子ローラン×育て親異世界人蕗 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

処理中です...