学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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十一章/修学旅行(前編)

92.性懲りもない双子

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 その後、無才一同が宿に戻った後、会長のその変貌ぶりにドン引きして発狂する事になる。
 あの俺様何様バカ殿様の天草が、まさかのドMに開花してタコ踊りをしながらクネクネしている現実なんて見たくはなかっただろう。

 おまけにドM症状は甲斐のいる前しか発動しないので、普段の会長はまともに戻るらしい。
 しかし、面白がったドSな生徒が会長を攻めようとしても逆に攻められてしまうらしく、甲斐の前だけ異常にドM馬鹿になる模様。
 そんな無才生徒会はなるべく甲斐と会長を引き合わせないようにと極秘で共有しあい、それが継続されていくのだった。

 それでもば会長は一度開花したあの快感を忘れられるはずもなく、時々甲斐にご奉仕してもらおうと開星にやってきては大暴れしていく事を甲斐達はまだ知らない。
 もちろん、いろんな意味で無才会長ファン達は死ぬほど発狂する事もまだ誰も知らないのだ。


「もう、なんでそんな平凡が好きなのか僕タン達理解に苦しむよぉ」

 そして、もう一匹……いや、もう二匹か。
 無才の双子の庶務も遅れてこの場にやって来た。

「平凡のくせに四天王に好かれているなんてありえないし」
「その上、矢崎直様と付き合っているなんて悪い夢を見ているようだよねぇ。貧乏人のくせにさ。不釣り合いも甚だしい」

 言っている事が難癖つけてきていた開星の親衛隊と変わらない所がお笑いである。この二人も所詮はその程度という事であろうか。

「え……矢崎直と付き合っている……?」

 その双子共の発言に、宮本を含む一同が驚きに固まっている。篠宮は驚いていない様子だった。

「あ……いやそれは……その……」

 やべえ。今ここでアイツとの関係を疑われたりバレたりしたら困るな。

「お、お前らな……んなわけねえだろ!矢崎と付き合ってるとか勝手な事言うんじゃねえよ!冗談でも笑えないっつうの!」

 咄嗟に否定する甲斐。
 ごめん、直。今はバレたくないんだ。

「本当の事を言って何が悪いんだよ!ちゃんと諜報活動して調べたのに」
「そーだよぉ!キミの方が噂一つで必死になっちゃってさバカじゃないのぉ?まあ、キミが直様と付き合ってるなんて僕タンも信じたくないしィ、絶対認めたくないけどねっ!」
「そ、そぉーかよ!まあとにかく、噂なんて信じんじゃねーよ。俺は矢崎なんて……こ、これっぽっちも好きじゃないからな!金持ち自体が好きじゃねえんだから!」
「ふーん……じゃあ、直様の事……そこまで言うなら嫌いって事?」

 深入りするように訊いてくる双子に甲斐は嫌な予感が走った。しかし、皆の前でそんな質問をされればこう返すしかない。

「嫌いだよ。あんな奴。貴族自体嫌いだから。傲慢で威張ってて、金さえありゃあなんだって手に入ると思ってるような所が嫌い」

 本当にごめん、直。
 世間にバレないようにするにはこう言うしかなかったんだ。
 お前だって嫌だろ。俺と付き合ってるなんて世間にばれるなんて。
 言ってしまった罪悪感に心の中で謝罪を繰り返していると、


「架谷……」

 ぼそりと呟かれた呼び声にハッとして、俺はすぐに振り返った。そこには無の表情の直が立っていて、俺は思わず絶句した。

 お前、来ていたのか。どうしてここに。
 四天王の奴らと東京に戻るって言って別行動を取っているはずじゃあ……

「あ、直様」
「直様、来ていらっしゃったんですかぁ」

 双子の顔がこの上なく悦に入っている。嫌い発言からの思わぬ登場に、今の状況が一気に逆転したように思えた。

「あ、あの……矢崎……」

 弁解しようにも言葉が出てこない。
 言ってしまった言葉はもう取り消せないのだ。この大勢いる状況の前では。

「残念でしたね、直様。直様が好きな架谷甲斐はこう言ってますけど、どう思いますかぁ?まあ、所詮は下流階級の貧乏人ですから、直様の良さなんてこれっぽっちもわかんないなァと思いますぅ。直様のよさは上流階級にしかわからないんですもん。だからぁ、こんなの諦めちゃって僕タンと遊びましょぉ」
「そうそう。僕タンなら直様の傷を癒してあげられるよぉ。ていうかあ、直様を振るなんて身の程も知らないバカだと思うぅ~。こんなすごいお方を蔑にするんだから何様ーってカンジ」
「てことでぇ、行きましょぉ直様ぁ」

 双子が直の両隣で腕を組んで歩き出す。

「……」

 直は黙ったまま暗い顔を浮かべて、そのままその場を去っていった。双子達と一緒に。

 違うんだ。
 これには事情があるんだよ。
 俺は決してお前を嫌いだって言ったわけじゃあ……


 弁解しようとする台詞はTVや漫画ではよくあるけれど、実際その立場になってみると哀れなものだ。
 秘密が広がってしまう恐れとはいえ、保身に走ってしまったのが運の尽きだったのかもしれない。
 甲斐は去りゆく直を呼び止める事が出来なかった。


 十一話 完
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