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十一章/修学旅行(前編)
87.まだまだウブ
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「それに、テメエが遅いせいでゴミ二匹が紛れ込んでたしな」
「ゴミ二匹?」
「もうどうでもいい事だ。まあとにかく、オレは怒ってんだ。今夜は遅刻した詫びとして、オレの言う事を全部聞いてもらうからそのつもりで」
「言う事って……なんか服従しろみたいな言い方だな」
「お前のせいで一時間待ってたわけだし、せっかくの二人だけの時間をロスさせたんだ。デートで言えば大遅刻。普通のオレならぶち切れてる所。てことで何か言い訳は?」
「……別に、何もないでございまする……」
痛いそこを強調されるとやはり返す言葉が出てこない。
「とりあえずな、まずは一緒に風呂入るって事からしようか」
「一緒に……でもお前変な事しそうだし……うわ!」
次の瞬間、直は甲斐を米俵を担ぐようにして肩に担いだ。
「ちょ、てめえ!なんだよこの抱え方はっ!おろせ!」
バタバタと足をばたつかせる甲斐。
「このままテメーを風呂場へ連れて行く。でないと逃げ足だけは速いテメエは逃げるだろうからな。なんなら、お姫様抱っこにしてやってもいいが?」と、にやつく直。
「それの方が嫌だっつうの。でも一緒に風呂なんて……お前ぜってぇ変な事しそうだし……」
「ふふ、変な事ってなんだよ」
「お前がお得意なセクハラ行為だろ。すぐ近づいて体触ってきやがるし」
「お前が好きすぎるゆえの行動なんだから仕方ないだろ。大体な、今はノロマでグズな遅刻魔に拒否権なんてねぇんだよ」
そう言いながら直は客室露天風呂がある方へ直行した。
担がれている甲斐は、悔しそうにしながらも何も言えなかった。
「パンツまで無理やり脱がす事ねーじゃねーかこのド変態!」
石積みの露天風呂に並んで入ってから、甲斐は何度も直の頭を思いっきりぶっ叩いて怒りを露わにしていた。恋人という立場になってもこんなケンカのやりとりは恒例行事となっている。
「痛ってえ。本気で何度もぶっ叩きやがって!お前がトロイからだろ。同性同士なのにパンツ一つ脱ぐのに躊躇いやがってバカかテメエ」
「バカはおめーだろうが!おめぇ相手だと別なんだよ!」
「何が別なんだよ!」
「あーもういろいろと察せない野郎だな!てめーにいちいち説明しなきゃなんねーのかよ!」
「わからねーからこう聞いてやってんだろ!四の五の言ってないでさっさとわかりやすく説明しやがれカス」
「……くっ」と、顔をしかめる甲斐。
本当にこの男は呆れるというか、なんというか……
「あのな……す、好きな相手と風呂って恥ずかしいに決まってんだろ。男同士で銭湯に行くようなものとはわけが違うっつうか……ドキドキするっつうか……あーもうとにかく!好きな奴といると恥ずかしくて全部直視できないんだよっ!わかったかこのやろー!」
もはややけくそでそう説明する。顔面は自分でも想像できるほど赤くなっている事だろう。
「甲斐」
「っんだよ……うわ!」
急に背後から手が伸びてきて、思いっきり抱き寄せられた。
「ちょっと」
「可愛い、甲斐。すっげぇ愛しくなっちまった」
「……っ」
お湯のせいかそれとも羞恥心のせいか、体がどんどん熱くなってきた気がする。
「あ、熱苦しいって。のぼせるだろ」
だから離せと言っても直は離す気は更々ない。それ所か直の手が伸びてきて、腹を撫でてきて、
「ひっ、てめ!どこ触ってんだよッ!」
「甲斐が好きすぎるから止まらねぇんだよ」
「っ……だからって、やめろ……」
直の手は下の方にどんどん下っていく。実にきわどい場所を撫でまわしたり、時々乳首をかすめてくる。それだけで半勃ち気味だ。
やばい。ここで流されてしまえばこんな所で……
甲斐は快楽に流されまいと思いっきり背後にいる直にひじを打ち付けた。
「っ~~っ!」
肘は丁度直の鳩尾ど真ん中にヒットしたようで、直は痛みに腹を押さえている。
「嬉しいからって体に触ろうとするとか調子に乗るんじゃねえよ!恥を知れ!」
あやうく完勃ちしそうになったなんて言えやしない。身の危険もやばかったが股間もやばかったのだ。
さすがに風呂場で羞恥プレイはまだまだ上級者向けなので勘弁してほしい。せめてもう少しいろいろと慣れてからでお願いしたいのだ。
そんな直はゆっくり顔をあげると、
「甲斐」
「なんだよ」
「好きだ」
見た事がないくらい優しい顔でこの一言。もはや文句も何も言えなくなったのだった。
入浴後、この宿自慢の豪華な懐石料理をゆっくり味わい、身も心も満腹になった二人は就寝時間前までゴロゴロしたり動画を観たりして過ごした。
「さーて。そろそろ寝ようかな」
「ゴミ二匹?」
「もうどうでもいい事だ。まあとにかく、オレは怒ってんだ。今夜は遅刻した詫びとして、オレの言う事を全部聞いてもらうからそのつもりで」
「言う事って……なんか服従しろみたいな言い方だな」
「お前のせいで一時間待ってたわけだし、せっかくの二人だけの時間をロスさせたんだ。デートで言えば大遅刻。普通のオレならぶち切れてる所。てことで何か言い訳は?」
「……別に、何もないでございまする……」
痛いそこを強調されるとやはり返す言葉が出てこない。
「とりあえずな、まずは一緒に風呂入るって事からしようか」
「一緒に……でもお前変な事しそうだし……うわ!」
次の瞬間、直は甲斐を米俵を担ぐようにして肩に担いだ。
「ちょ、てめえ!なんだよこの抱え方はっ!おろせ!」
バタバタと足をばたつかせる甲斐。
「このままテメーを風呂場へ連れて行く。でないと逃げ足だけは速いテメエは逃げるだろうからな。なんなら、お姫様抱っこにしてやってもいいが?」と、にやつく直。
「それの方が嫌だっつうの。でも一緒に風呂なんて……お前ぜってぇ変な事しそうだし……」
「ふふ、変な事ってなんだよ」
「お前がお得意なセクハラ行為だろ。すぐ近づいて体触ってきやがるし」
「お前が好きすぎるゆえの行動なんだから仕方ないだろ。大体な、今はノロマでグズな遅刻魔に拒否権なんてねぇんだよ」
そう言いながら直は客室露天風呂がある方へ直行した。
担がれている甲斐は、悔しそうにしながらも何も言えなかった。
「パンツまで無理やり脱がす事ねーじゃねーかこのド変態!」
石積みの露天風呂に並んで入ってから、甲斐は何度も直の頭を思いっきりぶっ叩いて怒りを露わにしていた。恋人という立場になってもこんなケンカのやりとりは恒例行事となっている。
「痛ってえ。本気で何度もぶっ叩きやがって!お前がトロイからだろ。同性同士なのにパンツ一つ脱ぐのに躊躇いやがってバカかテメエ」
「バカはおめーだろうが!おめぇ相手だと別なんだよ!」
「何が別なんだよ!」
「あーもういろいろと察せない野郎だな!てめーにいちいち説明しなきゃなんねーのかよ!」
「わからねーからこう聞いてやってんだろ!四の五の言ってないでさっさとわかりやすく説明しやがれカス」
「……くっ」と、顔をしかめる甲斐。
本当にこの男は呆れるというか、なんというか……
「あのな……す、好きな相手と風呂って恥ずかしいに決まってんだろ。男同士で銭湯に行くようなものとはわけが違うっつうか……ドキドキするっつうか……あーもうとにかく!好きな奴といると恥ずかしくて全部直視できないんだよっ!わかったかこのやろー!」
もはややけくそでそう説明する。顔面は自分でも想像できるほど赤くなっている事だろう。
「甲斐」
「っんだよ……うわ!」
急に背後から手が伸びてきて、思いっきり抱き寄せられた。
「ちょっと」
「可愛い、甲斐。すっげぇ愛しくなっちまった」
「……っ」
お湯のせいかそれとも羞恥心のせいか、体がどんどん熱くなってきた気がする。
「あ、熱苦しいって。のぼせるだろ」
だから離せと言っても直は離す気は更々ない。それ所か直の手が伸びてきて、腹を撫でてきて、
「ひっ、てめ!どこ触ってんだよッ!」
「甲斐が好きすぎるから止まらねぇんだよ」
「っ……だからって、やめろ……」
直の手は下の方にどんどん下っていく。実にきわどい場所を撫でまわしたり、時々乳首をかすめてくる。それだけで半勃ち気味だ。
やばい。ここで流されてしまえばこんな所で……
甲斐は快楽に流されまいと思いっきり背後にいる直にひじを打ち付けた。
「っ~~っ!」
肘は丁度直の鳩尾ど真ん中にヒットしたようで、直は痛みに腹を押さえている。
「嬉しいからって体に触ろうとするとか調子に乗るんじゃねえよ!恥を知れ!」
あやうく完勃ちしそうになったなんて言えやしない。身の危険もやばかったが股間もやばかったのだ。
さすがに風呂場で羞恥プレイはまだまだ上級者向けなので勘弁してほしい。せめてもう少しいろいろと慣れてからでお願いしたいのだ。
そんな直はゆっくり顔をあげると、
「甲斐」
「なんだよ」
「好きだ」
見た事がないくらい優しい顔でこの一言。もはや文句も何も言えなくなったのだった。
入浴後、この宿自慢の豪華な懐石料理をゆっくり味わい、身も心も満腹になった二人は就寝時間前までゴロゴロしたり動画を観たりして過ごした。
「さーて。そろそろ寝ようかな」
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