【完】学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

文字の大きさ
上 下
91 / 225
十一章/修学旅行(前編)

87.まだまだウブ

しおりを挟む
「それに、テメエが遅いせいでゴミ二匹が紛れ込んでたしな」
「ゴミ二匹?」
「もうどうでもいい事だ。まあとにかく、オレは怒ってんだ。今夜は遅刻した詫びとして、オレの言う事を全部聞いてもらうからそのつもりで」
「言う事って……なんか服従しろみたいな言い方だな」
「お前のせいで一時間待ってたわけだし、せっかくの二人だけの時間をロスさせたんだ。デートで言えば大遅刻。普通のオレならぶち切れてる所。てことで何か言い訳は?」
「……別に、何もないでございまする……」

 痛いそこを強調されるとやはり返す言葉が出てこない。

「とりあえずな、まずは一緒に風呂入るって事からしようか」
「一緒に……でもお前変な事しそうだし……うわ!」

 次の瞬間、直は甲斐を米俵を担ぐようにして肩に担いだ。

「ちょ、てめえ!なんだよこの抱え方はっ!おろせ!」

 バタバタと足をばたつかせる甲斐。

「このままテメーを風呂場へ連れて行く。でないと逃げ足だけは速いテメエは逃げるだろうからな。なんなら、お姫様抱っこにしてやってもいいが?」と、にやつく直。
「それの方が嫌だっつうの。でも一緒に風呂なんて……お前ぜってぇ変な事しそうだし……」
「ふふ、変な事ってなんだよ」
「お前がお得意なセクハラ行為だろ。すぐ近づいて体触ってきやがるし」
「お前が好きすぎるゆえの行動なんだから仕方ないだろ。大体な、今はノロマでグズな遅刻魔に拒否権なんてねぇんだよ」

 そう言いながら直は客室露天風呂がある方へ直行した。
 担がれている甲斐は、悔しそうにしながらも何も言えなかった。

「パンツまで無理やり脱がす事ねーじゃねーかこのド変態!」

 石積みの露天風呂に並んで入ってから、甲斐は何度も直の頭を思いっきりぶっ叩いて怒りを露わにしていた。恋人という立場になってもこんなケンカのやりとりは恒例行事となっている。

「痛ってえ。本気で何度もぶっ叩きやがって!お前がトロイからだろ。同性同士なのにパンツ一つ脱ぐのに躊躇いやがってバカかテメエ」
「バカはおめーだろうが!おめぇ相手だと別なんだよ!」
「何が別なんだよ!」
「あーもういろいろと察せない野郎だな!てめーにいちいち説明しなきゃなんねーのかよ!」
「わからねーからこう聞いてやってんだろ!四の五の言ってないでさっさとわかりやすく説明しやがれカス」
「……くっ」と、顔をしかめる甲斐。

 本当にこの男は呆れるというか、なんというか……

「あのな……す、好きな相手と風呂って恥ずかしいに決まってんだろ。男同士で銭湯に行くようなものとはわけが違うっつうか……ドキドキするっつうか……あーもうとにかく!好きな奴といると恥ずかしくて全部直視できないんだよっ!わかったかこのやろー!」

 もはややけくそでそう説明する。顔面は自分でも想像できるほど赤くなっている事だろう。

「甲斐」
「っんだよ……うわ!」

 急に背後から手が伸びてきて、思いっきり抱き寄せられた。

「ちょっと」
「可愛い、甲斐。すっげぇ愛しくなっちまった」
「……っ」

 お湯のせいかそれとも羞恥心のせいか、体がどんどん熱くなってきた気がする。

「あ、熱苦しいって。のぼせるだろ」

 だから離せと言っても直は離す気は更々ない。それ所か直の手が伸びてきて、腹を撫でてきて、

「ひっ、てめ!どこ触ってんだよッ!」
「甲斐が好きすぎるから止まらねぇんだよ」
「っ……だからって、やめろ……」

 直の手は下の方にどんどん下っていく。実にきわどい場所を撫でまわしたり、時々乳首をかすめてくる。それだけで半勃ち気味だ。
 やばい。ここで流されてしまえばこんな所で……
 甲斐は快楽に流されまいと思いっきり背後にいる直にひじを打ち付けた。

「っ~~っ!」

 肘は丁度直の鳩尾ど真ん中にヒットしたようで、直は痛みに腹を押さえている。

「嬉しいからって体に触ろうとするとか調子に乗るんじゃねえよ!恥を知れ!」

 あやうく完勃ちしそうになったなんて言えやしない。身の危険もやばかったが股間もやばかったのだ。
 さすがに風呂場で羞恥プレイはまだまだ上級者向けなので勘弁してほしい。せめてもう少しいろいろと慣れてからでお願いしたいのだ。
 そんな直はゆっくり顔をあげると、

「甲斐」
「なんだよ」
「好きだ」

 見た事がないくらい優しい顔でこの一言。もはや文句も何も言えなくなったのだった。


 入浴後、この宿自慢の豪華な懐石料理をゆっくり味わい、身も心も満腹になった二人は就寝時間前までゴロゴロしたり動画を観たりして過ごした。
 
「さーて。そろそろ寝ようかな」



しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

藤枝蕗は逃げている

木村木下
BL
七歳の誕生日を目前に控えたある日、蕗は異世界へ迷い込んでしまった。十五まで生き延びたものの、育ててくれた貴族の家が襲撃され、一人息子である赤ん坊を抱えて逃げることに。なんとか子供を守りつつ王都で暮らしていた。が、守った主人、ローランは年を経るごとに美しくなり、十六で成人を迎えるころには春の女神もかくやという美しさに育ってしまった。しかも、王家から「末姫さまの忘れ形見」と迎えまで来る。 美形王子ローラン×育て親異世界人蕗 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

処理中です...