学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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十一章/修学旅行(前編)

86.刺客襲来2

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「勝手に侵入した事実は変わらない。今すぐ貴様らをつまみだしてやる」
「あん、許してぇ。勝手にここへ入ったのは悪いと思ってるのぉ。ごめんなさい。直様に一目逢いたくって入っちゃったのぉ」
「入っちゃったのぉー」
「しゃべり方うっぜえ……」

 上目遣いのうるうる眼に女々しい仕草を仕掛けてくる双子。盛った面食いな男が簡単に引っ掛かりそうな誘い込みである。しかし、こちらとしては何もわかない所か吐き気のようなものを感じた。
 自慢ではないが、百戦錬磨な自分からすればそんな古い色仕掛けなど鼻で笑ってしまう。わざとらしい双子の態度や見え透いた裏の魂胆が見え隠れしていて、それがわかっているからこそ滑稽にしか映らない。
 片方が直の腕に触れてくると、直はこの上ない不愉快さと嫌悪感に体が震えた。

「汚い手でオレにさわんじゃねぇッ!!」

 直の眼が鋭く走る。薄汚いと言いたげに反射的に片方の腕を乱暴に払いのけると、反動で座敷に倒れた。

「あん、ひどぉーい!僕タン、本気で直様に惚れちゃったのにそんなばい菌みたいに払う事ないじゃないっ。ぷんぷん。そういう乱暴な所もカッコいいけどさぁ」

 物欲しそうな顔で直を見上げる倒れた方。その顔が開星にいるドMとどっこいどっこいなレベルに映り、直の中でますますイライラが積もった。

「カッコイイけど可愛い子にはもっと優しくしてほしいなぁ」
「してほしいなぁ~」
「せっかく可愛い僕タン達が夜のお相手してあげようと思ったのにその態度ないよぅ。本当は直様だって誰でもいいんじゃないのぉ?架谷甲斐と付き合っているって極秘情報得たけど、ただ珍しいから付き合っているだけなんでしょお?わかるよぉ。僕タン達上流階級の人間は、物珍しさに中流や下流階級の人間とも付き合いたくなる時ってあるもんね。普通ならあんな薄汚い貧乏平民の人間相手をするなんて直様らしくないと思うし、超ありえないと思ったから。直様には僕タン達みたいな上流階級の可愛い子がお似合いで「薄汚い貧乏平民だと……?」

 おぞましい重低音の声で直が反応を示した。そして、ゆっくり顔をあげる。
 その顔は憤怒を秘めた冷酷な表情だった。

「貴様らにアイツの何がわかる……?何を知っている?外見と上辺だけでしか物事を判断できない能無し成金のブス共が、偉そうにアイツの事を語りやがって……甚だ虫唾が走る」

 直は双子の片方の髪を強引に鷲掴んで、そのまま勢いよく壁に叩きつけた。そしてすぐに懐から無機質な物体をもう片方の額に向ける。
 二人は見る見るうちに青い顔で戦慄した。

「貴様らがオレの甲斐の事を語るんじゃねぇよ。侮辱するんじゃねぇよ。あいつのよさを何も知らないくせに」

 さらに強い力で握り締めて引っ張る。そして額に向けられた無機質な物体はセーフティーが解除される。

「っい、痛い……は、放して……」
「ゆ、ゆるして……っ」

 痛みと恐怖に怯え、もう一人は足がすくんで震えている。双子は直に恐怖して動けない。

「普通なら貴様らなんぞここで脳天ぶち抜いて殺してやってもいいが、せっかくのカタギの宿を汚い血で汚すのも気の毒だ。だから、これ放したらとっとと出て行く事だ。でないと、本当に脳天をぶち抜いてやる。それともセックスがお望みなら、その無駄に綺麗な顔面をボロ雑巾みたいにして、その手の裏の男共呼んでヤク漬けさせてマワさせてやる。貴様らのポルノ系スナッフフィルムはそれはそれはその手の変態共が大いに喜ぶだろうからな」
「「っ、ひ」」
「数秒後にむごたらしい最期になりたくなければとっとと失せろ」

 黒ずんだ目を光らせて掴んでいた髪を乱暴に解き放つと、双子達は怯えて泣きながら一目散に出て行った。

「チッ……面倒くせ。はやく来やがれ。あのノロマめ」

 直は溜息を吐いて拳銃をおろした。


 その後、一時間遅れで甲斐がやっと到着した。

「悪い、遅くなった!」

 慌てた様子で甲斐が部屋に足を踏み入れる。Eクラスの面々と宿で楽しんでいたら、いつの間にか21時をまわっていたらしい。だから急いで開星の宿をどう抜け出すか考えていると、事情を知っていた篠宮が機転を利かせてくれてなんとか抜け出す事に成功。それでも一時間遅刻となり、直が不機嫌面に椅子に座ってアプリゲームをしている。

「怒ってる、か……?」

 そんな風に見えて恐る恐る問うと、直は顔をあげて「そうだな」と不釣り合いな笑顔で返した。

「……ごめん。やっぱ修学旅行だと枕投げとか楽しくて弾んじゃってさ。あ、そういえばお前はもう風呂に入ったのか?」
「入ってねえし。ノロマでグズなテメエをいつまでも待ってやったからな。あー1時間が無駄になったー。マジどうしてくれんのってハナシ」
「は……ははは、ごめん。ゴメンナサイ」

 明らかに怒っている直を見て、今回ばかりはノロマでグズと言われようが言い返す事が出来そうもない。


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