学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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十一章/修学旅行(前編)

85.刺客襲来

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 *

「無才のイケメンキラー?」

 バスに乗っている最中、かしまし三人娘の小川がその単語を口にした。

「そう。あの双子の庶務の事!小悪魔みたいな性格と男の娘みたいな容姿がタチ系男子にはたまらないみたいで、噂では社長から芸能人までいろんなイケメン達を自分らに惚れさせて自分のしもべにさせているらしいよ。まさしく天然ぶりっ子を装いながらの阿婆擦れカマビッチってやつ!生徒会庶務になったのもわずか一年で抱きたいランキングナンバーワンとツーに輝いたからって話だし」
「だからなんだその抱きたいランキングって」

 宮本から聞いたのかそれとも自分で調べたのかはわからないが、由希を筆頭とする小川の情報網は最近侮れないと思う男子達。さすがはその手には詳しい腐女子軍団である。

「ある意味、あのバカ生徒会どもより性質の悪い双子だと言われているよ。なんせイケメンキラーって呼ばれてるから、そのうち四天王も狙われるかもね。あの双子に落ちない男はいないとまで言われているから。ノンケまで食い物にしちゃうって話だし、一度ハマるとノンケにも戻れないって」
「魔性の男の娘だな」

 しかし、甲斐はあまり心配はしていない。
 その手のタイプは、直が一番嫌いなタイプだとわかっているからだ。
 容姿なり、財力なり、権力なり、魂胆隠し持って近づいてくる人間や、いかにも自分は他の子とは違って綺麗な人間ですーって遠回しな態度をとってくる人間ほど信用ならないと話していた。

 媚びられる立場としてそういう人間を今まで腐るほど見てきたらしいので、相手の人間性など話し方や態度ですぐにわかってしまうとの事。
 それを聞いてから、案外それほど心配はしていない。魔が走ったなどの間違いが起きない限りは。

 そんな数時間後、その直からメッセージが入っていた。
 あとで旅館行きの迎えの車をそっちに寄越すからそれに乗れというものだった。

 *

「幸せそうねー直ちゃん」

 本日泊まる旅館で、四天王は大広間で京舞を鑑賞していた。美女ばかりの舞妓や芸妓と話をしたり、お酌をしてもらったり、開星の生徒とは別に京都を満喫していた。
 その合間に直は甲斐にメッセージを打ちこんでいる。今まで見たことがないような穏やかな顔だった。

「リア充爆発しろって気持ちがちょっとわかるかも」
「みんなが大好きなゆるキャラくんを独り占めしているのを見ると、やっぱ羨ましくなっちゃうわけよ……と、そろそろオイラ達は退散させてもらおうかしら。あんまり長居すると二人きりの時間潰しちゃいそうだもんね」

 直を除いた三人が立ち上がってぐっと背伸びをしている。

「貴様らにしては気が利くじゃねぇか」
「付き合いたてだからね。一応は配慮いたしますわよ」
「直、あまり架谷にわがままな事を言って困らせるなよ。あと、あまり無理な事をさせるなよ。明日に響くからな」
「ハル、無理な事ってなんだよ」
「っ、言わなくてもわかっているだろう」

 それだけで頬を赤くしているハルは純情な青少年のようであり、三人から執拗にいじられるのであった。


 三人と別れた後、直は甲斐と泊まる予定の離れの部屋へと向かった。
 日本庭園に囲まれたこの宿一の豪華な別邸で、リビング、広間、ベッドルームが別々となっており、おまけに客室露天風呂付き。一般人がなかなか予約をとろうとしてもとれない超格式高い部屋である。

 そろそろ甲斐が来ている頃だろうと離れの部屋の襖を開けると、そこには甲斐はまだおらず、それどころか別人が居座っていた。

「矢崎直様……お待ちしておりましたぁ」
「お待ちしておりましたぁ~♡」

 無才学園の双子庶務が待ち構えていたのだった。

「だれだ貴様ら。なぜここにいる。どうやって忍び込んだ」

 直は途端に露骨に嫌な顔を浮かべた。うざい無才学園の生徒会がついに寝首をかきに来たのかと護身用の愛銃に手が伸びそうになった。

「ひどぉーい。僕タン達の事しらないのぉ?朝に自己紹介したのにィ。それになんでって……あなたに会いたかったからに決まってるじゃない。ねー?姫」
「うん、綾ー。あなたがここに泊まるって情報を事前に聞いてぇ、どうしてもご挨拶したくなったのね。僕タン達、あなたの事気に入っちゃったもん♡」

 何が気に入っただ。気持ちの悪いことをほざくカマ共め。
 直は眉間に皺を寄せる。

「それにぃ、ちゃんと貴方のエスピーの人にもあなたの秘書の人にも、事情説明してあるから心配しないでねん。これは不法侵入じゃあないしぃ」
「……うぜぇ」

 有能秘書の久瀬がいればこの手の事態は未然に防げたものを、こういう時に限って不在で東京に戻っている事に舌打ちをする。
 今日の秘書や部下は使い物にならない新入りばかりだった。後で全員クビにしておくか。

 恐らく、この双子共は金とコネと色仕掛けで、この辺の宿泊協会内のトップを根回ししたんだろう。オレの情報を得るために。
 この手の者は上に取り入るのがうまいため、簡単に協会は騙されて情報を提供したに違いない。
 あとで協会トップにお灸をすえておこうか。この矢崎直の情報を売るとはいい度胸だな、と。覚悟しておけよ、と。

 さて、こいつらの対応をどうするべきか。
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