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十一章/修学旅行(前編)
83.無才の双子
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*
「なんか人多いな」
「本当にね」
たかだか国内の京都+aの旅行に関わらず、参加生徒の人数が異様に多いのは気のせいではなかった。
理由はわかっているのだが、大半が無理やり京都に変更っていうのがもう可笑しくて、四天王信者の行動ぶりに脱帽である。
元々、直はラスベガスの予定であったが、甲斐が国内にしたからという理由で変更。他の四天王も直に便乗し同じように国内。そうして四天王のガチ追っかけの連中はこぞって変更の嵐。
数日前の打ち合わせじゃあ30人(そのうち25名がEクラス)だったのに、今じゃその十倍はいるのではないか。
一体どんなコネやら賄賂やらを使って変更したかは全く知りたいとは思わないが、四天王のガチ追っかけともなるとこれが普通なんだろう。国内なんて地味だと文句を言いながらも、四天王の行動一つに右往左往されている信者たちが笑えるものだ。
その当の注目の的である四天王の影響力は空港に到着しても健在。
どこから嗅ぎつけたのかはわからないが、全国の無関係な四天王ファンや開星のOB達が自分達も四天王と一緒に京都に行きたい、会いたい、一目でも見たいという理由で京都に大集結。たくさんの予備警備員が予定外の騒ぎに動員されている。
おいおい、四天王に執着するヒマあんなら仕事行けよお前ら。空港職員の邪魔だろうが。
「キャアアー!四天王よー!」
噂をすればなんとやら。生の四天王のご登場となすった。
大音量の奇声やら悲鳴をあげるのはいつもの事、通りすがりの一般女性やらも立ち止まって頬を染めて悲鳴をあげている。
これも毎度の事だ。見飽きたよ。
警備員やエスピーに護られながら奴らが目と鼻の先に来れば、さらに黄色い悲鳴は最高潮に達する。相田や直を先頭に、穂高とハルが後ろをゆっくり歩いてくる。
相田や穂高は軽く笑顔を見せて手を振っているが、直やハルは無表情でファンらに目もくれていない様子。途中、直がこちらに視線を向けてきて、反射的にこちらも視線を返すと、直がふっと優しげに微笑んだのだった。
「ねえねえ!今の直様の笑顔見たー!?超穏やかな顔して微笑んでこっちの方見たのよっ!あたし超幸せー!」
「はー?何言ってんの!あたしの方を見て直様は微笑んだのよ。あんたなはずないじゃないのよ!」
「そっちこそありえないでしょうが!直様はあたしに微笑んでくださったの!ドブス共が粋がってんじゃないわよ雑魚!」
「「なんですってぇー!?」」
そんな醜いファン同士の争いを滑稽に眺めていると、向こうの方からも別の歓声がわいた。あの見慣れた制服集団達はもしかして、
「久しぶりだな、開星四天王諸君」
そう言ったのは無才学園生徒会長の天草時雨だった。
うわ出たよ。ムサイ集まりの無才学園共が。
朝から気持ちの悪い野太い声援と、こいつの派手な登場で気分は急降下だ。
当然のようにその後ろにはなんとかお銀って長髪と、クチピアスのチャラ男と、コミュ障書記がいる。おまけに宮本君から聞いたが、最近の総会で生徒会の庶務になったという双子のカマ娘とやらも追加されたらしい。某KY以来の嫌な予感しかしない。
視線をその双子がいそうな場所へ向けると、ば会長から新しい仲間としてさっそく紹介されている。
身長は160あるかないかで、草加みたいなTHE男の娘みたいな風貌だった。互いが同じ顔、同じ髪型に、同じ体形。見分けがつかん具合が双子そのものであった。
「僕タンは姫花」
「僕タンは綾美」
「「二人合わせて姫美でぇす!無才と開星のみんな可愛い僕タンをよろしくねん~」」
キャピキャピした雰囲気のその二人はあざとさ満載で声援に応えている。
神が性別間違えたのかその男の娘。
瓜二つな見た目はまるでドッペルゲンガーかなんかのようで、二人の見分けがつく無才生徒会はこういう時に限って目利きが良いらしい。某KYの変装には気づかなかったくせにこれはわかるって都合のいい視覚である。
それより周囲から可愛いだの、抱きたいだの、天使だの、男のキモい声援があちこちから飛んでいる。
男に抱きたいとかやめれや。聞いているこっちが吐くから。
「おお、架谷甲斐もいるな」
「げっ!」
もたもたしていたせいで天草の野郎についに見つかっちまったようだ。隠れたいけどもう隠れても無駄。残念無念。
「ふふ、そんな顔をするな。俺と久しぶりに会ったからって照れなくてもいいじゃねぇか」
てめえは相変わらずだな。
「そう言う冗談は壁に向かってしゃべってろ。俺を巻き込むなよ」
「相変わらずツンデレだな。でもそこがまたいい。落としたくなる」
「俺に似た男の娘でも落としてろ」
つかよ、俺のどこがツンデレなんだよ。ツンはともかくとしてお前にデレた覚えはねぇ。
「ねえねえ、あれが例の架谷甲斐って時雨達が気に入ってる開星の生徒?」
「なんか人多いな」
「本当にね」
たかだか国内の京都+aの旅行に関わらず、参加生徒の人数が異様に多いのは気のせいではなかった。
理由はわかっているのだが、大半が無理やり京都に変更っていうのがもう可笑しくて、四天王信者の行動ぶりに脱帽である。
元々、直はラスベガスの予定であったが、甲斐が国内にしたからという理由で変更。他の四天王も直に便乗し同じように国内。そうして四天王のガチ追っかけの連中はこぞって変更の嵐。
数日前の打ち合わせじゃあ30人(そのうち25名がEクラス)だったのに、今じゃその十倍はいるのではないか。
一体どんなコネやら賄賂やらを使って変更したかは全く知りたいとは思わないが、四天王のガチ追っかけともなるとこれが普通なんだろう。国内なんて地味だと文句を言いながらも、四天王の行動一つに右往左往されている信者たちが笑えるものだ。
その当の注目の的である四天王の影響力は空港に到着しても健在。
どこから嗅ぎつけたのかはわからないが、全国の無関係な四天王ファンや開星のOB達が自分達も四天王と一緒に京都に行きたい、会いたい、一目でも見たいという理由で京都に大集結。たくさんの予備警備員が予定外の騒ぎに動員されている。
おいおい、四天王に執着するヒマあんなら仕事行けよお前ら。空港職員の邪魔だろうが。
「キャアアー!四天王よー!」
噂をすればなんとやら。生の四天王のご登場となすった。
大音量の奇声やら悲鳴をあげるのはいつもの事、通りすがりの一般女性やらも立ち止まって頬を染めて悲鳴をあげている。
これも毎度の事だ。見飽きたよ。
警備員やエスピーに護られながら奴らが目と鼻の先に来れば、さらに黄色い悲鳴は最高潮に達する。相田や直を先頭に、穂高とハルが後ろをゆっくり歩いてくる。
相田や穂高は軽く笑顔を見せて手を振っているが、直やハルは無表情でファンらに目もくれていない様子。途中、直がこちらに視線を向けてきて、反射的にこちらも視線を返すと、直がふっと優しげに微笑んだのだった。
「ねえねえ!今の直様の笑顔見たー!?超穏やかな顔して微笑んでこっちの方見たのよっ!あたし超幸せー!」
「はー?何言ってんの!あたしの方を見て直様は微笑んだのよ。あんたなはずないじゃないのよ!」
「そっちこそありえないでしょうが!直様はあたしに微笑んでくださったの!ドブス共が粋がってんじゃないわよ雑魚!」
「「なんですってぇー!?」」
そんな醜いファン同士の争いを滑稽に眺めていると、向こうの方からも別の歓声がわいた。あの見慣れた制服集団達はもしかして、
「久しぶりだな、開星四天王諸君」
そう言ったのは無才学園生徒会長の天草時雨だった。
うわ出たよ。ムサイ集まりの無才学園共が。
朝から気持ちの悪い野太い声援と、こいつの派手な登場で気分は急降下だ。
当然のようにその後ろにはなんとかお銀って長髪と、クチピアスのチャラ男と、コミュ障書記がいる。おまけに宮本君から聞いたが、最近の総会で生徒会の庶務になったという双子のカマ娘とやらも追加されたらしい。某KY以来の嫌な予感しかしない。
視線をその双子がいそうな場所へ向けると、ば会長から新しい仲間としてさっそく紹介されている。
身長は160あるかないかで、草加みたいなTHE男の娘みたいな風貌だった。互いが同じ顔、同じ髪型に、同じ体形。見分けがつかん具合が双子そのものであった。
「僕タンは姫花」
「僕タンは綾美」
「「二人合わせて姫美でぇす!無才と開星のみんな可愛い僕タンをよろしくねん~」」
キャピキャピした雰囲気のその二人はあざとさ満載で声援に応えている。
神が性別間違えたのかその男の娘。
瓜二つな見た目はまるでドッペルゲンガーかなんかのようで、二人の見分けがつく無才生徒会はこういう時に限って目利きが良いらしい。某KYの変装には気づかなかったくせにこれはわかるって都合のいい視覚である。
それより周囲から可愛いだの、抱きたいだの、天使だの、男のキモい声援があちこちから飛んでいる。
男に抱きたいとかやめれや。聞いているこっちが吐くから。
「おお、架谷甲斐もいるな」
「げっ!」
もたもたしていたせいで天草の野郎についに見つかっちまったようだ。隠れたいけどもう隠れても無駄。残念無念。
「ふふ、そんな顔をするな。俺と久しぶりに会ったからって照れなくてもいいじゃねぇか」
てめえは相変わらずだな。
「そう言う冗談は壁に向かってしゃべってろ。俺を巻き込むなよ」
「相変わらずツンデレだな。でもそこがまたいい。落としたくなる」
「俺に似た男の娘でも落としてろ」
つかよ、俺のどこがツンデレなんだよ。ツンはともかくとしてお前にデレた覚えはねぇ。
「ねえねえ、あれが例の架谷甲斐って時雨達が気に入ってる開星の生徒?」
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