学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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十章/さみしがりや

73.修学旅行の予定

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「ねえねえ、四天王は修学旅行の行き先を急にラスベガスから国内にしたらしいわよ」
「えーうっそぉ!あたし四天王と一緒になりたくてラスベガス行きにしてたのになんでー!?」
「しかも京都や地方って一番安い行き先で宿も最高級ってわけじゃないんでしょ?セレブでゴージャスな四天王がありえなーい!」
「まさかの国内なんて四天王らしくないわよね。てっきりそういうとこ選ぶと思ったのに国内だなんて当てが外れたァ!京都に行く生徒と行き先交換してもらおっかなァ。今更変更できないし」

 そんな会話が親衛隊達から聞こえてきた。
 Eクラス達も四天王が急に変更した事に首を傾げている様子だった。

「四天王って国内に変更したんだってね。私達Eクラス全員も国内だけど、なんか理由があんのかな」
「さあ」

 自分のおかげで国内になったなんて口が裂けても言えないのでお口にチャック。
 しかし、事情を知っていそうな篠宮はこちらを見て悪戯っ子のように微笑んでいた。

 *

 四天王のたまり場であるラウンジでは、いつもと変わりない四人がそれぞれの暇を持て余している。話す話題と言えば一か月後に迫る修学旅行の事。
 そして、直のコイバナ弄りである。

「まさか国内旅行にしちゃうなんてねー。ラスベガスで地元のパツ金美女とカジノではしゃぎたかったけど、たまには京美人とも付き合ってみるかな」

 相田はラウンジ横に設置されたビリヤード台でビリヤードを楽しんでいる。キューで弾いた球が数個の球に命中し、それぞれが勢いよく穴へ落ちていく。

「たしかに直君が行き先変更しちゃう気持ちわかるよ。恋人がいない旅行なんてつまんないしね」

 穂高は相変わらずどこで拾ってきたかわからない野良猫と猫じゃらしで遊んでいる。

「俺は最初から京都でいいと言っていたから京都に変えてもらってありがたい」

 そんなハルもいつもと変わらず本を読んでいる。

「ハルちゃんは国内とか京都とか好きだもんね。日本男児の鏡ってカンジ。で、直ちゃん。甲斐ちゃんとはどこまで進んでんの~?ぜひ聞かせてよ。事細かにネ!」
「……あ?なんで貴様に話す必要がある」

 直はスマホで甲斐にメッセージを送っている最中である。

「あーそんな事言っちゃうわけー?せっかく友達想いの俺らが直のために甲斐ちゃん譲ってあげたのに~ひっどー!そんな事言うとマジで略奪しちゃうかも」

 そう言う相田の眼は本気である。根に持つタイプなので厄介だ。

「……チッ。面倒くせぇな。別に大して進んでねーよ」
「えーそうなの~?どんな美女相手でも手出すの早い百戦錬磨な直ちゃんが、まだ甲斐ちゃんとエッチしてないなんて純愛すぎ~。マジ驚きdイッタァああ!!」

 相田は頭を押さえて苦悶の声をあげている。頭を直にシバかれたようだ。

「マジ死んどけよテメエ。オレと甲斐の事を汚すな」
「えー汚すなって言ったって本当の事じゃんよ。今まで節操なしの見境なかったくせに」
「……そんなもん、今となっちゃあ黒歴史なんだよ」

 甲斐を本気で好きになって、今までしてきた事がいかに最低だったかという事がよくわかった。
 なんで甲斐と出会う前までもっと自分を大事にしなかったんだろう。なんで好きでもない奴と遊び歩いていたんだろうって。
 好きでもない奴と関係を持っても虚しいだけだって知ってしまってから、今までの遊び関係すべてに後悔が尽きない。だから、女関係すべてと切って、改めてまっさらな状態で甲斐と向き合いたいと思っている。

「黒歴史ねぇ。まさかそんな言葉が聞けるとは驚きだなあ。人間変わるもんだね」

 相田は驚きに「直も成長したね」と褒め始めた。

「うるせーな。アイツとは生半可な気持ちで付き合いたくないんだよ。遊び感覚だった今までとは全然違うし、何よりアイツを大切にしたいからな。何を失ってもアイツだけは、架谷だけは絶対裏切りたくねーから」

 今まで見せた事のない切実な気持ちにぽかんとする三人。しかも直の瞳はとても優しげで、以前のような鋭さはあまり感じない。

「たまげたなー」
「直君も大人の階段のぼったんだよ。精神的な意味で」
「いい傾向だな。架谷と出会って本来の直の人間らしい性格が戻りつつあるのかもしれん。こりゃあ架谷に感謝しないとな」

 変わりつつある直の様子に、三人は驚きつつもそれを嬉しくも思うのであった。


 昼休み、甲斐は直からのメッセージを見てラウンジに向かった。
 食堂に行けば目立つという事で、一般生徒が立ち寄れないここを指定した。
 四天王以外は立ち入れない聖域だが、従者や一般生徒でも許可を得た者だけが入る事が許される。専用エレベーターに乗って最上階へ上がり、ラウンジの扉を開けると直が待ちわびたように甲斐を待っていた。

「時間通りに来たな」
「う、うす!」

 なんだか顔を合わせるたびに気恥ずかしい。

「架谷」

 直は何も言わずに甲斐を抱きしめた。
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