学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

文字の大きさ
上 下
54 / 214
七章/合同体育祭

52.女装した甲斐

しおりを挟む
「マジ基地を相手にするのも疲れる……」

 直はそれ以降は日下部を完全にスルーし、さっさと向こうの方へ歩いていく。相手にしたら負けだと悟ったようだ。

「あ、直待つんだぞ!まだ話は終わってないんだぞ」
 
 逃げる直を追いかける日下部。入れ替わるようにどこぞの姫も近くを歩いていた。

「あ、架谷甲斐!」
「…………チッ」

 ばれたか。

 甲斐が悔しげに入場門にやってきていた。
 気配を完璧殺したはずが、この派手な見た目には無理な話だった。ただ運営スタッフから開星チームの名札を取りに来ただけの用事なのに不運である。
 そんな無才の生徒会は甲斐をジロジロ見ている。その顔つきは今まで見たものとは少し違っていた。

「架谷甲斐、お前の姿……磨けば光る原石だったようだな。ますます気に入った」
「そんなもんで気に入るな悪趣味野郎。仕方なくのドレスアップだ」
「へえ、とても似合っていますよ、架谷甲斐。末恐ろしい程に」
「ほんと、認めたくないけど平凡のくせにここまで変わるなんて俺たまげちゃった」
「びっくり、天弥より、かわい」と、爆弾発言のコミュ障書記。
「そうだな、認めたくないが確かに天弥より綺麗だな。俺様がこう言っているんだ、光栄に喜べよ平凡……ってオイ!!」

 ふと顔を上げると、いつの間にか甲斐はもう遠く向こうの方を歩いていた。
 完璧スルーされた生徒会は屈辱を受けながらも甲斐に対してますます興味を抱く。

「こら架谷甲斐!俺を無視するんじゃねえ!」
「……なんか用かよ。うぜぇな」

 甲斐は露骨に迷惑そうな顔を隠さない。

「なんか用かよじゃねえだろ!俺様を無視するとはいい度胸だな!普段は平凡顔なくせに」
「お前らの悪事を知っている身として話す事はねーよ。敵同士なのに。平凡顔で結構。俺忙しいから生徒会どもは今後一切構ってくんな。シッシッ」
「そうはいかねえ。言っただろう?俺はお前を気に入ったと」
「俺はお前を全然気に入ってないどころか嫌いだ。つーか前通りたいんだけど、どけや」
「ふっ……素直じゃねえな。ツンデレか?可愛いな」

 その言葉にもイラついたが、天草会長はあろう事かまた甲斐に近づいて唇を奪おうとしたので、甲斐は光の速さで天草会長の股間を蹴りあげた。
 途端、うおおおと地面を転がりながら悶絶している天草会長。甲斐はこの上なく無様な会長にざまあみろと思ったのであった。

「言ったろう?俺はチャラ男みたいに簡単に奪おうとする奴が大嫌いだって。俺はてめえの玩具じゃねえんだよ!いっぺん地獄に落ちろ!」
 
 これで邪魔者は消えたからこの場を去ろうとすれば、残りの生徒会が今度は立ちはだかった。まだ何か用なのか。

「さすがですね。その身のこなしと強さは。あの時雨が手も足も出ない程の早さは驚嘆に値します。その上その美しい容姿。この世の女神のようです」
「吐き気がするほどの最悪なお褒めの言葉ありがとよ。容姿でしか判断できないお前らの頭のおめでたさに呆れを通り越して笑いがこみあげてくるよ。っつう事でどけ」
「どかないよーん。なんか見てて俺も君の事気にいっちゃったし」
「……あ?」
「おまえ、おもしろい。天弥みたい。かわい」
「おえっ」

 冗談ではない。あいつと一緒にされるのは癪である。
 おまけにチャラ男会計とコミュ障書記もなぜか自分を気に入った模様。
 うざいのを量産させてしまった。最悪だ。

「それに天弥より君のがなんか楽しそうだし」
「………」

 大体よ、こいつらどんだけ惚れっぽいんだよ。
 お前ら日下部にお熱じゃなかったのか。あっさり他人に乗り換えられる神経がようわからん。もはやチョロキューどころの話じゃないわい。
 まあ、あの日下部に惚れた挙句に気に入ればホイホイキスしてくるバ会長の同胞となれば、その仲間もロクな奴らではないと思っていたが、ここまでとは……。
 
「どけ」
「えーいやだって言ったら?」
「もう一度言う。そこをどけ。……殺すぞ」
 
 今度は殺意を込めた声で呟くと、やっと甲斐の威圧に恐怖したのか生徒会共は一斉に腰を抜かした。
 所詮は顔だけの温室育ちの成金達。甲斐の威圧感に耐えられるはずがない。

「あ、甲斐ちゃんはっけーん!」
「……はあ。ますます面倒なのが来た」

 言わずもがな四天王である。

「わー甲斐君可愛いーね!」

 相変わらずニコニコな穂高。 

「ふむ、驚いた」

 冷静に分析するように眺めているハル。

「超美少女ってかんじ!化粧と髪型で化けるもんだねぇ。その美しさは悠里ちゃんや友里香ちゃんに匹敵するよぉ」

 アホな事を言うな相田。男がそこまでいくかっての。二人に失礼だろ。
 そんな中で四天王三人の背後を歩いてきた直が、甲斐の姿をジっと見ていた。

「矢崎……」

 こいつがペアの相手だった。
 たしかに白と赤を基調とした宮廷服は似合うけど、この男はどちらかといえば黒の衣装……つまり魔王の格好の方が似合いそうな気が……おっと口が滑りそうになった。

「架谷……いや、カイ姫。もう審査員がこちらを見ているから言動には気をつけた方がいいぞ」と、ハル。
「うえっ……もう試合は始まってんの、じゃなくて始まっていらっしゃるのですか。お、俺……いや、わたくし驚きですわぁ!」

 さっきバ会長の金玉を蹴りあげたせいで大幅に減点されただろう。あれはお姫らしからぬお下劣行為であったと自分でも思う。だがしかし、あのバ会長にキスされるくらいなら大幅減点された方が全然マシである。自分はそっちの趣味はない。よって、奴へのゴールデンボール末代祟り攻撃は正当防衛なのだ。許せ審査員どもよ。

「直ー!なんで俺から逃げるんだよ!俺と直は両想いだって言ってんだろ!」

 そこへ、いろんな意味で一番の元凶がまた直を追ってやって来た。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...