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七章/合同体育祭
52.女装した甲斐
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「マジ基地を相手にするのも疲れる……」
直はそれ以降は日下部を完全にスルーし、さっさと向こうの方へ歩いていく。相手にしたら負けだと悟ったようだ。
「あ、直待つんだぞ!まだ話は終わってないんだぞ」
逃げる直を追いかける日下部。入れ替わるようにどこぞの姫も近くを歩いていた。
「あ、架谷甲斐!」
「…………チッ」
ばれたか。
甲斐が悔しげに入場門にやってきていた。
気配を完璧殺したはずが、この派手な見た目には無理な話だった。ただ運営スタッフから開星チームの名札を取りに来ただけの用事なのに不運である。
そんな無才の生徒会は甲斐をジロジロ見ている。その顔つきは今まで見たものとは少し違っていた。
「架谷甲斐、お前の姿……磨けば光る原石だったようだな。ますます気に入った」
「そんなもんで気に入るな悪趣味野郎。仕方なくのドレスアップだ」
「へえ、とても似合っていますよ、架谷甲斐。末恐ろしい程に」
「ほんと、認めたくないけど平凡のくせにここまで変わるなんて俺たまげちゃった」
「びっくり、天弥より、かわい」と、爆弾発言のコミュ障書記。
「そうだな、認めたくないが確かに天弥より綺麗だな。俺様がこう言っているんだ、光栄に喜べよ平凡……ってオイ!!」
ふと顔を上げると、いつの間にか甲斐はもう遠く向こうの方を歩いていた。
完璧スルーされた生徒会は屈辱を受けながらも甲斐に対してますます興味を抱く。
「こら架谷甲斐!俺を無視するんじゃねえ!」
「……なんか用かよ。うぜぇな」
甲斐は露骨に迷惑そうな顔を隠さない。
「なんか用かよじゃねえだろ!俺様を無視するとはいい度胸だな!普段は平凡顔なくせに」
「お前らの悪事を知っている身として話す事はねーよ。敵同士なのに。平凡顔で結構。俺忙しいから生徒会どもは今後一切構ってくんな。シッシッ」
「そうはいかねえ。言っただろう?俺はお前を気に入ったと」
「俺はお前を全然気に入ってないどころか嫌いだ。つーか前通りたいんだけど、どけや」
「ふっ……素直じゃねえな。ツンデレか?可愛いな」
その言葉にもイラついたが、天草会長はあろう事かまた甲斐に近づいて唇を奪おうとしたので、甲斐は光の速さで天草会長の股間を蹴りあげた。
途端、うおおおと地面を転がりながら悶絶している天草会長。甲斐はこの上なく無様な会長にざまあみろと思ったのであった。
「言ったろう?俺はチャラ男みたいに簡単に奪おうとする奴が大嫌いだって。俺はてめえの玩具じゃねえんだよ!いっぺん地獄に落ちろ!」
これで邪魔者は消えたからこの場を去ろうとすれば、残りの生徒会が今度は立ちはだかった。まだ何か用なのか。
「さすがですね。その身のこなしと強さは。あの時雨が手も足も出ない程の早さは驚嘆に値します。その上その美しい容姿。この世の女神のようです」
「吐き気がするほどの最悪なお褒めの言葉ありがとよ。容姿でしか判断できないお前らの頭のおめでたさに呆れを通り越して笑いがこみあげてくるよ。っつう事でどけ」
「どかないよーん。なんか見てて俺も君の事気にいっちゃったし」
「……あ?」
「おまえ、おもしろい。天弥みたい。かわい」
「おえっ」
冗談ではない。あいつと一緒にされるのは癪である。
おまけにチャラ男会計とコミュ障書記もなぜか自分を気に入った模様。
うざいのを量産させてしまった。最悪だ。
「それに天弥より君のがなんか楽しそうだし」
「………」
大体よ、こいつらどんだけ惚れっぽいんだよ。
お前ら日下部にお熱じゃなかったのか。あっさり他人に乗り換えられる神経がようわからん。もはやチョロキューどころの話じゃないわい。
まあ、あの日下部に惚れた挙句に気に入ればホイホイキスしてくるバ会長の同胞となれば、その仲間もロクな奴らではないと思っていたが、ここまでとは……。
「どけ」
「えーいやだって言ったら?」
「もう一度言う。そこをどけ。……殺すぞ」
今度は殺意を込めた声で呟くと、やっと甲斐の威圧に恐怖したのか生徒会共は一斉に腰を抜かした。
所詮は顔だけの温室育ちの成金達。甲斐の威圧感に耐えられるはずがない。
「あ、甲斐ちゃんはっけーん!」
「……はあ。ますます面倒なのが来た」
言わずもがな四天王である。
「わー甲斐君可愛いーね!」
相変わらずニコニコな穂高。
「ふむ、驚いた」
冷静に分析するように眺めているハル。
「超美少女ってかんじ!化粧と髪型で化けるもんだねぇ。その美しさは悠里ちゃんや友里香ちゃんに匹敵するよぉ」
アホな事を言うな相田。男がそこまでいくかっての。二人に失礼だろ。
そんな中で四天王三人の背後を歩いてきた直が、甲斐の姿をジっと見ていた。
「矢崎……」
こいつがペアの相手だった。
たしかに白と赤を基調とした宮廷服は似合うけど、この男はどちらかといえば黒の衣装……つまり魔王の格好の方が似合いそうな気が……おっと口が滑りそうになった。
「架谷……いや、カイ姫。もう審査員がこちらを見ているから言動には気をつけた方がいいぞ」と、ハル。
「うえっ……もう試合は始まってんの、じゃなくて始まっていらっしゃるのですか。お、俺……いや、わたくし驚きですわぁ!」
さっきバ会長の金玉を蹴りあげたせいで大幅に減点されただろう。あれはお姫らしからぬお下劣行為であったと自分でも思う。だがしかし、あのバ会長にキスされるくらいなら大幅減点された方が全然マシである。自分はそっちの趣味はない。よって、奴へのゴールデンボール末代祟り攻撃は正当防衛なのだ。許せ審査員どもよ。
「直ー!なんで俺から逃げるんだよ!俺と直は両想いだって言ってんだろ!」
そこへ、いろんな意味で一番の元凶がまた直を追ってやって来た。
直はそれ以降は日下部を完全にスルーし、さっさと向こうの方へ歩いていく。相手にしたら負けだと悟ったようだ。
「あ、直待つんだぞ!まだ話は終わってないんだぞ」
逃げる直を追いかける日下部。入れ替わるようにどこぞの姫も近くを歩いていた。
「あ、架谷甲斐!」
「…………チッ」
ばれたか。
甲斐が悔しげに入場門にやってきていた。
気配を完璧殺したはずが、この派手な見た目には無理な話だった。ただ運営スタッフから開星チームの名札を取りに来ただけの用事なのに不運である。
そんな無才の生徒会は甲斐をジロジロ見ている。その顔つきは今まで見たものとは少し違っていた。
「架谷甲斐、お前の姿……磨けば光る原石だったようだな。ますます気に入った」
「そんなもんで気に入るな悪趣味野郎。仕方なくのドレスアップだ」
「へえ、とても似合っていますよ、架谷甲斐。末恐ろしい程に」
「ほんと、認めたくないけど平凡のくせにここまで変わるなんて俺たまげちゃった」
「びっくり、天弥より、かわい」と、爆弾発言のコミュ障書記。
「そうだな、認めたくないが確かに天弥より綺麗だな。俺様がこう言っているんだ、光栄に喜べよ平凡……ってオイ!!」
ふと顔を上げると、いつの間にか甲斐はもう遠く向こうの方を歩いていた。
完璧スルーされた生徒会は屈辱を受けながらも甲斐に対してますます興味を抱く。
「こら架谷甲斐!俺を無視するんじゃねえ!」
「……なんか用かよ。うぜぇな」
甲斐は露骨に迷惑そうな顔を隠さない。
「なんか用かよじゃねえだろ!俺様を無視するとはいい度胸だな!普段は平凡顔なくせに」
「お前らの悪事を知っている身として話す事はねーよ。敵同士なのに。平凡顔で結構。俺忙しいから生徒会どもは今後一切構ってくんな。シッシッ」
「そうはいかねえ。言っただろう?俺はお前を気に入ったと」
「俺はお前を全然気に入ってないどころか嫌いだ。つーか前通りたいんだけど、どけや」
「ふっ……素直じゃねえな。ツンデレか?可愛いな」
その言葉にもイラついたが、天草会長はあろう事かまた甲斐に近づいて唇を奪おうとしたので、甲斐は光の速さで天草会長の股間を蹴りあげた。
途端、うおおおと地面を転がりながら悶絶している天草会長。甲斐はこの上なく無様な会長にざまあみろと思ったのであった。
「言ったろう?俺はチャラ男みたいに簡単に奪おうとする奴が大嫌いだって。俺はてめえの玩具じゃねえんだよ!いっぺん地獄に落ちろ!」
これで邪魔者は消えたからこの場を去ろうとすれば、残りの生徒会が今度は立ちはだかった。まだ何か用なのか。
「さすがですね。その身のこなしと強さは。あの時雨が手も足も出ない程の早さは驚嘆に値します。その上その美しい容姿。この世の女神のようです」
「吐き気がするほどの最悪なお褒めの言葉ありがとよ。容姿でしか判断できないお前らの頭のおめでたさに呆れを通り越して笑いがこみあげてくるよ。っつう事でどけ」
「どかないよーん。なんか見てて俺も君の事気にいっちゃったし」
「……あ?」
「おまえ、おもしろい。天弥みたい。かわい」
「おえっ」
冗談ではない。あいつと一緒にされるのは癪である。
おまけにチャラ男会計とコミュ障書記もなぜか自分を気に入った模様。
うざいのを量産させてしまった。最悪だ。
「それに天弥より君のがなんか楽しそうだし」
「………」
大体よ、こいつらどんだけ惚れっぽいんだよ。
お前ら日下部にお熱じゃなかったのか。あっさり他人に乗り換えられる神経がようわからん。もはやチョロキューどころの話じゃないわい。
まあ、あの日下部に惚れた挙句に気に入ればホイホイキスしてくるバ会長の同胞となれば、その仲間もロクな奴らではないと思っていたが、ここまでとは……。
「どけ」
「えーいやだって言ったら?」
「もう一度言う。そこをどけ。……殺すぞ」
今度は殺意を込めた声で呟くと、やっと甲斐の威圧に恐怖したのか生徒会共は一斉に腰を抜かした。
所詮は顔だけの温室育ちの成金達。甲斐の威圧感に耐えられるはずがない。
「あ、甲斐ちゃんはっけーん!」
「……はあ。ますます面倒なのが来た」
言わずもがな四天王である。
「わー甲斐君可愛いーね!」
相変わらずニコニコな穂高。
「ふむ、驚いた」
冷静に分析するように眺めているハル。
「超美少女ってかんじ!化粧と髪型で化けるもんだねぇ。その美しさは悠里ちゃんや友里香ちゃんに匹敵するよぉ」
アホな事を言うな相田。男がそこまでいくかっての。二人に失礼だろ。
そんな中で四天王三人の背後を歩いてきた直が、甲斐の姿をジっと見ていた。
「矢崎……」
こいつがペアの相手だった。
たしかに白と赤を基調とした宮廷服は似合うけど、この男はどちらかといえば黒の衣装……つまり魔王の格好の方が似合いそうな気が……おっと口が滑りそうになった。
「架谷……いや、カイ姫。もう審査員がこちらを見ているから言動には気をつけた方がいいぞ」と、ハル。
「うえっ……もう試合は始まってんの、じゃなくて始まっていらっしゃるのですか。お、俺……いや、わたくし驚きですわぁ!」
さっきバ会長の金玉を蹴りあげたせいで大幅に減点されただろう。あれはお姫らしからぬお下劣行為であったと自分でも思う。だがしかし、あのバ会長にキスされるくらいなら大幅減点された方が全然マシである。自分はそっちの趣味はない。よって、奴へのゴールデンボール末代祟り攻撃は正当防衛なのだ。許せ審査員どもよ。
「直ー!なんで俺から逃げるんだよ!俺と直は両想いだって言ってんだろ!」
そこへ、いろんな意味で一番の元凶がまた直を追ってやって来た。
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