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六章/派遣学生と交流会
43.無才生徒会2
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「突然俺のモノになれとか、気に入ったとか、まるで発言がどっかの四人衆みたいで飽き飽きなんだよ。金と権力で人の心を動かせると本気で思ってる所が痛いっつうか、なんで金持ち軍団てこう相手の気持ちを考えないで強引に進めようとするかなぁ。そういう俺様的な考え、俺は願い下げなんだけど」
「お前がどう思おうがこれは決めた事だ。てめえは黙って俺のものになりゃあいいんだよ!」
「最低だな。俺の気持ちとことん無視かよ。そんなもので手に入れたって虚しいとか思わないわけ?」
「うるせえ!俺様に口答えすんな。俺のもんにするったらするんだよ!」
天草会長は甲斐に大股で近づく。
「あ!?」
突然近くなるバ会長のドアップ顔。
茫然としている甲斐の唇をそのまま奪おうとして、唇が触れるまであと数センチという所で甲斐の反射神経が働いた。
咄嗟に顔を背後に引き、会長の天草に勢いよく頭突き。ゴツっと芳しくない音が響き渡る。
「この、何しようとすんだてめえ!!」
激怒する甲斐。副会長の銀も顔を引きつらせて「痛そうですね」とビビっている。
そんな副会長も中等部時代に日下部が無才にやってきたその日に、笑顔が嘘くさいと言われて衝撃を受け、気に入ってキスをした過去があるのはここだけの話。
「クソ……まさかそんな攻撃をされるとは思わなかったぜ。油断した。でもキスくらいさせてくれてもいいじゃねえか!」
言いながら涙目で鼻辺りを押さえている会長。相当痛かったらしい。
「キスくらいってふざけるな!んな簡単に人のモノを奪おうとする奴は俺は大嫌いなんだよっ!二度とそんなチャラ男みたいな事すんな!」
かつて、体育倉庫で矢崎直にされたキスの事を思い出す。
あれから簡単にそういう行為をする連中を見ていると、無性に腹が立つようになったのである。
また思い出してしまった。あの時の出来事を。
あの時はたしかに嫌だったが、今思えば別にそこまで嫌ではなかったかもしれない。あんな嫌な野郎でも情がわいてきたっていうか、こいつにされるよりかはマシで……って、何言ってんだよ俺はっ!
あれは今でも黒歴史だ黒歴史ー!
甲斐は赤くなった顔をブンブンと横にふった。
「キスするくらいで赤くなっちまって……お前、可愛いな」
「てめえに対して赤くなるかバカ!別の事でだ別の事!あんまりふざけた事言うと、てめえの遊びまくった中古品の金玉思いっきり蹴りつけてやんぞ」
「ふはは、そ、それは勘弁だぜ!で、お前の名前はなんて言うんだ?」
「あ?言うわけないだろ。俺はただの平凡。名前なんぞ知ってもあんたら金持ちからすれば知らなくてもいい一般生徒だ。どうせ今後滅多に関わらないんだから覚えても仕方ねーだろ。明日は敵同士なんだからな!」
甲斐は宮本達を連れてその場をさっさと去ろうとすると、天草は甲斐の腕を掴んだ。
「待てよ。ここで俺がお前を逃がすわけないだろ。名前言えよ。お前は平凡顔だが平凡には思えねえんだ」
「放せ。お前らに構っている暇はねえ。明日忙しいくせに。だいたい平凡平凡うるせえ。そして早くくたばれ」
「俺はお前をマジ気に入ったんだって。名前くらい教えてくれてもいいだろ。そしたら今日はこれくらいにしといてやるからよ」
「そうです。教えてください。平凡と連呼した事は詫びますから」
副会長の銀もなぜか名前を教えろと迫ってきた。なんなんだこいつらは。
「詫びなくて結構だ。俺はお前らの言う通りただのしがない平凡なんだからな」
それでも引き下がらない副会長と会長。
いつまでもここでモタモタしているわけにはいかないのに、こいつらを蹴散らして強行突破するべきか……いや、あんまりもう乱闘起こしたくねーし、おまけにこいつら金持ちだから後でいろいろ圧力かけてきそうだしな……うーむ……面倒な連中だ。
「チッ、仕方ねぇ」
甲斐は舌打ちをして渋々連中に向き直る。
「架谷甲斐だ」
そう呟くと、二人はふっと笑った。
「甲斐、か。覚えておくよ」
「覚えんな。すぐ忘れろ。一秒で忘れろ。脳内抹消しろ」
無才の生徒会と面識ができてしまった甲斐。
嘘の名前を教えときゃあよかったなと後悔するのは明日の体育祭での事。仮に名前を教えなくても顔がもうバレてしまっているので隠す意味もないのだが。
*
「ありがとう、甲斐君。助けてくれて」
「ほんと、助かったよ」
「さすが甲斐君だよね」
「悠里ちゃんが惚れるのもわかるかも」
「……甲斐くん……ぽっ」
あの後、事なきを得て改めて宮本と少年が甲斐に礼を述べていた。かしまし三人娘も甲斐を褒めまくっていて、柄にもなく甲斐は照れている。
「あんな馬鹿共はまた蹴散らしてやるから。それよりあんな奴らにいじめられて大変だったと思う」
「天草達が嫌で開星に来たんだけど、交流会や体育祭の時に見つかっちゃってまたパシられて、あんな奴らにびびっちゃう自分が情けなくて悔しいよ」
無才でひどい目にあったからこそ、体が萎縮してしまってうまく反抗できないと話す宮本。奴らからの暴力による洗脳は今でも宮本を蝕んでいるようだ。
「宮本君は……運動はそれなりに得意か?」
「え……あーまあまあかな」
球技大会ではバレーに参加してそれなりに活躍していたのを思い出す。
「じゃあ明日、無才の奴らに勝てばいい。もちろん俺と宮本君が参加する競技で」
「甲斐君……っ」
「それであの馬鹿共をあっと言わせよう。もちろん奴らが強硬手段に出るなら俺が沈めてやるからさ」
甲斐が頼もしく言い放つと、宮本は少しばかり勇気が出てきた。
「……僕、明日で無才の事を吹っ切るためにがんばるよ。このままじゃダメだと思うから」
「うん。その意気だ」
かくして、体育祭は明日に迫った。
六章 完
「お前がどう思おうがこれは決めた事だ。てめえは黙って俺のものになりゃあいいんだよ!」
「最低だな。俺の気持ちとことん無視かよ。そんなもので手に入れたって虚しいとか思わないわけ?」
「うるせえ!俺様に口答えすんな。俺のもんにするったらするんだよ!」
天草会長は甲斐に大股で近づく。
「あ!?」
突然近くなるバ会長のドアップ顔。
茫然としている甲斐の唇をそのまま奪おうとして、唇が触れるまであと数センチという所で甲斐の反射神経が働いた。
咄嗟に顔を背後に引き、会長の天草に勢いよく頭突き。ゴツっと芳しくない音が響き渡る。
「この、何しようとすんだてめえ!!」
激怒する甲斐。副会長の銀も顔を引きつらせて「痛そうですね」とビビっている。
そんな副会長も中等部時代に日下部が無才にやってきたその日に、笑顔が嘘くさいと言われて衝撃を受け、気に入ってキスをした過去があるのはここだけの話。
「クソ……まさかそんな攻撃をされるとは思わなかったぜ。油断した。でもキスくらいさせてくれてもいいじゃねえか!」
言いながら涙目で鼻辺りを押さえている会長。相当痛かったらしい。
「キスくらいってふざけるな!んな簡単に人のモノを奪おうとする奴は俺は大嫌いなんだよっ!二度とそんなチャラ男みたいな事すんな!」
かつて、体育倉庫で矢崎直にされたキスの事を思い出す。
あれから簡単にそういう行為をする連中を見ていると、無性に腹が立つようになったのである。
また思い出してしまった。あの時の出来事を。
あの時はたしかに嫌だったが、今思えば別にそこまで嫌ではなかったかもしれない。あんな嫌な野郎でも情がわいてきたっていうか、こいつにされるよりかはマシで……って、何言ってんだよ俺はっ!
あれは今でも黒歴史だ黒歴史ー!
甲斐は赤くなった顔をブンブンと横にふった。
「キスするくらいで赤くなっちまって……お前、可愛いな」
「てめえに対して赤くなるかバカ!別の事でだ別の事!あんまりふざけた事言うと、てめえの遊びまくった中古品の金玉思いっきり蹴りつけてやんぞ」
「ふはは、そ、それは勘弁だぜ!で、お前の名前はなんて言うんだ?」
「あ?言うわけないだろ。俺はただの平凡。名前なんぞ知ってもあんたら金持ちからすれば知らなくてもいい一般生徒だ。どうせ今後滅多に関わらないんだから覚えても仕方ねーだろ。明日は敵同士なんだからな!」
甲斐は宮本達を連れてその場をさっさと去ろうとすると、天草は甲斐の腕を掴んだ。
「待てよ。ここで俺がお前を逃がすわけないだろ。名前言えよ。お前は平凡顔だが平凡には思えねえんだ」
「放せ。お前らに構っている暇はねえ。明日忙しいくせに。だいたい平凡平凡うるせえ。そして早くくたばれ」
「俺はお前をマジ気に入ったんだって。名前くらい教えてくれてもいいだろ。そしたら今日はこれくらいにしといてやるからよ」
「そうです。教えてください。平凡と連呼した事は詫びますから」
副会長の銀もなぜか名前を教えろと迫ってきた。なんなんだこいつらは。
「詫びなくて結構だ。俺はお前らの言う通りただのしがない平凡なんだからな」
それでも引き下がらない副会長と会長。
いつまでもここでモタモタしているわけにはいかないのに、こいつらを蹴散らして強行突破するべきか……いや、あんまりもう乱闘起こしたくねーし、おまけにこいつら金持ちだから後でいろいろ圧力かけてきそうだしな……うーむ……面倒な連中だ。
「チッ、仕方ねぇ」
甲斐は舌打ちをして渋々連中に向き直る。
「架谷甲斐だ」
そう呟くと、二人はふっと笑った。
「甲斐、か。覚えておくよ」
「覚えんな。すぐ忘れろ。一秒で忘れろ。脳内抹消しろ」
無才の生徒会と面識ができてしまった甲斐。
嘘の名前を教えときゃあよかったなと後悔するのは明日の体育祭での事。仮に名前を教えなくても顔がもうバレてしまっているので隠す意味もないのだが。
*
「ありがとう、甲斐君。助けてくれて」
「ほんと、助かったよ」
「さすが甲斐君だよね」
「悠里ちゃんが惚れるのもわかるかも」
「……甲斐くん……ぽっ」
あの後、事なきを得て改めて宮本と少年が甲斐に礼を述べていた。かしまし三人娘も甲斐を褒めまくっていて、柄にもなく甲斐は照れている。
「あんな馬鹿共はまた蹴散らしてやるから。それよりあんな奴らにいじめられて大変だったと思う」
「天草達が嫌で開星に来たんだけど、交流会や体育祭の時に見つかっちゃってまたパシられて、あんな奴らにびびっちゃう自分が情けなくて悔しいよ」
無才でひどい目にあったからこそ、体が萎縮してしまってうまく反抗できないと話す宮本。奴らからの暴力による洗脳は今でも宮本を蝕んでいるようだ。
「宮本君は……運動はそれなりに得意か?」
「え……あーまあまあかな」
球技大会ではバレーに参加してそれなりに活躍していたのを思い出す。
「じゃあ明日、無才の奴らに勝てばいい。もちろん俺と宮本君が参加する競技で」
「甲斐君……っ」
「それであの馬鹿共をあっと言わせよう。もちろん奴らが強硬手段に出るなら俺が沈めてやるからさ」
甲斐が頼もしく言い放つと、宮本は少しばかり勇気が出てきた。
「……僕、明日で無才の事を吹っ切るためにがんばるよ。このままじゃダメだと思うから」
「うん。その意気だ」
かくして、体育祭は明日に迫った。
六章 完
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