学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

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四章/複雑な兄妹

26.美少女の告白

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「架谷くん、今日の兄の数々の無礼、本当にごめんなさい」

 手当てが終わって相田達と一言二言交わした後、甲斐は悠里と夕日が当たる広い廊下で会話をしていた。彼女は改まって頭を下げて、甲斐は慌てた様子で顔を横に振る。

「キミが謝る事じゃないだろう」

 悪いのはあのバカだと甲斐は言いたかったが、悠里の兄という手前できつくは言えない。なんだかんだ思う所はあっても仲がいい兄妹らしいから、彼女の前で貶すなんて事はできない。

「あんな兄だけど、たった一人の血の繋がった双子だから、できれば架谷くんとも仲良くしてもらいたいと思ってる。でも……今はそう思うのがちょっとだけ躊躇っちゃうな」
「神山さん?」

 彼女はうつむいていた顔をゆっくりあげた。

「ねえ、架谷くん」

 悠里が小さく呼吸をととのえる。

「私……架谷くんが……甲斐くんが好き」

 まっすぐこちらを見つめてそう告白した彼女に、甲斐は目を見開く。

「五年生の時からずっと。どんな事を言われても、どんなにひどい目にあっても、立ち向かおうとする強さと真っすぐさに惹かれてた」
「神山さん……」

 彼女の自分に対する接し方や、デートに誘われた事で、なんとなく彼女の気持ちはそうなのではないかという気は薄々感じていた。
 自分は恋愛に疎いし、結構鈍感な方だけれど、あからさますぎる気持ちの表れであれば鈍感な自分でも察する事は容易い。

「神山さん……ありがとう。俺なんかを好きって言ってくれて」

 甲斐は柔和に微笑む。

「キミみたいな可愛くて綺麗な子にそう言われて、男としてすごく幸せ者だって思う」
「甲斐くん……」
「だけど、俺……キミの事は恋愛としては見ていなかったんだ」

 たしかに彼女は好きだ。
 彼女が自分をそう想ってくれてすごく嬉しいし、彼女の信頼には応えたいと思っていた。
 だけど、自分は恋愛として彼女が好きかと問えば違っていて、親愛としてや友達としての好きって意味合いの方が強かった。むしろ、そう思う事さえ恐れ多くて、それ以上の気持ちの歯止めになっていたような気もする。
 だから、彼女に対しては恋愛感情はほとんどないと言っても過言ではないだろう。

 簡単に言えば、妹の未来や友里香に対する想いと同じ。それでも幼馴染として大切には変わりない。
 小学五年の時から限りない恩を抱いている彼女には申し訳ないが、恋愛としては気持ちに応えられない。

「変な話だ。絶世の美少女からの大告白にまさかこんな事を言うなんて、世の中の男子達からタコ殴りにされちゃうかもしれない。すごく嬉しいのにな。だけど、俺は嘘なんてつけない。つきたくない。キミが真剣だからこそ、こっちも真剣に返事をしなきゃいけないって思ったんだ」

 甲斐はいつにも増して真剣な表情に変わる。

「俺は、キミを幼馴染目線でしか見れない。それ以上なんてきっと思えない。これが正直な気持ちだ」

 凛々しい顔つきでそう言う甲斐に、悠里は女として見惚れる。やはり好きだなって。そういう所がかっこいいなって。
 でも、甲斐の言葉きもちは自分には向いていない。はっきり言われて悲しいけれど、同時に告白した事で清々しくも思う。
 残念だけれど、今はそれを受け入れるほかない。

「わかってたよ」

 悠里は苦笑する。

「甲斐くんが私に対する接し方がみんなと同じだなって。だって、デート中も全然なびいていない様子で、いつも通りだったから。気合入れてオシャレしたし、甲斐くんに精一杯アプローチしてモーションかけ続けた。だけど甲斐くんてば全然普通な態度だったね」
「……ごめん」と、咄嗟に謝罪の言葉が出た。
「謝らないで。こういう時、謝られると逆に傷つくんだから」と、お茶目に言う悠里。
「そっか。なら、これ以上は何も言わないでおくよ」
「ねえ、甲斐くん」
「……ん?」
「私、これからも甲斐くんを好きでいるよ。だって、これから心変わりするかもしれないでしょう?」

 悠里の表情はしたたかに微笑んでいる。

「諦めないんだ」と、微笑みを返す甲斐。
「前向きって言ってよね。私、甲斐くんが初恋なんだから」
「そうなんだ。それは光栄だな」
「でしょ」

 初恋は実らないとはよく言う。だけど、

も……甲斐くんの事を特別な目で見ているかもしれないし」
「え……」
「ふふ……なんでもないっ」

 まだきっとチャンスはある。今は彼は誰のものでもないのだから。
 には負けない。そう思う悠里であった。


「今日だけは特別サービスで送迎してやるよ、感謝しろよ貧乏人」

 寮へ帰る際、直が待ち構えていたように矢崎邸の玄関先で待っていた。

「別に結構。歩いて帰れる」

 そう言って通り過ぎようとすると、直の腕が伸びていた。

「なんだよ」
「悠里と何話していたんだよ」
「別にお前に関係ないだろ。これからもお友達として、幼馴染として、仲良くしましょうってハナシ」
「……ふーん……なら、お前……悠里を振ったのか」

 直はにやりと笑った。どうしてかその顔が嬉しそうに見えるのは気のせいか。

「……は。なんでお前知ってんだよ」

 たしかに間違いではない。

「あいつのさっきのしょぼくれた顔見りゃあなんとなくわかってた。それに盗聴器仕掛けてたから今は全部知っている」
「……いろいろと最低だなてめえ。つーか俺に訊く以前に始めから知ってたんじゃねーかよっ!」

 呆れを通り越して半笑いがこみあげてくるものだ、この俺様財閥の行動には。

「それよりお前、いいのか?あーんな金持ち令嬢を手放すんだ。神山家は矢崎の本社勤務でもあるからそれなりには稼いでいるだろう。この上ないチャンスをドブに捨てる事になる。逆玉の輿ってやつか。え、貧乏人」
「それが嫌で邪魔してきたのはどこのどいつだっつうの。第一、仮に神山さんとそういう関係になったとして、将来結婚したとしたら義理の兄がてめえになると思うと避けて通りたい未来だ」
「……すっげームカつく事言いやがるなテメエ」
「日々のてめえの行いに比べたら全然マシだと思うんですけど!」

 バチバチと睨みあう二人。相変わらず反目しあう。

「つくづく口の減らねえ野郎だな」
「おめーに言われたくねーし」
 

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