学園トップに反抗したら様子がおかしくなった (旧/金持ち学園)

いとこんドリア

文字の大きさ
上 下
10 / 210
一章/金持ち学園

8.従者制度

しおりを挟む
 *

「昼の時間はあれだったけど、全校集会は何事もなくて驚いたね」

 午後からの全校集会は何事もなく終わった。てっきり噂通りに四天王にあらぬ事をされると思ったが、いたって連中はおとなしかった。逆にそれが恐ろしくて、後で闇討ちでもされるんじゃないかとEクラス達の緊張感は一向に解けない。

「リーダー格の矢崎直がいなかったからかな」
「それにしたって残りの四天王が何もしてこないっていうのが変だよ。残りの連中だって悪戯大好きな奴いるし」
「それはたぶんだけど「甲斐ちゃーん」

 由希が説明する前にEクラスの扉がいきなり開いた。一斉に扉の方へ振り返ると、

「し、四天王っ!」

 相田拓実だった。思わぬ人物の登場にEクラスの面々が恐怖に身構える。

「あーそんな身構えなくていいよ~。今日は甲斐ちゃんに免じて別になーんもしないから」

 相田が笑顔でそう言うと、穂高とハルも教室に入ってきた。
 Eクラスにあの四天王がいるというだけで異様な光景である。

「俺になんか用かよ」

 まだ席にいた甲斐は帰り支度を行っていた。

「一緒に帰ろうと思って」
「……は?」
「言ったでしょ?キミを気に入ったって」

 たしかにそうは言っていたが……

「拓実君だけじゃないよ。ぼくも気に入ったからねー。一緒に帰ろうね」

 甲斐の両隣に相田と穂高が立ち、腕を掴みながら甲斐をズルズル引きずって行く。

「あ、ちょ、ちょっと。俺これからバイトの面接」
「バイトぉ?そんなのしてんだ、甲斐君。大変だね」
「そう、大変なの。お前らに構ってる暇はなくてだな……とにかく放し「だーめ」
「今から僕達と遊ぶんだからね」
「は、冗談じゃない!俺は忙しい!お前らはなせぇ!放せって言ってんだろうがああ!!」

 有無を言わせないまま、四天王は甲斐を強引に力づくで連れて行ったのだった。


「甲斐、連れて行かれちゃったね」

 呆気にとられているEクラスの面々。

「矢崎直に歯向かったって事は、他の四天王からすればインパクト大だからな。大財閥の御曹司相手にグーパンだぜ。すげぇよ、親びんは」
「でも、大丈夫かな、架谷君……」

 宮本が甲斐を案じる。

「四天王に目をつけられて、いろんな所を敵にまわしたからな」

 本木が遺影を握りしめながら言う。Eクラスの立場を身をもって知っている面々は末恐ろしく思う。

「まずは言わずもがな矢崎直からの仕返しでしょ。他四天王は架谷くんに好印象的だけどその四天王の親衛隊からの報復が厄介だよ。生徒会も怖いけど」
「うわー親衛隊はまずいよ。過激なファンの集まりだよ。特に矢崎直の親衛隊は恐ろしい事で有名じゃん」
「うち、矢崎直の親衛隊の噂聞いた事ある。昔何も知らない一人の生徒が矢崎直に好意を持ってて、近づいた事で矢崎直の親衛隊の怒りを買い、退学に追い込まれたって話!なんか自殺未遂になるまでいじめられたとか。それってやばくない?」

 Eクラスの噂好きのかしまし三人娘(小川、山岸、清水)があーだこーだ言っている。

「やばいどころか超ヤバだ」

 甲斐の身を案じる健一とEクラス達であった。

 *


「一体どこへ連れて行くつもりだよ」
「とりあえずドライブかな」

 四天王は相田を筆頭に甲斐をリムジンに乗せ、どこかもわからない場所をドライブしていた。
 真ん中に甲斐が座り、その両隣に相田と穂高が座る。ハルはどうでもいいとばかりに違う座席に座っている。

「おしゃべりしながら甲斐ちゃんの事知ろうと思って」
「俺なんかの事知ってもおもしろくないだろ。ただの貧乏人だから」
「そんな事ないよ。甲斐ちゃんみたいな強くて度胸ある子、初めてあったもん。オイラそういう子好きだなぁ」
「あーそうかい」

 女ならまだしも、男相手から絶賛されてもなー。

「まあ、野郎からこう言われても迷惑だと思うけど、でもオイラは本気でキミん事気に入っちゃったんだよ。だからねーよろしくしてほしいのよねぇ」

 チュッと甲斐の柔らかくて白い頬にキスを落とした。

「ぎゃあ!何すんだっ!」

 まさかそんな事をされるとは思っておらず、甲斐は焦って狼狽える。

「ふふ、ほっぺにチューしたくらいで慌てちゃって……ウブカワ~」
「ちょっとー拓実くんだけずるいなぁ。ぼくだってチューしたいのに」

 そう言いながらも、相田の反対側から甲斐の手をとって手の甲に口づける穂高。世間の女からすればなんとも贅沢で羨ましい光景である。でも甲斐は身震いして顔色悪くさせている。野郎からこんな事をされてもちっとも嬉しくない。

「何事も早い者勝ちなのよ~アプローチしたもん勝ちなのよ~!」

 なんのアプローチだよなんの!
 ていうか、早く帰らしてくれ。バイトがァ~!

 その後、甲斐はいろんな場所を楽しいからと連れまわされ、帰ったのは夜の八時頃であった。結局バイトの面接には行けず、謝罪の電話を入れる羽目になった。
 そんな事情を知った寮の管理人は、学校の食堂で調理と皿洗いのバイトを募集している事を甲斐に伝えた。甲斐は即座に面接を決めた。

「本当に続けてくれるのかい?金持ちだから面倒だと言ってすぐ辞めてしまう子が多いんだよ」

 食堂で働く料理長が甲斐の履歴書を見て話している。

「大丈夫です。俺は断じて金持ちではないんで!超がつくくらい貧乏なんです。あと、料理は得意なんで包丁さばきと皿洗いは得意です」
「そうかい。なら君を信じて採用しよう。さっそく明日からよろしくね」
「はい!よろしくおねがいしまーす!」

 とりあえずバイトが決まった所で両親に電話で報告しておく。今日一日でいろんな事があってキャパオーバーだが、どうか明日は平凡な日で終わってほしい。そう願うのであった。
 

 翌朝、生徒玄関に入ると、あきらかに生徒達の様子がおかしかった。
 甲斐の姿を見るなり、憎むような視線を向ける者もいれば、同情するような哀れみの目で見る者もいた。
 なんでそんな目で見られるのだろう。怪訝に思いながらさらに進むと、下駄箱近くにある大きな掲示板にはたくさんの生徒達がいる。貼り紙を見ているようで、甲斐もその貼り紙に目を向けた。

『二年E組の架谷甲斐は四天王の矢崎直の従者とする』
「……は?」

 甲斐は茫然と立ち尽くした。

「奴隷にしてやるよ、貧乏人」

 背後からのエラそうな態度だけで誰かなんてわかった。
 振り向くと、案の定に腕を組んでいる矢崎直が立っている。

「今日から貴様はオレの忠実なる奴隷って事でよろしく頼むわ。貴様が学校辞めるまでたくさんコキ使ってやるからちゃんと働けよ、下僕」
「イミフなんですけど。なんでてめえの従者げぼくになんてならなきゃならんの。勝手に決めn「黙れ」

 直が傲慢な態度で返す。

「オレ様がコキ使ってやるって言ってンだ。光栄に思って黙って従えっての。ド貧乏のド庶民が。それにテメーを従者にしたら、今後ある意味退屈しないで済みそうだから退屈しのぎのおもちゃにはいいと思ったんだ。よかったな、使い道ができて。おめでとう」
「おめでもクソもあるか!んなもんだれがやるか。くそくらえ」

 甲斐は親指を下に向けてゲス顔で返上を申し出た。

「そうですよ!」

 そこへ直の親衛隊のメンバー数人が直を取り囲んだ。どれも可愛らしい外見の少女達。中には男の娘もいた。

「どうしてこんな平凡地味を従者になさるのですか?直様くらいの方ならもっとふさわしい方がいらっしゃいます。よりにもよってEクラスのド貧乏だなんて……直様が穢れてしまいます!直様の従者なら私達親衛隊がなってさしあげますのに!」
「テメーらじゃクソつまんねーからだよドブス共!消えろ!」

 と、リーダー格の可愛らしい少女に蹴りを入れる直。

「きゃんっ!直様に蹴られて罵られちゃったぁ!嬉しい!」

 床に倒れる少女一匹。なぜか頬を染めて喜んでいる。

「ああん、羨ましい!」

 他の親衛隊達も直の暴言と暴力にうっとりしている。どうやらドMの性癖を持っているようで、見ていた甲斐はドン引きして「きっも」と口から出ていた。

「チッ、変態ドM共がっ。とにかく、テメエは今日からオレ様の従者だ。逆らうことは許さん。逃げ出そうとすればテメエを即刻金の力で退学にしてやるからそのつもりで」
「理不尽な……このくそ大馬鹿野郎!」

 なんて最低な奴だ。
 あんな男が友里香の兄という事も信じられない上に、言っている事がほとんど脅迫と一緒である。金持ちのトップとはみんなああなのだろうか。傲慢で、俺様で、上から目線。しかも退屈しのぎときた。ふざけている。

 しかし、その言葉を嫌々受け入れるほかない。
 逆らえば退学の二文字。ここで辞めれば、せっかく学校に入れてくれた悠里や友里香に申し訳ないし、中卒という立場にも戻りたくない。泣く泣くその立場に下るしかなかった。

しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

処理中です...