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一章/金持ち学園
4.四天王
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「それにしても、この学校て世間の学校とかけ離れてると思わない?いろんな意味で」
由希が溜息がちに漏らす。
「かけ離れてるってたとえばどんな?」
「甲斐はまだ来たばかりであまり知らないと思うけど、この学校ってEクラスを除くとロクな所じゃないんだ」
健一や由希が言うに、Eクラスはほぼ全校生徒の中での最底辺奴隷扱いだという。
SからDクラスの生徒達はクラスが上という立場を利用して、Eクラスを徹底的なイジメと従者制度で笑いものにするのだとか。
「SからEまであってSが最優秀クラス。それからAからEまで続いて、成績や家柄の良い順にクラス編成される。俺達はEクラス。つまり最底辺奴隷クラスだ。何してもいいって思われて、Eクラス以外の在校生達から常に見下されているんだ」
本木が疲れた顔で説明する。
「その従者制度というのがまた厄介で、一度選ばれるとずっとパシリにされるのよ。主人の命令は絶対に服従で」
「でも、ようは上級クラスの生徒と関わりにならなければ従者に選ばれることはないわけで。おとなしくしてりゃあ従者にならずに平和に暮らせるんだ。触らぬSクラスに祟りなしってな」
「ほんとそれだよ!でもさ、従者制度より一番厄介なのは【四天王】の事かな」
宮本が疲れたように目を伏せる。
「四天王……?」
甲斐は首をかしげた。そういえば最近テレビで特集していたな。
「別名、四大貴族とも言われている。超大金持ちの四人組だ」
理事長すらも手ごまのように操る者がいて、それ以上にあらゆる権力者の背後から隠れて嘲笑う者たち。それが四天王なんだとか。
「四天王ってあれだろ。世の女の子達を手玉に取るようなチャラチャラしたイケメン四人衆の事だろ。制服を一切着ないでいつも私服姿の。開星の特集で見た記憶がある。各個人の名前も顔も覚えてないが。あんな若造どもが理事長より立場はさらに上なのか。世も末だな」
「開星学園の全てを牛耳っているんだ。あいつらからすれば理事長などただの下僕。あいつらが好き放題やってるせいで奴隷制度がまかり通り、荒廃する一方なんだ。世の女の子達は彼らの甘いマスク、そして絶大なる権力に酔って騙されているけど、あいつらは悪党だ。悪党の四人組だよ」
「自分より下の者を平気で傷つける蛮族みたいなものだよ。僕達のような権力のない者相手にストレス発散の道具……いや、ヒマつぶしのおもちゃみたいに弄ぶのさ」
彼らは一様に四天王の事を恨みがましく話す。日ごろから酷い目にあっているらしい。
「……それだけ聞いたら最低だなそいつら」
「四天王には誰も逆らえない。四人とも普通の金持ちじゃ太刀打ちできない程の権力者だから。でも、悠里のおかげでこのEクラスだけはあまり被害がないんだ」
「神山さんのおかげ?」
首を傾げると、悠里が恥ずかしそうに苦笑する。
「私のおかげかはわからないけど、いつもクラスメート達に酷い事はするなって口酸っぱく言い続けているんだ。だから、比較的このクラスだけはあまり被害はないみたいだけど……でも、他の学年のEクラス達が可哀想だなって思うよ」
「他の三年と一年のEクラスか。ていうか神山さんの言う事は聞くんだなその四天王って。神山さんもEクラスのうちの一人なのに」
「ほら、悠里ちゃんて矢崎財閥と関りがある方だから。それにあいつらも悠里ちゃんみたいな超美少女には手が出せないんじゃない?」
「でもあいつら美女なんて見慣れてるだろ。繁華街とかで遊んでるらしいし」
確かに健一の一言には納得である。あの手の顔がいい男プラス金持ちは必ず遊んでいるのは相場が決まっている。
「まあ、神山さんがその四天王とやらの暴走の抑止力になっているわけだな」
「だけど、悠里ちゃんが風邪とかでいない日なんて悲惨だよ。いきなり四天王の一人がつまらないから楽しませろって命令出して、全校集会終了後に僕達Eクラスを体育館に閉じ込めたんだ。閉じ込められた僕達は出るに出られなくてしばらく待っていると、突然蛇やらカエル数百匹が天井から降ってくる有様で……もうEクラス全員は大パニック。今思い出しても背筋が震えちゃう思いだよ」
「そうそう!四天王やら在校生共は爆笑して見てるんだからドタマにきたよ」
「げ……そんな事されたのか。ガキの悪戯かよ」
蛇やカエルとはえげつない話である。蛇は自分の実家の周りによく生息しているのでわけないが、人によっては全くダメな者もいるので心臓が弱い者は卒倒するだろう。ご愁傷様ですとしか言えない。
「中でも銀髪の矢崎直とチャラ男の相田が最悪。もう傲慢で非情で血も涙もない悪魔。何度Eクラスの生徒が標的にされたかってくらい、いろいろ陰湿な事されたよね」
「ああ。ほんとに今までよく誰も退学せずに生きてこれたもんだって感じだよ。Eクラスのみんなで肩を寄せ合って助け合ったりしてさ」
由希と健一達が辛かったねとしみじみ語りあっている。
「そんなひどい目にあったのか」
矢崎直って友里香ちゃんの兄か?
苗字が同じだからきっとそうだよなあ。四天王って肩書きあるし、御曹司らしいので。
「この間はテストの答案を全校生徒の前でばらされたり、人格否定されたり、鬼ごっことか称してEクラスを追い回したりしてきたわ。多分、明日にある全校集会の時にも絶対何かされるよ。架谷くんも初めて四天王のひどさを体験すると思うから、身構えておいた方がいいよ。あと、制服汚れると思うから着替えとジャージは常時準備しておいた方がいいね」
「わ、わかった」
Eクラスというだけで奴隷やいじめの対象にされるなんて理不尽な話だ。と、甲斐は思ったのだった。
*
同時刻、矢崎の傘下のクラウンホテル最上階スイートルームにて―――
「ン……な、お……ッ」
まだ昼間にも関わらず、軋むベットの上で乱れる裸の少女。開星の生徒の一人である。
脱ぎ捨てられた制服はベットの床下に乱雑に捨てられている。相手をほとんど強姦みたいにベットに押し倒して、少女の制服を強引にはぎ取って、体を貪った。ただ、己のためだけのストレス発散と性欲処理のために。
気にくわなければ暴力に訴えてスル事もあるし、力づくで無理やり犯す事だってある。その日の気分次第。飽きたら捨てればいいだけの事。黙っていてもこの容姿と財力のおかげで、勝手に女がホイホイ寄ってくるのだから相手には困らない。そうして捨てた相手がどうなろうがこっちは知った事じゃあないし、知りたいとも思わない。
自分より下の人間などただの駒であり、奴隷に過ぎない。
「アッ……直……し、幸せ……直にセックスで……あ、愛されて……」
直と呼ばれた美青年は黒く滑稽に笑う。
学校で見せていた華やかな一面とは打って変わって黒ずんだ瞳を見せた。
「愛されて?クク、何寝言ほざいてんだテメエ。誰がテメーみたいなブスを愛するかよ。たかが性奴隷が粋がるなよ……ドブスの成金が」
「アッんッ……それでも……幸せだから……あ、あ……イク。アア――ッ」
つくづく耳障りな声……。
抱く時はその甲高い声がひどく耳障りだ。わざとらしく嬌声を出しているのが丸わかりで萎えてしまう。こういう時しか使えない性奴隷のくせに、声までブスだと興が冷める。はやく終わらせて捨ててやろうと直は思ったのだった。
「あーつまんなーい。なーんかおもしろそうな事ないかなァ」
ここは四天王のたまり場の高級ラウンジ。
校舎の最上階に存在し、ガラス張りの壁から都会の景色を一望できる夜景の絶景ポイントでもある。
一般生徒は入る事は許されず、生徒会すらも立ち入り禁止の区域。四天王に了解を得た者のみが入場できる。全てが最高級品の椅子やテーブルやソファーが並べられ、飲み物や食べ物など備え付けパネルを押せば自動的に運んでくれるオーダー式である。他にも休憩所や執務室などもあり、それぞれの仕事がある時はここで過ごすこともある。
「さっきからうるさいぞ、拓実」
眼鏡をかけた美青年が苛立ちを口にする。
「だってぇー女の子達とゲームしてるのも飽きたしィ」
拓実と呼ばれた四天王の一人は、年上の美女五人をはべらかせている。名前は相田拓実。茶髪のハーフアップを揺らしている。四天王の中で一番女遊びがひどくて軽薄なチャラ男で、退屈だと先ほどからずっとわめいている。
そのすぐ前の席には常に冷静で口数の少ない久瀬晴也がパソコンを弄っている。
黒髪で眼鏡をかけた学園一の秀才。彼も四天王の一人。
「お前はいつもそればかりだな」
「俺は退屈が大嫌いだからね。あーつまんないつまんない。Eクラスの子達でも呼んで遊んじゃおうかなぁ。楽しい楽しい鬼ごっことか」
「またそれか。そんなものよく楽しめるな。Eクラスの生徒をいじめてそれで楽しめるのはお前と穂高くらいなものだぞ。直もたまに面白がっているがな」
「そういうハルちゃんはいっつもパソコン見てさ、まぁた株やFX見たり勉強でもしてんの?」
「俺は人を弄んだり陥れたりして楽しむ事になんの面白みもわかん。そんな事をしているくらいなら、お前のいう株かFXの方が楽しい」
「真面目ね~ハルくんは。人生楽しまないと損でしょ」
「お前みたいなのは俺はごめんだ」
ハルが眼鏡をクイっと上にあげる。
「あれー珍しい、ハル君がここに来てるー」
そこへ、いつもニコニコ笑顔で何を考えているかわからない穂高尚也がやってきた。
彼もまた四天王の一人。金髪の王子様のような外見とは裏腹に常に笑顔なので真意が読めない男である。
「俺は拓実がどうしても来いというから来てやっただけだ。全く、人をなんだと思っているのか……ぶつぶつ」
「穂高ちゃん、ねーねーなんか面白い事なーい?オイラヒマでさぁー」
女の腰を抱きしめながら相田が楽しそうに訊く。
「うーん……ぼくも残念ながらヒマでさぁーなんか面白い事ないか逆に拓実くんに聞きたいくらいだよ」
「えーーそんなぁ。じゃあ、直にまた面白い遊び聞こうかなぁ」
「残念だけど、直くんは今これないと思うよ。さっき学校サボってどっか行っちゃったの見たし。たぶんいつもの子とホテルだと思うよ」
穂高がニコニコそう答えると、相田はつまらなさそうに舌打ちした。
「ちっ、ホテルかぁ。直ってばどんだけセフレとしまくってんだか。この間はモデルの子だったっけ。今回はどっかの令嬢だったけどまた捨てそうだね。見境ないね」
「それは拓実君もじゃないの。四つ股してるって聞いたよ」
「いーじゃん四つ股くらい~。オイラ愛なんて信じないし、今のうちに遊んでおかないと損っしょ。将来、どうせ好きでもない相手と政略結婚する事になるんなら、な・お・さ・ら」
相田はあきらめを悟っているようにそう言うと、このラウンジになんとも言えない空気が漂った。同意するように穂高もハルも出された飲み物を一口含む。同じ境遇と末路を考えてしんみりとしていた。
「まだここにいやがったのか貴様ら」
グレイのGパンと黒いシャツ姿で現れたのは矢崎直。
曲者ぞろいの四天王の中で一番の冷酷な男で、学園の中でも絶対的王者の帝王と呼ばれている。世界的有数で日本一の大金持ちグループ矢崎財閥の御曹司である。
「あれれ?直はセフレと一緒じゃなかったん?」
「萎えたから捨ててきた」と、まるでどうでもいいように答える。
「捨てて来たって……犬や猫じゃないんだからもうちょっと優しくしてあげないとだめよ~?女の子にはさ」
「愛人とか抜かして四つ股してるテメーには言われたくねぇな、拓実」
「いいじゃない別に。相手の子達も喜んでくれてるし、俺も気持ちよくなれて一石二鳥やからね!だいたい直はぁ~そんな邪険な扱いばっかしてるといつか後悔するんとちゃう?好きな子相手にはさ」
「え、直君好きな子いるの?」
ニュースだと食いつく穂高。
「んなモンいるわけねーだろ。勝手に作るな」
「えーでもいたら面白そうなのになぁ」
「そんなもんいねえし、作る気にもならん」
「でも、そう言う奴ほど、案外好きで好きでたまんない子がこの先出来たりするんだよね。あのガードが固い悠里ちゃんや友里香ちゃんだって、なんか恋してるみたいだし」
「は……友里香と悠里……?」
呆気にとられる直。
由希が溜息がちに漏らす。
「かけ離れてるってたとえばどんな?」
「甲斐はまだ来たばかりであまり知らないと思うけど、この学校ってEクラスを除くとロクな所じゃないんだ」
健一や由希が言うに、Eクラスはほぼ全校生徒の中での最底辺奴隷扱いだという。
SからDクラスの生徒達はクラスが上という立場を利用して、Eクラスを徹底的なイジメと従者制度で笑いものにするのだとか。
「SからEまであってSが最優秀クラス。それからAからEまで続いて、成績や家柄の良い順にクラス編成される。俺達はEクラス。つまり最底辺奴隷クラスだ。何してもいいって思われて、Eクラス以外の在校生達から常に見下されているんだ」
本木が疲れた顔で説明する。
「その従者制度というのがまた厄介で、一度選ばれるとずっとパシリにされるのよ。主人の命令は絶対に服従で」
「でも、ようは上級クラスの生徒と関わりにならなければ従者に選ばれることはないわけで。おとなしくしてりゃあ従者にならずに平和に暮らせるんだ。触らぬSクラスに祟りなしってな」
「ほんとそれだよ!でもさ、従者制度より一番厄介なのは【四天王】の事かな」
宮本が疲れたように目を伏せる。
「四天王……?」
甲斐は首をかしげた。そういえば最近テレビで特集していたな。
「別名、四大貴族とも言われている。超大金持ちの四人組だ」
理事長すらも手ごまのように操る者がいて、それ以上にあらゆる権力者の背後から隠れて嘲笑う者たち。それが四天王なんだとか。
「四天王ってあれだろ。世の女の子達を手玉に取るようなチャラチャラしたイケメン四人衆の事だろ。制服を一切着ないでいつも私服姿の。開星の特集で見た記憶がある。各個人の名前も顔も覚えてないが。あんな若造どもが理事長より立場はさらに上なのか。世も末だな」
「開星学園の全てを牛耳っているんだ。あいつらからすれば理事長などただの下僕。あいつらが好き放題やってるせいで奴隷制度がまかり通り、荒廃する一方なんだ。世の女の子達は彼らの甘いマスク、そして絶大なる権力に酔って騙されているけど、あいつらは悪党だ。悪党の四人組だよ」
「自分より下の者を平気で傷つける蛮族みたいなものだよ。僕達のような権力のない者相手にストレス発散の道具……いや、ヒマつぶしのおもちゃみたいに弄ぶのさ」
彼らは一様に四天王の事を恨みがましく話す。日ごろから酷い目にあっているらしい。
「……それだけ聞いたら最低だなそいつら」
「四天王には誰も逆らえない。四人とも普通の金持ちじゃ太刀打ちできない程の権力者だから。でも、悠里のおかげでこのEクラスだけはあまり被害がないんだ」
「神山さんのおかげ?」
首を傾げると、悠里が恥ずかしそうに苦笑する。
「私のおかげかはわからないけど、いつもクラスメート達に酷い事はするなって口酸っぱく言い続けているんだ。だから、比較的このクラスだけはあまり被害はないみたいだけど……でも、他の学年のEクラス達が可哀想だなって思うよ」
「他の三年と一年のEクラスか。ていうか神山さんの言う事は聞くんだなその四天王って。神山さんもEクラスのうちの一人なのに」
「ほら、悠里ちゃんて矢崎財閥と関りがある方だから。それにあいつらも悠里ちゃんみたいな超美少女には手が出せないんじゃない?」
「でもあいつら美女なんて見慣れてるだろ。繁華街とかで遊んでるらしいし」
確かに健一の一言には納得である。あの手の顔がいい男プラス金持ちは必ず遊んでいるのは相場が決まっている。
「まあ、神山さんがその四天王とやらの暴走の抑止力になっているわけだな」
「だけど、悠里ちゃんが風邪とかでいない日なんて悲惨だよ。いきなり四天王の一人がつまらないから楽しませろって命令出して、全校集会終了後に僕達Eクラスを体育館に閉じ込めたんだ。閉じ込められた僕達は出るに出られなくてしばらく待っていると、突然蛇やらカエル数百匹が天井から降ってくる有様で……もうEクラス全員は大パニック。今思い出しても背筋が震えちゃう思いだよ」
「そうそう!四天王やら在校生共は爆笑して見てるんだからドタマにきたよ」
「げ……そんな事されたのか。ガキの悪戯かよ」
蛇やカエルとはえげつない話である。蛇は自分の実家の周りによく生息しているのでわけないが、人によっては全くダメな者もいるので心臓が弱い者は卒倒するだろう。ご愁傷様ですとしか言えない。
「中でも銀髪の矢崎直とチャラ男の相田が最悪。もう傲慢で非情で血も涙もない悪魔。何度Eクラスの生徒が標的にされたかってくらい、いろいろ陰湿な事されたよね」
「ああ。ほんとに今までよく誰も退学せずに生きてこれたもんだって感じだよ。Eクラスのみんなで肩を寄せ合って助け合ったりしてさ」
由希と健一達が辛かったねとしみじみ語りあっている。
「そんなひどい目にあったのか」
矢崎直って友里香ちゃんの兄か?
苗字が同じだからきっとそうだよなあ。四天王って肩書きあるし、御曹司らしいので。
「この間はテストの答案を全校生徒の前でばらされたり、人格否定されたり、鬼ごっことか称してEクラスを追い回したりしてきたわ。多分、明日にある全校集会の時にも絶対何かされるよ。架谷くんも初めて四天王のひどさを体験すると思うから、身構えておいた方がいいよ。あと、制服汚れると思うから着替えとジャージは常時準備しておいた方がいいね」
「わ、わかった」
Eクラスというだけで奴隷やいじめの対象にされるなんて理不尽な話だ。と、甲斐は思ったのだった。
*
同時刻、矢崎の傘下のクラウンホテル最上階スイートルームにて―――
「ン……な、お……ッ」
まだ昼間にも関わらず、軋むベットの上で乱れる裸の少女。開星の生徒の一人である。
脱ぎ捨てられた制服はベットの床下に乱雑に捨てられている。相手をほとんど強姦みたいにベットに押し倒して、少女の制服を強引にはぎ取って、体を貪った。ただ、己のためだけのストレス発散と性欲処理のために。
気にくわなければ暴力に訴えてスル事もあるし、力づくで無理やり犯す事だってある。その日の気分次第。飽きたら捨てればいいだけの事。黙っていてもこの容姿と財力のおかげで、勝手に女がホイホイ寄ってくるのだから相手には困らない。そうして捨てた相手がどうなろうがこっちは知った事じゃあないし、知りたいとも思わない。
自分より下の人間などただの駒であり、奴隷に過ぎない。
「アッ……直……し、幸せ……直にセックスで……あ、愛されて……」
直と呼ばれた美青年は黒く滑稽に笑う。
学校で見せていた華やかな一面とは打って変わって黒ずんだ瞳を見せた。
「愛されて?クク、何寝言ほざいてんだテメエ。誰がテメーみたいなブスを愛するかよ。たかが性奴隷が粋がるなよ……ドブスの成金が」
「アッんッ……それでも……幸せだから……あ、あ……イク。アア――ッ」
つくづく耳障りな声……。
抱く時はその甲高い声がひどく耳障りだ。わざとらしく嬌声を出しているのが丸わかりで萎えてしまう。こういう時しか使えない性奴隷のくせに、声までブスだと興が冷める。はやく終わらせて捨ててやろうと直は思ったのだった。
「あーつまんなーい。なーんかおもしろそうな事ないかなァ」
ここは四天王のたまり場の高級ラウンジ。
校舎の最上階に存在し、ガラス張りの壁から都会の景色を一望できる夜景の絶景ポイントでもある。
一般生徒は入る事は許されず、生徒会すらも立ち入り禁止の区域。四天王に了解を得た者のみが入場できる。全てが最高級品の椅子やテーブルやソファーが並べられ、飲み物や食べ物など備え付けパネルを押せば自動的に運んでくれるオーダー式である。他にも休憩所や執務室などもあり、それぞれの仕事がある時はここで過ごすこともある。
「さっきからうるさいぞ、拓実」
眼鏡をかけた美青年が苛立ちを口にする。
「だってぇー女の子達とゲームしてるのも飽きたしィ」
拓実と呼ばれた四天王の一人は、年上の美女五人をはべらかせている。名前は相田拓実。茶髪のハーフアップを揺らしている。四天王の中で一番女遊びがひどくて軽薄なチャラ男で、退屈だと先ほどからずっとわめいている。
そのすぐ前の席には常に冷静で口数の少ない久瀬晴也がパソコンを弄っている。
黒髪で眼鏡をかけた学園一の秀才。彼も四天王の一人。
「お前はいつもそればかりだな」
「俺は退屈が大嫌いだからね。あーつまんないつまんない。Eクラスの子達でも呼んで遊んじゃおうかなぁ。楽しい楽しい鬼ごっことか」
「またそれか。そんなものよく楽しめるな。Eクラスの生徒をいじめてそれで楽しめるのはお前と穂高くらいなものだぞ。直もたまに面白がっているがな」
「そういうハルちゃんはいっつもパソコン見てさ、まぁた株やFX見たり勉強でもしてんの?」
「俺は人を弄んだり陥れたりして楽しむ事になんの面白みもわかん。そんな事をしているくらいなら、お前のいう株かFXの方が楽しい」
「真面目ね~ハルくんは。人生楽しまないと損でしょ」
「お前みたいなのは俺はごめんだ」
ハルが眼鏡をクイっと上にあげる。
「あれー珍しい、ハル君がここに来てるー」
そこへ、いつもニコニコ笑顔で何を考えているかわからない穂高尚也がやってきた。
彼もまた四天王の一人。金髪の王子様のような外見とは裏腹に常に笑顔なので真意が読めない男である。
「俺は拓実がどうしても来いというから来てやっただけだ。全く、人をなんだと思っているのか……ぶつぶつ」
「穂高ちゃん、ねーねーなんか面白い事なーい?オイラヒマでさぁー」
女の腰を抱きしめながら相田が楽しそうに訊く。
「うーん……ぼくも残念ながらヒマでさぁーなんか面白い事ないか逆に拓実くんに聞きたいくらいだよ」
「えーーそんなぁ。じゃあ、直にまた面白い遊び聞こうかなぁ」
「残念だけど、直くんは今これないと思うよ。さっき学校サボってどっか行っちゃったの見たし。たぶんいつもの子とホテルだと思うよ」
穂高がニコニコそう答えると、相田はつまらなさそうに舌打ちした。
「ちっ、ホテルかぁ。直ってばどんだけセフレとしまくってんだか。この間はモデルの子だったっけ。今回はどっかの令嬢だったけどまた捨てそうだね。見境ないね」
「それは拓実君もじゃないの。四つ股してるって聞いたよ」
「いーじゃん四つ股くらい~。オイラ愛なんて信じないし、今のうちに遊んでおかないと損っしょ。将来、どうせ好きでもない相手と政略結婚する事になるんなら、な・お・さ・ら」
相田はあきらめを悟っているようにそう言うと、このラウンジになんとも言えない空気が漂った。同意するように穂高もハルも出された飲み物を一口含む。同じ境遇と末路を考えてしんみりとしていた。
「まだここにいやがったのか貴様ら」
グレイのGパンと黒いシャツ姿で現れたのは矢崎直。
曲者ぞろいの四天王の中で一番の冷酷な男で、学園の中でも絶対的王者の帝王と呼ばれている。世界的有数で日本一の大金持ちグループ矢崎財閥の御曹司である。
「あれれ?直はセフレと一緒じゃなかったん?」
「萎えたから捨ててきた」と、まるでどうでもいいように答える。
「捨てて来たって……犬や猫じゃないんだからもうちょっと優しくしてあげないとだめよ~?女の子にはさ」
「愛人とか抜かして四つ股してるテメーには言われたくねぇな、拓実」
「いいじゃない別に。相手の子達も喜んでくれてるし、俺も気持ちよくなれて一石二鳥やからね!だいたい直はぁ~そんな邪険な扱いばっかしてるといつか後悔するんとちゃう?好きな子相手にはさ」
「え、直君好きな子いるの?」
ニュースだと食いつく穂高。
「んなモンいるわけねーだろ。勝手に作るな」
「えーでもいたら面白そうなのになぁ」
「そんなもんいねえし、作る気にもならん」
「でも、そう言う奴ほど、案外好きで好きでたまんない子がこの先出来たりするんだよね。あのガードが固い悠里ちゃんや友里香ちゃんだって、なんか恋してるみたいだし」
「は……友里香と悠里……?」
呆気にとられる直。
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