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殿下の真意が分かりません
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「やっぱり、分かりません。何故にウォルフ様が私に魅了魔法をかけようとされているのか? 全っ然、理解出来ません」
家に到着してからずーっと、ウォルフ殿下の意向を考えていた私ですが、さっぱり理解が出来ないでいます。
ウォルフ殿下が私に冷淡に接しているのは事実。
そんな彼は私を惚れさせたいと思っている。
矛盾してますよね? 嫌いな人間に惚れてほしいってどういうことですか?
何やら嫌な予感がしました。ウォルフ殿下は学力優秀で、切れ者だと聞いています。
――これには何か恐ろしい理由があるはず。
下手をするとキャメルン家の存亡に関わる今回の縁談。
ウォルフ殿下の企みを看破出来なければ、一家が露頭に迷ってしまうかもしれません。
ならば、やはり私が……このシャルロット・キャメルンが殿下の思考を読まなくては――。
そう、戦いの狼煙は既に上がっているのです。
私が恙無くウォルフ殿下と婚姻できるか、それとも彼の謀略に嵌って婚約を破棄されるか。勝負は始まっていたのでした。
「シャリー、どうした? 殿下と何かあったのか?」
「えっ? えっと、お父様? 何でもありませんわ。今日も楽しくウォルフ様とはお食事をさせて頂きましたので」
「ふむ。ならば良いが。頼んだぞ、シャリー。お前が我が家の希望なのだ。ウォルフ殿下にくれぐれも粗相の無いようにな」
「承知しております。お任せ下さい。キャメルン家の未来は私が守りますから」
私は拳を握り締めて、ウォルフ殿下との婚姻を成功させようと誓いました。
お父様に相談することも考えましたが、変な心配をされたくありませんでしたから、魅了魔法のことは黙っておくことにします。
なんせ、お母様が亡くなって以来……やたらと心配性になってしまい、胃腸を悪くされましたので。
「で、お嬢様の悩みは魅了魔法のことですか?」
「ハンス、このことは私たちの間で秘密にして下さい。お父様に心労をかけますから」
「承知しましたが、別に話しても問題ないような……」
「何か仰りました?」
「いえ、何も……」
私はハンスに口止めをします。
これで、ウォルフ殿下が魅了魔法をかけようとしていることを知っているのは私たちだけになりました。
「ねぇ、ハンス。あなたはどうしてウォルフ様が私に魅了魔法をかけようとしているのか分かりますか?」
「……そりゃあ、シャルロットお嬢様が好きだからじゃないです? 意中の人には惚れて欲しいと思うのは自然ですからね」
「はぁ、浅薄な思考過ぎてため息が出ますね……」
ハンスはよりによってウォルフ殿下が私に好意を持っているという捻りのない答えを述べます。
いやいや、それならば私はこんなに苦労しませんから。
私が何度、ウォルフ様に笑いかけて話題を振って、愛想を振りまいていたのかご存知でしょう。
彼はその全てを躱し続けていたのですよ。それを、今さら好意を持っているからって……呪術をわざわざ使ったりしませんよ。
「むっ……、浅薄で悪かったですね。でしたら、いっそのこと魅了されたフリでもされたらどうです? 殿下の目的も分かりやすくなると思いますよ」
「なるほど、それは名案ですね! 魔法にかけられたフリをして相手の出方を観察する――ハンス、あなたは天才です」
「お褒めに預かり光栄です」
「それに殿下を出し抜くのは何ともスカッとします。日頃のストレス解消も兼ねて、魅了された私を完璧に演じて殿下を騙して差し上げましょう」
「それは、いい趣味ですね。いや、本当に……」
ハンスの魅了魔法に敢えてかかったフリをすればどうかという提案はとても魅力的でした。
ウォルフ殿下の狙いを把握することも出来そうですし、何よりもあの偉そうにしている殿下を騙すのは気分が良いです。
彼は魅了魔法の件を私が知っていることをご存知ない。その上、秘密にしようとしていることは明白なので、彼から言及される心配はないですし。
これは一気に私がウォルフ殿下に対して精神的に優位に立てる可能性すら出てきました。
しかしながら、一点だけ問題があります――
「ハンス、魅了魔法にかかった人間はどんな感じになるのですか?」
「へっ? み、魅了された人はどうなるか……ですか? そ、そうですね。やっぱり、術者に惚れる訳ですから、その人を愛して止まなくなるんじゃないでしょうか……」
私は魅了魔法についての知識がまだまだ不足していましたので、ハンスに教えて貰おうと質問をしました。
愛して止まなくなる……ですか。具体的にはどんな感じでしょう……。
「な、なるほど。では、私がウォルフ様役を演りますので、ハンスはちょっと魅了された私役をしてみてくれませんか?」
「うぇっ? 魅了されたお嬢様の役を僕が? いや、それは無茶ですよ。勘弁してください」
「ハンス! あなた、キャメルン家の一大事に何を言っているのですか! 口答えは許しません」
「そんな~~! 本当に無理ですって。お、男に惚れる演技なんて僕には、ええーっと、そんな趣味無いんで――」
ブツブツと文句を言うハンスを説得して私は彼に魅了魔法にかかった人がどうなるのか実演してもらいました。
ふむふむ。少しだけ恥ずかしい気もしますが、キャメルン家の為と考えれば耐えられます。
ウォルフ殿下、私は絶対にあなたの企みを看破して婚姻してみせますからね。
家に到着してからずーっと、ウォルフ殿下の意向を考えていた私ですが、さっぱり理解が出来ないでいます。
ウォルフ殿下が私に冷淡に接しているのは事実。
そんな彼は私を惚れさせたいと思っている。
矛盾してますよね? 嫌いな人間に惚れてほしいってどういうことですか?
何やら嫌な予感がしました。ウォルフ殿下は学力優秀で、切れ者だと聞いています。
――これには何か恐ろしい理由があるはず。
下手をするとキャメルン家の存亡に関わる今回の縁談。
ウォルフ殿下の企みを看破出来なければ、一家が露頭に迷ってしまうかもしれません。
ならば、やはり私が……このシャルロット・キャメルンが殿下の思考を読まなくては――。
そう、戦いの狼煙は既に上がっているのです。
私が恙無くウォルフ殿下と婚姻できるか、それとも彼の謀略に嵌って婚約を破棄されるか。勝負は始まっていたのでした。
「シャリー、どうした? 殿下と何かあったのか?」
「えっ? えっと、お父様? 何でもありませんわ。今日も楽しくウォルフ様とはお食事をさせて頂きましたので」
「ふむ。ならば良いが。頼んだぞ、シャリー。お前が我が家の希望なのだ。ウォルフ殿下にくれぐれも粗相の無いようにな」
「承知しております。お任せ下さい。キャメルン家の未来は私が守りますから」
私は拳を握り締めて、ウォルフ殿下との婚姻を成功させようと誓いました。
お父様に相談することも考えましたが、変な心配をされたくありませんでしたから、魅了魔法のことは黙っておくことにします。
なんせ、お母様が亡くなって以来……やたらと心配性になってしまい、胃腸を悪くされましたので。
「で、お嬢様の悩みは魅了魔法のことですか?」
「ハンス、このことは私たちの間で秘密にして下さい。お父様に心労をかけますから」
「承知しましたが、別に話しても問題ないような……」
「何か仰りました?」
「いえ、何も……」
私はハンスに口止めをします。
これで、ウォルフ殿下が魅了魔法をかけようとしていることを知っているのは私たちだけになりました。
「ねぇ、ハンス。あなたはどうしてウォルフ様が私に魅了魔法をかけようとしているのか分かりますか?」
「……そりゃあ、シャルロットお嬢様が好きだからじゃないです? 意中の人には惚れて欲しいと思うのは自然ですからね」
「はぁ、浅薄な思考過ぎてため息が出ますね……」
ハンスはよりによってウォルフ殿下が私に好意を持っているという捻りのない答えを述べます。
いやいや、それならば私はこんなに苦労しませんから。
私が何度、ウォルフ様に笑いかけて話題を振って、愛想を振りまいていたのかご存知でしょう。
彼はその全てを躱し続けていたのですよ。それを、今さら好意を持っているからって……呪術をわざわざ使ったりしませんよ。
「むっ……、浅薄で悪かったですね。でしたら、いっそのこと魅了されたフリでもされたらどうです? 殿下の目的も分かりやすくなると思いますよ」
「なるほど、それは名案ですね! 魔法にかけられたフリをして相手の出方を観察する――ハンス、あなたは天才です」
「お褒めに預かり光栄です」
「それに殿下を出し抜くのは何ともスカッとします。日頃のストレス解消も兼ねて、魅了された私を完璧に演じて殿下を騙して差し上げましょう」
「それは、いい趣味ですね。いや、本当に……」
ハンスの魅了魔法に敢えてかかったフリをすればどうかという提案はとても魅力的でした。
ウォルフ殿下の狙いを把握することも出来そうですし、何よりもあの偉そうにしている殿下を騙すのは気分が良いです。
彼は魅了魔法の件を私が知っていることをご存知ない。その上、秘密にしようとしていることは明白なので、彼から言及される心配はないですし。
これは一気に私がウォルフ殿下に対して精神的に優位に立てる可能性すら出てきました。
しかしながら、一点だけ問題があります――
「ハンス、魅了魔法にかかった人間はどんな感じになるのですか?」
「へっ? み、魅了された人はどうなるか……ですか? そ、そうですね。やっぱり、術者に惚れる訳ですから、その人を愛して止まなくなるんじゃないでしょうか……」
私は魅了魔法についての知識がまだまだ不足していましたので、ハンスに教えて貰おうと質問をしました。
愛して止まなくなる……ですか。具体的にはどんな感じでしょう……。
「な、なるほど。では、私がウォルフ様役を演りますので、ハンスはちょっと魅了された私役をしてみてくれませんか?」
「うぇっ? 魅了されたお嬢様の役を僕が? いや、それは無茶ですよ。勘弁してください」
「ハンス! あなた、キャメルン家の一大事に何を言っているのですか! 口答えは許しません」
「そんな~~! 本当に無理ですって。お、男に惚れる演技なんて僕には、ええーっと、そんな趣味無いんで――」
ブツブツと文句を言うハンスを説得して私は彼に魅了魔法にかかった人がどうなるのか実演してもらいました。
ふむふむ。少しだけ恥ずかしい気もしますが、キャメルン家の為と考えれば耐えられます。
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