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第五話
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「こ、これは……」
アリスという少女が見せてくれたのはアレンデール様の真実の想い。
それは私が想像していたものよりずっと辛くて悲しいものだった。
私のことを想うあまり、彼は私を傷つけるような言動を敢えてしていた。
彼のいうライトノベルや転生という単語の意味はよくわからなかったが、要するに彼は未来を知ってしまったがゆえに私を突放そうとしたのだろう。
(なにを一人で落ち込んでいたんだろう)
彼が苦しんでいたことにも気づかず、私はただ自分のことばかり考えていた。
愚かなのは最後まで彼を信じきれなかった私自身。
「ごめんなさい、アレンデール様……」
涙とともに謝罪の言葉が口から出る。
真実を知った以上、私は彼にこの言葉を伝えないわけにはいかない。
「メリルリアさん、あなたの力でアレンデールを助けてあげてはくれないかしら? 公爵家の家宝として、あの人がこのまま落ち込むのは見ていられないの」
「公爵家の家宝?」
アリスという不思議な女の子は私にそう告げる。
もちろん、私に彼の苦しみを取り除くことができるならそうしたい。
アレンデール様の愛情が本物だと知った今、私は彼のためならなんだってできるという気持ちでいた。
「『真実の鏡』は本来、ベルダンデ家の家宝だったの。ずっと昔に壊れてしまったんだけど……」
「壊れた家宝……?」
「アレンデールがあなたを想って偽物の『真実の鏡』を作ろうとしたことと、あなたの聖女としての神通力が奇跡を起こしてあたしは復活することができた」
奇跡――それは聖女の代名詞ともいえる現象。
神に祈りを捧げて、国の繁栄のために様々な奇跡を起こす。それが聖女の義務なのである。
「あのときあなたは神に祈らなかったかしら? アレンデールの愛を伝えたい、と」
「はっ――!?」
「アレンデールの想いで目を覚ましたあたしはあなたの祈りの力でこのように動けるようになったってわけ」
じゃあもしかして『真実の鏡』というのは私とアレンデール様によって生み出された奇跡の神具ってこと……? そんなことって……。
「だからお願い。あの人のところに行って。あたしと一緒にアレンデールを救ってあげて……!」
「はい!」
私は迷わずに返事をして立ち上がる。
そして部屋を出て走り出した。
馬車は父が使ってしまった。ならば、私は――。
「走るしかない。……待っていてください、アレンデール様」
「待って! メリルリアさん!」
「アリスさん? どうしました?」
振り返るとアリスが水晶を片手に現れる。
まだ真実を見せ足りないとでもいうのだろうか。
「せっかちな人ね。走っていくよりいい方法があるわ。これであなたの真の力を映し出す」
その瞬間、水晶がピカっと銀色の光を放ち私に照射された。
なにこれ? 力が湧き出る。今までこんなに体に魔力が充実しているのを感じたことはない。
「これは一体……」
「聖女の銀翼。本来は神託を得た聖女でも、それを発現させるのは稀だけど……あたしの鏡の力で一時的にそれを再現して映し出したの」
よく意味がわからないけどさすがは神具。こんなことも可能にするなんて……。
銀翼――その言葉を聞いたとき私は自分の背中に銀色に輝く光の翼が生えているのに気がついた。
バサッ……自由に動く。これなら空も飛べる。
「行きましょう、メリルリアさん。公爵家へ」
見ればアリスは宙に浮いていた。さすがは神具『真実の鏡』の化身。空を飛ぶのもお手のものらしい。
こうして私たちは向かった。愛する人の待つ公爵家に――。
アリスという少女が見せてくれたのはアレンデール様の真実の想い。
それは私が想像していたものよりずっと辛くて悲しいものだった。
私のことを想うあまり、彼は私を傷つけるような言動を敢えてしていた。
彼のいうライトノベルや転生という単語の意味はよくわからなかったが、要するに彼は未来を知ってしまったがゆえに私を突放そうとしたのだろう。
(なにを一人で落ち込んでいたんだろう)
彼が苦しんでいたことにも気づかず、私はただ自分のことばかり考えていた。
愚かなのは最後まで彼を信じきれなかった私自身。
「ごめんなさい、アレンデール様……」
涙とともに謝罪の言葉が口から出る。
真実を知った以上、私は彼にこの言葉を伝えないわけにはいかない。
「メリルリアさん、あなたの力でアレンデールを助けてあげてはくれないかしら? 公爵家の家宝として、あの人がこのまま落ち込むのは見ていられないの」
「公爵家の家宝?」
アリスという不思議な女の子は私にそう告げる。
もちろん、私に彼の苦しみを取り除くことができるならそうしたい。
アレンデール様の愛情が本物だと知った今、私は彼のためならなんだってできるという気持ちでいた。
「『真実の鏡』は本来、ベルダンデ家の家宝だったの。ずっと昔に壊れてしまったんだけど……」
「壊れた家宝……?」
「アレンデールがあなたを想って偽物の『真実の鏡』を作ろうとしたことと、あなたの聖女としての神通力が奇跡を起こしてあたしは復活することができた」
奇跡――それは聖女の代名詞ともいえる現象。
神に祈りを捧げて、国の繁栄のために様々な奇跡を起こす。それが聖女の義務なのである。
「あのときあなたは神に祈らなかったかしら? アレンデールの愛を伝えたい、と」
「はっ――!?」
「アレンデールの想いで目を覚ましたあたしはあなたの祈りの力でこのように動けるようになったってわけ」
じゃあもしかして『真実の鏡』というのは私とアレンデール様によって生み出された奇跡の神具ってこと……? そんなことって……。
「だからお願い。あの人のところに行って。あたしと一緒にアレンデールを救ってあげて……!」
「はい!」
私は迷わずに返事をして立ち上がる。
そして部屋を出て走り出した。
馬車は父が使ってしまった。ならば、私は――。
「走るしかない。……待っていてください、アレンデール様」
「待って! メリルリアさん!」
「アリスさん? どうしました?」
振り返るとアリスが水晶を片手に現れる。
まだ真実を見せ足りないとでもいうのだろうか。
「せっかちな人ね。走っていくよりいい方法があるわ。これであなたの真の力を映し出す」
その瞬間、水晶がピカっと銀色の光を放ち私に照射された。
なにこれ? 力が湧き出る。今までこんなに体に魔力が充実しているのを感じたことはない。
「これは一体……」
「聖女の銀翼。本来は神託を得た聖女でも、それを発現させるのは稀だけど……あたしの鏡の力で一時的にそれを再現して映し出したの」
よく意味がわからないけどさすがは神具。こんなことも可能にするなんて……。
銀翼――その言葉を聞いたとき私は自分の背中に銀色に輝く光の翼が生えているのに気がついた。
バサッ……自由に動く。これなら空も飛べる。
「行きましょう、メリルリアさん。公爵家へ」
見ればアリスは宙に浮いていた。さすがは神具『真実の鏡』の化身。空を飛ぶのもお手のものらしい。
こうして私たちは向かった。愛する人の待つ公爵家に――。
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