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第十三話(エレナ視点)
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アリシア姉様に求婚したというのはチャルスキー侯爵家の嫡男、ヨシュア。
侯爵家の跡取りが姉様に縁談を持ちかけたということで、お父様も舞い上がっていますわね。
乗り気になるのは無理ありません。姉様への縁談話はわたくしが未然に防いでいたのですから、これが初めてのことなのです。
「エレナ、ようやく私にも縁談が来ました。あなたが気を遣って自らの縁談を受けずにいたかどうかは、分かりませんが……」
「良かったではありませんか。わざわざ数ある女性の中からアリシア姉様を選ばれるなんて、ヨシュア様は奇特な方です」
「そうかもしれませんね。……だからこそ、この縁談は大事にしようと思います」
「…………」
そんな顔をされないでくださいな、アリシア姉様。
何だか、わたくしが今まで色々と工作していたことが途轍もなく大きなお世話だった気がしてきました。
アリシア姉様の幸せが遠ざかるのなら、余計なことはしない方が良いのでしょうか。
チャルスキー侯爵家は名門ですし、そこの跡取りと結婚となれば姉様の一生も安泰――。
「エレナはどのような方と結婚したいと思っているのですか?」
「……別に姉様には関係ないでしょう。まぁ、わたくしの言うことを何でも聞いて、絶対的な権力を持っており、個人の能力もわたくしが求める水準に達していれば、考えてあげてもよろしいですかね」
「あなたは相変わらずですね。それがエレナの理想なら口出しはしませんが……」
アリシア姉様、またそのように悲しそうな顔を。
ご心配されなくても、エレナは好きに生きております。あなたが幸せなれるのなら、わたくしは幸せを感じることが出来ますので。
そろそろ、潮時かもしれませんね。
ヨシュア・チャルスキーにアリシア姉様を任せられるのなら――。
「ヨシュア・チャルスキー様についての調査報告~~♪」
「エレナお嬢様の命じられたとおり、いつも以上に徹底して調べて参りました。その結果――」
「ヨシュア様は~~! 控えめに言って、ゴミクズレベルの殿方で~~す!」
「――っ!?」
いつものようにだらしない笑顔を浮かべながらシーラはヨシュアへの評価を下します。
どうやら、潮時はまだ先のようです。ヨシュア・チャルスキーはアリシア姉様に相応しくない――そう結論付けられたとき、わたくしは拳を強く握り締めました。
「シーラ、君の言い回しは下品ですね。お嬢様が引いていらっしゃる。一から説明しましょう」
ビンセントは書類を片手にヨシュア・チャルスキーについての調査報告を開始しました。
曰く、王立学園でトップの成績を取るために成績優秀者の妨害を町のゴロツキに金を握らせて行わせたことから始まって、気に入らない者たちへの嫌がらせは日常茶飯事に行っているみたいです。
なるほど、このあたりの交友関係は万が一逆恨みをされたときを想定して封じておくことも含めて押さえておかなくてはなりませんね……。
「さらに、マーシャル子爵家の次女、エルノブケル男爵家の三女は彼の子を出産したのでは、という疑いがあります。決定的な証拠は見つかりませんでしたが、両家はヨシュアの手の者に脅されているみたいです」
へぇ、そんな悪事も働いているのですか。
そして、素知らぬ顔でわたくしの姉様に近付いている、と。
ふふふふ、良い度胸ではありませんか。ヨシュア・チャルスキー……、あなたは地獄落ち確定です。
「どうします? お嬢様。既に縁談はまとまり、アリシアお嬢様はヨシュア様の婚約者となられておりますが」
「関係ありません。そんな軽薄な男、わたくしが落とせぬはずがありませんから。せいぜい、良い夢を見せて差し上げますわ」
それが悪夢と気付いたときは、もう遅いですが――。
侯爵家の跡取りが姉様に縁談を持ちかけたということで、お父様も舞い上がっていますわね。
乗り気になるのは無理ありません。姉様への縁談話はわたくしが未然に防いでいたのですから、これが初めてのことなのです。
「エレナ、ようやく私にも縁談が来ました。あなたが気を遣って自らの縁談を受けずにいたかどうかは、分かりませんが……」
「良かったではありませんか。わざわざ数ある女性の中からアリシア姉様を選ばれるなんて、ヨシュア様は奇特な方です」
「そうかもしれませんね。……だからこそ、この縁談は大事にしようと思います」
「…………」
そんな顔をされないでくださいな、アリシア姉様。
何だか、わたくしが今まで色々と工作していたことが途轍もなく大きなお世話だった気がしてきました。
アリシア姉様の幸せが遠ざかるのなら、余計なことはしない方が良いのでしょうか。
チャルスキー侯爵家は名門ですし、そこの跡取りと結婚となれば姉様の一生も安泰――。
「エレナはどのような方と結婚したいと思っているのですか?」
「……別に姉様には関係ないでしょう。まぁ、わたくしの言うことを何でも聞いて、絶対的な権力を持っており、個人の能力もわたくしが求める水準に達していれば、考えてあげてもよろしいですかね」
「あなたは相変わらずですね。それがエレナの理想なら口出しはしませんが……」
アリシア姉様、またそのように悲しそうな顔を。
ご心配されなくても、エレナは好きに生きております。あなたが幸せなれるのなら、わたくしは幸せを感じることが出来ますので。
そろそろ、潮時かもしれませんね。
ヨシュア・チャルスキーにアリシア姉様を任せられるのなら――。
「ヨシュア・チャルスキー様についての調査報告~~♪」
「エレナお嬢様の命じられたとおり、いつも以上に徹底して調べて参りました。その結果――」
「ヨシュア様は~~! 控えめに言って、ゴミクズレベルの殿方で~~す!」
「――っ!?」
いつものようにだらしない笑顔を浮かべながらシーラはヨシュアへの評価を下します。
どうやら、潮時はまだ先のようです。ヨシュア・チャルスキーはアリシア姉様に相応しくない――そう結論付けられたとき、わたくしは拳を強く握り締めました。
「シーラ、君の言い回しは下品ですね。お嬢様が引いていらっしゃる。一から説明しましょう」
ビンセントは書類を片手にヨシュア・チャルスキーについての調査報告を開始しました。
曰く、王立学園でトップの成績を取るために成績優秀者の妨害を町のゴロツキに金を握らせて行わせたことから始まって、気に入らない者たちへの嫌がらせは日常茶飯事に行っているみたいです。
なるほど、このあたりの交友関係は万が一逆恨みをされたときを想定して封じておくことも含めて押さえておかなくてはなりませんね……。
「さらに、マーシャル子爵家の次女、エルノブケル男爵家の三女は彼の子を出産したのでは、という疑いがあります。決定的な証拠は見つかりませんでしたが、両家はヨシュアの手の者に脅されているみたいです」
へぇ、そんな悪事も働いているのですか。
そして、素知らぬ顔でわたくしの姉様に近付いている、と。
ふふふふ、良い度胸ではありませんか。ヨシュア・チャルスキー……、あなたは地獄落ち確定です。
「どうします? お嬢様。既に縁談はまとまり、アリシアお嬢様はヨシュア様の婚約者となられておりますが」
「関係ありません。そんな軽薄な男、わたくしが落とせぬはずがありませんから。せいぜい、良い夢を見せて差し上げますわ」
それが悪夢と気付いたときは、もう遅いですが――。
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