【完結】妹の天然が計算だとバレて、元婚約者が文句を言いに来ました

冬月光輝

文字の大きさ
上 下
13 / 17

第十三話(エレナ視点)

しおりを挟む
 アリシア姉様に求婚したというのはチャルスキー侯爵家の嫡男、ヨシュア。
 侯爵家の跡取りが姉様に縁談を持ちかけたということで、お父様も舞い上がっていますわね。
 乗り気になるのは無理ありません。姉様への縁談話はわたくしが未然に防いでいたのですから、これが初めてのことなのです。

「エレナ、ようやく私にも縁談が来ました。あなたが気を遣って自らの縁談を受けずにいたかどうかは、分かりませんが……」

「良かったではありませんか。わざわざ数ある女性の中からアリシア姉様を選ばれるなんて、ヨシュア様は奇特な方です」

「そうかもしれませんね。……だからこそ、この縁談は大事にしようと思います」

「…………」

 そんな顔をされないでくださいな、アリシア姉様。
 何だか、わたくしが今まで色々と工作していたことが途轍もなく大きなお世話だった気がしてきました。
 アリシア姉様の幸せが遠ざかるのなら、余計なことはしない方が良いのでしょうか。

 チャルスキー侯爵家は名門ですし、そこの跡取りと結婚となれば姉様の一生も安泰――。

「エレナはどのような方と結婚したいと思っているのですか?」

「……別に姉様には関係ないでしょう。まぁ、わたくしの言うことを何でも聞いて、絶対的な権力を持っており、個人の能力もわたくしが求める水準に達していれば、考えてあげてもよろしいですかね」

「あなたは相変わらずですね。それがエレナの理想なら口出しはしませんが……」

 アリシア姉様、またそのように悲しそうな顔を。
 ご心配されなくても、エレナは好きに生きております。あなたが幸せなれるのなら、わたくしは幸せを感じることが出来ますので。

 そろそろ、潮時かもしれませんね。

 ヨシュア・チャルスキーにアリシア姉様を任せられるのなら――。



「ヨシュア・チャルスキー様についての調査報告~~♪」

「エレナお嬢様の命じられたとおり、いつも以上に徹底して調べて参りました。その結果――」

「ヨシュア様は~~! 控えめに言って、ゴミクズレベルの殿方で~~す!」

「――っ!?」

 いつものようにだらしない笑顔を浮かべながらシーラはヨシュアへの評価を下します。
 どうやら、潮時はまだ先のようです。ヨシュア・チャルスキーはアリシア姉様に相応しくない――そう結論付けられたとき、わたくしは拳を強く握り締めました。

「シーラ、君の言い回しは下品ですね。お嬢様が引いていらっしゃる。一から説明しましょう」

 ビンセントは書類を片手にヨシュア・チャルスキーについての調査報告を開始しました。
 曰く、王立学園でトップの成績を取るために成績優秀者の妨害を町のゴロツキに金を握らせて行わせたことから始まって、気に入らない者たちへの嫌がらせは日常茶飯事に行っているみたいです。

 なるほど、このあたりの交友関係は万が一逆恨みをされたときを想定して封じておくことも含めて押さえておかなくてはなりませんね……。

「さらに、マーシャル子爵家の次女、エルノブケル男爵家の三女は彼の子を出産したのでは、という疑いがあります。決定的な証拠は見つかりませんでしたが、両家はヨシュアの手の者に脅されているみたいです」

 へぇ、そんな悪事も働いているのですか。
 そして、素知らぬ顔でわたくしの姉様に近付いている、と。
 ふふふふ、良い度胸ではありませんか。ヨシュア・チャルスキー……、あなたは地獄落ち確定です。

「どうします? お嬢様。既に縁談はまとまり、アリシアお嬢様はヨシュア様の婚約者となられておりますが」

「関係ありません。そんな軽薄な男、わたくしが落とせぬはずがありませんから。せいぜい、良い夢を見せて差し上げますわ」

 それが悪夢と気付いたときは、もう遅いですが――。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

聖杯の聖女 君は妹より劣っていると婚約破棄されましたが、真の聖女はわたしだったようです。もう伯爵の元へは戻りません

夜桜
恋愛
 聖女フィセルは聖杯の力を持っていた。  掌に杯を召喚し、聖水(アクア)を作り出せた。  水が貴重なネプテューヌ帝国では奇跡と呼ばれ、崇められるようになった。その最中でエタンセル伯爵と婚約を結ぶ。しかしその二週間後には、婚約破棄を告げられる。フィセルの妹シトロンもまた奇跡の力に目覚め、聖女として活躍するようになっていたからだ。しかも、シトロンの方がより多くの水を生成できたので、注目を浴びた。  絶望の淵に立たされたフィセルだったが、タンドレス辺境伯と出会い、人生が大きく変わる。

[完結]君に好きだと伝えたい〜婚約破棄?そうですか、貴方に愛を返せない私のせいですね〜

日向はび
恋愛
表情は動かず、愛の言葉は囁けない。そんな呪いをかけられた伯爵令嬢の元に愛する人から婚約破棄の手紙がとどく。さらに彼は腹違いの妹と恋をしているという。絶望しながらも、全ては自分の責任と別れを決意した令嬢は愛するひとに別れを告げるために彼の家へ訪れる。そこで煌めくナイフの切っ先を目にした彼女は、愛する人を守るためその身をナイフの前に曝け出すのだった。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
恋愛
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます

21時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。 エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。 悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

婚約破棄されましたが、貴方はもう王太子ではありませんよ

榎夜
恋愛
「貴様みたいな悪女とは婚約破棄だ!」 別に構いませんが...... では貴方は王太子じゃなくなりますね ー全6話ー

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

処理中です...