【完結】妹の天然が計算だとバレて、元婚約者が文句を言いに来ました

冬月光輝

文字の大きさ
上 下
11 / 17

第十一話

しおりを挟む
「昨日、君の妹のエレナと会ったよ。君のことで話があるって。どうやったのか、僕の護衛を通じて手紙を送ってきてね」

「えっ……?」

 ヨシュア様と婚約解消をしてから、一週間ほど経ったある日……私はアルフォンス殿下と食事をしていました。
 彼は妹のエレナと会ったという話をします。
 それも、本当にどうやったのか分からない方法でアルフォンス殿下と連絡を取って。

「最初は気持ち悪い演技がかった甘えたような口調で君の悪口を言っていた。真面目すぎるとか、冗談が通じないとか、世間知らずだとか、ね」

 エレナは私の悪口をアルフォンス殿下に吹き込むために殿下に接触したみたいです。
 やはり王子様と結婚したいと口にしたのは、アルフォンス殿下をも奪おうとして……。
 
 私は殿下の話の続きを聞くことが怖くなってきました。

「僕は“そんなことは知っている。だから好きなのだ”と答えたよ。もちろん、それ以外にも魅力は沢山あるけどね」

「アルフォンス殿下……」

「そう答えると彼女は不敵に笑った。王子の婚約者になると嫉妬や羨望から、嫌がらせをされたりするかもしれないし、精神的な重圧に君が耐えられないかもしれないと忠告して……自分を婚約者にすれば、誰もが納得できるように振る舞ってみせると言ってのけた」

 あの子、なんてコトをアルフォンス殿下に……。
 しかし、ヨシュア様のときと違い……そんなにはっきりと私に取って代わろうとするのですね。
 アルフォンス殿下のことは信じていますが、あの子のほうが私よりもきれいですし……。

「こんなことまで君に言うつもりは無かったんだけど、僕は君の家族についてある程度調べているんだ。もちろんエレナのことも……」

「――っ!? で、ではエレナが普段から……」

「ああ、普段から本性を隠して男の気を引こうとしていることも知っている」

 なんということでしょう。アルフォンス殿下がエレナの秘密を既に知っていたなんて……。
 確かによく考えてみれば、王族が婚約者にと考えている人間の身辺調査をしないはずがありませんでした。

「まぁ、そんなことを知らなくても君の代わりなんて誰も居ないから、エレナの言葉などに耳を傾ける気はなかったんだけど……。僕は何を犠牲にしてもアリシアだけは守るつもりだから――」

「エレナが大変失礼なことを。なんとお詫びを申し上げれば良いか」

 アルフォンス殿下の言葉に私は妹の非礼を詫びます。
 あの子はなんと失礼なことを……。殿下を怒らせでもしたら、どうするつもりだったのでしょうか。

「アリシア、安心してくれ。僕は君の妹に憤りなど感じていない。調べる途中で彼女のもう一つの理由を知ってしまっていたから」

「もう一つの秘密?」

「……ああ。だからこそ、僕の言葉を聞いた彼女は嬉しそうに笑った。そして“合格”と呟き……、“姉を不幸にしたら許さない”と言葉を残して去って行ったんだ」

「――っ!?」


 ◆ ◆ ◆


「エレナ! あなたは――今まで、私に隠れて何をしていたのですか!? あなた、ずっと私のこと――」

「あら、アルフォンス様ったら。余計なことまで話してしまわれたみたいですわね。何ともお喋りな方です。――ですが、アリシア姉様の質問には答えるつもりはありませんの」

 アルフォンス殿下から聞かされた事実は、彼女が可愛げのある女を演じつつ、私に近付こうとする問題を抱えている男性をずっと追い払っていたということ。
 私の知らないところでも縁談に発展しないように握りつぶすようなことをしていたらしいのです。

「――勝手にわたくしがしたことです。アリシア姉様が気にすることではありませんわ」

「気にするに決まっています!」

「ですが、わたくしが姉様に構うのはこれが最後です。明日から隣国に留学に行ってきますから」

「り、隣国に留学……? な、なぜ、そのようなことを急に……?」

 唐突に留学などと口にする私は驚いてしまいました。
 この家から出ていくなんて、そんなことは聞いていません。

「ふふ、当たり前のことを聞かないでくださいまし。……隣国の王子様と結婚するためですよ。それくらいの殿方でなくては、わたくしと釣り合いませんから。姉様もヨシュア様などではなく、ご自分と釣り合う男性と一緒になれて良かったですわね――」

 そう言って、あの子は爽やかに笑いました。
 
 そして、父には話を通していたらしく、翌日には本当に隣国に旅立ってしまいます。
 何ということでしょうか。私は妹について何一つ知らなかったのです。そう、あの子の本性を――。


 ◇ ◇ ◇

 あとがき

感想で早くもエレナの目的とか当てられちゃったので、もう少し引っ張るつもりでしたが、早めにネタバラシしました。
このあとは、寧ろここからが自分的には本編というかエレナ視点での【真相編】を何話かお送りしようと思います。


 
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されるはずが、婚約破棄してしまいました

チンアナゴ🐬
恋愛
「お前みたいなビッチとは結婚できない!!お前とは婚約を破棄する!!」 私の婚約者であるマドラー・アドリード様は、両家の家族全員が集まった部屋でそう叫びました。自分の横に令嬢を従えて。

婚約破棄されましたが、貴方はもう王太子ではありませんよ

榎夜
恋愛
「貴様みたいな悪女とは婚約破棄だ!」 別に構いませんが...... では貴方は王太子じゃなくなりますね ー全6話ー

【完結】婚約破棄されたので国を滅ぼします

雪井しい
恋愛
「エスメラルダ・ログネンコ。お前との婚約破棄を破棄させてもらう」王太子アルノーは公衆の面前で公爵家令嬢であるエスメラルダとの婚約を破棄することと、彼女の今までの悪行を糾弾した。エスメラルダとの婚約破棄によってこの国が滅ぶということをしらないまま。 【全3話完結しました】 ※カクヨムでも公開中

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

【完結】え、お嬢様が婚約破棄されたって本当ですか?

瑞紀
恋愛
「フェリシア・ボールドウィン。お前は王太子である俺の妃には相応しくない。よって婚約破棄する!」 婚約を公表する手はずの夜会で、突然婚約破棄された公爵令嬢、フェリシア。父公爵に勘当まで受け、絶体絶命の大ピンチ……のはずが、彼女はなぜか平然としている。 部屋まで押しかけてくる王太子(元婚約者)とその恋人。なぜか始まる和気あいあいとした会話。さらに、親子の縁を切ったはずの公爵夫妻まで現れて……。 フェリシアの執事(的存在)、デイヴィットの視点でお送りする、ラブコメディー。 ざまぁなしのハッピーエンド! ※8/6 16:10で完結しました。 ※HOTランキング(女性向け)52位,お気に入り登録 220↑,24hポイント4万↑ ありがとうございます。 ※お気に入り登録、感想も本当に嬉しいです。ありがとうございます。

侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス
恋愛
オルカスト王国の伯爵令嬢であるレオーネは、侯爵閣下であるビクティムに婚約破棄を言い渡された。 信頼していたビクティムに裏切られたレオーネは悲しみに暮れる……。 しかも、破棄理由が他国の王女との婚約だから猶更だ。 だが、ビクティムは知らなかった……レオーネは自国の第一王子殿下と幼馴染の関係にあることを。 レオーネの幼馴染であるフューリ王太子殿下は、彼女の婚約破棄を知り怒りに打ち震えた。 「さて……レオーネを悲しませた罪、どのように償ってもらおうか」 ビクティム侯爵閣下はとてつもない虎の尾を踏んでしまっていたのだった……。

婚約者の姉に薬品をかけられた聖女は婚約破棄されました。戻る訳ないでしょー。

十条沙良
恋愛
いくら謝っても無理です。

【完結】クラーク伯爵令嬢は、卒業パーティーで婚約破棄されるらしい

根古川ゆい
恋愛
自分の婚約破棄が噂になるなんて。 幼い頃から大好きな婚約者マシューを信じたいけれど、素直に信じる事もできないリナティエラは、覚悟を決めてパーティー会場に向かいます。

処理中です...