【完結】妹の天然が計算だとバレて、元婚約者が文句を言いに来ました

冬月光輝

文字の大きさ
上 下
6 / 17

第六話

しおりを挟む
 何だか現実味が湧きません。
 あのアルフォンス殿下が私のことをあんなにも長く想ってくれていたなんて。
 
 あの後、怒られて泣いていた記憶しかないことを正直に告げますと、アルフォンス殿下は笑って許してくれます。

『僕の方こそごめん。そうだよね、思い返してみれば君はずっと泣いていた。とても僕の言葉を聞ける余裕はなかったのに、勝手に舞い上がってしまって……。恥ずかしいよ』

 私が忘れていたというより、きちんとアルフォンス殿下の言葉を聞いていなかったが為に、彼には十年もの間、待ちぼうけをさせてしまったのに――逆に謝られてしまって、申し訳ない気持ちが込み上げてきました。
 
 しかし、アルフォンス殿下は私の手を握り、別れる間際に――。

『十年なんてどうってことないさ。これから君と同じ時を過ごす数十年を考えれば、ね』

 勿体ないお言葉をかけて頂き、私の胸の鼓動は一気に跳ね上がります。
 これからアルフォンス殿下と結婚して上手くやっていけるか、の心配よりも彼との生活が待ち遠しいという気持ちが遥かに上回ったのでした。


「アリシア、ようやったのう! あのアルフォンス殿下との縁談を成立させるとは! さすがは自慢の娘だ!」

 ヨシュア様との婚約が決まった日にも同じことを仰っていたような気がしますが、父が調子が良いのは今に始まったことではありませんので、気にしません。

 私が心配しているのは、エレナのことでした。
 あの子、侯爵家の嫡男であるヨシュア様が私と釣り合っていないと言っていましたが、第二王子である彼との婚約を聞けば何を言い出すのやら、不安でなりません。

「あ、あのう。お父様、エレナにこの話は……」

「おおっ! さっき、お前が来る前にヨシュア殿のところから戻ってきたのでな。朗報だと伝えたよ。結果的にお前の婚約者を奪った形になったし、気に病んでいると思ったからな!」

 ――すでに伝わっていましたか。
 まぁ、隠していた所ですぐにバレることですから。どうにもならないのですが。

 とはいえ、ヨシュア様と婚約しているエレナが何かするとも思えませんし、そこまで警戒しなくても良いのかもしれません。


「アリシア姉様、聞きましたよ。今度はアルフォンス殿下と婚約されたとか」

「……そうですね。あなたのおかげで二度も婚約をすることになりました」

「ふふ、そんなに目くじら立てなくてもよろしいではありませんか。ヨシュア様よりもアルフォンス殿下のほうが格上なのですから。寧ろ感謝して頂きたいものです」

「格とか、そういう問題ではありません。品性の話をしているのです……!」

 悪びれもせずに、自分のおかげでアルフォンス殿下と婚約できたというような言い方をするエレナに私は不快感を抱きます。
 この子は本当に微塵も私に悪いことをしたと思っていないのでしょうか?

「ヨシュア様って、本当におバカさんなんですよぉ。ちょっと挑発したら、侯爵様が見ている前で私のこと叩いて、怒られて……愉快な方でしたわ」

「あ、あなた、一体何を――?」

 間もなくのことでした。
 私がヨシュア様に呼び出されたのは――。
 まさか、エレナの本性が彼にバレているなんて。
  
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

聖杯の聖女 君は妹より劣っていると婚約破棄されましたが、真の聖女はわたしだったようです。もう伯爵の元へは戻りません

夜桜
恋愛
 聖女フィセルは聖杯の力を持っていた。  掌に杯を召喚し、聖水(アクア)を作り出せた。  水が貴重なネプテューヌ帝国では奇跡と呼ばれ、崇められるようになった。その最中でエタンセル伯爵と婚約を結ぶ。しかしその二週間後には、婚約破棄を告げられる。フィセルの妹シトロンもまた奇跡の力に目覚め、聖女として活躍するようになっていたからだ。しかも、シトロンの方がより多くの水を生成できたので、注目を浴びた。  絶望の淵に立たされたフィセルだったが、タンドレス辺境伯と出会い、人生が大きく変わる。

[完結]君に好きだと伝えたい〜婚約破棄?そうですか、貴方に愛を返せない私のせいですね〜

日向はび
恋愛
表情は動かず、愛の言葉は囁けない。そんな呪いをかけられた伯爵令嬢の元に愛する人から婚約破棄の手紙がとどく。さらに彼は腹違いの妹と恋をしているという。絶望しながらも、全ては自分の責任と別れを決意した令嬢は愛するひとに別れを告げるために彼の家へ訪れる。そこで煌めくナイフの切っ先を目にした彼女は、愛する人を守るためその身をナイフの前に曝け出すのだった。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
恋愛
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます

21時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。 エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。 悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

婚約破棄されましたが、貴方はもう王太子ではありませんよ

榎夜
恋愛
「貴様みたいな悪女とは婚約破棄だ!」 別に構いませんが...... では貴方は王太子じゃなくなりますね ー全6話ー

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

処理中です...