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第十三話
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「アークト侯爵が刺された? それで、犯人は?」
「いえ、それが覆面を被っていて……ゆったりとしたローブを羽織っていたので男か女かさえも分からないとのことです」
エリックが“ジェクト先輩”と慕っていた国王陛下の婚外子であるアークト侯爵。
彼とエリックの関係性について少し調べようとした矢先に事件は起きました。
なんと、昨夜にアークト侯爵が何者かによって腹部を刺されて重体となり病院に運ばれたとのことです。
これはどういうことでしょう。エリックの件と何か関係があるのでしょうか。
「エリックは自分が今の状況に置かれたのはアークト侯爵のせいだと考えている節があります」
あまりのタイミングに私は直感的に身の危険を感じました。
もしもエリックが逆恨みをしてアークト侯爵を刺すように誰かに復讐の代理を頼んだのだとしたら――とんでもないことです。
「しかしだなぁ。エリックがいくらアークト侯爵を恨んだとしても、面会は監視されているし気付かれないように人を刺すように命じられるか? アークト侯爵は粗暴で誰にでも喧嘩を吹っ掛けて回る男だと聞いている。恨みくらい幾らでも買ってそうだ」
私の推測を父は肯定しませんでした。
確かにアークト侯爵を刺すように面会者に命令なんて無理ですよね。
私の考え過ぎなのでしょうか……。
しかしながら、今回のことで浮かび上がったエリックという人間の性は恐ろしいほどまで思い込みが激しく、歪んだ自己愛を持っていることでした。
そんな彼が慕っていたアークト侯爵が手のひらを返したことに怒りを覚えないはずがないのです。
そして、このようなタイミングでの侯爵の負傷。私にはこれが偶然には感じられませんでした。
「不安そうな顔をしているな。護衛は十分にいるとは思っているが、もう少し増やそう。あとは憲兵隊にお前の屋敷周辺を重点的に回るように口利きしておく」
私が父の言葉に納得行かないというような表情をしていたからなのか、彼はそうやって優しい言葉をかけてくれました。
本当はメリルとその婚約者であるアレンデール様のことで頭がいっぱいでしょうに……。申し訳ありません。
「それじゃあ、まだ明るいが気を付けて帰りなさい」
父との話もそこそこに私は自分の家に戻ろうとしました。
メリルとアレンデール様はこの国の誰よりも厳戒に守られている――とすれば、エリックが次に許せないと考えるのは間違いなく私でしょう。
◆ ◆ ◆
実家から我が家までの道中は特に何事もなく帰ることが出来ました。
どうやら、私の思い過ごしだったみたですね。
どんなに考えても父の言ったとおりなのに、妙な胸騒ぎのせいで無駄に警戒してしまいました。
その時、です。
部屋のガラスが突然に割られて、部屋のランプが床に落ちて消えてしまい真っ暗になりました。
い、一体何が起こったのですか……。
さらに私は何者かによって、組伏せられて首を締められます。
く、苦しい。だ、誰が何のためにこんなことを――。
「いえ、それが覆面を被っていて……ゆったりとしたローブを羽織っていたので男か女かさえも分からないとのことです」
エリックが“ジェクト先輩”と慕っていた国王陛下の婚外子であるアークト侯爵。
彼とエリックの関係性について少し調べようとした矢先に事件は起きました。
なんと、昨夜にアークト侯爵が何者かによって腹部を刺されて重体となり病院に運ばれたとのことです。
これはどういうことでしょう。エリックの件と何か関係があるのでしょうか。
「エリックは自分が今の状況に置かれたのはアークト侯爵のせいだと考えている節があります」
あまりのタイミングに私は直感的に身の危険を感じました。
もしもエリックが逆恨みをしてアークト侯爵を刺すように誰かに復讐の代理を頼んだのだとしたら――とんでもないことです。
「しかしだなぁ。エリックがいくらアークト侯爵を恨んだとしても、面会は監視されているし気付かれないように人を刺すように命じられるか? アークト侯爵は粗暴で誰にでも喧嘩を吹っ掛けて回る男だと聞いている。恨みくらい幾らでも買ってそうだ」
私の推測を父は肯定しませんでした。
確かにアークト侯爵を刺すように面会者に命令なんて無理ですよね。
私の考え過ぎなのでしょうか……。
しかしながら、今回のことで浮かび上がったエリックという人間の性は恐ろしいほどまで思い込みが激しく、歪んだ自己愛を持っていることでした。
そんな彼が慕っていたアークト侯爵が手のひらを返したことに怒りを覚えないはずがないのです。
そして、このようなタイミングでの侯爵の負傷。私にはこれが偶然には感じられませんでした。
「不安そうな顔をしているな。護衛は十分にいるとは思っているが、もう少し増やそう。あとは憲兵隊にお前の屋敷周辺を重点的に回るように口利きしておく」
私が父の言葉に納得行かないというような表情をしていたからなのか、彼はそうやって優しい言葉をかけてくれました。
本当はメリルとその婚約者であるアレンデール様のことで頭がいっぱいでしょうに……。申し訳ありません。
「それじゃあ、まだ明るいが気を付けて帰りなさい」
父との話もそこそこに私は自分の家に戻ろうとしました。
メリルとアレンデール様はこの国の誰よりも厳戒に守られている――とすれば、エリックが次に許せないと考えるのは間違いなく私でしょう。
◆ ◆ ◆
実家から我が家までの道中は特に何事もなく帰ることが出来ました。
どうやら、私の思い過ごしだったみたですね。
どんなに考えても父の言ったとおりなのに、妙な胸騒ぎのせいで無駄に警戒してしまいました。
その時、です。
部屋のガラスが突然に割られて、部屋のランプが床に落ちて消えてしまい真っ暗になりました。
い、一体何が起こったのですか……。
さらに私は何者かによって、組伏せられて首を締められます。
く、苦しい。だ、誰が何のためにこんなことを――。
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