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第十二話

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 兄のルークが客人だと連れて来られたのは、先日の舞踏会でジーナと共にいたケヴィンという男性でした。
 な、なぜ、この方が我が家にいらっしゃるのでしょう……。

「舞踏会で会ったときはあまり話せなかったね。……いやぁ、久しぶりに会ったけど可愛くなったじゃないか」

 私の手を取り、瞳をジッと見つめて微笑みかけるケヴィン。
 やはり彼とはどこかで以前にお会いしたことがあった気がします。

「アマンダの妹を口説こうとするな。バカ……」

「痛っ!? あはは、ごめん、ごめん。あまりにも可愛らしかったものだから、つい」

 姉のアマンダの婚約者であるアレス殿下がケヴィンの頭をポカリと叩きました。
 私とニッグの話を聞いた翌日に隣国に帰られたと思っていたのですが、またこちらに遊びに来られていたみたいです。
 アマンダも何も言っていませんでしたから知りませんでした。

「あのう、ケヴィンさんと前にどこかでお会いしたことありましたっけ?」

「ああ、僕はアレス殿下の護衛の一人だからね。前に君たちが旅行で僕らの国に来たときに会っているよ。まぁ、業務中だったからナンパは控えていたけどね」
「業務中じゃなくても、控えろよ」

 なんとケヴィンはアレス殿下の護衛の方でした。
 隣国の王族の護衛の方がなぜこの国でジーナさんと賭博場に行っていたのでしょうか。

「で、ケヴィンくんはご主人さまの言いつけどおりジーナちゃんときちんと遊べたの?」

「イリーナ殿下! 噂以上にお美しい……! どうですか? 今度食事でも……」
「義兄の妻を口説くな! やっぱり、こいつを連れてきたのは間違いだったかな……」

 ええーっと、今度はイリーナ様を口説いていらっしゃる。
 怖いもの知らずというか何というか。
 それにしても、イリーナ様の口ぶりからすると、ジーナに近付いたのはアレス殿下の指示だったみたいですね。

「ごめんなさい。わたくし、ルークに身も心も全て捧げているの」
「恥ずかしげもなく、そんなことを言うな……」

「これは、失礼を。一応、指示どおりジーナさんは僕の言うことなら何でも聞くように躾けておきましたよ。余計なことをリークされないために、アルベルタ伯爵家の屋敷の権利書もほらこの通り質屋から」

 ……な、何でも言うことを聞くように躾けておいた? ……あ、アルベルタ伯爵家の屋敷の権利書?
 ちょっと待ってください。ケヴィンはジーナを動かして何かをさせるつもりなのでしょうか。

「手際が良いじゃない。ジーナちゃんって子、一応は一途にニッグくんを想っていたと聴いてたけど。それを落とすなんてね」

「一途に……、ですか? うーん、僕が今まで口説いた女の子の中でも上位に入るくらいの楽勝さ加減でしたけど。中々いないですよ、あれだけのお手軽女」

「そんなことはどうでもいい。……そろそろ、計画の最終段階に移行しようと思っているんだけど、いいかな?」

 イリーナ様の質問に答えるケヴィンを制止して、アレス殿下は「計画の最終段階」という言葉を出しました。
 け、計画って、そのう。皆さん、本当に何をされるつもりなのでしょうか――。

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