5 / 19
第五話(ニッグ視点)
しおりを挟む
おかしい。
最近、何かがおかしい。
誰かにずっと尾行されているような、そんな感じだ。
ジィーっと後からの視線を感じる。
これが馬車に乗っても続いているのが不気味だ。
僕の行動を誰かが監視しているのか? 何のために?
ふーむ。考えられるのは公爵家との縁談の関係か……。エルザが僕とジーナの仲を疑って……いや、正確にはエルザの周りの連中が彼女の話を聞いて心配になったから、か。
ちょっとふざけすぎたもんな。エルザの反応が面白くて。
ジーナの尻とか触ると、びっくりした顔をしていたがあれは傑作だった。
だが、それをあの家族の誰かにチクったとなると問題だな。
エルザの家はこの国では名家中の名家。
公爵殿には親父も頭が上がらないし、エルザの兄であるルークは第二王女の夫だ。
エルザの姉のアマンダは来月には隣国の第三王子だかの嫁になる予定だし……。
連中を敵に回すと非常に厄介なんだよな。
もちろん、だからこそ公爵家には利用価値がある。
僕も侯爵家を継ぐ予定だし、王族との繋がりが密なあいつらのご機嫌取りくらいはするつもりだ。
だからこそ変なことを吹き込まれる前にあの男を知らないチョロそうな女に甘い言葉をかけてやって、惚れさせておいたんだけど。
うーん。もう少し乱暴な手を使って余計なことを言わせないようにしとけば良かったかな。
「鬱陶しいな。ちょっとは尾行していることくらい隠せよ」
「えっ? ニッグ様、何か言われましたか?」
「いや……何でもないよ、ジェーン。ちょっと独り言だ」
メイドのジェーンが不思議そうな顔をして僕を見る。
ふぅ、仕方ない。友人連中に尾行者のことを探らせよう。
僕がジーナと浮気しているかどうかを調査しているんだろうが……。
男の友人の家に向かうのなら違和感はあるまい。
「予定変更だ。ジョンの家に向かってくれ」
「レストランに予約が入っていますが」
「日頃の世話のお礼だ。君たち、好きなものを飲み食いしてくれていいよ。僕からの奢りということで」
「本当ですか? ニッグ様はなんてお優しいのでしょう!」
ジョンは男爵家の令息で僕の言うことなら何でも聞いてくれる友人の一人だ。
裏の連中とも繋がりがあって、気に食わない奴は大体金貨2枚で始末してくれる。
とりあえず、ジョンの力を借りよう。余計なことを聞かれては困るので、ジェーンたちにはレストランで飯でも食ってもらっている間に、な。
こうして、僕はジョンの住んでいる屋敷へと向かわせた。
「へぇ、公爵家の手の者が尾行ねぇ。がはは、任せておいてくれよ。尾行野郎どもなんざ消してやるって。安心しな、証拠は残さねぇよ」
「くくっ、やはりジョンは頼もしいな。だが、消さなくていいぞ。どんな連中が尾行しているか探ってくれればいい」
「ああ、分かった。まぁ大船に乗った気でいな!」
まずは本当に公爵家の手先なのかということと、僕とジーナの浮気を疑っているのかどうか、探らせよう。
エルザ、僕は今……飼い犬に手を噛まれた気分だよ。
だけど、君は知らない。僕には頼りになる仲間がいることを……。
あれから一週間が過ぎた。
ジョンとは連絡が取れなくなった。
それに他の友人たちも何人か行方不明になっている……。
こ、これは、どういうことなんだ――。
最近、何かがおかしい。
誰かにずっと尾行されているような、そんな感じだ。
ジィーっと後からの視線を感じる。
これが馬車に乗っても続いているのが不気味だ。
僕の行動を誰かが監視しているのか? 何のために?
ふーむ。考えられるのは公爵家との縁談の関係か……。エルザが僕とジーナの仲を疑って……いや、正確にはエルザの周りの連中が彼女の話を聞いて心配になったから、か。
ちょっとふざけすぎたもんな。エルザの反応が面白くて。
ジーナの尻とか触ると、びっくりした顔をしていたがあれは傑作だった。
だが、それをあの家族の誰かにチクったとなると問題だな。
エルザの家はこの国では名家中の名家。
公爵殿には親父も頭が上がらないし、エルザの兄であるルークは第二王女の夫だ。
エルザの姉のアマンダは来月には隣国の第三王子だかの嫁になる予定だし……。
連中を敵に回すと非常に厄介なんだよな。
もちろん、だからこそ公爵家には利用価値がある。
僕も侯爵家を継ぐ予定だし、王族との繋がりが密なあいつらのご機嫌取りくらいはするつもりだ。
だからこそ変なことを吹き込まれる前にあの男を知らないチョロそうな女に甘い言葉をかけてやって、惚れさせておいたんだけど。
うーん。もう少し乱暴な手を使って余計なことを言わせないようにしとけば良かったかな。
「鬱陶しいな。ちょっとは尾行していることくらい隠せよ」
「えっ? ニッグ様、何か言われましたか?」
「いや……何でもないよ、ジェーン。ちょっと独り言だ」
メイドのジェーンが不思議そうな顔をして僕を見る。
ふぅ、仕方ない。友人連中に尾行者のことを探らせよう。
僕がジーナと浮気しているかどうかを調査しているんだろうが……。
男の友人の家に向かうのなら違和感はあるまい。
「予定変更だ。ジョンの家に向かってくれ」
「レストランに予約が入っていますが」
「日頃の世話のお礼だ。君たち、好きなものを飲み食いしてくれていいよ。僕からの奢りということで」
「本当ですか? ニッグ様はなんてお優しいのでしょう!」
ジョンは男爵家の令息で僕の言うことなら何でも聞いてくれる友人の一人だ。
裏の連中とも繋がりがあって、気に食わない奴は大体金貨2枚で始末してくれる。
とりあえず、ジョンの力を借りよう。余計なことを聞かれては困るので、ジェーンたちにはレストランで飯でも食ってもらっている間に、な。
こうして、僕はジョンの住んでいる屋敷へと向かわせた。
「へぇ、公爵家の手の者が尾行ねぇ。がはは、任せておいてくれよ。尾行野郎どもなんざ消してやるって。安心しな、証拠は残さねぇよ」
「くくっ、やはりジョンは頼もしいな。だが、消さなくていいぞ。どんな連中が尾行しているか探ってくれればいい」
「ああ、分かった。まぁ大船に乗った気でいな!」
まずは本当に公爵家の手先なのかということと、僕とジーナの浮気を疑っているのかどうか、探らせよう。
エルザ、僕は今……飼い犬に手を噛まれた気分だよ。
だけど、君は知らない。僕には頼りになる仲間がいることを……。
あれから一週間が過ぎた。
ジョンとは連絡が取れなくなった。
それに他の友人たちも何人か行方不明になっている……。
こ、これは、どういうことなんだ――。
76
お気に入りに追加
3,585
あなたにおすすめの小説
王女殿下を優先する婚約者に愛想が尽きました もう貴方に未練はありません!
灰銀猫
恋愛
6歳で幼馴染の侯爵家の次男と婚約したヴィオラ。
互いにいい関係を築いていると思っていたが、1年前に婚約者が王女の護衛に抜擢されてから雲行きが怪しくなった。儚げで可憐な王女殿下と、穏やかで見目麗しい近衛騎士が恋仲で、婚約者のヴィオラは二人の仲を邪魔するとの噂が流れていたのだ。
その噂を肯定するように、この一年、婚約者からの手紙は途絶え、この半年ほどは完全に絶縁状態だった。
それでも婚約者の両親とその兄はヴィオラの味方をしてくれ、いい関係を続けていた。
しかし17歳の誕生パーティーの日、婚約者は必ず出席するようにと言われていたパーティーを欠席し、王女の隣国訪問に護衛としてついて行ってしまった。
さすがに両親も婚約者の両親も激怒し、ヴィオラももう無理だと婚約解消を望み、程なくして婚約者有責での破棄となった。
そんな彼女に親友が、紹介したい男性がいると持ち掛けてきて…
3/23 HOTランキング女性向けで1位になれました。皆様のお陰です。ありがとうございます。
24.3.28 書籍化に伴い番外編をアップしました。
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。
ふまさ
恋愛
伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。
「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」
正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。
「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」
「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」
オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。
けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。
──そう。
何もわかっていないのは、パットだけだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる