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第一話
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私ことエルザ・アークスには婚約者がいます。
名前はニッグ・ケルトマン。ケルトマン侯爵家の嫡男です。
この縁談はケルトマン侯爵の方から私の父、アークス公爵に持ちかけた話です。
すでに我が家は兄が家督を継ぐ準備が出来ており、第二王女と結婚しており、姉も隣国の第三王子と来月には結婚することが決まっています。
ですから私の相手さえ見つかれば父は安心出来ると思っていた手前、乗り気になってその縁談を受けたのです。
ニッグは実に社交的な男性で話題も豊富で面白く、周りに男女問わず沢山友人がいる方でした。
見た目も鼻筋が通ってキレイな顔をしており、短い黒髪も清潔な感じで爽やかで私はすぐに彼のことを好きになります。
ニッグと婚約出来て良かった。心底そう思いました。
そして、兄や姉と同じく、パートナーと仲良く幸せな家庭を築こうと心に誓ったのです。
しかしながら暫くして、ニッグについてあることに気付いてしまいました。
それはジーナの存在です。
ジーナ・アルベルタ。アルベルタ伯爵家の長女でありニッグと同い年で、彼の幼馴染。
最近、彼と会うと半分以上の確率で彼女が一緒にいます。
正確に言えば彼女以外の友人たちもいるのですが、ジーナとニッグはいつもカップルのように寄り添って仲睦まじくしているのです。
ジーナはニッグに何かある度に抱きつきますし、ニッグもジーナの腰に手を回したり、酔っ払っている時などベタベタと体を触ったりします。
流石にそれは異常だろうと私はそれとなく注意するのですが、ニッグもジーナも笑って聞き流すばかりでした。
「はぁ? お前、もしかしたらジーナに嫉妬してるのかぁ? あははは、安心しろよ。あいつとはただの幼馴染なんだからさ。子供の時からのノリなんだよ。俺、ほとんどジーナのこと男友達だと思っているからさ」
ヘラヘラと笑いながら私の話を聞き流すニッグ。
まるで、ジーナに対して嫉妬のような感情を保っている私がおかしいみたいな言い草です。
「邪推するほうがいやらしいって。みんなに聞いてみなよ。俺とジーナがそういう関係だって聞いたら絶対に笑われるから」
自信満々にジーナとの関係を否定するので、私もそうなのかと引き下がるしかありませんでした。
確かに周りの人間も二人の仲が異様に良い様子には全く無関心というか昔からあんな感じだったから慣れたみたいなことを言っていました。
でも、ニッグにその気がなくてもジーナは違うかもしれません。
ニッグのことが好きで、わざと私に見せつけようとしている可能性があります。
そんなことをストレートにジーナにぶつけました。
「あはははは、何それ? エルザさんって、面白い。いや、私もほら。こういう性格だから、女として見られないのよ。羨ましいわ。エルザさんみたいな女の子っぽい人」
ジーナは自分がサバサバした男みたいな性格だから、女として扱われないと自虐してニッグとの関係をはっきりと否定しました。
そういうものなのでしょうか。性格とか付き合いが長いとか、そんなので男女の関係を越えた友情が芽生えたとか、そういうことなのでしょうか。
私もあまりにも二人が強気で否定するので、それを信じかけてしまったのですが――ある日のこと、事件が起きました。
名前はニッグ・ケルトマン。ケルトマン侯爵家の嫡男です。
この縁談はケルトマン侯爵の方から私の父、アークス公爵に持ちかけた話です。
すでに我が家は兄が家督を継ぐ準備が出来ており、第二王女と結婚しており、姉も隣国の第三王子と来月には結婚することが決まっています。
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ニッグは実に社交的な男性で話題も豊富で面白く、周りに男女問わず沢山友人がいる方でした。
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そして、兄や姉と同じく、パートナーと仲良く幸せな家庭を築こうと心に誓ったのです。
しかしながら暫くして、ニッグについてあることに気付いてしまいました。
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最近、彼と会うと半分以上の確率で彼女が一緒にいます。
正確に言えば彼女以外の友人たちもいるのですが、ジーナとニッグはいつもカップルのように寄り添って仲睦まじくしているのです。
ジーナはニッグに何かある度に抱きつきますし、ニッグもジーナの腰に手を回したり、酔っ払っている時などベタベタと体を触ったりします。
流石にそれは異常だろうと私はそれとなく注意するのですが、ニッグもジーナも笑って聞き流すばかりでした。
「はぁ? お前、もしかしたらジーナに嫉妬してるのかぁ? あははは、安心しろよ。あいつとはただの幼馴染なんだからさ。子供の時からのノリなんだよ。俺、ほとんどジーナのこと男友達だと思っているからさ」
ヘラヘラと笑いながら私の話を聞き流すニッグ。
まるで、ジーナに対して嫉妬のような感情を保っている私がおかしいみたいな言い草です。
「邪推するほうがいやらしいって。みんなに聞いてみなよ。俺とジーナがそういう関係だって聞いたら絶対に笑われるから」
自信満々にジーナとの関係を否定するので、私もそうなのかと引き下がるしかありませんでした。
確かに周りの人間も二人の仲が異様に良い様子には全く無関心というか昔からあんな感じだったから慣れたみたいなことを言っていました。
でも、ニッグにその気がなくてもジーナは違うかもしれません。
ニッグのことが好きで、わざと私に見せつけようとしている可能性があります。
そんなことをストレートにジーナにぶつけました。
「あはははは、何それ? エルザさんって、面白い。いや、私もほら。こういう性格だから、女として見られないのよ。羨ましいわ。エルザさんみたいな女の子っぽい人」
ジーナは自分がサバサバした男みたいな性格だから、女として扱われないと自虐してニッグとの関係をはっきりと否定しました。
そういうものなのでしょうか。性格とか付き合いが長いとか、そんなので男女の関係を越えた友情が芽生えたとか、そういうことなのでしょうか。
私もあまりにも二人が強気で否定するので、それを信じかけてしまったのですが――ある日のこと、事件が起きました。
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完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
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