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Ep14 サプライズゲスト
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今度は皇王の方からしばらく時間が欲しいと懇願され、結論は先送りになりました。
私は「せめて孫の顔をご覧になりませんか?」と提案したのですが、「勘弁してくれ」と言われましたので、せっかく足を運んで下さった二人の女性と赤ん坊にはお引き取り頂きました。
この対応は予想通りですし、皇王とクラリスに皇太子の所業が伝わっただけで十分な戦果です。これが今後の戦略に繋がりますからね――。
皇太子は聞いてもないのに“金を渡した”とか最低な発言をしてくれましたので、お腹いっぱいで胸焼けしそうです。
さて、ここから場所を城下町の食事処――クラリスの実家の前に移します――。
既に彼女の両親に根回しは完璧に済ませてます。
クラリスの両親は養子縁組の話を涙ながらに喜んでいました。
平民が貴族の家に入るだけでも僥倖ですし、多額の援助を提供させてもらいましたから。
クラリスは荷物をまとめて店の前で待ってます。
私はかなり離れた物陰に馬車を停めて、クラリスを監視しています。合流したアレンデールと共に――。
「いやぁ、流石はアルティメシア嬢ですねぇ。あの聖女ちゃんを上手くコントロールしましたか。貴女を味方にして良かったですよ」
アレンデールはニヤニヤと笑いながら声をかけました。
失敗出来ませんので、神経すり減らしましたから。
「今度は貴方の番ですよ。お手並み拝見させて下さい。下手を打てば切り捨てますからね」
私は横目でアレンデールを見ながら冷たく言い放ちました。
「おおっ、これはこれは、手厳しいですねぇ。それでは、応援をお願いします。貴女のような美人さんに“頑張れ”って仰って頂ければ、グッとやる気になれますから」
アレンデールは両手を挙げて大袈裟なリアクションを見せてきました。はぁ、面倒な方ですねぇ。
「嫌です」
「ふふっそれは、残念です――」
その後しばらくの間、私達は黙ってクラリスを見ていました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お嬢、待たせたな。やはり、監視されてたぞ」
セリスは黒い服を着た男を3人ほど掴んでこちらに歩いて来ました。
男たちはボロボロになって悲惨な見た目になっていましたが――。
「あとで僕が身元を吐かせて、軽く脅しておきますね。まぁ、十中八九、皇太子か皇王の差し金でしょうけど――。ちっ、まったくもって忌々しい連中ですね」
アレンデールは低い声を出し、瞳が冷たく光ります。
――なんでしょうか、今、一瞬だけ背筋に寒気が走りました。いつもの飄々とした態度とは明らかに雰囲気が違いました。
それにしても――やはり、監視されてましたか。セリスに見張らせて正解です。
「おやっ? お嬢様、僕が用意した役者が到着しましたよ」
「ようやく到着しましたか。自信ありそうに語っていましたが、どんな役者を用意したのですか? って、まさか――あの方は――」
私は息が止まりそうになりました。
長い赤髪と褐色の肌の美丈夫、平民の服装で一瞬勘違いかと思いましたが、あの方を見間違えるはずがありません。
隣国のダルバート王国の皇太子、ローレンス=ダルバートではないですか――。
「あっ、貴方は、どうやってあの方を――」
「ふふっ、驚いてくれましたか? サプライズゲストですよ。歴史研究家を舐めないで頂きたいです。実はローレンス殿下も歴史好きでしてねぇ、僕と彼は親友なのですよ。心配しないでください。きちんと彼の護衛も変装して近くにいますから――」
アレンデールは得意満面の顔で私の反応を伺っていました。いやいや、そういう問題ではなくてですねぇ。
隣国の大物を巻き込んでしまって大丈夫なのですか?
「大丈夫ですって? ふふっ、国を相手取るのですよ。僕は持ってる手札は遠慮なく切らせて貰います。怖気づいたのなら、お早めに仰って下さいね」
「誰も怖気づいてません。馬鹿にしないで下さい――」
私はムッとして言い返しました。
「くくっ、相変わらず反応が可愛らしいですねぇ。それでは、お嬢様、ご覧ください。ローレンス殿下にも聖女ちゃんの実家の前で待ち合わせる約束を取り付けました。――ほらっ、聖女ちゃんの側に殿下は歩いて行きますよ」
アレンデールの言うとおり、ローレンスはクラリスに近づいています。
「さぁて、出会いの演出を差し上げましょう。ベタで陳腐な演出ですが、そこは主演女優に頑張ってもらうとしますか」
彼はクラリスに人差し指を向けました。
“風よ従属せよ――”
アレンデールがそう呟きます。
すると――。
――突風がクラリスめがけて発生し、彼女は吹き飛ばされました。
そして――。
絶妙なタイミングでローレンスはクラリスを抱き止めたのです。
恐るべき聖女の愛され力――。
仕組まれたとはいえ、こんなにキレイに抱き止められますか――。
しかし、今回は彼女の力に感謝ですね。
さて、ここから私達の出番です。
私は「せめて孫の顔をご覧になりませんか?」と提案したのですが、「勘弁してくれ」と言われましたので、せっかく足を運んで下さった二人の女性と赤ん坊にはお引き取り頂きました。
この対応は予想通りですし、皇王とクラリスに皇太子の所業が伝わっただけで十分な戦果です。これが今後の戦略に繋がりますからね――。
皇太子は聞いてもないのに“金を渡した”とか最低な発言をしてくれましたので、お腹いっぱいで胸焼けしそうです。
さて、ここから場所を城下町の食事処――クラリスの実家の前に移します――。
既に彼女の両親に根回しは完璧に済ませてます。
クラリスの両親は養子縁組の話を涙ながらに喜んでいました。
平民が貴族の家に入るだけでも僥倖ですし、多額の援助を提供させてもらいましたから。
クラリスは荷物をまとめて店の前で待ってます。
私はかなり離れた物陰に馬車を停めて、クラリスを監視しています。合流したアレンデールと共に――。
「いやぁ、流石はアルティメシア嬢ですねぇ。あの聖女ちゃんを上手くコントロールしましたか。貴女を味方にして良かったですよ」
アレンデールはニヤニヤと笑いながら声をかけました。
失敗出来ませんので、神経すり減らしましたから。
「今度は貴方の番ですよ。お手並み拝見させて下さい。下手を打てば切り捨てますからね」
私は横目でアレンデールを見ながら冷たく言い放ちました。
「おおっ、これはこれは、手厳しいですねぇ。それでは、応援をお願いします。貴女のような美人さんに“頑張れ”って仰って頂ければ、グッとやる気になれますから」
アレンデールは両手を挙げて大袈裟なリアクションを見せてきました。はぁ、面倒な方ですねぇ。
「嫌です」
「ふふっそれは、残念です――」
その後しばらくの間、私達は黙ってクラリスを見ていました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お嬢、待たせたな。やはり、監視されてたぞ」
セリスは黒い服を着た男を3人ほど掴んでこちらに歩いて来ました。
男たちはボロボロになって悲惨な見た目になっていましたが――。
「あとで僕が身元を吐かせて、軽く脅しておきますね。まぁ、十中八九、皇太子か皇王の差し金でしょうけど――。ちっ、まったくもって忌々しい連中ですね」
アレンデールは低い声を出し、瞳が冷たく光ります。
――なんでしょうか、今、一瞬だけ背筋に寒気が走りました。いつもの飄々とした態度とは明らかに雰囲気が違いました。
それにしても――やはり、監視されてましたか。セリスに見張らせて正解です。
「おやっ? お嬢様、僕が用意した役者が到着しましたよ」
「ようやく到着しましたか。自信ありそうに語っていましたが、どんな役者を用意したのですか? って、まさか――あの方は――」
私は息が止まりそうになりました。
長い赤髪と褐色の肌の美丈夫、平民の服装で一瞬勘違いかと思いましたが、あの方を見間違えるはずがありません。
隣国のダルバート王国の皇太子、ローレンス=ダルバートではないですか――。
「あっ、貴方は、どうやってあの方を――」
「ふふっ、驚いてくれましたか? サプライズゲストですよ。歴史研究家を舐めないで頂きたいです。実はローレンス殿下も歴史好きでしてねぇ、僕と彼は親友なのですよ。心配しないでください。きちんと彼の護衛も変装して近くにいますから――」
アレンデールは得意満面の顔で私の反応を伺っていました。いやいや、そういう問題ではなくてですねぇ。
隣国の大物を巻き込んでしまって大丈夫なのですか?
「大丈夫ですって? ふふっ、国を相手取るのですよ。僕は持ってる手札は遠慮なく切らせて貰います。怖気づいたのなら、お早めに仰って下さいね」
「誰も怖気づいてません。馬鹿にしないで下さい――」
私はムッとして言い返しました。
「くくっ、相変わらず反応が可愛らしいですねぇ。それでは、お嬢様、ご覧ください。ローレンス殿下にも聖女ちゃんの実家の前で待ち合わせる約束を取り付けました。――ほらっ、聖女ちゃんの側に殿下は歩いて行きますよ」
アレンデールの言うとおり、ローレンスはクラリスに近づいています。
「さぁて、出会いの演出を差し上げましょう。ベタで陳腐な演出ですが、そこは主演女優に頑張ってもらうとしますか」
彼はクラリスに人差し指を向けました。
“風よ従属せよ――”
アレンデールがそう呟きます。
すると――。
――突風がクラリスめがけて発生し、彼女は吹き飛ばされました。
そして――。
絶妙なタイミングでローレンスはクラリスを抱き止めたのです。
恐るべき聖女の愛され力――。
仕組まれたとはいえ、こんなにキレイに抱き止められますか――。
しかし、今回は彼女の力に感謝ですね。
さて、ここから私達の出番です。
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