9 / 24
Ep9 調査内容
しおりを挟む
私はアレンデールの勧誘を受け入れました。
正直、一人では手詰まりなのは確かですし、この男は気に入りませんが皇王一族への恨みは私よりも強そうに見受けられましたので、協力者としては不足はなさそうです。
もちろん、手放しに信頼までは出来ませんが……。
そして、何よりセリスがこの話を聞いても私の味方をしてくれると言ってくれたのは嬉しかったです。
彼女が側で一緒に戦ってくれると言ってくれたから、私は首を縦に振ることが出来たのです。
「先程の貴方とリルアさんの話から察するに、私を利用して皇王に近付こうと企んでいるようですが、どのような絵を描いているのか話していただけますか?」
私は率直にアレンデールの策とやらを聞いてみようと思いました。
自分の正体を話すリスクを背負ってまで私に近づいたのです。それなりに自信のある作戦があるはずなのです。
「おっ、乗り気じゃあないですか。もちろん教えて差し上げますよ。その前に説明することが何点かありますが……。お手洗いは――」
「それはもういいです!」
「アレンっ、今度はセリスさんに殴ってもらうよ」
「ん、ウチが本気で拳を使うと骨が折れるより凄いことになるけど良いのかい?」
アレンデールは私達に一斉に捲し立てられ、さすがに軽口は吐けなくなったようです。
「皆さんが結託して僕にいじめを……。あと、セリスさんは拳を収めてください。怖いですから……」
そんなことを言いながらやれやれという仕草のポーズをとっていました。この方は一々ふざけないと死んじゃう病気か何かなのでしょうか?
「コホンっ、僕とリルアちゃんは皇族の弱点を探ろうと独自に調査していました。当然、皇太子くんや、その婚約者である貴女のことも調べましたよ。貴女は非の打ち所がなかったです。ミスパーフェクトと言われるだけあります。まぁ、ランニングに出掛けるフリをしてモンブランを時々買い食いしているのはご愛嬌ですかねぇ」
アレンデールはクスリと笑いながら余計な一言を加えました。
なっなっなんで、そのことをご存知なのですか――誰も知らないと思ってましたのに――。
「くっ、お嬢の唯一の楽しみをウチら以外が知っていたとは――。尾行に気づかなかったウチら使用人たちの不覚だ――」
セリスは心底悔しかったのか、顔を歪ませて膝を叩きました。
ええーっ、セリスは知っていたのですか? というより、今の口ぶりだと使用人全員が知っているような――。
全然、あとを付けられているのに気が付きませんでした――。
「そりゃあ、お嬢に気付かれるような尾行をする人間にアルティメシア家の使用人は務まらねぇです」
セリスは誇らしげな顔をしていましたが、釈然としませんでした。
「続けますよぉ? 皇太子くんの方はまぁ、叩けば埃しか出ませんでしたねー。婚約中にも関わらずお構いなしにそこら中の女の子に声掛けまくり、遊びまくりの良いご身分でしたよー。まぁ、皇太子なんでホントに良い身分なんですけどねぇ。とにかく、ここに攻めるポイントがありそうだと、僕は睨んで調査を進めたわけです。ハニートラップとか簡単にひっかかってくれそうですし――」
アレンデールは得意気な顔をして説明を続けます。
でも、ちょっと待ってください。
「皇太子は婚約中にクラリスという女以外とも関係していたのですか?」
「ええ、関係を肉体関係というなら、5人。キスくらいでしたら12人ですねぇ。そりゃあもう、お盛んでした。特に引いたのは2人同時に――ったい! リルアちゃん?」
アレンデールにリルアは顔を赤くして、肘鉄を食らわせました。
「だっ誰もそんな生々しいところまで、聞いてないっての。グレイス様の気持ちを考えろっこの“人でなし”!」
「そうですかねぇ。面白いネタだったのですが、残念です。とにかく、僕は皇太子から攻めていけば皇族にダメージを与えられると確信していました。あの女を見るまでは――」
アレンデールの声のトーンが低くなりました。
あの女――、大体察しはつきます。もちろん――。
「そう、クラリス=フリージア。巷では聖女、女神の化身、などと言われています。普通はそう言ったのって比喩表現に過ぎないのですが、彼女に関してはそのまんまの意味ととっても差し支えないでしょう。彼女の出現で僕の計画も一筋縄じゃあいかなくなったのです」
アレンデールは肩を落としてクラリスを恐れるような発言をしました。
確かに彼女の演説?からの逆転には驚きましたが、だからといって人外のような印象は受けませんでした。
悪魔の血で魔法が使えるアレンデールの方が私は余程怖いのですが……。
「彼女、恐ろしい方ですよぉ。最後に聖女ちゃんのお話をしましょう。彼女こそが僕の計画の1番の障害にして1番のキーポイントなのですから――」
クラリス=フリージア。聖女と呼ばれる可憐な美少女。
それを恐ろしい方と評するアレンデールはゆっくりと話し始めました。
正直、一人では手詰まりなのは確かですし、この男は気に入りませんが皇王一族への恨みは私よりも強そうに見受けられましたので、協力者としては不足はなさそうです。
もちろん、手放しに信頼までは出来ませんが……。
そして、何よりセリスがこの話を聞いても私の味方をしてくれると言ってくれたのは嬉しかったです。
彼女が側で一緒に戦ってくれると言ってくれたから、私は首を縦に振ることが出来たのです。
「先程の貴方とリルアさんの話から察するに、私を利用して皇王に近付こうと企んでいるようですが、どのような絵を描いているのか話していただけますか?」
私は率直にアレンデールの策とやらを聞いてみようと思いました。
自分の正体を話すリスクを背負ってまで私に近づいたのです。それなりに自信のある作戦があるはずなのです。
「おっ、乗り気じゃあないですか。もちろん教えて差し上げますよ。その前に説明することが何点かありますが……。お手洗いは――」
「それはもういいです!」
「アレンっ、今度はセリスさんに殴ってもらうよ」
「ん、ウチが本気で拳を使うと骨が折れるより凄いことになるけど良いのかい?」
アレンデールは私達に一斉に捲し立てられ、さすがに軽口は吐けなくなったようです。
「皆さんが結託して僕にいじめを……。あと、セリスさんは拳を収めてください。怖いですから……」
そんなことを言いながらやれやれという仕草のポーズをとっていました。この方は一々ふざけないと死んじゃう病気か何かなのでしょうか?
「コホンっ、僕とリルアちゃんは皇族の弱点を探ろうと独自に調査していました。当然、皇太子くんや、その婚約者である貴女のことも調べましたよ。貴女は非の打ち所がなかったです。ミスパーフェクトと言われるだけあります。まぁ、ランニングに出掛けるフリをしてモンブランを時々買い食いしているのはご愛嬌ですかねぇ」
アレンデールはクスリと笑いながら余計な一言を加えました。
なっなっなんで、そのことをご存知なのですか――誰も知らないと思ってましたのに――。
「くっ、お嬢の唯一の楽しみをウチら以外が知っていたとは――。尾行に気づかなかったウチら使用人たちの不覚だ――」
セリスは心底悔しかったのか、顔を歪ませて膝を叩きました。
ええーっ、セリスは知っていたのですか? というより、今の口ぶりだと使用人全員が知っているような――。
全然、あとを付けられているのに気が付きませんでした――。
「そりゃあ、お嬢に気付かれるような尾行をする人間にアルティメシア家の使用人は務まらねぇです」
セリスは誇らしげな顔をしていましたが、釈然としませんでした。
「続けますよぉ? 皇太子くんの方はまぁ、叩けば埃しか出ませんでしたねー。婚約中にも関わらずお構いなしにそこら中の女の子に声掛けまくり、遊びまくりの良いご身分でしたよー。まぁ、皇太子なんでホントに良い身分なんですけどねぇ。とにかく、ここに攻めるポイントがありそうだと、僕は睨んで調査を進めたわけです。ハニートラップとか簡単にひっかかってくれそうですし――」
アレンデールは得意気な顔をして説明を続けます。
でも、ちょっと待ってください。
「皇太子は婚約中にクラリスという女以外とも関係していたのですか?」
「ええ、関係を肉体関係というなら、5人。キスくらいでしたら12人ですねぇ。そりゃあもう、お盛んでした。特に引いたのは2人同時に――ったい! リルアちゃん?」
アレンデールにリルアは顔を赤くして、肘鉄を食らわせました。
「だっ誰もそんな生々しいところまで、聞いてないっての。グレイス様の気持ちを考えろっこの“人でなし”!」
「そうですかねぇ。面白いネタだったのですが、残念です。とにかく、僕は皇太子から攻めていけば皇族にダメージを与えられると確信していました。あの女を見るまでは――」
アレンデールの声のトーンが低くなりました。
あの女――、大体察しはつきます。もちろん――。
「そう、クラリス=フリージア。巷では聖女、女神の化身、などと言われています。普通はそう言ったのって比喩表現に過ぎないのですが、彼女に関してはそのまんまの意味ととっても差し支えないでしょう。彼女の出現で僕の計画も一筋縄じゃあいかなくなったのです」
アレンデールは肩を落としてクラリスを恐れるような発言をしました。
確かに彼女の演説?からの逆転には驚きましたが、だからといって人外のような印象は受けませんでした。
悪魔の血で魔法が使えるアレンデールの方が私は余程怖いのですが……。
「彼女、恐ろしい方ですよぉ。最後に聖女ちゃんのお話をしましょう。彼女こそが僕の計画の1番の障害にして1番のキーポイントなのですから――」
クラリス=フリージア。聖女と呼ばれる可憐な美少女。
それを恐ろしい方と評するアレンデールはゆっくりと話し始めました。
12
お気に入りに追加
2,029
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

悪役令嬢を追い込んだ王太子殿下こそが黒幕だったと知った私は、ざまぁすることにいたしました!
奏音 美都
恋愛
私、フローラは、王太子殿下からご婚約のお申し込みをいただきました。憧れていた王太子殿下からの求愛はとても嬉しかったのですが、気がかりは婚約者であるダリア様のことでした。そこで私は、ダリア様と婚約破棄してからでしたら、ご婚約をお受けいたしますと王太子殿下にお答えしたのでした。
その1ヶ月後、ダリア様とお父上のクノーリ宰相殿が法廷で糾弾され、断罪されることなど知らずに……
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
宝石精霊に溺愛されていますが、主の命令を聞いてくれません
真風月花
恋愛
嘘でしょう? 王女であるわたくしが婚約を破棄されるだなんて。身分違いの婚約者から、あろうことか慰謝料代わりに宝石を投げつけられたアフタル。だがその宝石には精霊が宿っていて、アフタルに「俺を選べ」と主従関係を命じる。ちゃんと命令を聞いてくれない、強引な精霊にふりまわされるアフタルが、腐敗した王家を立て直す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる