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第十四話
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「ジェノスさん! この度は僕の性根を叩き直す機会を与えてくれてありがとうございます!」
ミラを騎士団員御用達のブートキャンプに送ったというゲイツ様はきれいな敬礼をしていた。
ジェノス様は十億エルドを用立てするとして、その代わりに彼もブートキャンプに行くように指示したのだ。
その結果、見違えるように逞しくなって帰ってきたゲイツ様。
自分の行いを恥じてなお、ミラに対して強い態度で接することが出来たと誇らしげだった。
「ジェノス様、十億なんて大金を出すなんて大丈夫なんですか?」
「国王陛下より武勲を立てたとして報奨金を頂いている。それに父より頂いた土地もある。それを売れば何とか足りるさ。それに渡すのは君の家なのだから、問題はない。私としては金よりも君と穏やかに結婚生活が送りたいからね」
微笑みながらジェノス様は私に問題ないと伝える。
そこまで言ってもらえるのは嬉しいけど、やはり申し訳ないという気持ちが大きい。
彼の優しさに甘え過ぎだと思ってしまったから。
「ジェノスさん! やはり、僕は十億エルドは受け取れません! 自分が撒いた種なのに、他人に後始末を押し付けるなんて! 誇り高き王国騎士のすることではありませんから!」
「王国騎士……」
すっかり軍人として出来上がったゲイツ様はジェノス様からの好意を受け取れないとした。
何やら別人になっているように見えてちょっと怖い。
背筋をピンと伸ばした彼は自分で後始末をつけると言っていた。
「だけど、君はお金がないしミラと一刻も早く別れたいのだろう?」
「いえ! もう一度、ミラと話し合おうと思っています! アリアに迷惑をかけたことは承知しているのですが、ここで逃げ出すのも騎士道に反する行為だと思い直したので!」
喉が枯れているのにガラガラ声のまま大声を出しながら、驚くほど前向きな答えを出すゲイツ様。
あのミラとやり直すつもりなのか。それは何とも予想以上の逞しさだ。
「これから僕は生まれ変わって人間らしく生きる! 正面から全てをぶつけ合えばきっと分かり合える!」
目を爛々と輝かせながら、ゲイツ様は輝かしい未来へと進もうとする。
何というか、凄い自信だ。以前とは迫力が違う。
「ブートキャンプって、みんなこんな感じになるんですか?」
「一種の自己啓発的なものだから。突き刺さる人には刺さる感じだ。騎士として目に余る人間を矯正する場所なんだけど、ここまで豹変する人は少ないかな」
ジェノス様としては、ゲイツ様に自分を見つめ直して反省する心を養ってほしいという気持ちでブートキャンプを勧めたみたいだが、効果は思った以上だった。
しかし、私たちはさらに豹変した人物を間もなくして、見ることとなる。
そう、妹のミラもまたブートキャンプによって人間が変わってしまったのだ。
ミラを騎士団員御用達のブートキャンプに送ったというゲイツ様はきれいな敬礼をしていた。
ジェノス様は十億エルドを用立てするとして、その代わりに彼もブートキャンプに行くように指示したのだ。
その結果、見違えるように逞しくなって帰ってきたゲイツ様。
自分の行いを恥じてなお、ミラに対して強い態度で接することが出来たと誇らしげだった。
「ジェノス様、十億なんて大金を出すなんて大丈夫なんですか?」
「国王陛下より武勲を立てたとして報奨金を頂いている。それに父より頂いた土地もある。それを売れば何とか足りるさ。それに渡すのは君の家なのだから、問題はない。私としては金よりも君と穏やかに結婚生活が送りたいからね」
微笑みながらジェノス様は私に問題ないと伝える。
そこまで言ってもらえるのは嬉しいけど、やはり申し訳ないという気持ちが大きい。
彼の優しさに甘え過ぎだと思ってしまったから。
「ジェノスさん! やはり、僕は十億エルドは受け取れません! 自分が撒いた種なのに、他人に後始末を押し付けるなんて! 誇り高き王国騎士のすることではありませんから!」
「王国騎士……」
すっかり軍人として出来上がったゲイツ様はジェノス様からの好意を受け取れないとした。
何やら別人になっているように見えてちょっと怖い。
背筋をピンと伸ばした彼は自分で後始末をつけると言っていた。
「だけど、君はお金がないしミラと一刻も早く別れたいのだろう?」
「いえ! もう一度、ミラと話し合おうと思っています! アリアに迷惑をかけたことは承知しているのですが、ここで逃げ出すのも騎士道に反する行為だと思い直したので!」
喉が枯れているのにガラガラ声のまま大声を出しながら、驚くほど前向きな答えを出すゲイツ様。
あのミラとやり直すつもりなのか。それは何とも予想以上の逞しさだ。
「これから僕は生まれ変わって人間らしく生きる! 正面から全てをぶつけ合えばきっと分かり合える!」
目を爛々と輝かせながら、ゲイツ様は輝かしい未来へと進もうとする。
何というか、凄い自信だ。以前とは迫力が違う。
「ブートキャンプって、みんなこんな感じになるんですか?」
「一種の自己啓発的なものだから。突き刺さる人には刺さる感じだ。騎士として目に余る人間を矯正する場所なんだけど、ここまで豹変する人は少ないかな」
ジェノス様としては、ゲイツ様に自分を見つめ直して反省する心を養ってほしいという気持ちでブートキャンプを勧めたみたいだが、効果は思った以上だった。
しかし、私たちはさらに豹変した人物を間もなくして、見ることとなる。
そう、妹のミラもまたブートキャンプによって人間が変わってしまったのだ。
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