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第十二話(ミラ視点)
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さあて、今日はどのようにしてゲイツ様と遊んで差し上げようかしら。
ゲイツ様は二週間ばかり隣国とやらに所用で行ってしまっていて随分と暇を持て余したんですよね。
そんなにわたくしと一緒にいるのが嫌だったのでしょうか。
前は海で大盛り上がりしましたから、今日は山も良いかもしれませんね。
山は虫が出るから嫌いですけど、ゲイツ様が虫みたいに這いつくばっている姿を見るにはいい場所かもしれないです。
さて、そろそろ出かけるとしましょう。ゲイツ様との待ち合わせの時間は二時間前に過ぎていますから。
炎天下に人を待たせるなんて、なんて楽しいのでしょうか。
「遅い! 貴様! 婚約者を待たせるとは何事だ!」
「はぁ?」
わたくしが到着すると、ゲイツ様は目を血走らせて凄んできます。
この男、暑さで頭をやられてしまったのでしょうか? 前に会ったときと感じが違うのですが。
いつもの卑屈で媚びるような目つきはどうしました? あなたにそんな顔は似合いません。
はっきり言って、ムカつきますわ。何様のおつもりなんでしょう。
「あなた、誰に向かって口を利いていまして? わたくしは――」
「貴様の名前など聞いておらん! 人でなしの癖に人のふりをするな! さっさと馬車に乗れ!」
「ちょ、ちょっと、何をするんですか!? 離してくださいまし!」
大柄な男二人に抱えられて、無理やり馬車に乗せられたわたくし。
こ、こんなの無礼すぎますわ。ムカついて、ムカついて、たまりません。
「これからどこに連れて行くつもりですの?」
「勝手に口を開くな! これから、人になるまで、人の真似は許さん!」
「あなた、わたくしにそんな口を叩いて良いと思っているのですか? もう、分かりました。あなたと別れます」
こいつ、頭が馬鹿になったらしいです。
だったら、思い出させてやりますわ。わたくしと別れたら、十億エルド払ってもらうという契約を。
「十億エルドなら既に払う準備は出来ている!」
「ぴえっ?」
はぁぁぁぁぁぁ!?
何を仰っていますの? やはり馬鹿になったのではありませんか。この方は。
だって、十億エルドですよ。十億エルド。
そんなの簡単に用意できる金額ではございません。
「だが、あれは貴様の父上と交わした契約だ! 僕と別れるには、貴様が自分の父上に談判する必要があるのだ! 分かったか! この間抜けが!」
「そんな屁理屈知りませんわ! ここから出しなさい!」
「無駄口は許さんと何度言ったら分かる! 貴様はこれからその腐った性根を叩き直すことになる! それは貴様の父上も納得している!」
お父様が承知でこんなことを!?
わたくし、どこに連れて行れるのですか?
くそっ! 意味が分かりません! なんで、わたくしにゲイツ様ごときが偉そうな口を……!
「バリー教官! ミラを連れて参りました!」
「うむ! よくやった」
馬車で気が遠くなるくらいの時間をかけて、たどり着いたのは山の中にある小屋でした。
汚いし、みすぼらしい。ここで、何をするつもりなのでしょうか。
「君がミラか。なるほど、腐った目をしておる……! さて、今日のメニューはこの丸太を担いで、この小屋の周りを百周してもらうだけだ! 君が立派な騎士になれるように、その人間性を叩き直してあげよう! このバリーのブートキャンプでな!」
「はぁ? 何を言ってるのですか?」
「口ごたえをするな! この豚女が!」
「ひぃぃぃぃっ!?」
怖い! 怖い! 怖いです……!
睨むだけで人を殺せそうな凶悪な男が怒鳴ってきます。
スキンヘッドで、眉毛がありませんの……! 毛が生えていないなんて怖すぎますわ!
ここは、どこなのですか? わ、わたくしはこれからどうなってしまいますの……。
ゲイツ様は二週間ばかり隣国とやらに所用で行ってしまっていて随分と暇を持て余したんですよね。
そんなにわたくしと一緒にいるのが嫌だったのでしょうか。
前は海で大盛り上がりしましたから、今日は山も良いかもしれませんね。
山は虫が出るから嫌いですけど、ゲイツ様が虫みたいに這いつくばっている姿を見るにはいい場所かもしれないです。
さて、そろそろ出かけるとしましょう。ゲイツ様との待ち合わせの時間は二時間前に過ぎていますから。
炎天下に人を待たせるなんて、なんて楽しいのでしょうか。
「遅い! 貴様! 婚約者を待たせるとは何事だ!」
「はぁ?」
わたくしが到着すると、ゲイツ様は目を血走らせて凄んできます。
この男、暑さで頭をやられてしまったのでしょうか? 前に会ったときと感じが違うのですが。
いつもの卑屈で媚びるような目つきはどうしました? あなたにそんな顔は似合いません。
はっきり言って、ムカつきますわ。何様のおつもりなんでしょう。
「あなた、誰に向かって口を利いていまして? わたくしは――」
「貴様の名前など聞いておらん! 人でなしの癖に人のふりをするな! さっさと馬車に乗れ!」
「ちょ、ちょっと、何をするんですか!? 離してくださいまし!」
大柄な男二人に抱えられて、無理やり馬車に乗せられたわたくし。
こ、こんなの無礼すぎますわ。ムカついて、ムカついて、たまりません。
「これからどこに連れて行くつもりですの?」
「勝手に口を開くな! これから、人になるまで、人の真似は許さん!」
「あなた、わたくしにそんな口を叩いて良いと思っているのですか? もう、分かりました。あなたと別れます」
こいつ、頭が馬鹿になったらしいです。
だったら、思い出させてやりますわ。わたくしと別れたら、十億エルド払ってもらうという契約を。
「十億エルドなら既に払う準備は出来ている!」
「ぴえっ?」
はぁぁぁぁぁぁ!?
何を仰っていますの? やはり馬鹿になったのではありませんか。この方は。
だって、十億エルドですよ。十億エルド。
そんなの簡単に用意できる金額ではございません。
「だが、あれは貴様の父上と交わした契約だ! 僕と別れるには、貴様が自分の父上に談判する必要があるのだ! 分かったか! この間抜けが!」
「そんな屁理屈知りませんわ! ここから出しなさい!」
「無駄口は許さんと何度言ったら分かる! 貴様はこれからその腐った性根を叩き直すことになる! それは貴様の父上も納得している!」
お父様が承知でこんなことを!?
わたくし、どこに連れて行れるのですか?
くそっ! 意味が分かりません! なんで、わたくしにゲイツ様ごときが偉そうな口を……!
「バリー教官! ミラを連れて参りました!」
「うむ! よくやった」
馬車で気が遠くなるくらいの時間をかけて、たどり着いたのは山の中にある小屋でした。
汚いし、みすぼらしい。ここで、何をするつもりなのでしょうか。
「君がミラか。なるほど、腐った目をしておる……! さて、今日のメニューはこの丸太を担いで、この小屋の周りを百周してもらうだけだ! 君が立派な騎士になれるように、その人間性を叩き直してあげよう! このバリーのブートキャンプでな!」
「はぁ? 何を言ってるのですか?」
「口ごたえをするな! この豚女が!」
「ひぃぃぃぃっ!?」
怖い! 怖い! 怖いです……!
睨むだけで人を殺せそうな凶悪な男が怒鳴ってきます。
スキンヘッドで、眉毛がありませんの……! 毛が生えていないなんて怖すぎますわ!
ここは、どこなのですか? わ、わたくしはこれからどうなってしまいますの……。
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