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第十話
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「あら、お姉様ではありませんか。相変わらず、辛気臭い顔ですわね」
「……そういうあなたは随分と楽しそうね」
「ええ、楽しいですわぁ。ゲイツ様、何でも言うことを聞いてくれるのです。最高の玩具ですわ」
まったくもって、この妹が肉親であることがおぞましい。
公爵家とのジェノス様と婚約したのはとても喜ばしいことだけど、この子の扱いはどうしようかと頭を悩ませるところだ。
なんせ、この子はゲイツ様を奪ったのだから。
ジェノス様にも何をするのか分かったものではない。
だから、父に言ってジェノス様との婚約のことはまだ内緒にしてもらっている。
「あなた、ゲイツ様にもわがまま放題しているの? 度が過ぎするとゲイツ様もお怒りになってあなたを見捨るわよ」
「あらあら、お姉様はもうお忘れですかぁ? ゲイツ様はわたくしのご機嫌を取らないと十億エルド払うことになるのですよ。わたくしが別れると仄めかすだけで、必死に媚を売る姿は滑稽なので、今度お姉様にも見せて差し上げます」
悪魔である。私の妹は悪魔であった。
ゲイツ様がどんな扱いをされているのかは想像に容易い。この子は人の尊厳を踏みにじるのが大好きだから。
私をあっさり捨てたことは忘れていないが、少しだけ同情する。
彼はきっとミラと婚約したことを後悔しているだろう。
「それではお姉様、ご機嫌よう。わたくし、明日着ていく服を選ばなくてはなりませんので」
機嫌よく、ミラは私のもとを離れる。
困った妹だが、あのまま侯爵家はあの子を引き取ってくれるのだろうか。
不安しか残らないし、嫌なことが起こりそうな気がしてならなかった。
「アリアお嬢様、お手紙が届いております」
「手紙、ですか? これはゲイツ様から!?」
ミラの後ろ姿を悲観した気持ちで見送っていたら、私は一通の手紙を渡された。
差出人はゲイツ様だった。まさか、ミラのことで苦情か何か……。
私はゲイツ様からの手紙を読んでみることにした。
『麗しきアリアへ。
僕は君との婚約をトラブルによって解消してしまったことを後悔しているよ。
仕方がなかったこととはいえ、僕が悪かったのは間違いない。
君に謝罪させてくれないか?
全面的に僕が間違っていたということを、ただ侘びたいんだ。
下心はない。本当だ。僕はただ、君に謝りたいだけ。
頼む、僕に謝罪するチャンスをくれ。お願いだ。もう二度と過ちは犯さないから。責任を取らせてくれ……』
謝罪がしたいというゲイツからの手紙。
やはり、ミラによって相当精神的に追い詰められているみたいだ。
本来なら無視するところだけど、ミラの行き過ぎた行動によってゲイツ様もかなり追い詰められてそうだし、様子くらいは聞いておきたい気持ちもある。
「そんなに気になるのなら、私が一緒に付いていこうか? これでも、元騎士団員。婚約者のボディガードくらいは出来るさ」
翌日、このことをジェノス様に相談したら、彼は自分も付いていくから会ってみると良いと言ってくれた。
ジェノス様が一緒なら安心出来る。
私は彼と共にゲイツ様に会うことにした――。
「……そういうあなたは随分と楽しそうね」
「ええ、楽しいですわぁ。ゲイツ様、何でも言うことを聞いてくれるのです。最高の玩具ですわ」
まったくもって、この妹が肉親であることがおぞましい。
公爵家とのジェノス様と婚約したのはとても喜ばしいことだけど、この子の扱いはどうしようかと頭を悩ませるところだ。
なんせ、この子はゲイツ様を奪ったのだから。
ジェノス様にも何をするのか分かったものではない。
だから、父に言ってジェノス様との婚約のことはまだ内緒にしてもらっている。
「あなた、ゲイツ様にもわがまま放題しているの? 度が過ぎするとゲイツ様もお怒りになってあなたを見捨るわよ」
「あらあら、お姉様はもうお忘れですかぁ? ゲイツ様はわたくしのご機嫌を取らないと十億エルド払うことになるのですよ。わたくしが別れると仄めかすだけで、必死に媚を売る姿は滑稽なので、今度お姉様にも見せて差し上げます」
悪魔である。私の妹は悪魔であった。
ゲイツ様がどんな扱いをされているのかは想像に容易い。この子は人の尊厳を踏みにじるのが大好きだから。
私をあっさり捨てたことは忘れていないが、少しだけ同情する。
彼はきっとミラと婚約したことを後悔しているだろう。
「それではお姉様、ご機嫌よう。わたくし、明日着ていく服を選ばなくてはなりませんので」
機嫌よく、ミラは私のもとを離れる。
困った妹だが、あのまま侯爵家はあの子を引き取ってくれるのだろうか。
不安しか残らないし、嫌なことが起こりそうな気がしてならなかった。
「アリアお嬢様、お手紙が届いております」
「手紙、ですか? これはゲイツ様から!?」
ミラの後ろ姿を悲観した気持ちで見送っていたら、私は一通の手紙を渡された。
差出人はゲイツ様だった。まさか、ミラのことで苦情か何か……。
私はゲイツ様からの手紙を読んでみることにした。
『麗しきアリアへ。
僕は君との婚約をトラブルによって解消してしまったことを後悔しているよ。
仕方がなかったこととはいえ、僕が悪かったのは間違いない。
君に謝罪させてくれないか?
全面的に僕が間違っていたということを、ただ侘びたいんだ。
下心はない。本当だ。僕はただ、君に謝りたいだけ。
頼む、僕に謝罪するチャンスをくれ。お願いだ。もう二度と過ちは犯さないから。責任を取らせてくれ……』
謝罪がしたいというゲイツからの手紙。
やはり、ミラによって相当精神的に追い詰められているみたいだ。
本来なら無視するところだけど、ミラの行き過ぎた行動によってゲイツ様もかなり追い詰められてそうだし、様子くらいは聞いておきたい気持ちもある。
「そんなに気になるのなら、私が一緒に付いていこうか? これでも、元騎士団員。婚約者のボディガードくらいは出来るさ」
翌日、このことをジェノス様に相談したら、彼は自分も付いていくから会ってみると良いと言ってくれた。
ジェノス様が一緒なら安心出来る。
私は彼と共にゲイツ様に会うことにした――。
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